林田力 太平洋クラブと東急不動産だまし売り裁判

大手ゴルフ場運営会社「太平洋クラブ」(東京都港区、桐明幸弘社長)の倒産に対し、太平洋クラブを実質支配していた東急不動産にゴルフ場会員から怒りの声が出ている。自社の金儲けしか考えない東急不動産の体質は東急不動産だまし売り裁判や二子玉川ライズ問題と共通する(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。『ゴルフタイムス』では「卑劣極まる東急不動産は、刑事告発される運命にある」とまで指摘する。

東急不動産には様々な批判が寄せられる。第一に東急不動産のだまし売り体質である。もともと東急不動産のゴルフ場運営は評判が悪い。『東急不動産だまし売り裁判』に対しては筑波東急ゴルフクラブ会員からの書評「東急不動産の実像を知る!」も寄せられている。書評者は『東急不動産だまし売り裁判』を「当事者だけに本当によく書けている」と評価する。東急不動産だまし売り裁判と似たことが筑波東急ゴルフクラブでも行われていると告発する。

会員を集めるだけ集めて、会員特典を次々と引き下げていった。具体的にはツーサムプレーの募集終了直後の廃止、デフレ下の年会費の値上げ、ハーヴェスト宿泊優待券の1泊3800円から約1万円への大幅引き上げなどである。東急側の言い分は「太平洋ゴルフクラブとの提携を行い平日の優待を増やした」であるが、休日しか行けない会社員にはデメリットでしかない。

書評者は妻と一緒にゴルフする約束で会員権を購入したものの、購入直後にツーサムプレーが廃止され、妻のゴルフデビューは露と消えてしまった。妻にはさんざん嫌味を言われ、本当に悲しいと嘆いている。太平洋クラブの問題も「優良ゴルフ場を切り離し、預託金会員に尻ぬぐいをさせる詐欺まがいの手口」である(「東急不動産の汚点『太平洋クラブ』」FACTA 2012年4月号)。

第二に東急不動産の経営主体隠しである。東急不動産が親会社であることは会員に知られておらず、会員のほとんどは三井住友銀行が親会社であると信頼していた。太平洋クラブは1971年に設立された名門で、「三井住友VISAマスターズ」が開催される「御殿場コース」や札幌、軽井沢など全国に多くのゴルフ場を抱えている。

実は三井住友は東急不動産に株と債権を譲渡済みで、さらに御殿場コースなど優良コースは太平洋アリエスなどの子会社に分離していた。「東急不動産が設立した太平洋ホールディングス合同会社には、太平洋クラブの株式をたった1円で譲渡したとされている。」(平成24年(再)第7号民事再生手続申立事件「要望書」)。

東急不動産は自社が実質支配している事実を隠し、ペーパーカンパニーにすぎない太平洋ホールディングスを前面に押し出した。太平洋クラブ関係者は「業績のよくない太平洋クラブを連結決算から外し、密かに実質支配した」と説明する(「東急不動産の汚点『太平洋クラブ』」FACTA 2012年4月号)。

一般には2007年3月に太平洋クラブが東急不動産と業務提携したという形でしか告知されていなかった。東急不動産への譲渡を倒産後に初めて知らされた会員も多い。悪評の多い東急不動産が親会社であると知っていたならば会員権を購入しなかった、会員権を売却していた会員も少なくない。『ゴルフタイムス』は「会員騙しのテクニックの初歩」と指摘する。オーナー交代を会員に告知しなかったことは債権者に対する告知義務違反と批判される。

第三に現経営陣に甘い民事再生法を利用したことの問題である。太平洋クラブと子会社(太平洋ゴルフサービス、太平洋アリエス、太平洋ヒルクレスト、太平洋ティ・ケー・エス、太平洋トリアス、太平洋ゴルフスクエア)計7社は2012年1月23日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債総額は総計約1260億円で、その中には保証債務380億円が含まれる。申請代理人は片山英二弁護士(阿部・井窪・片山法律事務所)である。

この民事再生法適用申請について「東急不動産は外資と組み、民再を悪用して借金棒引きを狙っている」と見られている。そのために会員から東急不動産に対して「裏切り者!」「外資以上に悪質!」と怨嗟の声も上がっている(山岡俊介「『太平洋クラブ』民再申請 東急不動産に対し、会員から怒りの声」アクセスジャーナル2012年1月27日)。

第四に2月に来る預託金償還期を目前にして民事再生法適用を申請した悪質さである。太平洋クラブの預託金会員は約1万3000名で、預託金総額約685億円である。無預託金会員(預託金のない入会金だけの会員)は約7000名である。預託金償還と倒産の関係は以下のように分析されている。

「2月以降に500億円とも囁かれる預託金償還期限が迫り、資金繰りに窮した経営陣が、裁判所に駆け込んだにすぎない。」(「東急不動産の汚点『太平洋クラブ』」FACTA 2012年4月号)

「東日本震災でゴルフ界に荒波が吹くと、太平洋の償還問題に対処しきれずに、自分自身(引用者注:東急不動産)も危険を感じ、倫理道徳を無視して、逃避劇を演じた。つまり、700億円の預託金の保証ができなくなった太平洋クラブの経営を牛耳るうまみがなくなったからである。」(『ゴルフタイムス』)

太平洋クラブ被害者の会は太平洋クラブ経営陣が東急不動産株式会社の利権のために会員集めを行い、挙げ句の果てに無責任にも民事再生の申し立てに及んだと批判する(平成24年(再)第7号民事再生手続申立事件「要望書」)。

第五に会員向け説明会を1月30日月曜日という月末の平日午後13時半に設定したことである。なるべく会員に来てほしくないという東急不動産の逃げの姿勢が浮かび上がる。それでも説明会は会場の渋谷公会堂1・2階総座席数2084席が満席となり、立ち見が出るほどだった。当然のことながら、東急不動産への反発も強く、怒号も飛び交った。

東急不動産だまし売り裁判においても東急不動産は居留守やたらい回しで逃げ続けた。「東急不動産の責任感の欠如」との表現もある(「どうなる?太平洋クラブ、そして、三井住友VISAT.Masters」ゴルフタイムスの世界2012年6月14日)。

第六に会員無視でゴルフ場運営最大手「アコーディア・ゴルフ」(東京都渋谷区)とスポンサー契約を締結していたことである。説明会でもスポンサー契約に対する批判の声が大きかった(山岡俊介「『太平洋クラブ』民再申請 1・30会員向け説明会は「東急不動産」に怒声」アクセスジャーナル2012年2月10日)。

インターネット掲示板では「太平洋クラブを返してくださいよ〜」と題して「額面ちゃらにしたうえにアコーディアにあげちゃうなんて個人に対して二重の苦しみを与えるですか」と批判された。この投稿に対して「本当に東急不動産はヒドイ会社」と同意する意見も投稿された。

最初からアコーディアをスポンサーに決めていたかのような手際の良さに対し、会員らは会員無視の計画倒産」と、怒りの声を上げている(伊藤博敏「6・28株主総会が最終ラウンド!  週刊誌を巻き込むスキャンダル合戦に大物フィクサーまで登場する日本最大のゴルフ場運営会社「アコーディア・ゴルフ」委任状争奪戦の行方」現代ビジネス2012年6月7日)。

PGMの神田有宏社長はアコーディアへの売却の利益を「東急不動産が持っていってしまい、メンバーには還元されてない」と指摘する(「“アコーディア問題”を、最大ライバルのPGM社長に直撃。コンプラ問題は、統合の行方は、太平洋クラブ問題は……キーマンが激白」東洋経済オンライン2012年5月23日)。これは東急不動産だまし売り裁判と共通する搾取の構造である。

会員らは「太平洋クラブ被害者の会」「太平洋クラブ会員の権利を守る会」などの被害者団体を結成した。被害者の会では渋谷で東急不動産への抗議デモ行進も企画しているという(太平洋クラブ被害者の会オフィシャルサイト「被害者の会からのご報告」2012年5月30日)。

東急不動産の汚点「太平洋クラブ」
http://facta.co.jp/article/201204037.html
太平洋クラブ会員の権利を守る会
http://taiheiyomamoru.blog.fc2.com/
太平洋クラブ被害者の会のブログ
http://ameblo.jp/taiheiyo-higai/
太平洋クラブ被害者の会 神奈川支部
http://ameblo.jp/taiheiyouclubsos
太平洋クラブ会員の権利を守る会 世話人有志のブログ
http://ameblo.jp/taiheiyou-mamoru-yushi/
ゴルフタイムス社
http://www.thegolftimes.jp

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東急不動産係長が顧客に脅迫電話で逮捕、犯罪者に
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた著者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した闘いの記録(ロゴス社、2009年7月1日発行)。
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