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林田力:東急リバブル東陽町営業所の虚偽広告

 多くの消費者にとって不動産は一生に一度あるかないかの買い物である。しかし、その買い物の重要な判断材料となるマンション仲介広告は、いい加減な内容であることも多い。本記事では同じマンションで繰り返し虚偽内容の広告が確認された信じ難い事例を紹介する。
 問題の広告は東急不動産が分譲し、東京都江東区東陽にあるマンション・アルスの一室の売却を仲介するものである。最初の虚偽広告は大手不動産販売業者の東急リバブル錦糸町営業所が2005年に作成・配布した。広告の虚偽内容は以下の通りである。
 第一に1LDK+DENの間取りを広告では2LDKと表示し、広く見せようとした。
 第二に用途地域は第一種住宅地域と商業地域からなるにも関わらず、広告では第一種住宅地域とのみ表示した。
 第三に駐車場料金は月額30000〜32000円であるにもかかわらず、広告では月額僅か600円とする。これは単なる誤記とは考えられない。600円とは桁が異なる上、0を1,2個落としてしまった訳でもない。しかも600円では駐車場料金の世間相場からも離れている。現在は駐車場に空きがないとはいえ、格安で駐車場を借りられる、お買い得物件との誤解を消費者に与えかねない広告である。
 また、東急リバブルのウェブサイト上のアルス広告ページでは間取りがコロコロと変わっていた。
 7月31日時点では間取り図に洋室8.0畳、洋室4.5畳、LD 11.4畳と実物とは異なる虚偽の表示をしていた。
 8月12日時点では洋室8畳、DEN 4畳、居間・食堂11.2畳で畳数は正しい記載に改められた。しかし、間取りは相変わらず2LDKと虚偽表示を続けていた。
 8月19日時点では洋室8畳、納戸4畳、LDK 15畳とLDKが実物よりも大幅に広く見せている。但し、間取りは1SLDKに修正された。
 不動産広告では、実際のものよりも優良又は有利であると誤認されるおそれのある表示をすることは不当表示として禁止されている。現在または将来の環境等について、実際のものより著しく優良、有利であると一般消費者に誤認させるような表示は不当表示になる。
 東急リバブルの虚偽広告に対しては、景品表示法の観点から公正取引委員会も動いた。東急リバブルが加盟する社団法人首都圏不動産公正取引協議会において改善措置を講じさせた(独占禁止法45条3項の規定に基づく公正取引委員会通知書、公取通第497号)。
 この虚偽広告には単なるミスで済ませられない事情がある。東急リバブルは上記マンションの新築分譲時の販売代理を務めていた。従って通常の仲介業者以上に物件を熟知している。新築分譲時の販売資料には間取りも用途地域も駐車場料金も正しく記載されていた。それにもかかわらず売却仲介時には虚偽の広告を作成・配布したところに東急リバブルの悪質さが際立っている。
 広告が近隣住戸に配布された当時、私はアルスの別の住戸(301号室)の購入者として売買代金返還を求めて東急不動産と裁判中であった。東急不動産が裁判で提出した図面(乙第1号証)には虚偽があり、原告(私)は反論のためにアルスの間取りを調べていた。そのために東急リバブル錦糸町営業所の仲介広告の虚偽も発見できた。
 裁判では東急リバブルが不利益事実(隣地がアルス竣工後すぐに建て替えられること及び作業所で騒音が発生すること)を隠してマンションをだまし売りしたことが争点であった。私は東急リバブル錦糸町営業所の虚偽広告(チラシ、ファックス広告、ウェブページ)も証拠(甲第18号証)として提出した。それによって東急リバブルが消費者に正確な情報を伝えようとしない不動産業者であることを立証した。この証拠に対して、裁判官は第三回弁論準備手続(2005年9月6日)で東急不動産側に反論するように示唆したが、東急不動産側から反論されることはなかった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年、44頁)。
 

東急リバブル東陽町営業所の虚偽広告

 東急リバブルによるアルス仲介虚偽広告は錦糸町営業所だけで終わらなかった。東急不動産だまし売り裁判では原告の請求通り、東急不動産から原告に売買代金が返還された。アルス301号室の所有権は東急不動産に戻され、アルス301号室は東急リバブル東陽町営業所の専属専任媒介で売りに出された。ところが、その仲介広告にも虚偽があった。
 虚偽広告は東急リバブルのウェブページ上で遅くとも2007年12月28日には公開された。ウェブページに加え、不動産流通促進協議会(オープンマーケット)統一様式による広告資料にも虚偽が表示された。これは不動産会社への資料請求でもらえる資料であり、ウェブ広告よりも詳細な情報が記載されている。
 東急リバブルの広告表示の誤りは大きく5点ある。
 第一に駐車場料金である。実際は月額で機械式駐車場の上段32000円、下段30000円である。しかし、広告では600円、20000円、30000円と不正確な表示を繰り返した。実際よりも安く見せているため、消費者の期待を裏切ることになる。これは錦糸町営業所の虚偽広告と同内容である。東急リバブルは同じ虚偽を繰り返していることになる。
 東急リバブル錦糸町営業所と東陽町営業所では営業所が異なる。それにもかかわらず、同じ虚偽内容で広告することが信じ難い。前回の虚偽広告についての反省が営業所間で共有されていないことがうかがえる。そもそも反省していない可能性もある。
 逆に事業所が異なるのに同じ虚偽記載となる点は会社ぐるみで虚偽広告のテクニックが共有されていることをうかがわせる。この種の問題が起きると担当者の問題としてトカゲの尻尾切りとなりがちだが、東急リバブルの虚偽広告については一担当者の問題と矮小化できないことが明らかである。
 第二に洋室(6畳)の窓の間取り図表示である。東急リバブルのウェブページでは2008年1月4日に新たに外観写真、間取り図、地図、キッチン・リビングの室内写真を追加した。この間取り図の窓に虚偽がある。洋室(6畳)には窓が3箇所ある。そのうちの1箇所が外開き窓で、2箇所が羽目殺し窓(FIX)である。ところが、広告では2点の虚偽がある。
 (1)実際は窓が3つあるが、広告では当初、2つしか表示しなかった。間取り図では6畳の洋室の西側の壁に窓が2つ設置されている。片開きの外開き窓が一つと羽目殺しの窓が一つである。しかし、実際は羽目殺し窓の北側にもう一つ、羽目殺し窓が設置されている。
 (2)外開き窓を羽目殺しの窓として表示した。間取り図を修正して窓の数を3つにした後で、何故か外開き窓が羽目殺し窓にデグレードした。
 また、修正前の間取り図では壁に対する窓の大きさも実物と比べて小さくなっていた。窓の数の虚偽と合わせると、窓を小さく表示して目立たなくしているように感じられる。
 正確な窓の数や形状、大きさは新築分譲時の図面集にも記載されている。東急リバブルは新築分譲時の販売代理であり、知らない筈のない事実である。
 一般論としては採光や眺望を可能にする窓の数が多い方が物件の魅力が増す。また、通風を可能にする外開き窓は羽目殺し窓よりも好ましい。窓も大きい方が評価は高い。それにもかかわらず、東急リバブルが仲介広告で窓を隠した理由として、以下の2点が考えられる。
 先ず洋室の窓から数10センチ先に建物ができたため、窓が無意味になった。アルス東陽町竣工時は窓から洲崎川緑道公園が眺望できたが、その後すぐに301号室に面する隣接地に作業所が建設され、窓が建物で塞がれる状態になった。
 東急不動産(販売代理:東急リバブル)は、この状態になることを把握していたが、新築分譲時には説明しなかった。反対に「二面採光・通風」をセールスポイントとして販売した。引渡し後に真相を知った私は消費者契約法(不利益事実不告知)に基づき、売買契約を取り消した。今回、アルス301号室が売りに出されたのも、契約取消しによって、東急不動産に返品されたためである。この経緯があるため、東急リバブルが洋室の窓を強調したくないと考えた可能性がある。
 次に洋室の窓の結露の問題がある。アルス301号室の洋室の窓では冬場に結露が発生した。窓ガラスの表面や窓枠上部に無数の水滴が付着し、ポタポタと下に垂れ落ちてくる。窓のサッシが水溜りになり、あふれて流れ出てくるくらいであった。窓枠の下にタオルをしき、吸収させるほどであった。
 この結露に私は苦しめられた。水滴が見たこともない虫の形に変わり、列をなして背筋を這い下りていく。そのような感覚に襲われたこともあった。東急リバブルには洋室の窓の数を減らした動機には、なるべく窓に目立たないようにすることで結露の問題にも気づきにくくしたかったためと推測できる。
 第3に洋室(5畳)の出入り口の間取り図表示である。実物は引き戸であるが、広告では当初、内開きの開き戸にしていた。東急リバブルの広告ウェブページではリビングの写真も掲載されていた。これは洋室(5畳)から撮影されたもので、写真上部に引き戸の鴨居が写されている。ここからも洋室(5畳)の扉が引き戸であることは明らかである。この写真自体は最初の虚偽の間取り図が掲載された1月4日から掲載されており、東急リバブルは自ら掲載した写真と矛盾する間取り図を作成したことになる。
 東急リバブルが引き戸を開き戸に虚偽表示する動機としては以下の2点が考えられる。
 先ず洋室との適合性、洋室のリビングからの独立性を示すことで、物件を実体以上に良く見せようとした。具体的には以下の通りである。
 (1)フローリングの洋室には引き戸よりも開き戸が相応しい。
 (2)引き戸よりも開き戸の方が洋室(5畳)の独立性を示しやすい。但し、洋室(5畳)に行くためにはリビングを通る必要があり、見かけ上の独立性に過ぎない。
 次に間違った新築分譲時の図面に依拠して間取り図を作成した。新築分譲時に配布された図面の中に実物とは異なり、開き戸になっているものがあった。アルスでは新築分譲時に配布された図面に数パターンあり、現実の間取りと異なったものがある。これは青田売り(建物が完成していない状態で販売すること)で販売されたこと、設計変更が複数回行われたことを反映していると考えられる。
 相互に矛盾する複数種類の図面集が存在することは東急不動産だまし売り裁判でも問題になった。原告は少なくとも3種類の図面が存在することを証拠によって立証した。図面集プリント版(甲第15号証)、図面集冊子版(甲第16号証)、東急コミュニティー保有版(甲第17号証)である。このうち、図面集冊子版と東急コミュニティー保有版は実物と相違した内容になっていた。
 また、アルスでは設計通りに施工されていない問題も発覚した(林田力「マンション欠陥施工で東急不動産が呆れた説明」PJニュース2010年7月11日)。分譲時から無責任・いい加減という問題を抱えていたと言える。
 第4に管理会社の社名の誤表示である。名前を間違えることは失礼極まりない。社名を間違えるということはビジネスパーソンとして致命的である。名前は人格の現れであり、名前を間違えることは相手の人格を否定するに等しい行為である。間違えた側の意図は問題にならない。そのように受け取られる行為をするということが問題である。
 元々、アルス東陽町では他の東急不動産分譲物件と同じく、グループ会社の株式会社東急コミュニティーに管理を委託することを条件に分譲された。しかし、東急コミュニティーに問題があったため、管理組合が管理会社を変更した経緯がある。
 東急グループとしては面白くない展開であり、故意に正確な社名を書かないことで意趣返ししたのではないか、と疑いたくなる。これも本当に意趣返しであるかは重要ではない。意趣返しという見方が成り立つ可能性のあるような振る舞いをあえて行うことは軽率の謗りを免れない。
 管理会社を東急コミュニティーからリプレースしたという経緯がある以上、東急側としては通常以上に慎重であるべきであった。それにもかかわらず、軽率な行動をするという事実自体が相手に敬意を払っていないという事実を雄弁に物語る。
 第5に近隣のスーパーマーケットの店名の誤りである。広告ではセイフー東陽町店と表示する。しかし、セイフーは2006年3月にグルメシティに変更されており、グルメシティ東陽町店が正しい。
 広告作成時に調査すれば古い店名で間違えることはない虚偽である。新築分譲時(その頃はセイフーであった)の資料を写したために、古い店名を書いたものと推測される。いかに東急リバブルが現地を調査していないかが分かる虚偽である。現地調査の手間をかけず、新築分譲時の資料を流用する。それによって宅地建物取引業者として果たすべき義務を果たさず、いわば手抜きを行うことで利益を得ようとしたことになる。
 店名の虚偽が消費者に及ぼす不利益は相対的に大きくないが、重要な問題がある。駐車場料金や間取りの虚偽については、東急リバブルが販売代理をしていた新築分譲時の資料には正確に記述されていることをもって東急リバブルの悪質性を結論付ける一つの理由とした。
 これに対しては新築分譲の販売代理(販売受託)と仲介では部署・職種が異なり、「知っている筈」とは断言できないとの反論も考えられる。しかし東急リバブルは現地調査すれば間違える筈がないにもかかわらず、新築分譲時の資料の誤った情報(洋室の開き戸)や古い情報(スーパーマーケットの店名)を仲介広告に掲載している。
 ここから新築分譲時の資料を利用していると判断できる。即ち新築分譲時の情報を把握しながら、都合の悪い事実や誤魔化したい事実は虚偽表示をしていることになり、東急リバブルの悪質性は高いと改めて結論付けられる。
 因みに仲介広告でも新築分譲時の図面集でも方位は左を北にして描いている。これは301号室のベランダが西にあるためと推測される。通常は北を上、南を下に書くものである。住宅では日当たりの良い南向きが好まれるため、ベランダが下に来るような方位にしたと考えられる。このような消費者に不親切で姑息なところは新築分譲時も仲介時も一貫している。
 

東急リバブル東陽町営業所お詫び掲載

 その後の2008年2月以降、東急リバブル東陽町営業所は営業所のウェブサイトに以下のお詫びを表示した。
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 − お 詫 び −
 平成19年12月28日〜平成20年2月15日の間、弊社ホームページ上に「売中古マンション(所在:江東区東陽1丁目、マンション名:アルス東陽町/3階部分、販売価格3,280万円)」の販売告知を致しましたが、表示内容の一部に誤りがありました。一般消費者の皆様並びに関係者各位に大変ご迷惑をおかけ致しました。 ここに謹んでお詫び申し上げるとともに、訂正させていただきます。
 東陽町営業所長 松 本 猛
 
 《 誤表示一覧 》
 駐車場料金について ※正しい料金は「30,000(円/月)と32,000(円/月)」です。 
 12月28日〜1月4日の間 「空無 600(円/月)」と表示。 
 1月5日〜1月7日の間 「空無 20,000(円/月)」と表示。 
 1月8日〜2月15日の間 「空無 30,000(円/月)」と表示。 
 
 間取図について 
 (1) 北側洋室6畳の北側窓について ※正しい表示は「窓3ヶ所(2ヶ所/嵌め殺し窓、1ヶ所/外開き窓)」です。 
 1月4日〜1月7日の間 窓2ヶ所(1ヶ所/嵌め殺し窓、1ヶ所/外開き窓)と表示。1月8日〜1月10日の間 窓3ヶ所(2ヶ所/嵌め殺し窓、1ヶ所/外開き窓)と表示。※正しい表示 
 1月11日〜2月15日の間 窓3ヶ所(3ヶ所/嵌め殺し窓)と表示。 
 (2) 北側洋室5畳の出入り口の建具について ※正しい表示は「3連の引き戸(扉)」です。 
 1月4日〜1月9日の間 「内開きドア(1ヶ所)」と表示。 
 1月10日〜2月15日の間 「3連の引き戸(扉)」と表示。※正しい表示 
 
 その他の事項
 (1) 管理会社名について ※正しい社名は「日本ハウズイング株式会社」です。 
 12月28日〜2月15日の間 「日本ハウズィング株式会社」と表示。 
 (2) 周辺施設(お買い物)の名称について ※正しい名称は「グルメシティ東陽町店」です。 
 1月6日〜1月11日の間 「セイフー東陽町店」と表示。 
 以上です。
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 錦糸町営業所の虚偽広告に続き、東陽町営業所の虚偽広告も公正取引委員会に取り上げられた。今回も公正取引委員会は社団法人首都圏不動産公正取引協議会において改善措置を講じたとする(公正取引委員会通知書、公取通第202号、2008年5月2日)。
 しかし、錦糸町営業所の虚偽広告でも改善措置を講じさせたが、虚偽広告は繰り返された。しかも、駐車場料金が600円という全く同じ虚偽である。上記「改善措置」に実効性のないことが露呈した。
 東急リバブルはアルス301号室について専属専任媒介の立場である。東急リバブルの広告ページには媒介契約の種別は掲載されていないが、「Yahoo!不動産」には表示されていた。専属専任媒介とは売主から直接売却を依頼され、自社で調査した内容を広告に記載する立場である。他の業者からの誤った情報を鵜呑みにしてしまったという言い訳は許されない。
 東急リバブルが広告作成時に記載内容が事実であるという誤った認識を抱いていたために虚偽広告になったのか、虚偽広告であることを自覚した上で誤った内容を掲載したのか、という点は大きな問題にはならない。事後的には前者であると言い訳するに決まっているからである。
 東急リバブル広告の虚偽内容は真剣に調べれば全て確認できる問題であり、間違える筈のない内容である。それにもかかわらず虚偽広告となっているということは調査していないことを意味する。東急リバブルとしては事実確認をせずに広告を作成したことになる。不正確な広告を出すことよりも、調査を惜しむ手抜きの利益を優先させた。そこには広告内容が事実でなくてもいいという悪意がある。ここに東急リバブルの悪質性がある。
 しかもアルス301号室は新築分譲時の購入者が消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき、売買契約を取り消した物件である。販売時に不利益事実を説明しなかったことが取消しの理由である。
 また、既に東急リバブル錦糸町営業所では駐車場料金などで虚偽広告を作成しており、公正取引委員会が首都圏不動産公正取引協議会に改善措置を講じさせている。
 以上の経緯を踏まえれば、東急リバブルとしては間違いがないように細心の注意を払うべき物件となる。虚偽内容の中には高く売らんがために物件を良く見せようとするものがある一方で、基本的な調査不足としか思えないようなものもある。
 もし本件虚偽広告が悪意によるものではなく、過失に過ぎないならば、すぐに気付いて訂正すべきであった。しかし、現実は異なり、後述のように他社の広告チラシに使用されるほど虚偽内容が流布した。しかもアルス301号室の広告掲載中にも不正確な修正を繰り返している。
 東急リバブルには消費者に正確な事実を伝える意識も能力もないとしか思えない。2007年3月頃には3000円を越えていた東急リバブルの株価は今では1000円を切っている。サブプライム問題の影響だけとは言えまい。
 東急不動産だまし売り裁判に対し、東急リバブルは2007年10月に「本件を踏まえまして、不動産取引における紛争の未然防止を再徹底し、お客様へのより一層の質の高いサービスを提供していけるよう、努力して行く所存でございます」とのお詫び文を自社ウェブサイトのトップページに掲載した。
 不利益事実不告知で売買契約が取り消されたアルス301号室で、消費者を惑わせる虚偽表示を行うところに東急リバブルの無反省な企業体質がうかがえる。東急リバブルの「お詫び」が内実を全く伴わない表面だけのものに過ぎないものであることを虚偽広告が雄弁に物語っている。
 ほとぼりが冷めると「お詫び」を跡形もなく削除するところも同じである。東急不動産だまし売り裁判の「お詫び」は2007年11月には削除された。「お詫び」は遅くとも2008年3月27日には削除された。消費者に正確な情報を伝えたくないという東急リバブルの企業体質には心底、驚かされる。
 

他社広告に伝播

 東急リバブル東陽町営業所が専属専任で仲介したアルス301号室では、東急リバブルとは別の不動産業者の広告チラシでも虚偽内容が記載されていた。問題の広告はナイス株式会社木場営業所が2008年2月に配布したチラシである。虚偽内容は3点ある。
 第1に間取り図で洋室(5畳)の扉が内開きドアになっている。正しくは引き戸である。
 第2に「お買物」欄で、「セイフー東陽町店」は誤りである。正しくはグルメシティ東陽町店である。
 第3に管理会社名を「日本ハウズィング株式会社」とする。正しい社名は「日本ハウズイング株式会社」である。
 上記3点の虚偽内容は全て東急リバブル東陽町営業所の虚偽広告と同内容である。
 不動産業界ではレインズ(REINS; Real Estate Information Network System)などの情報流通システムが整備されており、売主(売却希望物件の所有者)が直接依頼した仲介不動産業者でなくても、広告宣伝が可能である。売主から売却の依頼を受けた不動産業者は物件情報をシステムに登録する。登録された物件情報は他の不動産業者も閲覧でき、その情報を元に広告を作成することもできる。複数の不動産業者が同じ物件を宣伝していることが起きるのも、このためである。
 売主から直接依頼を受けた業者以外の業者が広告チラシを作成する場合、物件に関する情報はシステムに登録された情報をそのまま使う。独自の内容は自社の社名や住所・電話番号くらいである。物件情報は同じで、チラシ下部の会社名・連絡先だけが会社によって異なるチラシは、このようにして作成される。
 ナイスによるアルス301号室広告も上記のような形で作成されたものと考えられる。これは不動産業界において至極普通のことである。ナイスは東急リバブルの情報にフリーライド(ただ乗り)しているように見える。しかし、反対にナイスが登録した物件について東急リバブルが宣伝広告することも可能であり、相互関係にある。
 また、ナイスのような会社が宣伝広告を行った結果、買主を見つけてくれれば物件が売れることになり、売主側の仲介業者である東急リバブルも売主自身にもメリットがある。売主側の仲介業者の中には買主からも仲介手数料を取りたいがために物件情報を流通させないようにすることもあるが、これは不動産業者として正しい姿勢ではない(林田力「不動産の両手取引禁止を改めて公約に(上)」PJニュース2010年6月13日)。
 従って東急リバブルの専属専任物件をナイスが宣伝したこと自体はニュースとするような話題ではない。問題は物件情報が誤っていたことである。東急リバブルが誤った情報を物件情報として登録してしまったため、それを元に広告を作成したナイスも虚偽広告を出してしまったことになる。
 東急リバブルが自社のチラシやウェブサイトで虚偽広告を出した場合、東急リバブルに対する消費者の信頼が裏切られることになる。これは東急リバブルと消費者の関係であり、東急リバブルの営業範囲内に留まる。しかし、業者間で物件情報を共有する不動産業界においては、東急リバブルの営業範囲を越えて、虚偽の物件情報が流通してしまう。
 東急リバブルが虚偽の物件情報を登録したために、その情報を信頼して広告を出したナイスも消費者の信頼を裏切りかねない事態となった。東急リバブルは不動産業界における信頼関係も破壊したことになる。
 東急リバブルは301号室の虚偽広告に対し、東陽町営業所長・松本猛(当時)名義で「お詫び」文を発表した。そこには「一般消費者の皆様並びに関係者各位に大変ご迷惑をおかけ致しました」と書かれているが、迷惑を被った関係者各位は直接の顧客に留まらない。不動産流通システムの信頼を損ないうる行為であり、不動産流通システムに加盟する不動産業者、その業者と取引しうる消費者にも迷惑を及ぼしたことを東急リバブルは自覚すべきである。
 

番外・電気料金

 東急リバブル東陽町営業所が専属専任で仲介したアルス301号室では虚偽広告以外にも信じ難い事態が起きた。電気使用開始をせずに、電気を使用していた。
 東京電力江東支社は2008年1月22日付で「電気使用開始手続きのお願い」という文書をアルス301号室に投函した。そこでは以下のように記述する。「本日、検針にお伺いいたしましたところ、7キロワット時のご使用が確認されました。しかしながら、当ご使用場所においては電気のご使用開始の連絡をいただいておりません」
 原告がアルス301号室に居住していた頃は、原告が東京電力と契約し、電気料金を支払っていた。その後、2007年に東急不動産から売買代金が返還され、アルス301号室を明け渡した。明け渡し前に原告は電気の使用停止手続きを実施し、ブレーカーを落とした状態にした。よって明け渡し後に使用開始手続きをせずにブレーカーを上げ、電気を使用したことになる。
 301号室は空き家になったため、仲介広告に掲載する室内写真撮影や間取り図作成、購入検討者が内覧する際などで電気を使用したものと考えられる。使用量が僅か7キロワット時である点も、その程度の使用との推測を補強する。東京電力からの通知に対し、対処に窮したマンション管理人が原告に連絡したことで、無断電気使用が発覚した。
 本件は単なる電気料金の滞納と異なり、アルス301号室が売り物件である点が問題を複雑にしている。このままの状態で301号室が売却された場合、新たに居住する人は東京電力に電気使用開始手続きをする際に、無断で使用した電気分についても請求されかねない。
 仮に売主の側で電気使用開始手続きを行い、無断使用分を支払ったとしても、無断使用した事実は残る。それがために契約条件が厳しくなるというような不利益を受けることはないだろうが、新しい所有者にとって気持ちの良いものではない。
 マンションは管理を買え、と言われる。自分が購入する住戸だけではなく、共有部分の管理にも目を向ける必要があるという意味で使われる。しかし本件では専有部分の管理面でも落とし穴がないか、購入検討者が確認することがあることを示している。
 

同じ物件が異なる間取り

 アルスの虚偽広告には続きがある。今度は同じ住戸を複数の不動産業者が異なる間取りで広告を出した。アルス301号室とは別の3階の一室の仲介広告が2008年10月25日時点でポータルサイト「Yahoo!不動産」に掲載された。
 広告を出した業者は大京リアルド・ネット営業課と三井のリハウス東陽町店営業第一グループの2社である。売主が複数の業者に仲介を依頼することは可能であり、同じ物件を複数の業者が宣伝することは珍しくない。
 問題は同じ物件であるにもかかわらず、業者によって間取りが異なることである。大京リアルドの広告では間取りを1SLDKとする。これに対し、三井のリハウスの広告では2LDKとする。
 1SLDKは居室が1つにサービスルーム(S)が1つ、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)の間取りである。これに対して2LDKは居室が2つにリビング・ダイニング・キッチン(LDK)の間取りである。
 相違は部屋の1つをサービスルーム(納戸)と位置付けるか居室とするかにある。ある部屋が納戸であるか、居室であるかは建築基準法で規定されており、不動産業者が勝手に命名してよいものではない。同じ物件の広告で1SLDKとするものと2LDKで分かれることは大きな問題である。
 間取りのみならず、広告ページに掲載された間取り図でも部屋の広さが相違する。
 第1に北西の部屋「洋室1」が大京広告では8畳であるのに対し、三井広告では8.5畳である。
 第2に北東の部屋は大京広告では「DEN(納戸)」とされ、4畳である。これに対し、三井広告では「洋室2」とされ、3.5畳である。この部屋を納戸とするか洋室とカウントするかの違いが、間取りを1SLDKとするか2LDKとするかの相違になっている。
 第3にリビング・ダイニング(LD)について大京広告は11.2畳とするが、三井広告では10.8畳とする。
 第4にキッチン(K)について大京広告は3畳とするが、三井広告では広さを記述しない。
 東急不動産が分譲時に配布した図面集によれば、間取りを1SLDKとする点でも各部屋の畳数も大京広告と合致する。
 三井広告の値が、どのように算出されたかは不明であるが、実測値ならば三井広告の方が正確になる。いずれにしても同じ物件について矛盾する記載をする二社の広告が共に正しいことはあり得ず、少なくとも一方は虚偽広告になる。
 本件と東急リバブルの虚偽広告では悪質性の点では同視できない。東急リバブルは新築分譲時に販売を代理しており、物件について熟知している立場であった。また、東急リバブルは複数の虚偽内容を繰り返し掲載した。しかし、相対的に悪質性が低くても、消費者が正しい情報を得られないという点は同じである。不動産購入に際し、消費者は慎重の上にも慎重を重ねなければならないことを2社の広告は示している。