都民参加への模索連絡会総括会議評

林田力

都民参加への模索連絡会(旧1.13東京連絡会)総括会議が2014年3月30日に東京都渋谷区の上原区民会館で開催され、2014年東京都知事選挙を総括した。総括会議では宇都宮健児候補を支持した人、細川護煕候補を支持した人、どちらも支持しなかった人も集まり、各々の立場で意見を述べた。宇都宮氏を支持する人も積極的支持から消極的支持まで濃淡があった。様々な立場の人々が集まることは一つの価値である。一方で各人が言いたいことの言い放しで終わってしまったと辛辣に評することもできる。そこで個人の所感を表明する。

2014年東京都知事選挙において1.13東京連絡会は宇都宮支持を表明し、世話人会総括文書でも宇都宮氏支持の価値判断を下している。「宇都宮候補は安倍政権と石原・猪瀬都政の転換を図る位置にあった。細川候補は反原発で宇都宮候補と政策を一致させられる可能性があったかもしれないが、安倍政権と対峙し石原・猪瀬都政を転換する政策を示し得たかは、不確かである」(7頁)

総括会議では宇都宮支持の価値判断の是非が議論のホットトピックになると予想していたが、正面からの反論は少なかった。代わりに宇都宮氏支持の意思決定過程についての問題提起が多かった。宇都宮氏を積極的に支持した立場からも、支持したい個人が支持すればよいのではないかとの意見が出た。

これらの意見を踏まえた上で、むしろ踏まえた故に、1.13東京連絡会が宇都宮支持を表明したことは正しかったと考える。政策本位で考えるならば、2012年の宇都宮候補の政策を支持した人が2014年も支持することに何の不思議もない。また、1.13東京連絡会の中心的な活動実績は「都民参加への模索」研究会の開催である。ここでは都政についての様々な課題を取り上げている。原発関連が多かったが、それに限定されない。ここからすると、脱原発至上主義の候補者を支持することはあり得ない。

ここでは新たに1.13東京連絡会が中立を保った場合の問題性を指摘する。普通の集団ならば構成員の意見が割れれば中立という結論になることは穏当である。しかし、1.13東京連絡会の歴史性を踏まえると、その中立には中立以上の意味合いがある。

1.13東京連絡会は2012年選挙の宇都宮勝手連を母体とする。2012年宇都宮勝手連の全てを包含していると主張するつもりはないが、存在する中で大きな集団であることは事実である。そのような集団が中立を唱えることの効果を考える必要がある。

悪意ある人々は「2012年勝手連の大勢が宇都宮支持でない」との悪宣伝に利用するだろう。個別具体的な状況では中立を謳うことが妨害になることがある。宇都宮氏を積極的に支持しない理由には理解できるものも少なくないが、理解できる意見からは積極的な妨害まで肯定するほどのものはない。

悪宣伝を回避するために1.13東京連絡会の歴史性を捨象し、「単なる都政の勉強会に過ぎない」と自己を小さく定義することは一案である。混乱要因になるくらいならば叩き潰すという見解さえある。しかし、それは1.13東京連絡会の可能性を自ら潰してしまうことになる。1.13東京連絡会は宇都宮支持であるが、個々人を拘束しないという立場は、1.13東京連絡会の存在意義の発揮と個々人の尊重を両立させる。

反戦の系譜

総括会議では総括文書の宇都宮氏支持の価値判断への反論になる意見として細川氏の反戦姿勢の説明がなされた。細川氏は近衛文麿の孫である。近衛文麿は大政翼賛会を組織し、日本を侵略戦争の泥沼に引きずり込んだ張本人とも評価されている。この問題を細川氏は深く自覚しており、二度と繰り返してはいけないとの強い覚悟で都知事選に臨んだという。この意見に対してはツイキャス視聴ユーザーから「それをテレビ討論に出演して話すべきであった」とのコメントが寄せられた。

私が都知事選で細川氏を批判した理由は脱原発至上主義にある。細川氏は「原発以外の政策は誰が都知事になっても変わらない」とも発言しており、選挙戦での脱原発至上主義批判は免れない。しかし、否定したいものは脱原発主義であって、細川氏ではない。

細川氏が脱原発至上主義者でないならば結構なことである。細川氏に脱原発至上主義でない面があるならば、それは積極的に歓迎する。もともと私は、脱原発至上主義は細川陣営の戦略ミスであり、細川陣営がターゲットにした人々にマイナスに働いたと分析していた。

反戦・平和は脱原発と共に市民派結集のテーマと目されているものである。細川氏が脱原発と反戦という二つの軸を持っているならば、脱原発至上主義者以上に市民派候補として訴求力を持つ。一方で細川氏の反戦の決意という論理自体に市民派を結集させる上で難しい要素がある。

戦後日本の反戦・平和運動には二つの大きな系譜がある。第一に大政翼賛会にも積極的に合流し、戦争を進める側になった人々の系譜がある。そのような人々にとって細川氏は同じ立場であり、強力なパートナーになる。

第二に戦争中も戦争反対を唱えた人々の系譜がある。弾圧されても戦争反対を貫いたという事実を何よりも強固なアイデンティティにしている。そのような人々にとって、侵略戦争を進めた体制側の系譜の反省と決意は、それほど感銘を与えるものではないだろう。

もし細川氏が反戦をアピールポイントにしたならば、集団的自衛権についてどう考えるか、辺野古移転についてどう考えるかなど具体的問題で言質をとらなければ気が済まないだろう。細川氏が全てに満足できる回答をすることはない。そうなれば、それを根拠に細川批判が展開される。つまり、細川氏的な反戦論を前面に出すこと、特に市民派統一候補のバックボーンとすることは、戦後日本で繰り返されてきた二つの系譜の争いを復活激化させる可能性がある。

今や戦後世代が中心になり、戦前世代と触れ合った経験のある人も少なくなっている。反戦・平和運動も「十五年戦争を繰り返すな」一辺倒ではなく、パレスチナ問題やシリア内戦など現在進行形の問題に注目した方が今を生きる人々に訴求するという見解は正しい。一方で従軍慰安婦や靖国神社参拝など今日的な話題は歴史認識の問題でもあり、歴史を避けることはできない。

戦後日本では長い間、第一の系譜が多数派であった。現実の要素を無視して抽象的に考えれば、戦争反対を貫いた第二の系譜には正しさがある。しかし、それも自己が絶対的に正しいという独善性と嫌われる要因にもなっている。自分達だけが唯一反対した存在と自己の特殊性を強調する傾向は支持を狭めている。反対に少数派に追いやられたからこそ、自己の特殊性を強調するようになったとも言える。

この状況では第一の系譜を中心にすることも一つの考えである。第二の系譜が戦争反対を貫いたと言ったところで、戦争遂行を妨げるほどの国民的基盤がなかったことも事実である。自分達が正しかったと主張するだけでなく、戦争を止められなかったことは反省する立場にある。戦争中に戦争に反対した人々・反対しなかった人々の差異を強調するのではなく、同じ立場で取り組むべきという主張も成り立つ。

一方で現在では第一と第二の系譜の政治勢力のパワーバランスは逆転している。また、第一と第二の系譜の線の引き方が正しいかという疑問がある。第一の系譜の中核は大政翼賛会に合流した過去を有する人々であるが、それ以外の人々からも構成される。戦前戦中に投獄されたり、結社禁止処分を受けたりした人もいる。宗教者も多かれ少なかれ弾圧を受けている。

これらの人々と大政翼賛会に合流した人々には本来ならばギャップがある。第一の系譜が政治勢力としてまとまっていた頃は、意識的か無意識的かは別として遠慮があった。それが原爆などの戦争被害中心の反戦運動になった面がある。第一の系譜が政治勢力として弱まった結果、これらの人々は今まで以上に気兼ねなく弾圧された経験などを話すようになったように感じられる。それが秘密保護法反対などの声にリアリティを与えている。

これらの人々は弾圧されたという点では第二の系譜と共通する。第二の系譜も「自分達だけ」という点の強調を抑えれば連携を拡大でき、組み合わせが大きく変わる可能性がある。

この状況下で第一の系譜の論理は過去以上に通用しにくい。逆に困難な状況だからこそ、第一の系譜の建て直しのためにも細川氏をパートナーにする意義があると考えることもできる。細川氏がメディアなどで自己の反戦論を訴えることが前提であるが、それがなされた場合に反戦・平和運動がどのような反応をするかは興味深い。

市民の捉え方

総括会議では宇都宮支持か細川氏支持か以外の対立軸も浮かび上がった。都民参加への模索連絡会は2012年東京都知事選挙の宇都宮勝手連を母体とするため、市民主体という点に問題意識を持つ人が多いが、市民の位置付けへの感覚の差が感じられた。学生運動の延長線上で市民運動を捉える文化と、左翼的なものの対極として市民を捉える文化がある。

一般に政治姿勢として前者は革新、後者はリベラルとマッピングされる傾向がある。ところが、2014年都知事選では宇都宮支持層にも細川支持層にも両者が混在した。宇都宮氏出馬表明の前座となった大久保青志講演「市民運動と選挙──これからの社会運動をどうする」は前者の文化からの振り返りであった。一方でサポーターズの戦略は後者の文化に属する。

細川氏自身も細川陣営がターゲットとすべき人々も明らかに後者の立ち位置である。しかし、細川勝手連には前者の文化が色濃く、それが2012年の宇都宮支持層に食い込む原動力となった。一方で、その古さが若年層などからは否定的に受け止められた。

宇都宮支持か細川氏支持かは固定的・絶対的な対立ではない。細川批判の理由になった脱原発至上主義も細川陣営が選挙戦終盤に自ら克服している。今後また分裂選挙になるとしても、別の形でシャッフルされる可能性もある。その意味でも都民参加への模索連絡会は貴重な場であると考える。


     
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