大艦巨砲主義の失敗に学ぶ

林田力

大日本帝国海軍の失敗原因として大艦巨砲主義への固執があげられる。戦艦大和は世界三大無用の長物と言われる。これは現代日本の大型開発や企業の過大設備投資の失敗の比喩としても使われている。たとえばシャープの液晶工場の投資を戦艦大和になぞらえるなどなどである。重厚長大から分散型への転換期にあって、大艦巨砲主義批判は有用な教訓になる。

これに対して、ある軍事ブロガーの記事では「現実の日本海軍を見ると、大艦巨砲主義の形跡は見られません」と指摘する(dragoner「”大艦巨砲主義”のまぼろし」Yahoo!ニュース個人2015年4月14日)。陸軍が万歳突撃の突撃馬鹿一色ではなく、硫黄島などでは縦深防御を取り入れたように固定観念から脱却した視点は知的好奇心を刺激する。それでも大艦巨砲主義批判は現代において大いに学ぶ価値があると考える。

記事の指摘には説得力がある。日本海軍は大和建造と平行して、空母や空母改装予定艦の建造を進めていた。太平洋戦争緒戦の零戦の活躍も日本海軍が航空戦力を整備していた結果だろう。空母同士の実戦での対決は後にも先にも日本と米国のみである。日本軍が大型戦艦に偏重した訳でも、航空戦力を軽視した訳でもないことは認めてもよい。

しかし、だからこそ、戦艦大和の失敗は教訓になる。戦艦に偏重した訳でもないにも関わらず、世界最大級の戦艦が建造された結果は、大艦巨砲主義を盲信して世界最大級の戦艦を建造した以上に悲劇的である。大艦巨砲主義を妄信した結果、戦艦大和が建造されたならば主観的には意図と結果には一貫性がある。ところが、航空戦力の重要性を認識しながら、戦艦大和という世界最大級の大型戦艦が建造されてしまったならば意図と結果が乖離している。意図と行動の乖離は日本軍の体質的な問題点である。

現代日本の失敗も時代遅れの考えを完全に妄信していた訳ではないのに、その考えに沿った行動を改められないことが問題である。重厚長大の時代でないと指摘されていながら、巨大生産設備を投資する。土建国家の時代でないと指摘されていながら、巨大大型開発を進める。人口減少を指摘されていながら、新築マンションを建設する。故に戦艦大和批判は有益である。

日本軍は航空戦力に十分力を入れており、むしろ戦艦大和の建造はバランスの取れたものとの見方もあるだろう。これに対しては選択と集中の観点から異論を提示できる。小国がバランスよく投資したら、全ての分野において大国に劣後する。むしろ、小国が大国に対抗するためには、資源を集中して特定の分野で抜きん出る必要がある。

大艦巨砲主義批判は、航空戦力を軽視していたことへの批判というよりも、もっと航空戦力に集中することを求めたものである。バランスのよい投資自体が批判される。現実に航空主兵論からは戦艦無用論も主張されていた。

最後に記事では日本の根本的な失敗原因を米国と戦争したこととする。「戦略の失敗を戦術で補うことが出来ない」の格言があるように上記結論に異論はない。しかし、根本的な誤りとは別に日本軍は戦術面でも失敗を重ねてきた。それらも検証して教訓とする価値がある。

むしろ国家戦略上の失敗は国家固有の教訓となるが、よりミクロなレベルの失敗は企業などにも教訓として応用しやすい。典型は特殊日本的精神論批判である。今後も大艦巨砲主義批判を教訓として活用する場は多いだろう。

『新・自衛隊論』

林田力

自衛隊を活かす会編著『新・自衛隊論』(講談社現代新書、2015年)は日本国憲法の下で誕生した自衛隊を活かすための提言である。自衛隊を活かす会は柳澤協二・元内閣官房副長官補が代表、伊勢崎賢治・東京外国語大学教授、加藤朗・桜美林大学教授が呼びかけ人を務めている。本書は数多くの安全保障の専門家や元幹部自衛官が執筆している。執筆者各々の見解が書かれており、必ずしも会として統一されたものではないが、様々な意見に触れることができる。

本書は自衛隊を否定せず、一方で集団的自衛権や国防軍に走る訳でもないというスタンスから書かれている。単純な賛成派にも反対派にも与しないというスタンスである。単純な賛成派に対しては、安倍政権が米国との防衛協力に前のめりになっていることの問題点や無謀さを現場の知見から批判する。単純な反対派に対しては「ただ反対だけを唱えていても、そこには現実味がない」との煽り文句に凝縮されている。

安全保障の議論は賛成派も反対派も「国民を守る」「殺し殺される国にしない」と観念をぶつけるばかりの傾向がある。両者の対立は激化しているが、その間には多数の政治的発言をしない人々が存在する。彼らは無関心層と形容されるが、安全保障政策に無関心とは限らない。単に冷戦を引きずっているようなイデオロギー対立に無関心なだけかもしれない。本書の議論は純粋に安全保障政策に関心がある人々に届く議論である。

これは反対派には耳が痛い話である。戦後日本の平和主義には兎に角「平和が好き」「戦争が嫌い」という思いがあったことも否めない。軍事について考えることも嫌である。保守派からは「平和ボケ」と揶揄されるが、「平和ボケ」で何が悪いという発想もある。そのような立場からは、本書のような自衛隊の最前線の現場の議論をすること自体に拒否感を抱くかもしれない。本書のような議論が政治や社会の中に入ってくること自体を危険視するかもしれない。

しかし、反対派の課題は無関心層に問題意識を広げることになっている。「もっと政治に関心をもって欲しい」と言われるが、その自分達が「軍事の話はしたくない」では説得力がない。野球ファンがサッカーファンに「野球に興味を持て」と押し付けることが不毛であることと同様、政治ファンが野球ファンに「政治に興味を持て」と押し付けることも不毛である。

本書で注意すべきところは、執筆者の元自衛官が将官クラスであり、本当の現場ではないことである。本書は自衛隊が平和憲法の下で活躍できる可能性を持った組織であるというスタンスであるが、現実の自衛隊はパワハラやイジメなどの旧軍のような問題を抱えている。これは軍隊的組織に必然的な悪癖との指摘もある。その意味では日本国憲法が陸海空軍その他の戦力を保持しないと社会から軍隊的組織の一掃を定めたことに積極的な意義があると考えることもでき、自衛隊を積極的に肯定して市民権を得させることは危険とも考えられる。

但し、これも従来の左翼革新的な「経済の軍事化」「社会の軍事化」批判は届かない。軍隊的精神が社会、生活に入り込むことの嫌悪感は勿論あるが、既にブラック企業や学校の組体操など軍隊的組織が入り込まなくても十分に抑圧的な集団主義がある。軍事化を批判するだけでは、目の前の問題の解決策にはならず、既得権益擁護と受け取られても仕方がないだろう。自衛隊内部の問題は自衛隊を忌避するのではなく、ドイツのように制服を着た市民として徹底する(制度的には労働基本権の保障など)ことが解決策になるだろう。


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