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林田力:ブランズ文京小石川Park Frontで近隣住民が工事被害

東急不動産の新築分譲マンション・ブランズ文京小石川Park Front(パークフロント)の建設工事(ブランズ小石川一丁目プロジェクト新築工事)で、近隣住民が工事被害を受けている。近隣住民は東急不動産とピーエス三菱が工事を進めることばかりを主張し、住民の意見に耳を貸さないと憤る。
ブランズ文京小石川Park Frontは東京都文京区小石川1丁目で建設中の地上9階建てマンションである。施工はピーエス三菱東京支店である。建設地周辺には黄色に黒字で「断固建設反対」と書かれた旗が見られる。

建設地北側のブランズ文京小石川パークフロント建設反対の旗
建設地西側のブランズ文京小石川パークフロント建設反対の旗
ブランズ文京小石川パークフロント建設反対の旗

しかし、住民は最初から建設に反対していたわけではない。住民は2009年に「ここの地盤は、地名(小石川)の由来通り、とても軟弱で水がたくさんでる場所です。建設工事には十分注意して、行ってください。」と東急不動産に伝えた上で建設に合意したという。
ところが、2010年2月に開始した工事は酷いものであった。絶えず振動(震度1〜3程度)、騒音、粉塵に悩まされた。重機が動く度に家が揺れる状態であった。その上、家屋を破壊され、区道には亀裂が入り、公園にも被害が及ぶ事態になった。
ある住民は体調を崩して病院通いを余儀なくされたほどであった。食事が普段の半分ほどの量で食べられなくなり、苦痛と気持ち悪さを覚える。冷や汗が止まらなくなり、手の震えが続くこともあった。

隣地住宅を囲むように建設されるブランズ文京小石川パークフロント
隣地住宅を囲むように建設されるブランズ文京小石川パークフロント

遅くとも3月中旬に住民が建設現場北側の区道に亀裂が入っていることを確認した。事業者側は亀裂の補修を繰り返しているが、補修の上から亀裂が広がってしまう状態である。また、同時期に現場西側の塀が傾いていることを確認した。
4月にはマンションの捨てコンクリート(捨てコン)の打設や根切り工事が完了したが、今度は現場東側の塀が傾いていることを確認した。加えて家屋の土間等に多数の亀裂、土が流れた形跡を発見した。また、現場北側の区道の先の家屋にも亀裂が入るなどの被害を受けた。
周辺の家屋は小規模の地震でも大きな揺れを感じるようになった。ある住民は9月27日2時55分の千葉県北西部を震源とする地震で飛び起きた。東京は震度1または震度2であったが、住民は震度3に感じた。「家の下が緩んでいるせいか」と不安になったという。

住民は4月4日にピーエス三菱の現場作業所に電話したが、日曜日であったためか応答がなかった。翌5日に改めて連絡したが、原因の究明もせずに漫然と工事を続けるだけであった。そこで4月8日に東急不動産及びピーエス三菱の代表取締役宛てに工事の即時中止を申し入れた。
4月10日に中間家屋調査が行われ、ブロック塀の角の部分が離れてしまったことなどを確認した。事業者側は原因として以下の2点を説明したという。
第一に山留め杭の計画変位幅以上の変位である。地盤調査から、現地には地上面から3m程度の腐植土層が存在することが判明している。腐植土層は枯れ草や水性植物などの有機物が分解して土壌と混じり合ってできたもので、比較的軟弱な地層である。ピーエス三菱は腐植土層を前提として施工計画を立てたと主張する。しかし、当該施工部分の地層の強度が調査結果から予測される強度以下であったため、施工計画時の予測変位幅を上回る変位が発生したとする。
第二に降雨による裏込め土の圧密化である。ブランズ文京小石川の工事では山留めの工法として親杭横矢板工法を採用する。この工法は掘削前にH鋼を地中に打設し、掘削進行にともない、隣り合ったH鋼の間に板を挿入するものである。板の裏側の地盤を切削した上で、板を挿入し、切削した地盤面との隙間に土壌を充填する。この土壌が裏込め土である。ところが、降雨によって裏込め土の圧密化が発生し、それに伴って周辺土壌の移動や地盤面の耐力低下が発生したとする。
住民は軟弱地盤で、水脈が走っているほど地下水が豊富な建設地で親杭横矢板工法を採用したことを問題視する。このような土地では鋼矢板工法(シートパイル工法)が通常であると主張する。
その後、現場西側の木製の塀の傾きについても、住民からの連絡により、4月16日に家屋調査が行われた。一方、東側のブロック塀の亀裂も拡大・増加を続け、4月29日には再度の中間家屋調査が実施された。
住民は原因究明や対処方法、被害箇所の回復について東急不動産・ピーエス三菱と話し合いを行ったが、納得のいく説明や回答は得られなかった。しかも、事業者側は住民の同意なしで工事を再開してしまった。

住民はマンション建設による地下水への悪影響も懸念する。地盤沈下などの原因になるためである。少なくとも5月14日と6月23日には住民によって工事現場に水が溜まっている状態であることが確認された。
8月16日には3回目の中間家屋調査が実施された。クラックの発生や複数個所での亀裂の拡大などを確認した。8月24日頃には建設現場から水抜きが行われた。その際に近隣住民は複数個所で捨てコンが割れていることを確認した。また、地下水の湧出も止まっていなかった。
実際、9月2日の建設現場では8月24日よりも水が溜まっていた。住民は捨てコンのひび割れも随所で確認している。この日も水抜きが行われたが、翌3日には水位が上がっていた。2010年夏は記録的な猛暑であった。それでも建設現場に染み出た地下水が乾燥することはなかった。住民は地下水が地表に近いところから、染み出ていることを観察している。
事業者側は遅くとも9月6日に止水工事の終了を住民に伝えた。住民は工事現場に泥が溜まっていることを確認した。翌7日には再び建設現場に地下水が溜まっていることが確認された。住民は「僅か一晩で大量の地下水が染み出る土地であることを考慮していない」と語る。

ピーエス三菱は9月4日に住民のポストに翌週の工事予定表を投函した。そこには捨てコンの解体に始まり、汚泥搬出、新たな捨てコンの打設、タワークレーンの設置などが予定されており、本格的な工事再開の通告であった。住民側は工事再開には同意していない。事業者からは住民への補償や具体的な説明は一切なかったという。1週間分の工事予定表が、ピーエス三菱から週末に投函されるだけである。住民側から聞きに行かなければピーエス三菱・東急不動産は何も説明しない会社であると憤る。
体調を崩していた住民は震えがくるほどの怒り、虚脱感が続き、体調が一層悪化した。それまで病院で処方してもらっていた薬も効かなくなったという。診断の結果、少し強めの薬に変更し、軽い安定剤も服用することになった。自律神経の不調が出ているとのことである。

住民は6日に文京区役所の建設課の担当者と東京都の都市整備局市街地建築部建設業課 建設業指導係に工事の即時中止を要望した。以下のように主張した。
「現在も工事被害が続いているが、東急不動産らは原状回復も対策もしていない。工事を続けさせることはおかしい。」
しかし、区は「家が壊れる、または生死に関わるほどでなければ、強制的な工事停止命令どころか勧告すら出せない」と言い、都は「国土交通大臣の許認可だから……」と及び腰であった。住民は「都民・区民の生活を守ることが都や区の仕事ではないのか」と憤る。
住民は並行して東急不動産とピーエス三菱の本社に「住民は工事再開に同意していないのに、工事を続けるとはどういうお考えか」と電話と問い質したが、うやむやの対応に終始した。「今後も、きちんと対応させていただく所存です」という小馬鹿にした返答が住民の怒りを増大させた。何しろ現時点でまともな対応がなされていない以上、全く意味がない返答である。
特に住民はピーエス三菱の対応に怒る。4月の話し合いでは東京支店管理部の従業員が出てきたが、色々と物議を醸していた。この人間に話をしても通じないとわかっていたため、本社に電話したが、「担当者と変わります」と言われて待つこと数分、話し合いの席に来た人間に電話を回された。やはり話にならないため、再度、ピーエス三菱本社の管理本部に直接電話したが、支店管理部に回された。
しかも担当者は「今日の工事で、捨てコンの解体による騒音の苦情でしょうか」と言い放った。住民は本気で「この会社はどうなっているのか」と呆れたという。「住民を馬鹿と思っていなければありえない対応」とも憤る。そして東急不動産とピーエス三菱の両社に共通する点は、「折り返しお電話します」と言いながら、全く連絡してこないことである。
この東急不動産とピーエス三菱の対応の悪さについては記者にも経験がある。記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされたが、そのマンションの施工会社がピーエス三菱であった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。このマンションには不利益事実不告知(隣地建て替え)以外にも欠陥施工など様々な問題があった。その一つがアスベスト(石綿)の使用である。
記者は東急リバブル、東急不動産、ピーエス三菱にアスベストの使用有無を問い合わせたが、相互に「当社からは回答しない。他で聞け」の一点張りであった。最終的には専有部分のルーフバルコニーの押出成型セメント板、バルコニー隔壁のフレキシブルボード、キッチン上台のセメントボード、ユニットバスのセメントボード・接着剤でアスベストが使用されていることが判明したが、会社間のたらい回しの連係プレーによって事実の判明が大幅に遅れた上に無駄なエネルギーを費やすことになった。

話をブランズ文京小石川に戻す。事業者は9月7日の夕方に亀裂が拡大していた現場北側の区道の補修を改めて実施した。しかし、住民にはアスファルトをバラバラと流していただけに見えたという。靴の裏にアスファルトがこびりつき、住民には不評であった。さらに9日以降にモルタルで埋めて補修したものの、遅くとも29日には亀裂・陥没した。住民は20日も経たないで亀裂どころか陥没までする状態を不安視する。

ブランズ文京小石川パークフロント建設工事で生じた道路の亀裂
ブランズ文京小石川パークフロント建設工事で生じた道路の亀裂

住民は電波障害の被害も受けた。最初は9月7日にMXチャンネルだけが観られなくなった。翌8日にはテレビ画面が綺麗に映らなくなった。ワンセグの乱れる様子に類似する。「映像が乱れる、真っ黒になる、映る、乱れる」の繰り返しである。夕方になっても改善しなかったため、ピーエス三菱に連絡したという。
9月9日には再度の家屋調査が行われた。ブロック塀や土間の亀裂について確認した。また、土が陥没した箇所が新たに発見された。住民は「新たな被害が分かり、恐怖でどうにかなりそう」と嘆く。
この時期の家屋調査について住民はピーエス三菱が文京区から「変位が収まっていると主張するのならば、工事現場周辺の調査を行い、結果を報告してください」と言われたためと推測する。但し、「現場周辺の調査」と言われていたのにもかかわらず、2軒の家屋調査しかしていないことが後で判明した。

遅くとも9月11日には現場南側に隣接する公園(小石川一丁目児童遊園)にも亀裂が入っていることを住民が確認した。ここも補修されているものの、さらに亀裂が入っている。9月13日には建設現場で地下水が、絶えず染み出ていることも確認した。9月18日には児童公園で漏水が発生した。公園が水浸しになっており、地中から水が湧き出ていた。また、亀裂も広がり、段差が出来ていた。
9月21日には建設現場で事故が発生し、負傷者が出た。消防車に救急車、パトカーも来て、周辺は騒然となった。このために、この日の工事は中止になった。
9月28日には建設現場が水浸しになった。前夜から雨が降っていたが、その降水量は70mm弱である。現場では27日の遅くまでポンプがズーズーと水を吸い上げていたが、それでも水浸しになった。住民は雨水以外にも流入しているのではないかと推測する。
事業側は10月頃に住民に「補修をするが、条件がある。境界再確定と建設反対の旗の撤去、ブログの閉鎖が前提条件である。」と言ってきたという。これは住民の要求を完全に無視したものであった。住民は、まず埋め戻しをすること、原状回復をすること、原因の解明・説明、適切な工法でマンションを建設することを求めている。
不誠実な対応をしておきながら、要求を突きつけ、「飲まなきゃ補修してやらないよ」という高圧的な態度に住民は一層硬化した。本来の主張を有耶無耶にし、肝心な要点をなかったことにして回答するという企業の体質を目の当たりにしたという。そもそも杜撰な工事で家屋を破壊したピーエス三菱が補修することに拒否感を抱くことが被害者感情として自然である。

住民は公園に接するブランズ文京小石川Park Frontの住環境としての不安面についても言及する。公園では夜中に飲酒した若者が騒いでいる。これには3つの問題が指摘できる。
第一に騒音である。声がうるさい。また、ボールで遊んでおり、跳ねる音やぶつける音も響く。
第二にゴミである。翌朝になると、大量のビールの缶が公園備え付けのゴミ箱に入っていることもあった。
第三に防犯面の不安である。若者達はボール遊び中に現場の中に入ってしまったボールを取りに行っていた。騒音やゴミも問題であるが、フェンスを軽々と乗り越えて現場に出入りしているという状況は、防犯上問題である。現実に建設現場には「立ち入り禁止」「危険のりこえるな」などの掲示が随所にあり、裏返せば立ち入る人がいることを示している。
一般に近くに公園があることは新築マンションのセールスポイントとされるが、良いことばかりではないと考えさせられたという。

ブランズ文京小石川パークフロント建設現場の看板
ブランズ文京小石川パークフロント建設現場の看板

新築マンション値引き事例

新築マンションの値引き事例を紹介する。新築マンションの値引きは横行しているとされるが、明らかにされることが少なく、確認できるケースは乏しい。不動産業者に面と向かって問い合わせても、「ウチは値引きしません」と一蹴されることが殆どである。しかし、これから紹介する事例では売主の東急不動産株式会社(東京都渋谷区)自身が値引きを明らかにしており、マンション販売の実態をつかむ上で貴重である。
問題の新築マンション「アルス」は東京都江東区にある。他の多くの東急不動産物件と同じく、東急リバブル株式会社(東京都渋谷区)が販売を代理し、値引きの提示を含めた購入者との折衝は全て東急リバブルが実施した。値引きされた住戸301号室は60平米弱の2LDKである。価格は3060万円であったが、190万円値引きされ、2870万円で販売された。
値引きが持ちかけられた2003年6月下旬は、アルスの販売最終期が同年4月26日に終了して先着順で販売されてから2ヶ月経過しており、3ヵ月後の9月下旬には竣工し、引き渡される時期であった。値引きの話は購入者ではなく、東急リバブルの販売担当者から持ちかけたという。販売担当者は「期末までに売り上げを立てないので6月までに契約すれば値引きします」と説明した。値引きに際し、東急リバブルは購入者に口外無用と念を押した。そのため、本件値引き事例も他で行われているであろう値引き事例と同様、闇に埋もれる筈であった。
値引きの実情を明らかにしたのは売主の東急不動産であった。東急不動産消費者契約法違反訴訟(平成17年(ワ)第3018号)において東急不動産が証拠(乙第13号証)として提出された。文書の右肩に「乙第13号証」とあるのは消費者契約法違反訴訟における被告(東急不動産)が提出した13番目の証拠であることを示す。ヘッダに「東急リバブル総務課」とあるのは東急リバブル総務課からファックス送信されたことを意味する。
宅地建物取引業者は売買契約締結前に重要事項の説明が義務付けられている(宅地建物取引業法第35条)。購入者は重要事項の説明を受けた上で問題ないと判断して初めて売買契約を締結する。しかし本件アルス301号室では、東急リバブルは重要事項説明の前に値引きを条件に購入を確約させている。アルス301号室の売買契約は宅地建物取引業法上問題がある。少なくとも大手業者の名に恥じぬ模範的な取引とは言えない。その事実を示す文書が東急不動産側から提出されたことも泥沼の裁判の中とはいえ奇妙である。現実は小説より奇であるが、小説より上等とは限らないことの一例である。