足温ネット見学

林田力

市民団体「原発いらない江東区のひとたち」は2014年3月9日に東京都江戸川区の寿光院にある市民太陽光発電所を見学した。寿光院の太陽光発電所はNPO法人「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」(足温ネット)が運営する(市民発電プロジェクトえど・そら)。

寿光院の屋根に太陽光パネルが設置されている。寿光院は浄土宗の寺院であるが、一般的な仏教寺院と異なり、洋館のような趣である。しかし、仏教らしくない訳ではなく、むしろ中国に渡る前のインド本来の古来のようなイメージを感じる。

最初に奈良由貴・足温ネット代表が大枠を説明した。太陽光発電所には1号機と2号機がある。1号機は余剰電力を売電している。2号機は全量買い取りである。

続いて寿光院住職の大河内秀人氏から詳細説明がなされた。大河内住職は国際NGO活動(パレスチナ問題など)や子どもの人権擁護の運動に取り組んでいた。マンションの一室を小松川市民ファームとし、地域NGOの共同スペースに使っている。寿光院は江戸時代から存在する。最近では合同墓の需要もある。

太陽光パネルは1999年に現在の建物を建設した時に設置した。南側に境内と墓地があるという立地を活かした。太陽光パネル設置に最適化するように屋根の角度も計算して建てた。太陽光パネルは熱くなると発電効率が落ちる。このために夏場は水をかけて冷やしている。水そのものの冷たさよりも、水が蒸発する時に奪う熱で冷える。

再生エネルギーに取り組む背景として、ダムの建設で水没する村の人々の苦しみに触れてきたことがある。ダムにしても原発にしてもエネルギー需要から正当化されるが、需要が増えている訳ではない。エネルギー損失が大きい。熱が欲しいならば燃料を使うべきである。電気で熱を使うと損失を増やす。

電気使用は家庭よりも産業の割合が高い。私達が電気を使うから原発が必要との論理は嘘である。ピーク時の電力を補うために原発やダムを作ることは非合理で非効率である。

事業用は基本料金が高くて従量制の部分が小さい。企業は使えば使うほど単価が安くなる。節電のインセンティブが働かない。

発電だけでなく、節電の活動もしている。省エネ製品への買い換えで節電ができると考えた。オール電化などによって家庭の電力消費量が増えている。「ものぐさ省エネゲーム」というシミュレーションゲームを開発し、書籍にして出版した。電気と車を減らす。大きな原因を作っているものに投資する。

冷蔵庫を買い換える人に融資し、モニターになってもらった。その結果、省エネを謳っている冷蔵庫もカタログ値でサバを読んでいることが分かった。しかし、古い製品はもっとサバを読んでいたため、買い換えることでカタログ値の比較以上の効果が出た。省エネの費用対効果は高い。省エネ分を太陽光発電することは大変である。

家を電卓のように太陽光発電で賄うようにしたい。性能のよいバッテリーとの連携が課題である。夜間のショーウィンドーの照明を太陽光発電で賄う事例がある。自分達の側に生きるための仕組みを取り返していこうという思想に立っている。

私たちのスタンスは、現場から考えることである。実際にやってみる。我慢はしない。たとえば省エネゲームでも「クーラーを使わない」ということは考えない。「頑張らなければならない」は長続きしない。

自分達の中に資産を確保していく活動が市民社会の中に必要である。寺は昔から地域の人達が支えてきた。大旦那に支えられている寺は長続きしない。アンコールワットはアンコール王朝の滅亡と共にジャングルに埋もれてしまった。

続いて山崎求博・足温ネット事務局長が説明した。第一発電所は約600万円かかった。買い取り制度は我々の電気料金で成り立っている。それが大企業のメガソーラに持っていかれることは面白くない。そこで太陽光発電所に取り組むことにした。擬似私募債という方法で資金を集めた。1ヶ月で約500万円を集めた。

営利法人ではないので配当はしない。利益が出たら、福島「かーちゃんの力・プロジェクト」のキムチなど社会的な市民活動を経済的に支援することに使いたい。キムチなどと交換できる葉書商品券を送付する。具体的な製品は検討中である。

冬場は建物の影になって想定したほどの発電を得られていないという問題が発覚した。業者に善処を求めている。太陽光パネル設置時は業者に予測値を事前に出してもらうことが重要である。太陽光パネルに対する保守料のようなものはない。保険には入っている。東京電力から発電所運営に必要な電気を買わなければならないが、それが高い。

太陽光発電では送電ロスの問題が指摘されるが、技術的に解決できる。ここの規模では送電網に届く前に消費されるため問題ない。

市民発電所の運営主体は小規模ではNPO法人、大規模になると株式会社が適している。株式会社としながら定款に配当しないと定めたところもある。株式会社は資本によって議決権が決まるが、NPO法人は一人一票で民主的である。

建設場所を見つけることが難しい。適した場所を見つけたとして、所有者の理解が得られるかが問題である。屋根貸しの月額賃料は千円程度である。不動産所有者の経済感覚では月額数万円くらいであるが、それでは事業採算が厳しくなる。不動産所有者の事業への理解が必要である。

電力自由化を見越して活動する。買い取り制度の行方など市民として考えなければならないことはある。そこで市民電力連絡会が結成された。

東京電力以外の電力会社に売るところも増えていく。マンション丸ごとで契約すれば、電力会社を選択できる。

日本で唯一、屋久島は発送電が分離している。小さいところでは900世帯で組合を結成している。これが現行制度で成り立つならば、可能性が大きい。

地域で市民が発電する意義を考える。地域に住む人達がプロジェクトを所有している。利益が上がれば地域に戻す。お金の流れる仕組みを地域で作る。自治体の理解が浅い。自治体の空き地利用を交渉するが、歯牙にもかけない。自治体は経済的な利用を優先する傾向がある。

奈良代表も補足説明をした。東京電力の電気は買わないという意思表示も考えていくべきである。買い取り制度は制度設計が間違っている。建設していないメガソーラーがある。場所も決まっていない事業者もいる。メガソーラばかりに事業の旨味を取られても面白くない。

自然エネルギーは地産地消である。小規模電源を主とすべきである。ドイツは市民本位のために成功した。イギリスは企業主導にしたので失敗した。日本のネックは送電網である。日本も昔は自治体が発電していた。それが戦争などで大規模化した。江東区の地域に見合う活動を考えて欲しい。たとえば市民共同節電所を作る。市民ファンドを作る。節電の方が費用対効果はある。

送電網の利用料金が高いことは問題である。一方で誰も使わないところにメガソーラを作るなと思う。やはり地産地消である。遠くで発電した電力を持ってくるという発想が問題である。

参加者の質問の中で印象に残ったものは「福島とつながることは何かしているか」である。福島「かーちゃんの力・プロジェクト」のキムチやおつけものを購入しているとの回答であった。足温ネットは福島原発事故以前からの活動であるが、福島を経済的に支えている。

寿光院
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