参与連帯

林田力

参与連帯(さんよれんたい、People's Solidarity for Participatory Democracy; PSPD)は1994年に発足した韓国の市民運動団体である。参与連帯の活動領域は幅広い。落選運動は有名であるが、情報公開請求、株主代表訴訟、賃借人の権利擁護、携帯電話の料金引き下げも行っている。2008年の米国産牛肉輸入再開問題に対するロウソク集会・ロウソクデモでも主導的役割を果たした。

東京都知事選挙において参与連帯を評価する宇都宮健児氏と、脱原発至上主義の細川護煕氏と一本化しなかったことは当然である。「脱原発以外の問題は関係ない」というスタンスから遠いところにある。脱原発小児病とは異なる、地に足の着いた市民運動を志向する。

参与連帯は開発問題でも発言している。釜山広域市海雲台区での超高層ビル建設に対して「民間事業者に不動産開発利益を作って与える事業。開発による砂浜流失や交通混雑について対策を準備する必要がある」と批判する(「海雲台を象徴する101階建てビル、中国企業が建設へ(2)」中央日報2013年10月18日)。日本では住民運動と市民運動の間には相互にギャップがあり、見習う価値がある。

社会福祉分野では国民生活最低線運動に取り組む。国民が遍く社会保障サービスを受けられるようにする方向を志向する。たとえば年金問題では所得下位の高齢者だけに支給する基礎老齢年金制度が存続することに対して、「政府案は国民年金に加入し誠実に保険料を払っている人を逆差別するもの。公約通りすべての高齢者に20万ウォンを支給すべき」と批判する(「野党「すべての高齢者に支給を」…基礎年金法の国会通過厳しく=韓国」中央日報2013年09月26日)。

これは低所得者だけの主張にはなっていない。「逆差別」という表現は日本の左翼では考えられない。ホワイトカラー層を含む会員基盤の厚さを反映した主張になっている。福祉を貧困層など特定の人だけでなく、全ての国民のためのサービスと捉える視点は宇都宮氏とも共通する(宇都宮健児『希望社会の実現』共栄書房、2014年、47頁)。それが生活保護バッシングなど福祉攻撃への対抗論理になる。

参与連帯の注目すべき活動に司法監視がある。法曹関係者をモニターし、人事評価書を発表し、市民の人権を侵害する人物を告発する。これは日本でも重要である。日本でも数多くの裁判闘争があり、裁判所の問題は認識されているが、裁判官個人を継続してモニターする意識は低い。

たとえば北本市いじめ自殺裁判と最高裁裏金裁判は、どちらも酷い裁判として各々のニュースに接した人々からは批判された。しかし、両裁判が同じ裁判官(東京地方裁判所民事第31部、舘内比佐志裁判長、後藤隆大裁判官)が担当したという事実はあまり知られていない。漠然と「裁判所はダメだ」「司法は反動化している」と言うだけでは、改善につながらない。具体的に問題裁判官を明らかにすることが牽制になり、改善になる。

また、弁護士についても金儲け優先で倫理観を喪失し、ブラック企業に脱法行為を指南するブラック士業が社会問題になっている。このブラック士業は宇都宮氏の落し物という側面もある。宇都宮氏は多重債務問題に取り組み、大きな成果を出した。一方で、その成果に便乗した過払い金返還請求専門という金儲け第一の弁護士を生み出してしまった。宇都宮氏の日弁連会長当選は、その種の金儲け弁護士の一掃が期待されてのものであった(林田力「宇都宮健児日弁連新会長の課題はモンスター弁護士の排除」PJニュース2010年3月27日)。

ところが、日弁連会長在任中に東日本大震災と福島第一原発事故が襲い、被害者救済に奔走したために、この面での活動は宿題を残した。宇都宮氏の成果であるグレーゾーン金利撤廃によって過払い金バブルは崩壊し、金儲け弁護士は過払い金返還請求以外の分野に進出して問題を引き起こしている。新たにブラック士業という言葉が生まれるまでになった。ブラック士業の監視と告発は、司法修習生の給費制など弁護士会側の主張への市民の理解を得るためにも有益である。

参与連帯とは

林田力

日本海賊党はシリーズ「2014東京都知事選をふりかえる」第6回「参与連帯とは」を2014年2月28日にニコニコ生放送などで放送した。2014年2月の東京都知事選挙で候補者の宇都宮健児氏が言及していた韓国の市民運動団体・参与連帯について議論する。ゲストは韓国の政治事情に詳しいレイバーネット日本の安田幸弘共同代表である。聞き手はココペリ氏(宇都宮選対サポータス)、井上大輔氏(宇都宮選対サポータズ)、林田力である。

言うまでもなく日本と韓国では様々な相違がある。単に韓国で成功したという理由だけで、日本で真似事をすることが成功をもたらすことにはならないし、適切でもない。宇都宮氏による参与連帯の持ち上げもシニカルな見方をすれば、弁護士で市民運動家の朴元淳氏のソウル市長当選と自己を重ね合わせる選挙キャンペーンに過ぎないとの見方も成り立つ。

しかし、安田氏の話を聞き、日本版参与連帯の意義は大きいものと考える。その意義は日本の既存の市民運動に対する破壊的効果を持ちかねないほどである。宇都宮氏が日本版参与連帯を提唱することは非常に勇気があると言える。

まず参与連帯の活動領域は幅広い。安田氏の言葉を借りれば「市民運動のデパート」である。韓国の社会運動について調べれば、どこでも参与連帯が登場する状況である。石を投げれば参与連帯に当たるようなものである。これは細分化された日本の運動状況が見習わなければならないことである。

これは脱原発や秘密保護法反対などのメジャーなテーマに皆が結集するということではない。反貧困運動や消費者運動や開発反対の住民運動などの個別テーマに専門性を持って取り組むことである。あくまで管見であるが、これは細川護煕陣営の脱原発至上主義の対極にある。脱原発至上主義に対して福祉や反貧困などの政策も掲げた宇都宮氏が参与連帯を持ち上げ、それが宇都宮支持者の心に響いたことは単なる選挙キャンペーン以上の理由がある。

参与連帯も最初から専従職員を持てるような大きな組織であった訳ではない。参与連帯が様々な個別テーマに専門性を持って取り組めたことは疑問である。安田氏によると様々な分野の研究者を集めたためという。そのために「市民なき市民運動」と揶揄されることもあったという。

日本版参与連帯を考えた場合、アカデミズムの研究者を揃えることを真似することは難しい。仮にできたとしても、既存の左翼的な運動に屋上屋を重ねるようにしか映らない危険が高い。現実に2012年東京都知事選挙の「人にやさしい東京をつくる会」の文化人の集まりは、そのようなものであった。そこには新鮮味がない。

日本版参与連帯を考える場合は左翼的権威とは無縁で個別の問題に取り組んでいる市民層によって専門性を担っていくべきであろう。たとえば宇都宮氏の公約では犬猫の殺処分ゼロが評価されたが、この政策の価値はアカデミズムの文脈では中々見出しにくいものである。

次に参与連帯の支持層である。韓国では学生運動や労働運動が古くから存在したが、参与連帯は市民運動という点に新しさがある。安田氏の言葉を借りると、「プチ・ブル」的な性格もある。そのために「都会の余裕のある市民が趣味でやっている」的な批判もあるという。

これに対して日本の市民運動には左翼の手垢が付いたイメージがある。「プロ市民」などという言葉があるくらいである。私は東急不動産消費者契約法違反訴訟原告として開発反対の住民運動と接点があるが、住民運動家には市民運動的傾向への違和感がある。消費者運動となると政治的中立を持って旨とするような風潮がある。市民運動が広い市民に訴求されていない。それらの層に訴求する運動を作ることが保守の固い岩盤を崩す上でも重要である。

この点について安田氏は在特会などネット右翼(行動する保守)の運動が政治への問題意識を持った人々を惹きつけており、その手法は学ぶ価値があると指摘した。この指摘には既存の左翼はシニア世代の既得権擁護の運動に映るという観点から同意する。

最後に日本版参与連帯を考える上で留意すべき点は地域性である。参与連帯は建設反対運動や賃借人追い出し反対運動など地域性の高い運動にも取り組んでいる。日本でも、これらの運動に取り組むことは住民運動と市民運動の距離を埋めるためにも重要である。これらの運動は地域の活動が重要になる。ソウルも多くの区に分かれているが、安田氏によると、参与連帯は地域毎の活動よりもセンターによる分野別縦割りが特色という。

この点は日本版参与連帯では要検討である。ソウル特別市は1千万人超で人口面では東京都に匹敵するが、面積約600キロ平米は東京都区部程度である。東京都の特別区には基礎自治体の意識が強く、江東区と大田区では領土問題まで抱えている。東京都を見据えた場合、センター一括では地域への運動の広がりは覚束ない。

番組では方向性として「文化運動的なこと」とのアイデアが出た。これは地域性が欠けている状況の中で実現可能な現実解ではある。海賊党主催番組らしい帰結でもある。これは各地から集まって一つの勢力・一つの文化を作ることはできるが、地域で多数派を作ることにはならない。インターネット上などで面白いことをやっている人がいて、緩やかにつながるということは放っておいても自然に実現していく。どのように地域に広げていくかという点が大きな課題である。


     
     
     
【既刊】『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』『東急不動産だまし売り裁判購入編』『東急不動産だまし売り裁判2リバブル編』『東急不動産だまし売り裁判3』『東急不動産だまし売り裁判4渋谷東急プラザの協議』『東急不動産だまし売り裁判5東京都政』『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』『東急不動産だまし売り裁判7』『東急不動産だまし売り裁判8』『東急不動産だまし売り裁判9』
『東急不動産だまし売り裁判10証人尋問』『東急不動産だまし売り裁判11勝訴判決』『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』『東急不動産だまし売り裁判13選挙』『東急不動産だまし売り裁判14控訴審』『東急不動産だまし売り裁判15堺市長選挙』『東急不動産だまし売り裁判16脱法ハーブ宣伝屋』『東急不動産だまし売り裁判17』『東急不動産だまし売り裁判18住まいの貧困』『東急不動産だまし売り裁判19ダンダリン』
『東急不動産だまし売り裁判訴状』『東急不動産だまし売り裁判陳述書』『東急不動産だまし売り裁判陳述書2』『東急不動産だまし売り裁判陳述書3』
『東急大井町線高架下立ち退き』『東急不動産係長脅迫電話逮捕事件』『東急コミュニティー解約記』『東急ストアTwitter炎上』『東急ホテルズ食材偽装』
『裏事件レポート』『ブラック企業・ブラック士業』『絶望者の王国』『歌手』『脱法ハーブにNO』『東京都のゼロゼロ物件』『放射脳カルトと貧困ビジネス』『貧困ビジネスと東京都』
『二子玉川ライズ反対運動1』『二子玉川ライズ反対運動2』『二子玉川ライズ反対運動3』『二子玉川ライズ反対運動4』『二子玉川ライズ反対運動5』『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』『二子玉川ライズ反対運動7』『二子玉川ライズ反対運動8』『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』『二子玉川ライズ反対運動10』『二子玉川ライズ反対運動11外環道』『二子玉川ライズ反対運動12上告』

林田力 東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った 東急不動産係長脅迫電話逮捕事件 二子玉川ライズ反対運動 東急リバブル広告 東急ストアTwitter炎上 東急ホテルズ食材偽装 東急ハンズ過労死 ブラック企業・ブラック士業 脱法ハーブにNO 東京都のゼロゼロ物件 東急不買運動 東急リバブル東急不動産不買運動 アマゾン ブログ ツカサネット新聞 リアルライブ 本が好き v林田力 家計簿 ワンピース 韓国 江東区長選挙 東陽町 世田谷区 Hayashida Riki hayariki tokyufubai amazon wiki wikipedia facebook
Yahoo! Japan