日米地位協定

林田力

日米地位協定の問題点をまとめた。日米基地協定の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(Agreement under Article VI of the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States of America, Regarding Facilities and Areas and the Status of United States Armed Forces in Japan)である。
在日米軍は「日本を守るため」と説明されることが多い。しかし、日米地位協定は米軍以外をないがしろにする雰囲気がある。何を守るかを忘れて、それら守るべきものすら在日米軍のために使ってしまっている。
因みに在日米軍関係経費の2014年度の日本側負担は6739億円になる。米兵や家族一人あたり約1240万円に達する。このうち、本来は支払う義務のない「思いやり予算」は1848億円である(「在日米軍関係費日本負担6739億円」赤旗2014年12月22日)。

米軍基地の土壌や周辺海域では重金属や化学物質等の汚染が問題になっているが、米軍は原状回復義務を負わない。第4条第1項「合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない」
たとえば日本側に返還されたキャンプ桑江(沖縄県北谷町)跡地では、米軍の燃料とみられる油による土壌汚染が見つかった(「米軍跡地で土壌汚染/沖縄、浄化は請求できず/根本は日米地位協定」共同通信2013年6月23日)。
「神奈川県においては、平成十四年五月に、「キャンプ座間のごみ焼却炉の排煙から、日本の基準を最大約四倍上回るダイオキシンが検出された」との報道があり大きな問題となった。県や地元市が、国や米軍に検出数値等の公表を強く要請した結果、環境省を通じて米側の検出数値が情報提供され、国内法の基準を上回るダイオキシンの検出が確認されたのだ」(松沢しげふみ「米軍基地との共存に向けて環境特別協定の締結を」)

米軍車両の高速道路利用料は日本政府が負担する。第5条第2項「合衆国の軍用車両の施設及び区域への出入並びにこれらのものの間の移動には、道路使用料その他の課徴金を課さない」。米兵による東京ディズニーランドなどの観光旅行も日本政府が負担している(「在日米軍レジャーも日本負担 07年度 有料道代8億8000万円 井上議員が告発」赤旗2008年4月18日)。

米軍車両は車庫証明を事実上免れている。「米軍横田基地を抱える東京都で登録された車両は四百九十二台、米軍岩国基地を抱える山口県で百五十四台ですが、いずれも、米軍関係者は車庫証明を一切提出していない」(「沖縄米軍車両の車庫証明 3000台中わずか4台 国交省資料で判明 井上議員に提出」赤旗2008年5月3日)。基地外に住みながら、「保管場所は基地内だ」と主張し、「国内法の手続きを逃れている可能性がある」と指摘される。

在日米軍関係者は外国人登録を免れている。第9条第2項「合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」。
犯罪者であっても好ましからざる人物であっても入国可能である。日本政府は、どれだけの在日米軍関係者が基地外のどこに居住しているかも把握できない。

日本で裁判を受けるべき被疑者であっても、アメリカが先にその身柄を拘束した場合は、起訴前の身柄引き渡しが認められていない。第17条第5項(C)「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする」
これは沖縄の米兵の性犯罪で大きな問題になったが、関東地方も他人事ではない。2002年4月には在日オーストラリア人女性が横須賀で空母「キティホーク」乗組員に強姦され、しかも容疑者は事件発覚前に海軍当局によって名誉除隊させられアメリカ本土に逃亡する事件が起きた。

米軍機は「日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」により、航空法の飛行規制に縛られずに低空飛行が可能である。航空法は第81条で最低安全高度以下の飛行を原則禁止する。また、「低空で飛行を行い、高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で操縦してはならない」と迷惑な飛行も規制する(第85条)。
軍用機や軍用ヘリコプターの轟音が地元市民の生活を日々脅かし続けている。住民や自治体などが各地方防衛局に寄せた「米軍機の低空飛行訓練等に対する苦情」は過去5年間で東京都を含む26都道県に広がる(「全国各地で傍若無人に 米軍機の低空飛行」赤旗2011年2月16日)。
群馬県では2014年12月6日午前10時頃、米軍機の低空飛行訓練で過去最高の91点7デシベルの騒音を記録した(「米軍機低空飛行中止を」赤旗2014年12月13日)。
米軍機の飛行訓練ルート(オレンジルート)のある高知県香美市の住民談である。米軍機は「2、3日おきに飛びます。だいたい午前3回、午後3回。その中に超低空飛行や低空飛行がある」(「これが米軍機の低空飛行だ 高知・香美市で撮影」赤旗2014年12月26日)。

在日米軍の低空飛行訓練は敵地侵入のための訓練であり、そのために地形すれすれに沿って飛行する。「日本防衛のためではなく他国への侵攻を目的にした訓練で国民の暮らしと安全が脅かされることなどあってはなりません」(「この無法を放置していいのか」赤旗2014年12月27日)

在日米軍基地はブラック特区となっている。「日本の米軍基地内の労働法令の適用は、日米地位協定で日米協議の合意が必要となっており、いまだに労基法36条や安全委員会の設置、就業規則の届け出など六つの労働関係法律が適用されていません」(「治外法権 許されない 米基地労働者 田村氏「法適用を」」赤旗2013年5月15日)。国家戦略特区がブラック特区と批判されていたが、既に特区は存在していた。

横田空域(横田ラプコン)

日本の空はアメリカの占領が続いている。米空軍管制下の横田空域(横田ラプコンRAPCON, Radar Approach Control)は1都8県(東京都、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県)に及ぶ。

民間機は横田空域を避けるか、空域より上の高度以上ではないと飛行できない。羽田空港から西方面行きの出発便は、大阪行きを除き、横田空域を避けて、その上空を通過しなければならない。このため、羽田空港を離陸した航空機は、あらかじめ東京湾内で大回りしながら、横田空域上空を飛び越えるための高度まで上昇する。羽田発大阪行きには特別措置があるが、横田空域通過後最適飛行高度まで再上昇しなければならず、依然、非効率な飛行となっている。

西方面から羽田空港へ向かう到着便は、横田空域を避けて千葉県上空から迂回する。中国や韓国から成田空港へ向かう到着便も同じ迂回経路を飛行する。羽田空港行きと成田空港行きが同じ経路を飛行しなければならず、衝突の危険が高くなる。

「関西方面から仙台に向かう民間機は、落雷の危険がある積乱雲を避けるため高度を下げたくても横田空域があるためできません」(「横田空域 米軍支配排し全面返還を急げ」赤旗2006年11月4日)

2008年9月に横田空域の一部返還が実現し、飛行時間が平均で約3分短縮、年間約98億円(羽田空港再拡張前)の経済効果があった。約8万1千tに相当するCO2削減効果もあった。これは一般家庭約1万5千世帯の年間排出量に相当する。

横田空域全面返還の効果は以下のように算出される(定期航空協会「横田空域の民間航空機利用について 空域の早期返還」2006年5月)。

飛行時間短縮により得られる日本経済への波及効果:約140億円/年

燃料削減:約11万kl/年(羽田発大阪行きの消費燃料約1年分に相当)

CO2削減:約28万t/年(一般家庭の1年間の電気使用約13万世帯分に相当)

航空評論家の秀島一生氏は以下のように述べる。「もし全域返還されれば、大阪国際空港(伊丹)までなら現状50分程度のところ、30分近くで着くようになるでしょう。福岡や沖縄も、今より20分は短縮されるはずです。燃料費も浮き、年間で数百億円規模のコストが削減できると考えられます」(「米軍管轄する「横田空域」 返還されれば羽田−伊丹が30分に」週刊ポスト2014年10月10日号)

横田空域は2020年東京五輪で増大する航空需要をまかなう妨げにもなっている(小松田健一「羽田増便を阻む「横田空域」」東京新聞2014年11月14日)。東京都は横田空域の早期全面返還を求めている。「横田空域及び管制業務の早期全面返還を実現するとともに、同空域を活用した合理的な航空路を設定すること」(「平成24年度国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」194頁)。

「首都に主権の及ばない米軍基地と米軍が管理する空域が広がる日本は、まともな国といえるのでしょうか。そして日米両国は対等でしょうか」(「横田基地は必要なのか」東京新聞2012年5月13日)





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