2014年東京都知事選挙は舛添要一氏が当選

林田力

東京都知事選挙(2014年2月9日)は舛添要一・元厚生労働相が圧勝した。東部勝手連で宇都宮健児・元日弁連会長を応援した立場として残念であるが、宇都宮氏が届かないとの前提の下では理解可能な結果である。

「都政わいわい勉強会in東部地区」では2月4日に主要3候補の介護政策を比較したが、細川護煕氏の政策は舛添氏以下であった。たとえば社会保障について宇都宮氏も舛添氏も行政の責任で提供することを公約に掲げているが、細川氏は「自助・共助・公助」と行政の責任のウェイトを下げている。マスメディアが当初描いた二強対決の構図で舛添氏と細川氏の政策を比較すると、舛添氏を選択することになる。

私の毎日新聞ボートマッチ「えらぼーと」での候補者との一致率は以下の通りである。姫治けんじ 11%、宇都宮健児 67%、ドクター・中松 50%、田母神俊雄 11%、鈴木達夫 61%、中川智晴 17%、舛添要一 28%、細川護熙 22%、マック赤坂 56%、家入一真 33%、内藤久遠 0%、金子博 0%、五十嵐政一 28%、酒向英一 0%、松山親憲 0%、根上隆 0%。宇都宮氏との一致率が高いことは当然として、舛添氏と細川氏では舛添氏の一致率が高い。

実は舛添氏の福祉政策は中々のものである。「福祉の舛添」は東急ホテルズらの食材偽装とは異なり、中身がある。たとえば特別養護老人ホームの拡充を掲げている。これは東京都議会議員選挙ならば「日本共産党の候補者か」と突っ込みたくなるところである。この「福祉の舛添」を崩せなかったことが課題である。舛添氏と対抗する上で石原都政の福祉切捨て批判はピント外れになる。「福祉の舛添」を崩す方策として3点が考えられる。

第一に政策比較である。宇都宮氏の福祉政策と舛添氏の福祉政策を並べて見れば宇都宮氏の方が具体的で優れている。政策の評価尺度は、かっこいい政策を言っているかではなく、困っている人々にどれだけ役に立つかである。これを「都政わいわい勉強会in東部地区」は実施したが、有権者一般には浸透しなかった。宇都宮氏が指摘するように公開討論会の中止が痛い。この点でも中止の直接の原因である細川陣営の責任は大きい。

第二に福祉政策の担い手とは相容れない舛添氏の人間性を批判することである。この点では「舛添要一を都知事にしたくない女たちの会」などが奮闘した。しかし、有権者の大半は政治能力があれば私生活は問題ないという感覚が強かった。もし、これが決定打になるならば隠し子発覚などの山本太郎参議院議員も批判されなければならない。選挙中は隠していた点で山本議員は舛添氏以上に悪質となる。

第三に「福祉の舛添」と矛盾する舛添氏の過去の政治姿勢を批判することである。実際に厚生労働大臣として後期高齢者医療制度を導入したことなどは宇都宮陣営の確認団体ビラも批判した。これは正論であるが、残念なことに有権者は過去からの一貫性という観点では政治家を評価しない傾向がある。

あれほど米軍基地に苦しめられている沖縄県民でさえ、一度は普天間基地の辺野古移転を認めた候補者が、沖縄県知事選挙の公約で県外移転を掲げると、辺野古移転問題は争点ではなくなってしまった。その程度の公約は容易に裏切られる。それは沖縄県民が現在進行形で体験させられている。

舛添氏の政策は福祉政策で見たように安倍自民党と同じではない。自民党に反旗を翻して新党を立ち上げた経歴もある。当選後には安倍首相との距離を指摘する報道も出た(「舛添要一・新東京都知事 安倍首相と微妙な「距離」」毎日新聞夕刊2014年2月12日)。「STOP安倍政権」は内部のモチベーションを高めるスローガンにはなる。都外の関心を惹き、支援を受ける上でも有益である。しかし、平均的都民の琴線に響くものではない。まして「STOP安倍政権のために小異を捨てて大同団結しろ」は大義にならない。

その舛添氏は当選後に福祉政策の目玉として未利用の都有地に介護施設や保育所を造るアイデアを披露した(「舛添氏、福祉政策の目玉 都有地活用、実現する? 利便性低い土地多く」産経新聞2014年2月11日)。これは2012年東京都知事選挙から宇都宮氏が公約に掲げていたことである。この政策は遊休都有地が不動産業者に払い下げられ、超高層マンションが建設され、住環境が破壊される状況を転換する上でも有益である。このような政策が舛添氏の口から出てくることにも宇都宮選挙の意義はあった。

この都有地活用政策を報道した産経新聞はタイトル「実現する? 利便性低い土地多く」が示すように否定的な文脈で紹介する。記事の末尾には後藤春彦・早稲田大学教授の以下のコメントを掲載する。「都有地といっても交通の便が悪いようなところに福祉施設をつくっても負債が膨らむだけ。行政が戦略的に規制緩和や補助を行うなどし、民間の力を借りて中心地に福祉医療施設を誘導するようにすべきだ」

ここには福祉施設の新設を巡る政策の対立軸が示されている。この対立軸において舛添氏の政策は宇都宮氏と同じ側にある。どこまで舛添都知事が本気で取り組むかは未知数である。民間活力・公的責任放棄路線に流される可能性は小さくないものの、舛添都知事が対立軸を打ち出すならば、舛添都政を支えるという選択肢もある。


 
           
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