最寄り駅から4割も遠くなったブランズシティ守谷

東急の新築マンションでも広告表記訂正

初出:林田力「東急の新築マンションでも広告表記訂正」オーマイニュース2008年2月1日

東急不動産らが分譲する新築高層マンション・ブランズシティ守谷(茨城県守谷市ひがし野)で、最寄り駅からの広告表記を訂正していた。問題の物件は東急不動産株式会社、東京急行電鉄株式会社、中央商事株式会社が分譲し、東急リバブルが販売を代理する。

ブランズシティ守谷は2009年1月に竣工したが、2010年6月現在でも販売中である。地上30階地下1階建てという戸建て住宅が広がる建設地周辺には不似合いな高層マンションで、景観や住環境を破壊するとして住民反対運動も起こされた(「ブランズシティ守谷の建築確認に審査請求」JANJAN 2007年2月18日)。

ブランズシティ守谷は当初、最寄り駅(守谷駅)までの所要時間を徒歩5分としていたが、2008年1月下旬に徒歩7分に修正した。遅くとも2008年1月20日以降、ブランズシティ守谷の公式ウェブサイトのトップページに以下の「訂正とお詫び」が掲載された。

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駅徒歩分数表示については、これまでペデストリアンデッキエレベーターを起点とし、「駅徒歩5分」の表示をして参りましたが、同施設が首都圏新都市鉄道株式会社(つくばエクスプレス)ではないことが判明したため、守谷駅八坂口を起点として 「駅徒歩7分」とすることと致しました。

お詫びして訂正させて頂きます。
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前述の通り、ブランズシティ守谷の事業主は3社だが、以下の理由から東急不動産主導であると推測される。

・ブランズシティは東急不動産の大規模型マンションのブランド名である。

・ブランズシティ守谷のウェブサイトのドメインmoriya550.comの登録者はTOKYU LAND CORPORATION、即ち東急不動産である。

ブランズシティ守谷の表示修正は不動産業者として信じ難いものである。単なる事務的なミスでは済ませられない、事業者の体質をうかがわせるものである。

第一に最寄り駅までの所要時間は不動産購入を検討する上で重要な要素である。そのような重要な要素に誤表記があるということ自体が問題である。特に守谷を含む「つくばエクスプレス」沿線は「つくばエクスプレス」開通によって通勤通学圏として開発された場所が多く、駅からの距離は生活の利便性を図る上で重要な要素である。

また、ブランズシティ守谷のような超高層大型物件の場合、マンション敷地から自宅玄関まで3〜5分かかる。敷地が広ければ、その分、歩く必要がある上、高層階ならばエレベータの待ち時間がかかる。

第二に修正前後の幅が大き過ぎる。徒歩5分から徒歩7分への変更により、ブランズシティ守谷は最寄り駅から4割も遠くなったことになる。感覚的にも徒歩5分ならば徒歩5分圏内、徒歩7分ならば徒歩10分圏内と別カテゴリーに分類されることが多い。微修正では済まされない相違である。消費者に正確な実態を教えようという意図ではなく、実態とは異なっていても駅からの距離を近く見せたいという狙いがあったのではないかと思われる。

第三に修正時期が遅すぎる。ブランズシティ守谷のモデルルームが開設されたのは2007年9月である。因みに公式ウェブサイトのモデルルーム写真は2007年7月撮影とある。

駅までの所要時間が修正されたのはモデルルーム開設から4ヵ月も経過した後である。修正される前からインターネットの掲示板などでは徒歩5分が実感と相違すると指摘されていた。ブランズシティ守谷の問題を扱ったウェブサイトでは2007年12月8日時点で守谷駅からブランズシティ守谷と他のマンションの写真を並べ、距離感を比較できるページを公開している(「守谷駅から見たブランズシティ守谷 : ブランズシティ守谷ハッピー守谷〜高層新築分譲マンション問題〜」)。http://www.branzcity.com/2007/12/post_10.html

第四に修正理由が問題である。修正理由は「同施設(記者注:ペデストリアンデッキエレベーター)が首都圏新都市鉄道株式会社(つくばエクスプレス)ではないことが判明したため」とする。先ず日本語として意味が通じない。施設が株式会社でないことは当たり前である。修正前はペデストリアンデッキエレベーターを首都圏新都市鉄道株式会社だと思っていた訳ではあるまい。

この文章は、その後、「同施設が首都圏新都市鉄道株式会社(つくばエクスプレス)の所有ではないことが判明したため」に修正された(2007年1月26日確認)。この事実をモデルルーム開設から4ヵ月後になって初めて知ったならば、宅地建物取引業者失格である。

より重要なことはペデストリアンデッキエレベーターの所有者が誰かという形式的な視点で距離の基点を決めている点である。ペデストリアンデッキエレベーターを起点とすると徒歩5分となり、守谷駅八坂口を起点とすると駅徒歩7分になるならば、八坂口からペデストリアンデッキエレベーターまでは徒歩2分の距離があることになる。

現実に駅出口からペデストリアンデッキが伸びているため、それくらいの距離があるが、それを客観的に駅施設と位置付けるのは無理がある。消費者感覚ではペデストリアンデッキの昇り口まで着いたことをもって駅に着いたとは言わない。たとえペデストリアンデッキが首都圏新都市鉄道の所有物であったとしても、ペデストリアンデッキエレベーターを守谷駅の入口とする理由にはならない。

今回の「訂正とお詫び」は裏を返せばペデストリアンデッキが首都圏新都市鉄道の所有物ならばペデストリアンデッキエレベーターまでを守谷駅として所要時間を表示するつもりであることを宣言するものである。消費者の立場に立って正確な情報を提示するのではなく、ブランズシティ守谷を実態以上に良く見せるための論理しかないことを物語る。

事業者側の対応で唯一評価できる点があるとすれば販売開始時期が2008年1月から3月中旬に延期されたことである。販売が開始されなければ申し込めないため、少なくとも誤った情報に基づいて申し込む人はいなくなる。しかし、これは記者の好意的判断に過ぎず、実態は異なるものであった。

記者が2008年1月20日、ブランズシティ守谷マンションギャラリーに電話して確認したところ、販売開始時期の延期は販売価格や手数料の変更によるもので、所要時間の変更が理由で遅れたわけではないと断言された。やはり事業者には消費者に正しい情報に基づいて判断してもらおうとする意識は乏しい。

東急不動産分譲、東急リバブル販売代理の組み合わせでは東京都江東区で分譲したアルス東陽町が、販売時に隣地建て替えなどの不利益事実を説明しなかったために消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき売買契約が取り消された(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。

この件について東急不動産は東急リバブルとともに2007年10月にウェブサイトに以下の「お詫び文」を掲載した。

「弊社が平成15年(2003年)に江東区内で販売致しましたマンションにおきまして、北側隣地の建築計画に関する説明不足の為にご購入者にご迷惑をおかけした件がございました。本件を踏まえまして社内体制を整え、再発防止及びお客様へのより一層のサービス提供を行なってまいる所存でございます」

しかし、ブランズシティ守谷での広告表示を見る限り、質の高いサービス提供を行うつもりがあるのか疑わしい。既に東急リバブルによるマンション媒介広告でも虚偽広告がなされ、公正取引委員会が動いた(東急リバブル、間取り図でも虚偽広告)。ブランズシティ守谷の広告表示からは東急不動産の「お詫び」が内実を全く伴わない表面だけのものに過ぎないものであると感じられる。それを裏付けるかのようにアルス東陽町でもブランズシティ守谷でも、お詫び文は現在、跡形もなく削除されている。

ブランズシティ守谷
ブランズシティ守谷の公式ウェブサイト・トップページ(2007年1月20日)

東急不動産物件で公正競争規約違反表示

ブランズシティ守谷の新築マンション表示誤り

東急電鉄・東急不動産らの分譲マンションが不動産情報サイトで「不動産の表示に関する公正競争規約」(不動産公正競争規約)に違反する形で掲載された。問題の物件はブランズシティ守谷(茨城県守谷市ひがし野)で、サイトはリクルートの運営する不動産・住宅サイトSUUMO(スーモ)である。SUUMOではブランズシティ守谷を「新築マンション」の項目に表示する。しかし、ブランズシティ守谷は新築マンションには該当しない。

不動産公正競争規約第18条では「新築」を「建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう」と定義する。事業者は上記に該当する場合に「新築」という用語を使用できる。ところが、ブランズシティ守谷は2009年1月20日に竣工した。既に竣工から1年以上経過しており、新築マンションではない。

不動産公正競争規約は不動産広告に関する不動産業界の自主規制基準である。不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づき、不動産公正取引協議会連合会が申請し、公正取引委員会が認定している。そのために自主規制基準とはいうものの、公的性格を有する。不動産公正取引協議会連合会は各地区を管轄する公正取引協議会(地区公取協)を会員とする。関東を管轄する地区公取協は首都圏不動産公正取引協議会である。

ブランズシティ守谷を分譲する東急不動産は首都圏不動産公正取引協議会の維持会員(公正競争規約に参加する宅地建物取引業者)である。また、SUUMOを運営するリクルートは首都圏不動産公正取引協議会(広告代理店・サイト運営会社など)の維持会員である。両社とも不動産公正競争規約を率先して遵守しなければならない立場である。

事業主がブランズシティ守谷の全戸完売を発表した時期は2010年7月10日頃である。芸能人(本上まなみ、ユースケ・サンタマリア)を起用するなど積極的な宣伝広告を行ったものの、竣工後1年半も売れ残った。ここには新築マンション市場の冷え込みと物件の不人気がうかがえる。

実際、ブランズシティ守谷は戸建て住宅が広がる郊外住宅地に建設された30階建ての超高層マンションであり、周辺住民から景観破壊などを理由に建設反対運動を起こされた(林田力「ブランズシティ守谷の建築確認に審査請求」JANJAN 2007年2月18日)。

また、ブランズシティ守谷は最寄り駅(守谷駅)までの所要時間を実際よりも短く表示していた(林田力「広告表記を訂正していたブランズシティ守谷」JanJanBlog 2010年6月26日)。これは消費者を欺く表示である。今回の新築に該当しないのに「新築マンション」の項目で表示する姑息さも売り手の不誠実さを印象付ける。
http://www.janjanblog.com/archives/7197

マンション建設反対運動では「地域住民を無視して建設を強行する不動産業者が消費者に誠実な筈がない」と指摘される。この法則はブランズシティ守谷にも適用できる。

ブランズシティ守谷
ブランズシティ守谷を新築マンションとして掲載(撮影日:2010年7月13日)

ブランズシティ守谷の建築確認に審査請求

茨城県守谷市ひがし野の住民3名が2007年12月10日、茨城県建築審査会に対し、建築確認の取消しを求めて審査請求を行った。建築確認の審査請求では建築基準法に関するものが多いが、本件では都市計画法違反を理由とする点で注目される。
問題の建築確認は東急不動産株式会社、東急電鉄株式会社、中央商事が建築主として守谷市ひがし野に建設中の高層マンション「ブランズシティ守谷」(鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、地上30階地下1階建)に対するものである。指定検査機関であるハウスプラス住宅保証株式会社が2007年6月18日付で建築確認済証を交付した(第HPA-07-01599-1号)。尚、確認済証交付日にある通り、この建築確認は耐震強度偽装事件を契機とした改正建築基準法施行前になされたものであり、建築基準法は旧法が適用される。
審査請求人らはブランズシティ守谷の建設は茨城県知事から開発許可を得ておらず、都市計画法第29条第1項に違反すると主張する。建築確認は建築計画が「建築基準関係規定」に適合することを確認する制度である(建築基準法第6条第1号)。この「建築基準関係規定」は建築基準法に限らず、建築基準法施行令第9条で列挙される法律も含まれ、都市計画法の条文も入る(第12項)。即ち都市計画法違反の状態で建築確認済証を交付したことは「建築基準関係規定」に適合していない違法があるとするのが審査請求人らの論理構成である。
都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的」とする法律である(第1条)。無秩序な開発を規制するために、都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者に都道府県知事から開発許可を受けることを義務付けている(第29条)。開発行為とは「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義されている(第4条第12項)。
審査請求人らは、ブランズシティ守谷は都市計画法施行令第19条で定める規模以上であり、それ以外に開発許可の必要となる条件が規定されていないため、ブランズシティ守谷建設も当然、開発許可が必要な開発行為になると主張する。ブランズシティ守谷建設で開発許可を得ていないことは事実であるため、開発許可を得る必要があるか否かが争点となる。
審査請求は受理されたばかりのため、処分庁側の反論は不明だが、審査請求以前に審査請求人らが問い合わせた際の茨城県の回答書からうかがうことはできる。そこでは開発許可が必要な開発行為を建築物等の建設を目的で行う土地の区画形質の変更と説明する。そしてブランズシティ守谷建設地の地目は宅地であり、マンション建設に際し一定規模の盛土・切土を伴う宅地造成工事を行わないことをもって開発許可不要と結論付ける。
これに対し、審査請求人らは審査請求書に上記茨城県回答を引用した上で以下のように再反論する。そもそも都市計画法に根拠のない制限を付して開発許可不要とすること自体が違法である。加えて550戸の高層マンション建設の影響(排水、電力供給、道路、学校の収容定員)で土地の性格が大きく変容することが容易に想定できる。それらは都市計画法第33条で規定する開発許可の基準に関係する内容である。従って開発許可を行わないことは違法である、と。
審査請求書には表れていないが、周辺住民にとってブランズシティ守谷は地目「宅地」にマンションが建てられるという形式論では納得できない背景がある。ブランズシティ守谷建設地は近隣商業地域とされ、元々、スーパーマーケットが出店される予定であった。ところが採算性から出店計画が白紙となり、東急不動産らが購入してブランズシティ守谷建設となってしまった。スーパー出店を想定して、建設地周辺のみ建築規制の緩い近隣商業地域とされていたのに、建築規制の緩さを逆手にとって高層マンションが建設されようとしている。周辺住民にとって土地の性格が大きく変容することは間違いない。
近隣に大きな影響を及ぼす大規模マンションを開発許可なしで建設することが許されるのか、茨城県審査会の判断が注目される。
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた著者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した闘いの記録(ロゴス社、2009年7月1日発行)。
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