新自由主義的脱原発と脱原発運動

林田力

東京都知事選挙における細川護煕陣営の脱原発至上主義(脱原発オンリー路線)は一種のファシズムであり、到底受け入れられるものではない。一方で脱原発運動に新自由主義的脱原発を理解しようという動きがあったことは肯定的に評価する。「新自由主義者の脱原発は真の脱原発ではない」などと主張しがちな革新原理主義者よりは何百倍も上等である。

管見は示威行動などで原発を稼動停止に追い込んだとしても、原発稼動によって儲かる社会経済的状況が存続する限り、原発再稼動は続くと考える。それ故に電力自由化による脱原発を支持する。しかし、新自由主義的脱原発と脱原発運動の蜜月は非常に困難である。

新自由主義的脱原発は「原発は非効率な発電方法であり、電力自由化によって真の意味で競争市場を構築すれば原発は淘汰される」とする考えである。これを管見は支持するが、これを実現するならば、電力会社に原発を稼動する自由を認めなければならない。

原発に伴う様々な外部不経済のコストを正当に電力会社に負担させる制度設計が大前提であるが、それでも原発を稼動させたい電力会社は「御勝手に」という立場である。原発で発電された高コストの電力を購入し続ける需要者はいないため、原発で発電する電力会社は経営が行き詰る。この結果、脱原発が実現する。

ところが、今日の脱原発運動のホットイシューは再稼動阻止である。仮に「今後数十年、日本の電力供給の1割を原発で賄う」という主張があったとする。福島第一原発事故以前は3割を原発で賄っており、それに比べれば立派な脱原発である。しかし、これは脱原発運動には受け入れられない。原発ゼロを経験した今では、僅か一基であっても再稼動は容認できない。そこまで脱原発運動は来ている。故に新自由主義的脱原発と脱原発運動の蜜月は難しい。

実際、過去に橋下徹大阪府知事が脱原発世論をリードしていた時期もあったが、大飯原発再稼動容認によって激しく非難されることになる。大飯再稼動は容認できないという脱原発運動の立場は理解できる。一方で大局的に見れば橋下氏を追い詰め、石原慎太郎氏との連合に追いやってしまった側面もある。脱原発とは関係ない左翼イデオロギー的な立場には橋下氏を裏切り者に位置付けたい意向があるが、それは脱原発シングルイシューとは無関係な事情である。

もし脱原発運動が新自由主義的脱原発を理解したいならば、橋下氏や古くから電力自由化による脱原発を主張する「みんなの党」に学べばいい。何もぽっと出の細川氏や小泉純一郎氏に頼る必要はない。みんなの党や橋下氏を評価せず、細川・小泉連合を支持する理由は、後者は具体的なことを語らず、とりあえず新自由主義的脱原発と脱原発運動の軋轢を感じずに済むためである。

脱原発運動側からの新自由主義的脱原発アプローチの困難は1.13東京連絡会・第5回「都民参加への模索」研究会「税理士の目から見た、脱原発」で確認済みであった。東京電力自己破産という興味深いテーマであったが、発送電分離など電力自由化の形についての議論は全く深まらなかった。脱原発運動にとっては東電解体も制度改革も脱原発のためである。送電網を切り売りすればいい、特定目的会社を作れば何とかなる程度の考えになる。

しかし、それでは電力自由化を考えている人々の支持を得て運動を広げることにはならない。電力自由化は福島原発事故以前から論じられているテーマである。Essential FacilityやLast One Mileなどの議論ができないと厳しい。「そのようなことよりも目の前の原発を廃炉にすることや原発事故被害者救済の方が重要だ」は一つの価値観である。管見の脱原発も経済合理性以上に人権が大きなウェイトを占める。

逆に電力自由化の立場からすると原発を使うか使わないかは電源選択という瑣末な問題であり、電力市場をどうするかが本筋となる。橋下氏を擁護するならば大飯原発の再稼動を認めるか否かは一時の問題であり、どのように小規模分散型電源中心にしていくかが脱原発の道筋で決定的に重要となる。

このような考えを脱原発運動が理解できるかが問題である。理解できないならば、いつかは新自由主義的脱原発に裏切られたと感じて終わる。それは新自由主義的脱原発が裏切った訳ではなく、脱原発運動側の理解不足が原因である。


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