TPP大筋合意と知的財産権条項(PPT資料)

TPPを考える〜政府説明会を受けて

林田力

日本海賊TVは2015年10月28日に「シリーズTPPを考える〜政府説明会を受けて〜」を放送した。番組では政府説明会(10月20日)を踏まえたTPP大筋合意の内容について「TPPって何?」主催者の松田よし子さんが解説した。また、知的財産関係については林田力(希望のまち東京in東部代表、日本海賊党サポート会員)が解説した。ゲストは首藤信彦氏(国際政治学者、元衆議院議員)、安田美絵氏(ルナ・オーガニック・インスティテュート主宰)、天野統康氏(金融評論家、作家)、司会は須澤秀人・日本海賊党代表である。

林田力は以下のように説明した。知財分野はアメリカの制度に合わせるような合意が多く、「日本の負け」と評される傾向にあるが、以前より日本国内でも知的財産保護強化を求める立場から主張されていたものが多い。そのような立場にとっては負けではない。知的財産権の保護を強化することが良いことであるか悪いことであるかという根源的な問いに結びつく。

大筋合意では、衛星放送やケーブルテレビの視聴制限暗号を不正に外す機器の製造・販売等への刑事罰及び民事上の救済措置の導入が定められた。B-CASカード違法改造は問題になっており、これは評価できる。昨今のスパムメールの大半が違法改造B-CASカードの裏取引である。TPP以前の問題として日本国内の問題として規制しなければならない問題である。

政府はTPPを「知的財産権の保護と利用の推進を図る内容」とするが、実態は権利の保護に偏っている。これは知的財産を手厚く保護すれば知的財産ビジネスが活発化し、利用が促進されるとの思想に立脚するためである。

TPPは規制を緩和し、自由市場を推進するものである。これに対して公共財的な性質を有する知的財産の保護強化は規制強化である。新自由主義を看板に掲げながら、企業・富裕層の儲かる分野ならば規制強化を推進するハイエナ資本主義の矛盾を示すものと位置付けることも可能である。

一方で知的財産権を自然権と位置付けるならば、その保護は当然の要請になる。この場合でも既に存在するものに手を加えたものに排他的な独占権を与えることが正しいかという疑問がある。もっとも事情は有体物の所有権でも同じである。ロックの労働所有権論は人間が手を加えたことから排他的な所有権を正当化する。

知的財産権には生産手段を持たない個々人も財産権者になれるという積極面がある。一方で種子の特許権のように従来の利用者(農民)を排除して、開発企業に利益を独占させるものもある。これは資本主義勃興期の囲い込み(エンクロージャー)と重なる。知的財産全体を敵視するのではなく、企業の投下資本保護制度的な側面に矛先を集中すべきではないか。


TPP大筋合意と知的財産権条項

林田力

TPP(環太平洋経済連携協定)は2015年10月5日に大筋合意が発表された。知的財産制度はTPPによる法改正が生じる分野である。著作権保護期間延長や非親告罪化など知的財産権の保護を強化する方向での改正である。
「TPP協定で対象となる知的財産は、商標、地理的表示、特許、意匠、著作権、開示されていない情報等である。知的財産章は、これらの知的財産につき、WTO協定の一部である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を上回る水準の保護と,知的財産権の行使(民事上及び刑事上の権利行使手続並びに国境措置等)について規定し、もって、知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっている」(内閣官房TPP政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」「第18章 知的財産」2015年10月5日)
山田太郎参議院議員(日本を元気にする会)は10月22日に以下内容でツイートした。「TPPの知財の合意状況について内閣官房と文化庁に説明を受けました。詳細はまだ検討中で細かいところまではまだ決まっていないとのことですが、恣意性が働く可能性・規定が曖昧になる点など、懸念は伝えました」

政府は「知的財産権の保護と利用の推進を図る内容」とするが、実態は権利の保護に偏っている。これは知的財産を手厚く保護すれば知的財産ビジネスが活発化し、利用が促進されるとの思想に立脚するためである。
大筋合意の内容が日本の知的財産制度を米国化させるものであることは確かである。そのために日本の敗北と指摘される。
「著作権の保護期間として70年が選択され、商標権侵害についてまで法定賠償が義務化されており、大方の報道通りこの夏に日本政府はこれらの点について譲歩したのだろうが、日本としては完全に負けと言って良い内容である」(無名の一知財政策ウォッチャーの独言「第347回:TPP協定知財章最終条文リーク(2015年10月版条文の著作権保護期間延長、法定賠償、非親告罪化関連部分)」2015年10月10日)
但し、これらはTPPで降って湧いたものではなく、日本国内で知的財産権の保護強化を求める側から以前より主張されてきたものも多い。
TPPは規制を緩和し、自由市場を推進するものである。これに対して公共財的な性質を有する知的財産の保護強化は規制強化である。新自由主義を看板に掲げながら、企業・富裕層の儲かる分野ならば規制強化を推進するハイエナ資本主義の矛盾を示すものと位置付けることも可能である。
一方で知的財産権を自然権と位置付けるならば、その保護は当然の要請になる。この場合でも既に存在するものに手を加えたものに排他的な独占権を与えることが正しいかという疑問がある。もっとも事情は有体物の所有権でも同じである。ロックの労働所有権論は人間が手を加えたことから所有権を正当化する。
また、知的財産権には、種子の特許権のように従来からの利用者を排除して、開発企業に利益を独占させるものもある。これは資本主義勃興期の囲い込み(エンクロージャー)と重なる。
このように知的財産権を考える場合、その公共財的性質を特別視するよりも、有体物の所有権との一貫性を重視すべきである。所有権絶対そのものに対抗する理論を提示する立場は別として、知的財産権のみを弱い権利とする考えることは妥当ではない。知的財産権は生産手段を持たない個々人も財産権者になれるという積極面もある。

〇医薬品の知的財産保護を強化する制度の導入
 @特許期間延長制度
 A新薬のデータ保護期間に係るルールの構築。
 B特許リンケージ制度(後発医薬品承認時に有効特許を考慮する仕組み)
***
医薬品の知的財産保護を強化する。バイオ医薬品のデータ保護期間を導入する。これは製薬会社が新薬の市販の承認を得るために提出する臨床試験などのデータを保護する期間である。保護期間は5年とした上で、その後3年間は医薬品が販売できないような規制を導入することで実質的に8年間保護する。
この交渉は「最大の難題」と見られていた。米国は12年間のデータ保護を強く求めた。豪州などは5年間と主張した。実質8年は米国の譲歩と見られている。「知的財産権保護に関する原則を一部断念することは、米国の競争力や世界の健康増進をけん引する知識産業を損なうことになる」(「【社説】TPPの功罪、知的財産分野では問題も」The Wall Street Journal 2015年10月7日)。
尚、今回のTPP大筋合意では、TPP反対派が宣伝していたような国民皆保険が破壊されるということはなかった。しかし、この医薬品の保護強化によって医療費が圧迫かされ、健康保険料の値上げなど国民皆保険が実質的に損なわれる危険はある。

〇 商標
 ・商標権の取得の円滑化:国際的な商標の一括出願を規定した標章の国際登録を定めるマドリッド協定議定書の締結を義務付け。
 ・商標の不正使用について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
***
実際の損害額を上回る高額賠償を懲罰的に支払わせる制度か、最低賠償額を設ける制度のいずれかを導入する。日本は商標法を改正し、最低賠償額を盛り込む方向で検討している。

〇特許
 ・特許期間延長制度(出願から5年、審査請求から3年を超過した出願の権利化までに生じた不合理な遅滞につき、特許期間の延長を認める制度)の導入義務付け
 ・新規性喪失の例外規定(特許出願前に自ら発明を公表した場合等に、公表日から12月以内にその者がした特許出願に係る発明は、その公表で新規性等が否定されないとの規定)の導入を義務付け。

〇オンラインの著作権侵害の防止
 インターネット上の著作権侵害コンテンツの対策のため、権利者からの通報を受けて、プロバイダー事業者が対応することで賠償免責を得る制度を導入。プロバイダー事業者に著作権侵害防止のためのインセンティブを与える制度を担保。
***
プロバイダーの過剰反応によって、個人の情報発信が困難になる危険がある。ユーザーは著作権侵害などに該当しないと確信を有していて、裁判で争う覚悟を有していても、プロバイダーが当該ユーザーのホームページを削除してしまうなど。

〇 知的財産権保護の権利行使
 WTO・TRIPS協定やACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)と同等又はそれを上回る規範の導入。
(例)・不正商標商品又は著作権侵害物品の疑義のある、輸入・輸出されようとしている物品、領域を通過する物品について、権限ある当局が職権で差止め等の国境措置を行う権限を付与(ただし,通過物品については,荷宛国への侵害疑義物品情報提供をもって代替が認められる)
・営業秘密の不正取得、商標侵害ラベルやパッケージの使用、映画盗撮に対する刑事罰義務化
・衛星放送やケーブルテレビの視聴制限暗号を不正に外す機器の製造・販売等への刑事罰及び民事上の救済措置を導入。
***
「視聴制限暗号を不正に外す機器の製造・販売等」について、既に日本ではBLACK-CASなどB-CASカード不正視聴が社会問題になっており、この規制強化は社会的に求められるものである。
吉野健太郎のビーキャスカード不正視聴のような反社会的行為の規制が強化されることは評価できる。昨今のスパムメールの大半は、ブラックキャスカードなどビーキャスカード違法改造品の販売である。現行法でも不正競争防止法によってビーキャスカード不正改造を摘発した例はある。民事訴訟で損害賠償が請求され、認められた例もある。それでも、まだまだ緩い。吉野健太郎が自己のアングラサイト連邦でビーキャスカード不正視聴の体験を堂々と掲載しているほどである。
吉野健太郎は危険ドラッグ薬事法違反で逮捕され、有罪判決を受けた(林田力『危険ドラッグの話題は禁止』Amazon Kindle)。逮捕後に吉野健太郎の連邦から脱法ハーブ店の広告は削除された。しかし、ビーキャスカード不正視聴の記事は残されたままであった。吉野敏和の貧困ビジネス批判や吉野健太郎の危険ドラッグ批判と同じく、吉野健太郎のビーキャスカード不正視聴批判も強めていかなければならない。

〇 著作権
 著作権に関しては次のルール等が規定されている。
 ・著作物(映画を含む)、実演又はレコードの保護期間を以下の通りとする。
 @自然人の生存期間から計算の場合は、著作者の生存期間及び著作者の死から少なくとも70年
 A上記で計算されない場合には、次のいずれかの期間
 (i) 当該著作物、実演又はレコードの権利者の許諾から最初の公表年の終わりから少なくとも70年
 (ii)一定期間内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、当該著作物、実演又はレコードの創作の年の終わりから少なくとも70年
***
演劇関連の団体は反対を表明していた。著作権保護期間が70年に延長されれば多くの脚本は権利者の所在がわからない「孤児著作物」になってしまい、演劇作品で利用できないものになってしまうと懸念する。

 ・故意による商業的規模の著作物の違法複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。
***
親告罪は権利者の告訴が必要であるが、非親告罪は権利者の告訴がなくても起訴できる。非親告罪化に対しては、二次創作やコスプレの創作活動が規制されると批判される。この批判は「収益性に大きな影響を与えない場合」の定め方によっては回避できる。
「個人が、趣味の範囲で漫画やアニメなどのキャラクターを使った同人誌を作り、限られた部数を実費程度の価格で販売するような場合は、「原著作物(つまりオリジナル作品)等の収益性に大きな影響を与えない」といえそうですので、非親告罪の対象から外れる可能性が大きいと思われます」(河本秀介「TPPの知的財産分野 著作権侵害の非親告罪化への動向」WEDGE Infinity 2015年10月20日)
一方で以下の懸念が表明されている。「何をもって「収益性への大きな影響」と見做すかについては解釈の余地があり、捜査当局のさじ加減では非親告罪化の影響がもろに顕在化する可能性は十分に残っている」(渡辺靖「TPP交渉で知財分野は日本の完敗だった」ビデオニュース・ドットコム2015年10月24日)
「どうやって収益に影響があると判断するのかなど12カ国で考えを共有できているのかが疑問」と指摘される(「TPP:政府、懸念払拭に躍起…著作権など不安の声」毎日新聞2015年10月23日)。
非親告罪とされても、警察が全ての著作権侵害事件を積極的に捜査することは物理的に不可能である(そのようなことが物理的に可能ならば恐ろしい管理社会になる)。警察の恣意・裁量を増大させることにならないか。
強姦罪でも非親告罪化が議論されているように被害者の立場では非親告罪には一定の意味がある。しかし、根本的な問題は警察が被害届にしても告訴にしても、受理しなくなければ受理しようとしないことである。仮に非親告罪となっても警察が動きたくなければ被害届を受理せず、捜査もしないだろう。警察に被害者の要求を誠実に受け取り、応答する義務を課すことが必要である。

 ・著作権等の侵害について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。
***
著作権の侵害を立証すれば裁判所が一定額の賠償の支払いを命ずることができる法的損害賠償金ルールを導入する。現行では著作権侵害の被害者が損害賠償を求める際に実際に被った損害額を立証する必要があったが、インターネットなどを通じた侵害が増える中で損害の正確な立証が困難となっている。
法定損害賠償は、権利者が損害額を立証する必要がなくなり、悪質な海賊版などに対して訴訟を起こしやすくなる。一方で軽微な侵害についても訴えられるリスクが増える。政府は法定額の上限を定めるなどして影響を最小限にする考えとされる(「TPP:政府、懸念払拭に躍起…著作権など不安の声」毎日新聞2015年10月23日)。

〇 地理的表示(GI)
 地理的表示保護・認定の行政手続を定める場合、@過度の負担となる手続を課さず申請等を処理する、A申請等の対象の地理的表示を公開し、異議申立て手続を定める、B地理的表示の保護・認定の取消しについて定める、等が規定されている。


林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』PV
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』Facebook
林田力『二子玉川ライズ反対運動』Twitter

『ルポ チェルノブイリ28年目の子どもたち』
ブラックデモクラシー
『未来派左翼(上)』
葬式ごっこの山本太郎議員を厳重注意
山本太郎議員の葬式ごっこ
書評『集団的自衛権の行使に反対する』
『スターリン秘史 巨悪の成立と展開 3』雇われ左翼批判
福島みずほ下町応援団結成の集い
中野区で民主党の国政・都政・区政合同報告会
東急不動産だまし売り裁判と自己責任論
若年層右傾化の背景と限界
書評『放射線被爆の理科・社会』
佼成病院裁判と院内感染
トリウム熔融塩炉
足立区入谷のオウム真理教(アレフ)進出問題
東急電鉄らの駐車場上保育園は安心か
若者の貧困
宮崎強姦事件被告人弁護士に弁護士懲戒請求
東京都の弁当の路上販売規制
希望のまち東京をつくる会一周年記念大会議
イラクとシリアのイスラム国
サザンオールスターズ謝罪と左翼
横田空域(横田ラプコン)
ブランズ六番町は住環境破壊
マルクス・アホダラ教とダブルスタンダード
2014年衆院選・野党の選挙協力
立正佼成会附属佼成病院・高濃度酢酸誤投与で女性死亡
仙谷由人元官房長官が政界引退
ステーキのくいしんぼ・立正佼成会付属佼成病院・過労自殺
フロンティアFJネクスト迷惑電話
市民団体の意思と多様性
ヘイトスピーチ問題
高齢者医療治療拒否・中止裁判
小選挙区論
TPP、国家戦略特区
懇ろセクハラ野次は九州と言い訳
新自由主義勢力と新自由主義思想
ノーベル物理学賞受賞の中村修二氏に複雑な声
ネオナチ・ツーショット写真の問題
ブラック企業は豊かな表現
変貌する自衛隊
『世界が食べられなくなる日』
マンション敷地二重使用と東急コミュニティー解約記
福島原発事故自殺訴訟
『標的の村』
放射脳カルトの加害性
ブラック企業は人種差別に非ず
日本海賊TV国連の自由権勧告





林田力 東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った 東急不動産係長脅迫電話逮捕事件 二子玉川ライズ反対運動 東急リバブル広告 東急ストアTwitter炎上 東急ホテルズ食材偽装 東急ハンズ過労死 ブラック企業・ブラック士業 脱法ハーブにNO 東京都のゼロゼロ物件 住まいの貧困 東急不買運動 東急リバブル東急不動産不買運動 アマゾン ブログ ツカサネット新聞 リアルライブ 本が好き v林田力 家計簿 ワンピース 韓国 江東区 東陽町 世田谷区 写真 スレイマン 1ch 2ch 3ch Hayashida Riki hayariki tokyufubai amazon wiki wikipedia facebook