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景住ネット首都圏交流会で東急不動産だまし売り裁判を報告

初出:林田力「「景住ネット」第4回首都圏交流会、浅草で開催される」JANJAN 2010年1月25日

景観と住環境を考える全国ネットワーク・東京準備会が主催する第3回首都圏交流会が2009年11月24日に中野区立商工会館(東京都)で開催された。末席を汚した私は自らの新築マンション購入トラブル(東急不動産だまし売り裁判)を報告した。

景観と住環境を考える全国ネットワーク(景住ネット)は地域の景観と住環境を乱開発から守り、豊かな生活環境を創造するために各地の住民運動や専門家が結集して2008年に結成された市民団体である。首都圏交流会は東京の首都圏の会員を中心とする建築・不動産紛争に携わる団体・個人の交流の場である。今回は第1部を活動報告会、第2部を地域ネットワークである首都圏ネットワーク立ち上げ準備会議とした。

近年の規制緩和による乱開発は経済の中心地である首都・東京において最も激しいものの、事業があまりにも大規模であることなどから、市民運動は郊外の方が先行している面があった。この意味で地域の生活に根ざすと共に全国にも情報を発信できる首都圏の地域ネットワークの存在意義は極めて大きい(日置雅晴・景住ネット会長)。

活動報告会では8団体・個人が報告した。文京区の春日・後楽園駅前地区市街地再開発や世田谷区の二子玉川東地区再開発、浅草寺が原告となり大きく報道された西浅草3丁目計画や中野区の警察大学校跡地再開発など都内各地の問題が報告された。

私が報告した東急不動産だまし売り裁判は、東急不動産(販売代理:東急リバブル)が不利益事実(隣地建て替えなど)を隠してマンションをだまし売りし、真相を知った購入者である私が裁判で売買代金を取り戻した事件である(参照「『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』」)。
http://www.book.janjan.jp/0907/0907030264/1.php

私は東急不動産だまし売り裁判とマンション建設反対運動の共通点として、近隣住民に対する不動産会社の約束(隣地建て替えを購入検討者に説明する)違反が発端であること、近隣対策屋が暗躍したことを挙げた。その上で近隣対策屋を相手とせずに東急不動産に内容証明郵便で直接抗議することやインターネット上で嫌がらせを公開することが不動産業者への対抗手段となると指摘した。

参加者の討議で関心を集めた事項の一つに総合設計制度がある。総合設計制度は公開空地を設けることを条件に容積率や高さ制限を緩和する制度である。簡略化すれば小さな空地を作ることで、本来は建てられない高層建築を可能になる。この総合設計制度に対しては以下のような批判が出された。
・高層ビルの社会的悪影響(景観破壊、ビル風、人口増加など)を考慮せず、公開空地だけで高層建築が認められてしまう。
・総合設計制度は都市計画と機能的には変わらないにもかかわらず、都市計画法の手続を踏まずに建築基準法の範囲でできてしまう。
・建物に囲まれた中庭に過ぎず、公開された空地とは言えないものまでが公開空地として総合設計制度の適用を受ける。典型例は東急不動産らの分譲マンション・鷺沼ヴァンガートンヒルズ(川崎市)で、激しい住民反対運動が起きた上に土壌汚染が発覚して計画中止となった。
・公開空地は不特定多数の人が敷地内に入り込むことができるために治安を悪化させかねない。高層建築だけでなく、公開空地自体が周辺住民にとってデメリットである。

交流会で出された批判を踏まえ、首都圏ネットワークでは総合設計制度を勉強会のテーマの1つとすることになった。

景住ネット説明資料


景住ネット第4回首都圏交流会が浅草で開催

景観と住環境ネットワーク(景住ネット)第4回首都圏交流会が2010年1月22日、総合設計制度をテーマとして東京都台東区の生涯学習センターで開催された。

会場所在地である台東区西浅草は藤和不動産・三菱倉庫・三菱地所の超高層マンション「西浅草3丁目計画」の舞台である。この計画に対しては、周辺住民と浅草寺が総合設計制度の許可取り消しを求めて東京都を提訴した。そのために交流会では地元住民の参加者も多かった。また、事前に新聞で紹介されてために遠方からの参加者も多かった。景住ネット会員外の参加者の多い、熱気のある集会となった。

集会では最初に西浅草3丁目計画の取消訴訟の原告の一人である白田信重氏が西浅草3丁目計画の問題点を説明した。台東区都市計画マスタープランでは中低層(3〜5階)に誘導されることになっている計画地に37階建ての超高層建築を許可する矛盾を主張した。

総合設計制度により、本来の容積率などの規制では建てられない巨大なマンションが建てられてしまう。空地を作ることで容積率などを緩和するのが総合設計制度であるが、西浅草3丁目計画は既存の空地である金竜公園を日影にしてしまい、むしろ市街地環境を悪化させる。

最後に浅草には既に浅草寺からの景観を遮る浅草ビューホテルが存在するが、景観は長期的に形成されるものであると指摘した。ビューホテルは高層建築の景観への影響という意識が低かった時代に建てられたものである。ビューホテルの築年数は古く、建て替えとなれば新たな議論が生じる。これに対し、建てられたら数10年は永続してしまう西浅草3丁目計画は浅草寺からの長期的な景観形成を台無しにすると力説した。

続いて東京都世田谷区用賀1丁目の桜並木周辺の環境を守る会の山本氏が小田急不動産のマンション建設計画を阻止した体験を語った。通常の反対運動とは異なるユニークな点があった。

第1に入会金である。入会して口だけ出して運営を引っ掻き回すという人を排除するために、入会金を高額にして軽い気持ちでは入会できないようにした。協力は広く募りつつも、会自体は少数精鋭とした。

第2に専門家任せにしないことである。多くの専門家から意見を聴いたが、専門家任せにせず、内容を精査して取捨選択した。

第3に運動方針の絞り込みである。総合設計制度や地下室マンションなど制度論的な批判も可能な計画であったが、問題の計画が周辺環境に合わないことに特化した。
最終的に小田急不動産は土地を売却して撤退したという。

続いて都市計画コンサルタントの稲垣道子氏が総合設計制度について解説した。総合設計制度は空地を確保して市街地環境を整備させるアメとして容積率などの緩和を認めるもものである。ところが、制度趣旨が変質し、都心居住の推進など様々な目的に使われ出した。

また、許可を出す建設審査会にも問題がある。委員選任の公正性の問題(「開発審査会のあり方を考えるシンポジウム」参照)に加え、審査会で全く発言しない委員もいる。行政OBが中心となる点も問題だが、行政OBがいなければ誰も発言しないという現実もある。

また、許可という制度は極めて運用が難しい。許可すべきか否かを判断するための機械的に適用する基準に合いさえすれば許可となりやすい点が問題である。基準を作れば、それさえ満たせばよい、という発想に陥りやすい。細かい基準を決めれば決めるほど、抜け道もできてしまう。必要条件に過ぎないものが、必要十分条件と受けとめられやすい。
質疑応答では参加者の幅広さを反映して通常の集会とは異なった発言もなされた。たとえば阿佐ヶ谷住宅建て替え問題で周辺住民が行政訴訟を起こして困っている住民からの発言がなされた。高層建築による住環境破壊を阻止する運動にとっては反対の立場にあたるような人も参加した点に建築不動産紛争の複雑さと景住ネットの存在感の大きさを感じた。

また、台東区のまちづくり大学「下町塾」に参加したという住民から「西浅草3丁目計画の取消訴訟は、どうせ敗訴するのではないか」「身近な場所で問題が起きてから反対運動をするのではなく、区で制度を策定する段階から参加すべきではないか」との意見が出された。

これに対して、白田氏は西浅草の訴訟はマスタープランと総合設計制度の整合性や宗教的景観など先例がない分野であり、新たな先例を作る裁判であると反論した。また、「身近な場所で問題が起きてから反対運動をするのではない」との批判には、白田氏自身は下町塾の一期生で前々から街づくりに問題意識を有していたと答えた。その上で自分の身に降りかかってきて分かることもあると主張した。

参加団体からは港区の小山町3・5地区再開発、渋谷区の原宿団地建替え、世田谷区の二子玉川東第2地区再開発、千代田区の富士見2丁目10番地区再開発の問題を報告した。

最後に景住ネットの日置雅晴代表が閉会の挨拶をした。ここ数年、住環境を守る運動の盛り上がりを感じている。景住ネットは困っている人を一方的に助ける組織ではなく、一緒に戦う組織である。皆が戦うことで世の中を変えていきたいと述べた。

関連記事:東急不動産だまし売り裁判を報告・景観と住環境を考える全国ネットワークで
http://www.news.janjan.jp/living/0911/0911253617/1.php
開発審査会のあり方を考えるシンポジウム
http://www.janjannews.jp/archives/2250396.html