田母神俊雄氏の得票は戦後レジームへの不満

林田力

2014年東京都知事選挙では田母神俊雄候補の得票は60万票を超えた。これを危険視・問題視する意見は少なくない。田母神票を積極的に評価するならば戦後レジームへの不満である。

抑圧された人々が現体制に不満があるならば左傾化する方が自然である。ところが、左翼は護憲に象徴されるように戦後レジームを守る運動ばかりに注力する傾向があった。戦後レジームを守るだけでは自分達は救われず、左翼には期待できないと考えたとしても無理はない。

何故ならば官僚支配も土建国家も戦後レジームであるためである。ブラック企業も貧困・格差も戦後レジームに原点がある。労働者派遣法以前から社外工という非正規労働者は存在し、社会保障制度の官民格差なども存在した。貧困層の数か増えたために貧困と格差が目立つようになっただけである。構造改革を止めて戦後レジームに戻れば解決するというものではない。

その結果、右翼的な戦後レジームの脱却を歓迎する。これを批判する左翼側の目的が戦後レジームを維持するものであるならば、いくら戦後レジームからの脱却方向が間違っていると批判しても、戦後レジームに苦しめられた人々にとって魅力がない。既得権益擁護の運動にしか見えない。戦後レジームからの脱却自体は歓迎する人々が存在することは直視しなければならない。

その中で宇都宮けんじ氏がブラック企業批判などによって戦後レジームからの脱却を求める層の支持を得たことを評価する。さらに宇都宮氏に澤藤問題や細川問題が襲ったこともプラスになった。澤藤統一郎氏や細川護煕氏支持に流れた知識人が宇都宮氏を攻撃することで、宇都宮陣営の左翼臭が弱まった。戦後レジーム維持で自らの権威を維持する左翼に反感を抱く層から受け入れられやすくなった。

田母神俊雄20代得票の考察

2014年東京都知事選挙では田母神俊雄候補が60万票以上を得票した。これを問題視する人は少なくないが、過度に深刻視するものではない。右翼と左翼は伸びる時は共に伸びる。ワイマール共和国末期もナチスと共産党が共に伸びた。田母神氏の得票は宇都宮健児候補健闘の裏返しである。伸びる時は共に伸びるもので、どちらが大きく伸びているかが決定的に重要である。都知事選挙の結果は健全性の表れと評価できる。

田母神支持は世代別では20代の割合が高い。朝日新聞の出口調査によれば、投票した20代の4分の1近くが田母神氏に投票したという。これをショッキングに捉える傾向が強いが、むしろ他の世代と比べて20代の支持割合が高いことは社会の健全性を示すものである。

田母神支持の大きな要因は貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンである。そのような人々は本来左翼に期待する筈であるが、左翼は戦後レジームの脱却を阻止することばかりに注力する傾向が強いため、既得権擁護の勢力に映ってしまい、魅力を感じられないために右傾化する。それ故にブラック企業批判などで若年層の問題意識に応えることが適切な解決策になる。

一方で田母神支持は貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンだけでは説明できない面がある。それは特に若年層の田母神支持で顕著になる。若年層が田母神氏を支持することは、他の世代が田母神氏を支持するよりも深刻な問題がある。

田母神氏は選挙戦ではイメージ戦略を徹底した。その手法には主義主張は別として見習う価値があると言えるほどである。田母神氏の日頃の言動を知らずに、それを見て、または石原慎太郎氏が支持しているという理由で支持した人もいるだろう。選挙戦でのイメージ戦略によって田母神氏を支持した人々は、選挙前の田母神氏の言動を支持しているとは限らない。これに対してインターネットに親しむ若年層は田母神氏の普段の言動を承知した上で支持している割合が高い。

田母神氏は沖縄駐留米兵の女性暴行事件に際して「朝の4時ごろに街中をうろうろしている女性や女子高生は何をやっていたのでしょうか」とTwitterで呟いた。これは愛国者や民族主義者の発言ではない。雇われ右翼の発言である。このような発言を支持するメンタリティは、貧困と格差に苦しむ人々のルサンチマンでは正当化できない。

「暴行される女性にも非がある」は虐げる人々と虐げられる人々がいる中で、虐げられる側を叩き、虐げる側を擁護する論理である。これは公務員バッシングや生活保護バッシングとは次元が異なる。公務員も生活保護受給者もワーキングプアに苦しむ人々から比べれば強者である。公務員や生活保護受給者が自分達の苦しみの元凶であるかは考えてほしいところであるが、ワーキングプアよりも相対的に恵まれていることは否定できない。主観的には持たざる者から持つ者へのバッシングである。

この点では在日韓国朝鮮人へのヘイトスピーチも本気で在日特権というフィクションを真実と捉えている人々ならば、主観的には持たざる者から持つ者へのバッシングになる。これらと「暴行される女性にも非がある」という抑圧者を擁護する論理は質的に異なる。十把一絡げにネット右翼を論じることはできない。

確かに「貧困と格差に苦しむ人々が右傾化する」は一つの真実である。一方で、この命題は「ネット右翼は貧困と格差に苦しみ、しかも正しい抗議先を知らない哀れな人々である」という結論になり、左翼の精神衛生上、好都合なものである。それ故に多用されているが、それが田母神支持層の全てではない。ネット右翼は高学歴高収入が多いとの指摘もある(古谷経衡『ネット右翼の逆襲』)。

残念ながら世の中には「だます人間と、だまされる人間では、だます人間が悪い」「いじめっ子と、いじめられっ子では、いじめっ子が悪い」を理解できない人々がいる。私は東急リバブル東急不動産に不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされた経験があるために身をもって理解している(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。その種の人々は自分が虐げられる側になることはないと高をくくっている。

このようなメンタリティが20代に多いことは社会経験の乏しさという点で仕方ない面がある。若者を使い捨てにするブラック企業がはびこっていると言っても、20代の皆が皆、悲惨ではない。その中で相対的に恵まれている立場の人々には、自分が努力した結果と考える人も出てくる。

自分が虐げられる側になった経験がない人々でも社会経験を積めば、自分は恵まれていた、運が良かったという考えにも至れる。自分が細い糸の上を歩いており、一つ間違えば糸から転げ落ちていたかもしれないとの想像力を働かせることができる。世代傾向的に見るならば社会経験の浅い20代は「自分の成功は自分の努力の結果」と考えがちである。

これはあくまで世代傾向的な議論である。言うまでもなく20代でも、他者の痛みに想像力を持てる人々は多い。そもそも20代の全てが田母神氏を支持した訳でもなく、棄権者を含めれば多数派でもない。一方で世代傾向的に見れば20代で田母神氏割合が高いことは仕方のないことと言える。

この点でも宇都宮陣営がブラック企業批判などによって、苦しむ若者、虐げられている若者の側に立ったことは適切である。一方で若者を救世主のように期待することは適切ではない。宇都宮陣営は若者に訴求したと言われるが、若者といってもアラフォーが多いように感じられる。絶対数も多く、社会経験から政治意識もそれなりにあるアラフォーへの訴求はセグメントマーケティングとして有効である。


     
     
     
【既刊】『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』『東急不動産だまし売り裁判購入編』『東急不動産だまし売り裁判2リバブル編』『東急不動産だまし売り裁判3』『東急不動産だまし売り裁判4渋谷東急プラザの協議』『東急不動産だまし売り裁判5東京都政』『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』『東急不動産だまし売り裁判7』『東急不動産だまし売り裁判8』『東急不動産だまし売り裁判9』
『東急不動産だまし売り裁判10証人尋問』『東急不動産だまし売り裁判11勝訴判決』『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』『東急不動産だまし売り裁判13選挙』『東急不動産だまし売り裁判14控訴審』『東急不動産だまし売り裁判15堺市長選挙』『東急不動産だまし売り裁判16脱法ハーブ宣伝屋』『東急不動産だまし売り裁判17』『東急不動産だまし売り裁判18住まいの貧困』『東急不動産だまし売り裁判19ダンダリン』
『東急不動産だまし売り裁判訴状』『東急不動産だまし売り裁判陳述書』『東急不動産だまし売り裁判陳述書2』『東急不動産だまし売り裁判陳述書3』
『東急大井町線高架下立ち退き』『東急不動産係長脅迫電話逮捕事件』『東急コミュニティー解約記』『東急ストアTwitter炎上』『東急ホテルズ食材偽装』
『裏事件レポート』『ブラック企業・ブラック士業』『絶望者の王国』『歌手』『脱法ハーブにNO』『東京都のゼロゼロ物件』『放射脳カルトと貧困ビジネス』『貧困ビジネスと東京都』
『二子玉川ライズ反対運動1』『二子玉川ライズ反対運動2』『二子玉川ライズ反対運動3』『二子玉川ライズ反対運動4』『二子玉川ライズ反対運動5』『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』『二子玉川ライズ反対運動7』『二子玉川ライズ反対運動8』『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』『二子玉川ライズ反対運動10』『二子玉川ライズ反対運動11外環道』『二子玉川ライズ反対運動12上告』

林田力 東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った 東急不動産係長脅迫電話逮捕事件 二子玉川ライズ反対運動 東急リバブル広告 東急ストアTwitter炎上 東急ホテルズ食材偽装 東急ハンズ過労死 ブラック企業・ブラック士業 脱法ハーブにNO 東京都のゼロゼロ物件 東急不買運動 東急リバブル東急不動産不買運動 アマゾン ブログ ツカサネット新聞 リアルライブ 本が好き v林田力 家計簿 ワンピース 韓国 江東区長選挙 東陽町 世田谷区 Hayashida Riki hayariki tokyufubai amazon wiki wikipedia facebook
Yahoo!検索