東急不動産のインドネシア進出は日本ブランドを失墜

林田力

東急不動産のインドネシア進出は日本ブランドを失墜させる懸念がある。東急不動産はインドネシア共和国で分譲マンション事業を進めると報道された(「東急不動産、日本ブランドの分譲でアジアに展開」ケンプラッツ2015/03/26)。

「日本ブランドに対する信頼感やアフターサービスの魅力などを武器に、分譲事業を展開」と自社の技術力やサービスではなく、日本ブランドに寄りかかった展開を狙っている。売ったら売りっぱなしの東急不動産では、家電製品などで培われた日本ブランドを失墜させ、反日感情を高めかねない。日本ブランドには魅力があるが、日本の建築不動産業界が評価されたものではない。

東急不動産が日本ブランドをセールスポイントにすることは、日本ブランドにフリーライドすることである。東急不動産は東京都江東区のアルス東陽町で洲崎川緑道公園、世田谷区の二子玉川ライズで多摩川の景観をセールスポイントにするなど、地域の魅力にフリーライドしている。

東急不動産は2012年に同社グループ100%出資の現地法人PT.TOKYU LAND INDONESIA(トウキュウ・ランド・インドネシア)を設立した。ジャカルタ郊外のブミ・スルポン・ダマイ地区の「(仮称)BSDプロジェクト」、南ジャカルタ市の「(仮称)Simatupang(シマトゥパン)プロジェクト」を計画する。この事業はインドネシアにおいて日系企業だけで企画や設計などの開発を手掛ける初めてのケースという。地域企業と共存しない東急不動産のハイエナ体質が現れている。

報道は「投資が短期に回収できるといった利点から、インドネシアを含め、海外事業は当面、分譲住宅事業が中心になる見込み」とする。ここにも売ったら売りっぱなしの東急不動産の企業体質が現れている。東急不動産は東急不動産だまし売り裁判など各地で「不都合な情報を隠した」と不信感を持たれている(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。東急不動産(Tokyu Land Corporation)は米国グアムでも住宅購入者から欠陥住宅訴訟を起こされている。ボール対東急不動産事件(Ball v. Tokyu Land Corporation)である(林田力『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』「東急不動産はグアムでも欠陥住宅問題」)。

東急不動産のインドネシア進出批判

東急不動産がインドネシアのジャカルタで新築マンションの分譲事業に進出することに批判の声が出ている。アジアにおいてインドネシアを最重要市場と位置付ける(「東急不動産、日本ブランドの分譲でアジアに展開」ケンプラッツ2015/03/26)。その戦略の合理性は疑問視される。

インドネシアには東ティモールやアチェ独立運動の弾圧など人権面でも負のイメージが濃厚である。インドネシアが東ティモールを無理やり併合し、人権を侵害したことを忘れてはならない。インドネシアの東ティモール侵略は人民にとってマイナスにこそなれ、プラスになることはなかった。

また、インドネシアは韓国や中国と異なり、日本の戦争犯罪に厳しくない。これは一見すると日本にとって好都合に思える。しかし過去を直視し、抗議しない国が真の意味で尊敬されることはない。

「インドネシアではかつて、スハルト時代、国家の機構が上から下まで腐ってしまい、国軍は国民の軍隊というより国民を敵とする軍隊となって、アチェでも東ティモールでもイリアン・ジャヤでも、またその他の地域でも、実に多くの人を殺した。それがどういう意味をもつか。それを理解するには、わたしがアチェ人で、わたしの子供がある日、何の理由もなしに軍に殺された、と想像してみればよい。そのときわたしはなおインドネシア共和国をわたしの国家と思うだろうか。思うわけがない。つまり、ここで『国家の正統性』の問題として問われているのは、ごく当たり前の正義の問題である。」(平成17年度財務省委嘱研究会「インドネシアの政治・経済情勢の変化に沿った我が国の取組」財団法人国際金融情報センター、2006年1月、94頁)

インドネシアのカントリーリスクの高さもビジネス的に問題になる。インドネシアはアジア太平洋諸国の中でカントリーリスクが最も高い。これは香港に本拠を置く政治経済リスクコンサルタンシー(PERC)がアジア12カ国と豪、米国の合計14カ国を対象とした調査結果である(「カントリーリスク評価でシンガポールはアジア2位 PERC調査」日刊ベリタ2007年2月27日)。

他のASEAN諸国(タイやベトナム)に比べ、インドネシアはカントリーリスクが異常に高く、生産コストも上昇している。外国投資家が他の国に逃避することは当然である。現実に日本資本も「カントリー・リスクの高まりを背景に中国やタイ、ベトナムへ投資のシフトを始めた」と指摘される(「テンポ誌、転機の日イ関係を総括 リスクの高さが問題」じゃかるた新聞2001年12月31日)。

カントリーリスクとは、その国固有の事情により、資金が回収不能となる危険性を指す。戦争危険(戦争、革命、暴動、内乱等)、収用危険、送金危険が代表的である。カントリーリスクの評価基準には政治的安定度、政府の政策の質、金融システム、司法制度、行政効率などがある。味の素インドネシア追放事件はカントリーリスクを象徴する事件である。

インドネシアは腐敗国家の常連である。貧困問題は依然として深刻であり、格差是正が重要な政治課題となっている。また、失業率も高く、国内には約2100万人以上の失業者(完全失業及び求職中の者の総計)が存在するとされる。

治安面でもバリ島爆弾事件(2002年10月)、ジャカルタにおけるマリオット・ホテル爆弾事件(2003年8月)を始めとする数々のテロ事件に見舞われてきた。今後もインドネシアにおいて各地でテロ活動が行われる可能性は否定できない。インドネシアへの貿易や投資は他の国々以上に注意を要する。消極的な姿勢が上策である。

「中国への直接投資は高水準を維持する一方、ASEAN諸国への直接投資は大きく減少している。ASEAN諸国の中でも、特にインドネシアへの直接投資は大きく減少し、近年においては撤退額が新規投資額を上回っている。」(浦田秀次郎「インドネシアにおける直接投資の大幅な減少と深刻化する投資環境」『インドネシアの将来展望と日本の援助政策』財団法人国際金融センター、2004年、1頁)

「インドネシアはカントリーリスクが依然として高く、金融信用に問題があり、そのため投資を惹き付けるのも難しい。」(第5回アジアダイナミズム研究会「インドネシアの投資環境と経済協力のあり方」『平成14 年度アジア産業基盤強化等事業(東アジアにおける経済連携強化に向けた経済協力の在り方についての調査)』財団法人国際金融センター、2003年、31頁)。

林田力

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