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林田力:東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡

東京急行電鉄(東急電鉄)が千福ニュータウン団地施設管理組合(静岡県裾野市千福が丘)に対して債務不存在の確認を求めて提訴した訴訟の判決が静岡地方裁判所沼津支部で2010年11月29日に言い渡される。
千福ニュータウンは東急電鉄が1987年に造成した新興住宅地である。開発面積約80ヘクタール、計画開発戸数1200戸、平均敷地面積約100坪、平均建物面積約35坪の計画である。
ニュータウンには洒落た戸建て住宅が並び、ゆったりした街並みを形成している。ニュータウンのある千福が丘地区では地区計画が定められ、建築規制によって景観を守っている。但し、外壁の色は住戸によって区々でヨーロッパの街のような統一感はない。カラフルで見ていて楽しくもある。
ニュータウンの街並みへの評価は高く、1992年には「都市景観大賞(景観形成事例部門)」を受賞した。特に桜並木が好評で、裾野市が2009年に実施した景観に関する市民アンケートでも桜並木が好きという回答が複数なされた。ある回答は「文字通り桜のトンネル」と表現する。
千福ニュータウンでは住民らが千福ニュータウン団地施設管理組合を結成して、下水(トイレなどの水)を処理している。上水道は裾野市が提供するが、家庭などから出た下水を集中処理し、綺麗にして川に流すことは管理組合の仕事である。
住民の下水を住民によって形成される管理組合が処理するだけならば単純であるが、千福ニュータウンでは複雑な事情がある。千福ニュータウンに隣接して東急電鉄のゴルフ場・ファイブハンドレッドクラブや別荘地ファイブハンドレッドフォレストがある。東急電鉄も管理組合の組合員となり、ファイブハンドレッドクラブなどから出た下水も管理組合で処理している。この東急との関係で多くのトラブルが発生している。
管理組合では2005年に東急電鉄の施設の汚水処理費の負担が異常に少ないことに気付き、是正を求めている。東急電鉄の主張する計算式が一般住民の計算式と比べて、東急電鉄の負担額が少なくて済むようになっていた。これは管理組合では「自社の負担を誤魔化すために計算式を偽装した」と表現する。
管理組合が未払い金の支払いを東急電鉄に請求したところ、東急電鉄は債務不存在の確認を求めて提訴した。これに対し、住民側は未払い金1億8000万円と延滞金の支払いを求めて反訴した。杉谷伸芳理事長は「この訴訟では東急電鉄の素人を騙す手口、悪徳業者ぶりが明らかになった」と語る。
管理組合の主張に基づけば東急電鉄は自ら負担すべき下水処理費を住民に転嫁させてファイブハンドレッドクラブなどを運営してきたことになる。杉谷理事長は「これが認められてしまえば、住民は企業に搾取され続けることになる」と憤る。管理組合側には長年、東急電鉄の主張を認めてきたという弱みがある。しかし、だます人とだまされる人の間では、だます側が全面的に悪い(林田力「消費者トラブルの2つの論点」PJニュース2010年5月5日)。
債務不存在確認訴訟以外にも東急電鉄と住民側は様々な対立を抱えている。管理組合事務所に「悪徳業者の東急は出て行け!」「東急よ、偽装はとっくにばれてるぞ!」と書かれた幟が存在するほどである。

「東急よ、偽装はとっくにばれてるぞ!」の幟
「悪徳業者の東急は出て行け!」の幟

第一に系列管理会社の杜撰な管理である。管理組合は当初、東急グループの東建産業に実質的な管理を委託していた。事実上、丸投げに等しい状態で、高い料金で杜撰な業務が行われていた。汚水を処理せずに放流したこともあり、行政の指導も受けた。
管理組合では東建産業への委託を止め、それによって様々な問題が明らかになった。最終的に株式会社千福が丘生活サポートを設立して管理を委託した。自主管理の一つの形態である。自主的に管理するために技術ノウハウが蓄積され、管理組合役員の意識も変わる。現在では立派な事務所もあり、囲碁など様々な同好会活動に多くの住民が集い、地域のコミュニティー拠点となっている。
この問題は系列マンション管理会社の問題と共通する。東急不動産の新築分譲マンションでも管理が系列の東急コミュニティーに委託されたが、高額な管理委託費で杜撰な管理が行われ、リプレースした(林田力「東急コミュニティー解約記(1)修繕積立金不足発覚」PJニュース2010年7月12日)。
一般的なマンション一棟に比べると、千福ニュータウンは規模が大きく、扱う金額も大きい。住民側にとっては杜撰な管理による損害額も大きくなる。一方で近年はタワーマンションなど数百戸超の大規模マンションも登場している。それらのマンションではコンシェルジュやキッズルーム、ゲストルームなど共用施設も豪華になる傾向がある。その分管理費も高くなり、管理組合の予算規模も拡大する。その意味で千福ニュータウン団地施設管理組合の経験は大規模マンションの先行事例になる。
第二にファイブハンドレッドクラブから大量の不明水が汚水処理場に流れていた。営利目的のゴルフ場の汚水処理を下流住民が負担していたことになる。これだけでも大きな損害であるが、原因究明に管理組合が要した費用や時間も膨大である。
管理組合は東急電鉄に対し、東急電鉄の費用で独立浄化槽を作ることを申し入れ、合意に至らなければゴルフ場の管路を封鎖すると決定した。これに対して、東急電鉄は2007年に管理組合を提訴したが、今後、東急電鉄が不明水を流さないとすることで和解が成立した。
第三に欠陥施工・手抜き工事である。配管の口径が細すぎて十分な水量を処理できなかった。管理組合の調査によると、水圧に耐えられずに破損した箇所もあるという。破損箇所から水が浸透し、将来的には地盤沈下を起こす危険もある。スケールは小さいものの、東急不動産の新築分譲マンションでも排水通気管の口径が細いという欠陥施工が発覚した(林田力「マンション欠陥施工で東急不動産が呆れた説明」PJニュース2010年7月11日)。
また、市道はマンホールがコンクリートではなく、レンガで造られている。強度が十分ではなく、道路の陥没や、ひび割れが起きている。市道はニュータウン開発時に東急が造成し、市に引き渡した。管理組合は市にも相談したが、逆に管理組合の費用負担での修繕することを求められた。管理組合では十分な検査をせずに市が市道を引き取ったことから市にも責任があると主張する。
これらの欠陥施工は既に管理組合の費用で修繕したものもある。管理組合側は全ての修繕に要する被害総額を約20億円と見積もる。この修繕費用が未解決の大きな問題である。

レンガ造りのマンホールと道路のひび割れ

第四に東急の「売ったら売りっぱなし」体質である。分譲時には東急ストアを出店し、買い物の利便性をアピールしたが、その後は閉店してしまった。そのために買い物は著しく不便になったと憤る。
東急グループと住民や消費者とのトラブル事例は数多くあるが、千福ニュータウンの特殊事情は東急電鉄が管理組合の組合員となっていることである。千福ニュータウンでは管理組合の総会に東急電鉄の担当者が出席し、発言している。裁判の被告の集会で原告が出席するという奇妙な状況である。ある住民も「住民の会合に会社の人が入って説明することはおかしい」と指摘する。
一方で多くの住民紛争や消費者トラブルでは東急グループが話し合いから逃げ回っているとの印象が強い。そのため、住民と東急が任意に話をし、それが総会議事録として記録されていることは貴重である。2009年5月31日に開催された第19回定期総会では激しいやり取りがなされ、東急の体質を理解できる(千福ニュータウン団地施設管理組合「第19回定期総会議事録」)。
総会の冒頭で東急電鉄は資料の不備を理由に総会開催が不成立と主張した。このために約30分間も議事が中断してしまった。杉谷理事長は「資料不備が総会開催に可否にあたるようなものではない」と説明し、総会が開始された。
ところが、東急電鉄は再度、総会不成立を主張した。これに対し、杉谷理事長は「東急側の代理人こそが、規約に照らし不備である」と反撃した。管理組合規約に定められた総会出席者に対する代理人手続きが行われていないためである。その上で以下のように述べて決着した。
「東急関係者は、本来なら、総会に出席する資格がない。議事進行の邪魔をするなら、出て行ってほしい。」
総会では以下のようなやり取りがなされた。
東急電鉄「新築、増改築をするときは、建築確認申請に放流先の承諾が必ず必要とあるが、規約の第何条に規定されているのか教えてほしい。」
理事長「常識的に放流先の承諾も得ず、勝手に人の物に工事を行うことは犯罪であり、放流することは有り得ない。」
ファイブハンドレッドクラブ「土地を開発、所有した段階で、それは権利として発生しているという理解なのですが。」
理事長「あなた方の意見で、人の施設に勝手に放流して構わない、口数をごまかしてして構わないというのなら、そういう主張は裁判でやって下さい。」
この周辺住民への害悪を無視する論理は東急電鉄に特徴的なものである。東急電鉄・東急不動産が主体的に進める東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)でも再開発地域の雨水の処理が不十分で、自社の営利のために周辺地域を犠牲にしていると住民から批判されている。
しかも、二子玉川ライズでは再開発地域に約7メートルの盛り土をして、再開発地域北側から自然に流れる雨水を堰き止めるようなことをしている。この点について住民が再開発組合を相手に再開発事業の差し止めを求めた訴訟の証人尋問で再開発組合側の証人・宮原義明(株式会社アール・アイ・エー)は以下のように証言し、正当化した(林田力『二子玉川ライズ反対運動』マイブックル、2010年、23頁)。
「もともと、そこに流れ込んでいたということ自身が、それぞれの敷地としては、当然敷地の中で単独で整備することだと思いますから、それを前提としてのお話は少しおかしなことと思いますね。」
千福ニュータウンでの東急側の主張とは正反対である。東急の土地から周辺には勝手に放流するが、周辺住民の土地に降り注ぐ雨水が自然に東急の土地に流れ込むことさえ拒否する。共通点は住民を犠牲にした自社利益優先の御都合主義である。
定期総会議事録は以下の住民意見で終わっている。
「今回の東急さんの質問、指摘内容は本質から外れていると思う。主張されることはあると思うが、誠実であることは重要で、おそらく、本日、ここに出席された方々は、東急さんに対し、もっと深い溝を作ったと思います。今後、もう少し知恵を使った前向きな解決策を考えられるように努力して頂きたい。」
これは東急グループとのトラブルに直面した多くの住民や消費者に共通する感想である。

東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡

東京急行電鉄(東急電鉄)と東急系列のファイブハンドレッドクラブが千福ニュータウン団地施設管理組合(静岡県裾野市千福が丘)に対し、債務不存在の確認を求めた訴訟の判決が静岡地方裁判所沼津支部3号法廷で2010年11月29日に言い渡された。多くのニュータウン住民が傍聴に集まり、傍聴席は満席となったが、判決内容は住民にとって意外なものであった。
千福ニュータウン団地施設管理組合は千福ニュータウンの住宅や、東急電鉄の別荘地ファイブハンドレッドフォレストやゴルフ場ファイブハンドレッドクラブからの汚水を処理している。この裁判は東急電鉄らの汚水処理の負担金をめぐる争いである(林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(上)」PJニュース2010年11月15日)。
東急電鉄らは2008年8月27日付で汚水処理施設の利用に関する追加加入金・追加分使用料金等の支払い債務が存在しないことの確認を求めて提訴した(平成20年(ワ)第744号、債務不存在確認請求事件)。これに対し、管理組合は東急電鉄に対して約1億3000万、ファイブハンドレッドクラブに対して約2億円の支払いを求めて反訴した(平成22年(ワ)第647号、未払管理費等反訴請求事件)。
両者の対立は汚水処理の負担金の算定基準となる口数の算出方法である。両者の主張は以下のように大きく隔たっている。
ファイブハンドレッドフォレスト内にあるIHI(旧社名:石川島播磨重工業)の保養所・富士山荘について、管理組合は44口、東急電鉄は4口と主張する。同じくファイブハンドレッドフォレスト内の高砂熱学工業の保養所・裾野クラブについて、管理組合は60口、東急電鉄は5口と主張する。
管理組合は保養所が「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」(JIS A 3302)の「ホテル・旅館」に該当すると主張する。これに対し、東急電鉄は「簡易宿泊所・合宿所・ユースホステル・青年の家」に該当すると主張する。「ホテル・旅館」と「簡易宿泊所〜」では汚水量の算定式が異なり、同一規模の建物でも後者の方が口数の負担が圧倒的に少なくて済む。
また、ゴルフ場について、管理組合は187口、ファイブハンドレッドクラブは67口と主張する。管理組合の主張する口数が多い理由はゴルフ場内のレストランやロッジをゴルフ場の水量に加算したためである。さらにゴルフ場にはファイブハンドレッドクラブが明らかにしていない建物があり、図面等で詳細に検討して正確な処理対象人員・計画汚水量を算定する必要があると主張する。
これらの問題に対し、静岡県沼津土木事務所への調査嘱託が行われた。沼津土木事務所は2010年2月16日付で主に以下の内容を回答した。
質問「保養所はJIS A 3302の『ホテル・旅館』になるのか『簡易宿泊所〜』になるのか」
回答「建築計画によりますが、一般的には『ホテル・旅館』に該当します。」
質問「ゴルフ場内のロッジやレストランをゴルフ場の計画汚水量に加算しない場合はあるか」
回答「しない場合はありません。」
管理組合は沼津土木事務所の回答を管理組合の主張を裏付けるものと理解した。管理組合の2月23日付の陳述書では以下のように述べている。
「保養所は『簡易宿泊施設』であるとか、『ロッジ、レストラン』は加算しないとかいう主張自体が、悪意を持った専門家の素人を騙す行為であることが明らかになった。」
また、保養所が「簡易宿泊所〜」に該当しない理論的根拠も以下のように述べる。
「そもそも、フォレスト地域の立派な保養所を『簡易宿泊所』とするには無理がある。簡易宿泊所は、多人数で共用する構造および設備を主とする施設である。よって、共用部分が多く、且つ、法律により各部屋に個別の鍵がかからない構造である。」
実際、ファイブハンドレッドフォレストのウェブページには以下のような仰々しい宣伝文句が並ぶ。そこからは事業主自身がドヤなどの簡易宿泊所と同列の扱いを求めていることが信じられない。
「都会では味わえない本物の自然を満喫できるステータスゾーン」
「新しい日本の経済・社会文化の潮流を支える人々の、知的・動的交流による新しい価値の創出」
宣伝広告では美辞麗句を並べながら、裁判で責任追及される段になると、不動産業者は自ら謳ったセールスポイントを否定し、それに矛盾する主張を行う。これは不動産トラブルの裁判ではお馴染みの光景である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年、18頁)。不動産業者の建物に対するプライドや誇りのなさが、日本の住環境や街づくりの貧困の大きな要因である。
一方、東急電鉄らは3月18日付の「準備書面(8)」において、「JIS A 3302は建築計画や建物の使用状況によって柔軟に解釈適用されるものである」と主張した。
これに対し、管理組合は3月20日付の意見書で改めて保養所を簡易宿泊所とする不合理などを主張した。
「男女が別に宿泊し個人スペースが限られ、鍵もかからないような宿泊施設は保養には向かないと考えており、当然、保養所は簡易宿泊施設には属さない」
その後、東急電鉄らは8月16日付で訴えの変更申立書を提出し、2007年5月27日開催の管理組合の総会決議の無効確認等を求めた。その総会決議では管理組合の規約や使用細則が改正され、「管理組合はすでに口数を有する組合員に対して、上記算定基準により口数の変更を通告することができる。」などと定められた。
東急電鉄らは千福ニュータウン団地施設管理組合が区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)上の団地建物所有者の団体であると主張する。その上で以下のように定めた区分所有法第31条第1項を持ち出す。
「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」
そして上記総会決議は東急電鉄らの承諾なくなされた改正であり、無効であると主張した。
訴訟は9月16日に結審し、判決言い渡しを迎えた。判決言い渡しで栗原洋三裁判官は主文を読み始めたが、途中で中断し、10分間休廷するというアクシデントがあった。法廷再開後に裁判官が「主文に誤りがあることに気付いた」と説明した。
判決は東急電鉄らが訴えの変更で追加した総会決議の無効を確認し、それ以外の両当事者の請求を棄却した。東急電鉄らにとっては一部認容、一部棄却であり、管理組合にとっては全面的な棄却であった。
判決は管理組合が区分所有法上の団地建物所有者の団体であると認定した。その上で「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」について、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該建物所有関係の実態に照らして、その不利益が上記団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」と判示した。
そして東急電鉄らの主張する口数が「JIS規格に反するものではない」ことを理由に総会決議を無効とした。判決はJIS規格の但し書き「ただし、建築物の使用状況により、表が明らかに実情に添わないと考えられる場合には、この算定人員を増減することができる。」などを根拠に、東急電鉄らの主張する口数が「JIS規格に反するものではない」とした。
管理組合が口数の変更を通告できると定めた総会決議が無効とされたことで、その規定に基づいて管理組合が東急電鉄らに請求した追加分使用料金等を請求する根拠がなくなる。このために判決は東急電鉄らの勝訴である。
しかし、管理組合の主張は東急電鉄らが最初から不正な計算で口数を算定していたということである。そして管理組合の算定方法を裏付ける証拠も存在した。そのために管理組合は裁判に自信を持っていた。管理組合の2010年5月30日開催の定期総会議案書は以下のように述べる。
「沼津土木事務所に裁判所から、調査嘱託を出してもらい、検証してもらいました。これで、東急電鉄の嘘が完全に暴かれており、必ず勝ちます。」(4頁)
それが僅か結審1ヶ月前に申し立てられた訴えの変更によって判決の帰趨が定まってしまった。これは管理組合にとって晴天の霹靂であった。管理組合は判決後に静岡県弁護士会沼津支部会館で怒りの記者会見を開いた。
会見で杉谷伸芳理事長は「論理的に成り立っていない」と判決を厳しく批判した。東急電鉄の不正は、規約改正とは無関係である。東急電鉄は少ない費用負担でゴルフ場や別荘地の汚水処理を管理組合に行わせている。その分は住民の負担になる。それを無視する判決に従えば、東急電鉄の企業活動を住民が支えなければならないことになる。控訴せざるを得ない。あまりのショックに声が出ない。社会正義が貫けないことが困る。
住民は東急電鉄によって多大な迷惑を被っている。社会が不正な企業に鉄槌を下さないことは問題である。判決によって失われたものは住民の金だけでない。大企業は何をしても許されるという日本社会の悪いところが出た。判決内容は全く想像もしていなかった。過去には汚水を処理せずに違法に放流していたなどの数々の不正が行われたことも分かっている。証拠も東急電鉄の誤魔化しも明白であり、判決は理解できない。憤りを覚えると述べた。
続いて管理組合代理人の田中晴男弁護士が「規約改正が有効か無効かの問題に矮小化された」と述べた。千福ニュータウン団地施設管理組合にはマンションを想定した区分所有法は適用されないと主張したが、認められなかった。そもそも口数は本来の正しい計算に基づくべきで、規約改正の問題ではないとも主張した。
東急電鉄らが安い利用料で下水を利用していることが問題である。誤った方法で口数を算出することが誤りである。実質的な不利益を被ってきたのは住民であり、「不利益変更禁止」という形式的な論理で扱わないで欲しいと訴えたが、そこまで踏み込む勇気が裁判所にはなかった。田中弁護士は「全体を見た上で判断する」としつつも、今後の選択肢として東急電鉄らの組合員からの除名に言及した。
それを受けて、杉谷理事長も東急電鉄管理区域を管理組合から切り離す意義を補足した。ニュータウンがある千福が丘は市街化区域であり、市街化調整区域の東急電鉄管理区域とは異なる。ニュータウンには公共下水道の話もある。東急電鉄管理区域の切り離しは管理組合にとって避けて通れない課題とする。
最後に杉谷理事長は改めて「東急電鉄が管理組合を欺いたという厳然とした証拠がある。」と強調した。強度が不十分なマンホールなど東急電鉄の手抜き工事の尻拭いで管理組合は3億円くらいの出費がある。「未来永劫、東急電鉄の食い物にはされたくない」と述べた。

東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決は住民自治の脅威

東京急行電鉄(東急電鉄)と東急系列のファイブハンドレッドクラブが千福ニュータウン団地施設管理組合(静岡県裾野市千福が丘)を提訴した訴訟では管理組合の総会決議が無効とされた(林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡(中)」PJニュース2010年12月3日)。
この判決はニュータウン住民によるコミュニティ活性化の努力を無にさせかねないものである。本記事では判決の問題点を論じる。
第一に千福ニュータウン団地施設管理組合が区分所有法第65条の団地建物所有者の団体に該当するかである。区分所有法第65条は以下のように定める。
「一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」
判決は東急電鉄の従業員が管理組合定期総会で以下の発言をした事実を認定しながらも、千福ニュータウン団地施設管理組合が団地建物所有者の団体であると理由も述べずに判示した。
「区分所有法というのは分譲のマンションの正しい運営が出来るようにと言うガイドラインが示されている。この組合の規約のベースにはなっていない。区分所有法と組合の存立の出発点は違う。」(判決書17頁)
しかし、ニュータウンの戸建て住戸と、ゴルフ場や保養所を「一団地内」とまとめることができるか疑問である。区分所有法には団地の定義は存在しない。団地の一般的な意味は以下の通りである。
「一般には、多数の建物が同一区画内に存在する場合に、それらの建物及び敷地を総称するものとして用いられる。」(財団法人マンション管理センター『平成21年度版マンション管理の知識』住宅新報社、2009年)
ニュータウンは裾野市千福が丘にあり、市街化区域である。これに対し、ファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストは裾野市千福にあり、市街化調整区域である。どれほど緩く考えても両者が同一区画内に存在するとは考えられず、「一団地」と見ることには日本語として無理がある。
さらにマンション管理会社大手の合人社計画研究所はウェブサイトで、「区分所有法上の団地」を以下のように定義する。
「当初より、それらの区画に土地(登記簿上、分筆されずに共有部分になっている)と建物が一体的に分譲されており、土地・建物に区分所有登記がなされているものをいいます。」
その上で「区分所有法上の団地」に該当しない場合を以下のように説明する。
「当初は土地(登記簿上分筆され単独所有になっている区画)のみを順次分譲し、その後建物を建てていったような団地は、『区分所有法上の団地』とはなりません。この場合の団地規約は区分所有法上の規約ではなく、民法など諸法令をもとにした約束を明文化したものです。」
これに従えば、順次分譲して戸建て住宅が建てられた千福ニュータウンの団地施設管理組合は、団地建物所有者の団体ではないことになる。判決では区分所有法上の団地であるか否かについて、もっと掘り下げるべきであった。仮に区分所有法上の団地であるとしても、法が想定する典型的な団地とは全く異なるものであることが理解できる。その考察は次に述べる区分所有法の適用にも影響する問題である。
第二に区分所有法第31条第1項の解釈である。そこでは以下のように規定している。
「この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」
この規定に基づいて東急電鉄らは総会決議が、特別の影響を受ける東急電鉄らの承諾を得ずになされたものであり、無効であると主張した。
判決は「特別の影響を及ぼすべきとき」を以下のように定義した。
「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該建物所有関係の実態に照らして、その不利益が上記団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」(判決書18頁)
この理論自体は妥当である。規約改正によって不利益を受ける場合の全てを「特別の影響を及ぼすべきとき」としたならば、どのように不合理な内容でも既得権が守られ、規約改正ができなくなる。その上で判決は「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当すると認定したが、判決の論理に立つならば組合の主張する「規約の設定、変更等の必要性及び合理性」を掘り下げて検討すべきであった。
無効とされた改正規約には目的規定もあった。改正規約第1条は以下のように定める。
「この規約は、千福ニュータウンに於ける団地内居住者間のコミュニケーション促進を図り、安心、安全、快適な住環境の維持向上を図ることを目的とする。」
改正前は以下のように規定されていた。
「この規約は、千福ニュータウン、ファイブハンドレッドクラブおよび500フォレストの団地施設である。」
これを東急電鉄らは「団地施設の利用地区から意図的にファイブハンドレッドクラブ、500フォレストを排除するもの」と主張した(「訴えの変更申立書」4頁)。
しかし、団地の解釈で検討したとおり、そもそも戸建て住宅中心のニュータウンと別の地区にあるゴルフ場や保養所が一緒の団地となること自体が不合理である。不合理な状況を正常化する規約改正は十分に合理性や必要性が認められる。しかも規約改正後も管理組合はファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストを排除していない。一般組合員に負担を転嫁させないことを求めているだけである。
より重要な点は判決が東急電鉄らの請求どおり、改正を丸々無効としたことである。改正規約では「千福ニュータウンに於ける団地内居住者間のコミュニケーション促進を図り、安心、安全、快適な住環境の維持向上を図ること」を目的とした。これによって管理組合は汚水処理を行うだけでなく、コミュニティ活性化や街づくりも目的となった。
実際に管理組合では株式会社千福が丘生活サポートを設立し、火災警報機の販売やリフォームの仲介など住民生活を向上させる様々なサービスを提供している。また、管理組合の事務所は囲碁など様々な同好会活動の拠点となっている。管理組合ではセキュリティ向上のために防犯カメラの設置・運用も検討され、子どもや高齢者向けの行事も企画されている。
管理組合は決められた業務だけ行い、余計な業務を行う余裕があるならば管理費削減によって住民に還元すべきという考え方がある。しかし、その種の小さな政府的な発想を千福ニュータウン団地施設管理組合は明確に否定する。
たとえばケーブルテレビを管理組合で一括して加入すれば各戸の工事費や基本料金を安くできる。これを各戸に任せるならば、各戸は高額な工事費や基本料金を負担しなければならない。消極的な活動は住民全体に不利益をもたらす。全体の利益を考えて積極的な運営を行うことが必要と主張する(千福ニュータウン団地施設管理組合「第20回(平成21年度)定期総会議案書」2頁)。
一方でゴルフ場や保養所を運営する東急電鉄らとしては、企業活動に必要な汚水処理を管理組合に委託しているのであって、低コストで汚水処理ができさえすればいい。つまり、ニュータウン住民らの利益と東急電鉄らの利益は完全に対立する。これはニュータウン住戸と別地域のゴルフ場などが一緒に管理組合を構成するという不自然さに起因する矛盾である。
判決では「組合員は、各1個の議決権を有するものとする。」への規約改正も無効とされた。改正前の規約では議決権は口数に比例して与えられていた。株主総会のイメージである。しかし、組合内に個人用の住宅と、ファイブハンドレッドクラブやファイブハンドレッドフォレストのような大規模施設が混在する場合は不合理である。何故ならば、大規模施設所有者の意向によって組合の意思決定が左右されてしまうことになりかねないためである。
議決権を口数に比例して付与した当初規約には、組織として土地開発者の横暴を許す不合理を内包していた。管理組合では強度不足のマンホールなどの手抜き工事や、東急系列管理会社の違法放流などの杜撰な管理など様々な問題を抱えていた(林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(中)」PJニュース2010年11月16日)。
未処理汚水の違法放流については沼津警察署の指導で、違法放流に使われた配管などが残されている。これらの問題の発覚は遅れたが、その一因が東急電鉄に有利な口数比例の議決権配分であった。そこで組合は土地開発者の横暴を排除し、一般組合員の利益を守り、過去の問題の連鎖を断ち切るため、口数に関わらず、各組合員の議決権を平等に一個とした。
これらの規約改正を無効とする判決は、これまで住民が積み上げてきた組合活動を否定するものである。コミュニティ活性化のための管理組合の活動は目的に反するとされ、管理組合では再び東急電鉄らが大きな発言権を持ってしまう。これは千福ニュータウンにとって住民自治の危機である。
判決は東急電鉄の不利益だけでなく、ニュータウン住民にとっての規約改正の必要性や合理性を正当に評価して比較衡量すべきであった。そもそも千福ニュータウン団地施設管理組合は土地開発者(東急電鉄)が作った覚書によって、土地購入者が組合を作ることを義務付けられ、発足した組合である。土地購入者の自発的な意思によって発足した組合ではない。
当初規約は土地開発者の利益を反映したものであり、その合理性は担保されない。それ故に形式的に東急電鉄の不利益になる変更と判断するのではなく、元々の規定が不合理ではないかという観点での精査が求められる。

違法放流の配管跡

東急電鉄・ファイブハンドレッドに下水処理費用負担を請求

千福ニュータウン団地施設管理組合は東京急行電鉄(東急電鉄)及び東急系列のゴルフ場ファイブハンドレッドクラブとの裁判について2011年10月6日付で最高裁判所に上告受理を申し立てた。この裁判は東急電鉄の別荘地ファイブハンドレッドフォレスト(500フォレスト)やゴルフ場ファイブハンドレッドクラブ(500クラブ)からの汚水処理の負担金をめぐる争いである(林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(上)」PJニュース2010年11月15日)。
管理組合は東急電鉄らに対して未払いとなっている施設大修理充当金及び施設維持管理費の支払いなどを求めている。ファイブハンドレッドフォレストには富士山荘と裾野クラブという建物が建設されている。ゴルフ場内にはクラブハウス、食堂・十九亭、ロッジ等の建物が建設されている。
管理組合への施設維持管理費等の支払い金額は利用口数に応じて算定される。これまで各施設が支払ってきた利用口数は以下の通りである。
・富士山荘:4口
・裾野クラブ:5口
・ファイブハンドレッドクラブ:67口
これに対して管理組合側は以下の値が正しい利用口数であると主張する。
・富士山荘:44口
・裾野クラブ:60口
・ファイブハンドレッドクラブ:187口
利用口数の算出方法は管理組合の使用細則第12条に「建築用途に応じたJIS規格に基づく算定人数により汚水量を算定し、1口あたり1立方メートルで除したものをその口数とする」と定めている。JIS規格は「建築物の用途別によるし(屎)浄化槽の処理対象人員算定基準 JIS-A3302」を指す。このJIS規格では建築用途と床面積から算定表に基づいて処理対象人員が算定され、その処理対象人員を基に計画汚水量が算定される。管理組合の利用口数はJIS規格の表に基づいて算出したものである。
これに対して東急電鉄はJIS規格の但し書き「建築物の使用状況により、表が明らかに実情に添わないと考えられる場合には、この算定人員を増減することができる」を持ち出した。この但し書きを根拠に実際の水道使用量を基に利用口数を決めることがJIS規格に基づく算定方式と主張して現状の口数を是とした。JIS規格の表に基づいて算出された汚水量よりも実際の汚水量の方が下回っているため、実際の汚水量で算出した方が東急電鉄の負担は少なくなる。
対する管理組合は以下のように反論する。東急電鉄らの建物はJIS規格但し書きによって減算できる場合に該当せず、JIS規格但し書きによって減算しうることの立証がないため、原則どおりにJIS規格の表に基づいて利用口数を算定すべきである。
JIS規格但し書きは建物から排出される汚水が浄化槽の処理能力を超えて流入しまう場合に対応するために算定人員を増加できるようにしたものである。原則として算定人員を減少させることは想定していないとJIS規格の運用指針に明記されている。
第一審・静岡地裁判決は東急電鉄らの主張を認め、管理組合が控訴した。一審判決の論理はJIS規格の表を無視するものであり、JIS規格が定められた意味をなくしてしまう。もともとJIS規格の定める計画汚水量と実際の汚水量は意味が異なる。浄化槽設置の指標となる計画汚水量は、建築用途毎に排出される水質や汚れの程度の違いをも考慮して算出された数値である。
浄化槽は排出ピーク時でも処理できるように設計されなければならない。JIS規格の表から算出された計画汚水量は、浄化槽の処理能力を超える汚水が流入することがないように1日の最大汚水量を想定したものである。実際の汚水量から算出するならば不十分であり、代替値にならない。
この点を管理組合は控訴審で強調し、さすがに控訴審判決では但し書きを適用することが東急電鉄ら主張のJIS規格の正しい解釈とはしなかった。ところが、控訴審では「実際の汚水量が判明する以上は、これにより利用口数を算出する方が建物所有者間の公平に資する」と判示し、JIS規格に基づく汚水量の算出そのものを否定した。
これについて管理組合理事長は「裁判所は管理組合の主張を理解したが、理由を別に求めたために非常に問題な判決となった」と分析する。このため、管理組合は上告受理を申し立てた。申し立ての骨子は大きく5点ある。
第一に弁論主義違反である。利用口数算定の基礎となる汚水量をJIS規格に基づいて算出することは東急電鉄らも認めている。JIS規格の解釈で争いになっただけである。ところが、控訴審はJIS規格に基づかずに汚水量を算定した。
第二に理由不備、審理不尽及び経験則違反の違法である。控訴審判決は「実際の汚水量が判明する以上は、これにより利用口数を算出する方が建物所有者間の公平に資する」とするが、何故公平に資するのか証拠に基づいた理由が示されていない。
この点が第一審や控訴審で争点になったこともない。控訴審判決の論理によればJIS規格に基づくことが不公平となるが、これはJIS規格の存在意義を真っ向から否定する主張である。汚水処理を管轄する全国の下水道行政の運営にも深刻な悪影響を及ぼす。
第三に区分所有法違反である。区分所有法第30条第1項は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」とする。利用口数をJIS規格に基づいて算出することは管理組合の規約で定められている。組合員である東急電鉄らも拘束される。
第四に実際の汚水量が判明していないにもかかわらず実際の汚水量が判明しているとした違法である。東急電鉄らは実際の汚水量を提示していない。平成15年から平成20年までの平均汚水量しか示されておらず、実際の汚水量に基づくものではない。
第五に実際の汚水量を東急電鉄が提出した証拠だけから判断している。控訴審判決が根拠とした証拠は株式会社日水コンという会社が作成した報告書(甲第19号証)のみである。甲第19号証は訴訟係属後に東急電鉄らの依頼によって、東急電鉄らの主張を裏付けるために作成された書面である。
この種の書証は特に慎重に内容の真実性を吟味する必要があるが、真実であることを裏付ける事情はない。日水コン自身が、実際に汚水量を測ったというような事情や建物図面や建物内部を自ら検分した等の事情すら立証されていない。
反対に東急電鉄は富士山荘などの建築図面や実際の汚水量を測ったデータを証拠として提出していない。この情報隠しは東急不動産だまし売り裁判や二子玉川ライズ訴訟でも共通する東急の体質である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。

グループぐるみで口数計算を欺いたファイブハンドレッドフォレスト

東急電鉄らが計画汚水量よりも少ない口数しか費用負担していない現状は不公正である。管理組合の下水処理施設はニュータウンとファイブハンドレッドフォレスト、ゴルフ場ファイブハンドレッドクラブの計画汚水量に基づいて建設されている。計画汚水量を処理する処理施設がなければ建築は不可能である。ところが、東急電鉄らは本来支払う分はニュータウン住民が負担することになる。
実際、施設管理費は当初3090円であったが、平成9年7月1日から3200円,平成10年4月1日から4000円へと値上げされた。それでも大規模修繕を賄うだけの積み立てが不足し、さらなる値上げを検討せざるを得ない状況である。管理組合理事長は「東急電鉄が正常に支払ったならば管理費は月額3000円で済む」と指摘する。これが未来永劫続くため、ニュータウン住民の痛手は大きいとする。
管理組合側は東急が自社の下水処理施設負担をニュータウン住民に転嫁させるために最初から住民を欺いてきたと主張する。東急電鉄にとってニュータウン住民は分譲地を購入する顧客であるが、不動産を販売しただけでは飽き足らず、グループぐるみで搾取する。
東急設備株式会社(旧東急環境プラント興業株式会社)は下水処理施設建設時には計画汚水量をJIS規格に基づいて正しく算定していた。ところが、管理組合に提出した富士山荘の口数計算書(乙第25号証)では汚水量を過小に記載した。
東急設備の計算書では汚水量を一人当たり0.03立方メートル(30リットル)とするが、正しくは0.4立方メートル(400リットル)である。小さな浴槽にお湯を張るだけでも200リットルは必要になり、食事をしてトイレや浴槽を使用する建築用途である「ホテル・旅館」で1人が1日に排出する汚水量が30リットルに止まることはあり得ない。
管理組合は東急設備がファイブハンドレッドフォレストの汚水量を極めて低い値に抑えたかった東急電鉄の意向に沿って意図的に作成したと主張する。東急設備は東急のグループ企業である。東急設備の口数計算書作成時の代表取締役・五島哲は、東急の創始者一族であって東急電鉄の代表取締役であった五島昇の長男である。
さらに東急設備代表取締役の五島哲は東急電鉄の取締役も兼ねていた。しかも東急電鉄の担当者が管理組合の理事も兼ねており、理事という立場を利用して東急電鉄の便宜を図り、正しい計算に基づく利用口数の支払いを免れさせていた。
グループぐるみで搾取する東急の体質は東急不動産だまし売り裁判でも共通する(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年、81頁)。東急理不動産だまし売り裁判でもマンションだまし売り被害者に東急リバブルによる買い替えや東急アメニックス(現東急ホームズ)による浄水器など悪徳リフォーム業者並みの次々販売が行われた。
ファイブハンドレッドフォレストなどの汚水量が計画汚水量を大きく下回っている現状は東急電鉄の経営ミスによるところが大きい。富士山荘や裾野クラブはバブル経済崩壊からそれほど経たない頃に、取引先等を接待するための迎賓館または保養所として建設された。
しかし、景気低迷によって過剰な接待が行われることは少なくなり、排出される汚水量も計画よりも少なくなっている。富士山荘や裾野クラブの建設当時からバブルは崩壊しており、接待需要が減少することは十分に予見できることである。東急電鉄は東京都世田谷区でも経済状況を無視して「バブルの遺物」と称され大型再開発「二子玉川ライズ」を進めている。

東京急行電鉄トラブル

林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(上)」PJニュース2010年11月15日
http://www.pjnews.net/news/794/20101114_1
林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(中)」PJニュース2010年11月16日
http://www.pjnews.net/news/794/20101114_2
林田力「東急電鉄がニュータウン管理組合と係争=静岡(下)」PJニュース2010年11月17日
http://www.pjnews.net/news/794/20101114_3
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡(上)」PJニュース2010年12月2日
http://www.pjnews.net/news/794/20101201_4
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡(中)」PJニュース2010年12月3日
http://www.pjnews.net/news/794/20101201_5
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望=静岡(下)」PJニュース2010年12月4日
http://www.pjnews.net/news/794/20101201_6
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決は住民自治の脅威(上)」PJニュース2010年12月8日
http://www.pjnews.net/news/794/20101205_7
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決は住民自治の脅威(中)」PJニュース2010年12月9日
http://www.pjnews.net/news/794/20101205_8
林田力「東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決は住民自治の脅威(下)」PJニュース2010年12月10日
http://www.pjnews.net/news/794/20101205_9