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林田力「国際裁判管轄」

今日、インターネットは急速な発展を遂げているが、そこには個人に対する誹謗・中傷、プライバシー権・肖像権・知的財産権の侵害、わいせつ物、児童ポルノ、ヘイトスピーチ、ドラッグの提供、オンラインカジノ等を行うサイトも多い[1]。インターネットが直接人を殺したり傷つけたりすることはないが、違法なサイトが蔓延するならば社会の安全にとって見過ごせない問題である。

インターネットは国境のない世界である。その意味で国際化の最先端である。世界中何処のウエッブ・サイトへも、世界中の何処からでも、何時でもアクセスが可能である。ユーザーは国境を意識しないで、国内のサーバーに開設されたサイトを見るのと同様に外国のサーバーに開設されたサイトを閲覧することができる。

一方、法律を定めるのも、執行するのも基本的には国家である。とりわけ上にあげたようなサイトの違法性は社会の価値観と密接に関わっており、国家によって法の内容はかなり相違するのが現状である。従ってある国では合法と評価されるサイトが別の国では違法とされることも多い。

国家権力の行使は領域内に限られるのが原則だが、そうするとサーバーを外国に置くだけで、内国の法律を免れることができ、内国の法益を害したとしても責任を追及できないことになる。この帰結は社会の安全にとって好ましくない。一方、内国からアクセスできるというだけでサイト管理者を内国法に基づいて責任追及できるとすれば、内国の法律を外国領域内に押し付けることになり、サイト管理者は世界中の国々から責任を追及されることになる。その結果、大変な混乱が生じるばかりか、インターネット上での諸活動(e.g.表現活動、電子商取引)の発展が阻害される。

このように内国のサーバーで開設されたならば違法となるサイトが外国で開設された場合の問題は難しい問題であるが、IT社会において避けて通れない問題である。この問題について米国では既に判例の蓄積が見られる。最近でもロシア人のコンピューター・プログラマー、スクリャーロフ氏が、米アドビシステムズ社の電子書籍向け著作権保護機能を解除するプログラムを作成しロシアのサイトにアップロードしたとして、20007月に米国デジタルミレニアム著作権法違反で逮捕され、論議を呼んだ。

この問題について米国では対人管轄権として現れている。そこでインターネット上の対人管轄権の先例となるリアルスペースにおける対人管轄権の判例を取り上げ、次にインターネット上の判例・学説を分析・検討する。最後に域外のサーバーから商標権侵害と猥褻物取締法違反の事案を取り上げ、検討したい。

 

リアルスペースにおける対人管轄権の判例

米国は連邦国家であり、各州はそれぞれ独自の法制度を有している。そのため米国ではどの州の裁判所に対人管轄権personal jurisdictionがあるか問題になる。インターネット以前にも交通機関や通信技術の発達により州境を越えた活動が増加したため、リアルスペースの事案では判例は蓄積されており、それらはインターネット上の事案の先例となるものである。又、この州際裁判管轄権の判例法理は国際裁判管轄権においても基本的にそのまま適用可能である。

World-Wide Volkswagen Corp. v. Woodson, 444 US 286 (1980).

自動車ディーラーは、たとえ自動車というものが何処かで事故を生じさせるかもしれないことを予見可能であったとしても、何処に移動するか分からない自動車によって生じる損害発生地の対人管轄に服さなくても良い。

Calder v. Jones, 465 US 783 (1984).

California州在住のテレビ・タレントである原告の名誉を毀損する記事が、被告によりFlorida州で書かれ編集された後、最大の購読者をCalifornia州に有する全国誌に掲載された。被告は、World-Wide Volkswagen事件に依拠しながら、問題の記事が読まれてCalifornia州で被害の効果を生じさせることを単に予見可能であったことだけでは、対人管轄権の肯定には不十分である、としてCalifornia州の管轄権を否定した。

しかし連邦最高裁は、Florida州の被告の不法行為が意図的にCalifornia州の原告に向けられているdirected atことを理由に、原告法廷地たるCalifornia州の被告に対する対人管轄権を、連邦最高裁判所裁判官の全員一致で認めた。法廷意見はRehnquist判事によって執筆された。

「本件では、訴えが生じた被告の行為の焦点は、原告に当てられている。名誉毀損を訴えられている記事は、California州住民によるCaliforniaでの行為に関するものである。その記事は、テレビのタレント活動の中心をCalifornia州に置くエンターテイナーの職業を攻撃するものである。その記事はCalifornia州の情報源を基に書かれたもので、原告の精神的苦痛と職業的評判の双方の損害の多くをCalifornia州で被っている。すなわち、記事と被害の双方の焦点はCalifornia州なのである。従って、被告のFlorida州における行為のCalifornia州での効果発生を理由に、Californiaの被告に対する管轄権行使は適切である」。

「原告は、的を定めないuntargeted過失責任を問われているのではない。むしろ、その故意による、不法行為と主張されている行為は明白にCaliforniaに向けられていたaimed at。被告は原告に壊滅的な影響が生じるおそれを承知の上で記事を書きかつ編集を行った。更に、被害の多くは、原告が住み働いていていると共に問題の雑誌がもっとも購読されている州において生じることを、被告は知っていた。このような状況においては、被告の記事の内容が真実であることを示すために、『被告が法廷地州の裁判所へ召還されることをリーズナブリーに予見』しなければならない」。ここで本判決はWorld-Wide Volkswagen事件に依拠している。

 

 分析

Calder判決はeffects testを採用した。これは、域外被告が問題の行為をした際の意思に着目し、もし法廷地に向けられたものであると判断されれば対人管轄権を肯定するけれども、法廷地に向けられていない行為や単に偶然に法廷地で結果が生じた行為では管轄権が否定される。即ちCalifornia州住人に対し、意図的に向けられた不法行為に被告が参画していたために、域外被告への対人管轄権行使が肯定された。

World-Wide Volkswagen判決とCalder判決からは単に予見可能性があるだけでは不十分だが、法廷地原告に対する故意による加害行為の場合にまで対人管轄権行使から逃れられるわけではない、との結論を引き出すことができる。

 

インターネット上の事案

インターネット上の事案といっても様々な類型があり、従来の判例に現れた事案を分析すると、被告がオフラインでも積極的に活動していた事案、逆にサイト開設のみの受動的な事案、その中間的な事案に三分類できる。

 

 積極的事案

被告がウエッブ・サイトの開設以外で積極的な活動を法廷地州に向けて行っている場合で、これは管轄権がほぼ間違いなく肯定される。法廷地においてオフラインで活動していた場合、オンラインのみでも法廷地の住民と契約関係がある場合(Resuscitation Technologies, Inc. v. Continental Health Care Corp., 1997 US Dist. LEXIS 3523; Hall v. LaRonde, 66 Cal. Rptr. 2d 399 (Ct. App. 1997).)がこれにあたる。Cody v. Wardは詐欺的虚偽表示で、法廷地の原告と電話等にて直接接触・勧誘した。Heroes, Inc. v. Heroes Foundationは商標権侵害等で、法廷地での新聞広告をしていた。

CompuServe, Inc. v. Patterson, 89 F.3d 1257 (6th Cir. 1996).

被告はプロバイダである原告のサービスに加入し、自分が作成したシェアウェアを掲載した。原告は被告のシェアウェアと同様な機能の製品を販売し始めたが、原告ソフトの名称及びそれに使用された標章が被告のものと類似すると被告は主張し、その旨通知した。

原告は著作権非侵害及び不正競争をしていないことの宣言判決を求めて提訴した。地裁は、両当事者(Texas州とOhio)の電子的連結は微弱であり、対人管轄権の行使を支持するものではないとした。しかし控訴審は、原告が被告と該州との接触が対人管轄権の行使を支持するに足るという一応の証明をしたとして、地裁の却下決定を破棄し差戻した。

Ohio州のロングアーム法は、非住民が該州で任意の商取引にしたことと規定する。対人管轄には、接触の性格に応じて一般管轄と特別管轄があるが、原告は特別管轄を主張している。憲法上の問題は、管轄権の行使が公正な訴訟手続と実質的正義の伝統的概念と整合するといえるほど充分に、被告が該法廷地の州と接触をもったかどうかである。当控訴裁は繰り返し3つの基準を採用してきた。第1に、該州で活動する、または該州で結果を引き起こすという利点を意図的に利用したこと。第2に、訴訟原因が該州での行為から生じたこと。第3に、管轄権の行使が合理的といえる程度に、被告の行為または結果が該州と充分な実質的接触をもったこと。

判決は、上記3つの基準を検討した結果、被告が故意に、原告が運営するサービスを通して他州で製品を販売しようとしたとし、従って該サービスの本拠地である州の管轄に服することは合理的とした。

Edias Software International, LLC et al v. Basis International Ltd., 947 F. Supp. 413 (D. Ariz. 1996).

原告と被告は取引関係にあった。被告が原告を誹謗するサイトを開設したとして提訴した。判決は契約関係にあること、原告を名指しで非難しているため原告に向けられた行為であるとして管轄権を認めた。

Heroes, Inc. v. Heroes Foundation, 958 F.Supp. 1 (D.D.C. 1996).

被告は慈善団体でWashington Postとウエッブ・サイトに寄付を募る広告を掲載した。被告は商標権侵害で提訴した。判決は地方紙への新聞広告だけでも十分に管轄権を肯定できるとした。

Digital Equipment Corp. v. Altavista Technology, Inc., 960 F. Supp. 456 (D. Mass. 1997).

原告は著名検索エンジンAltaVistaを運営している。19963月、原告は被告からAltaVistaの商標権を譲り受け、逆に被告が社名とドメインに本件商標を使用することを許諾した。この使用許諾契約では被告が商品・サービスに本件商標を使用することは禁止されたが、被告はサイト上で公開した自社ソフトウェアに使用し始めた。これに対し、原告が契約違反、商標権侵害で提訴した。

地裁は管轄を認め、控訴審もそれを支持した。原告と被告の間にはライセンス契約があり、被告はMassachusettsの住民にもソフトウェアを販売しているから管轄権は認められる。

Zippo Mfg. Co. v. Zippo Dot Com, Inc ., 952 F.Supp. 1119 (W.D.Pa. 1997).

原告はPennsylvania州の会社であり、ライター等を製造している。被告はCalifornia州の会社であり、ドメインネームzippo.com, zippo.net, zipponews.comを使用して、インターネットのウエッブ・サイト、ニュースサービスを運営している。サイトは企業情報を含む。被告はPennsylvania州には事務所、従業員、代理人を有しない。加入者約140000人のうち約3000人がPennsylvania州の住民である。またPennsylvania州の7つのアクセスプロバイダと契約している。

原告は商標の価値希薄化等により提訴した。被告は対人管轄権の欠如及び法廷地の不適切を理由に、却下ないし移送を申立てた。判決は被告の申立てを棄却した。

伝統的には、外国の住民と取引をするために意図的に国境を超えた時、対人管轄権を行使することは正当であるとされる。取引がインターネットによるという理由だけで、結論を異にするべきではない。被告がPennsylvania州民と電子商取引をした行為が、Pennsylvania州での商取引の意図的な利用にあたるとして、管轄権が肯定された。

Panavision int'l, L.P. v. Toeppen, 938 F. Supp. 616 (C.D. Cal. 1996).

被告はIllinois州の住民で、ドメインネームのブローカーをしている。Panavisionのドメインネームも被告が登録している。これに対し、原告は商標権侵害で提訴した。判決は被告の州外の行為はCaliforniaに向けられており、有害な効果もCaliforniaに発生しているとして管轄権を肯定した。

American Network Inc. v Access America/Connect Atlanta, Inc., 975 F. Supp. 494 (SDNY 1997).

原告はNew York州のISPである。被告はGeorgia州のISPである。被告の事業所はGeorgia州にのみあり、その従業員は全員Georgia州の住民である。New York州には被告の財産はない。被告の会員の中でNew Yorkの住民は僅か0.08%である。被告によるドメイン名America.Netの使用に対し、原告は商標権侵害、不正競争で提訴した。

サイトには合衆国全土を対象にすると述べてあるし、New York州の住民の会員もいる。それ故、被告にとってサイトを公表することがNew Yorkに影響を及ぼすことは合理的に予見可能である。

 

 受動的事案

被告がユーザーに情報または広告を供給するウエッブ・サイトのみを開設している受動的passiveな場合で、それ以外の被告による活動の影響が法廷地州にはほとんどない場合である。この場合は管轄権が否定される傾向にある。Pres-Kap v. System Oneも管轄権否定例だが、本件は契約違反の事案でユーザーを符号契約から保護したものとも捉えられる。

Bensusan Restaurant Corp. v. King, 126 F.3d 25 (CA2 1997).

原告は著名なジャズクラブThe Blue Noteを経営し、The Blue Noteを商標登録している。被告はMissouri州で同名の小さなジャズクラブを経営し、サイトも開設している。原告は商標権侵害で提訴した。地裁は被告はサイトを開設しているだけで、New Yorkの住民にサイトにアクセスするように働きかけても、取引をしようともしていないとして管轄権を否定した(937 F. Supp. 295 (S.D.N.Y. 1996).)。控訴審もこれを支持する。

Smith v. Hobby Lobby Stores, Inc., 968 F. Supp. 1356 (WD Ark. 1997).

香港の被告が販売した人工のクリスマスツリーが最終的にArkansasの消費者に販売された事案である。被告のサイトがArkansasからアクセスできるという理由だけでは対人管轄権行使には不十分として、Zippo事件判決を引用しつつ、もっと多くの接触が必要であると指摘している。

Weber v. Folly Hotels , et al., 977 F. Supp. 327 (D NJ 1997).

原告はNew Jersey州の市民である。被告はイタリア企業であり、イタリア国内に主たる営業所を置く。イタリアに32のホテルを経営し、独立の子会社がオランダ、フランス、ベルギー、ニューヨークにホテルを所有運営する。New Jerseyではいかなる営業も行っていない。しかしインターネット上で、ホテルの部屋の写真、設備の説明、部屋数、電話番号を掲載している。199412月に原告はイタリアに旅行に行き、被告のホテルに滞在した。原告はホテルで転んでけがをした。19956月に原告はNew Jerseyの州裁に損害賠償請求訴訟を提起した。

原告は、ホテルの部屋や設備や施設を紹介する被告のウエッブ・サイトはNew Jersey州で宣伝広告をしていることと同じとして、New Jersey州の対人管轄権を主張した。これに対し、被告は対人管轄権の欠如を理由に却下を申立てた。

判決はウエッブ・サイトを根拠に管轄権を肯定することは、サイトを作成する任意のすべての人に全国的な、実際上は世界的な対人管轄権が存在することを意味するとする。そのような全国的な管轄権は、伝統的な対人管轄権の判例と整合しない。インターネット上の広告は、特定の法廷地に向けて行為すること、または特定の法廷地を意図的に利用することと等価ではない。インターネット上で単に役務や製品を広告する被告に対して管轄権を執行することは、修正14条の適正手続保障に違反する。

D. Mink v. AAAA Dev., LLC, 190 F.3d 333 (5th Cir.1999).

原告(控訴人)は家具小売業を営むTexasの住民である。971月に、販売情報と販売を逸した機会を追跡するコンピュータプログラムOTCの開発を開始したと主張する。973月に特許出願した。また著作権登録をした。976月にColoradoの住民であるSから接触を受け、自己のソフトとともにOTCを市場流通させることに関心を有するかどうかを尋ねられ、S氏に書面資料の他、OTCシステムの充分なデモをした。控訴人は当初、申し出を断ったが、後に相談するために接触した。976月と9710月の間にSOTCシステムに関するアイデアと情報をMに分け与えた。訴状によれば、Mと被控訴人AAAAを含む2つの会社は、OTCシステムを複製することを企図した。

被告(被控訴人)Vermontの会社であり、MVermontの住民である。両者とも、テキサスに財産を有しない。会社は販売管理ソフトを全国家具取引ジャーナルで広告し、またその広告を載せたウエッブ・サイトを維持している。

原告は、連邦著作権法及び係属中の特許権を侵害して複製しようと企図したことを理由に提訴した(1997.11.7)。地裁は対人管轄権欠如を理由として却下した。控訴人は再検討の申立てをし、被告が電話勧誘でTexasの消費者を積極的に対象としていたという申立てを追加し、また控訴人のサイトが最小限の接触要件を充足し得るとはじめて申立てた。地裁は却下した。控訴審もこれを支持した。

被告会社が、インターネット上で法廷地の住民と取引、契約することによって、インターネット上で営業したという証拠はない。被告会社のサイトには電子メールの宛先を載せているが、サイトが訪問者の電子メールに応答する以外の何かをすることを許容しているという証拠はない。

当該サイトは、消費者がオンラインで製品やサービスを注文、購入することを許容していない。実際、サイトでは将来の消費者は通常の郵送またはファックスで完全な注文様式を送るように教示されている。サイト上に電子メール、印刷可能な注文様式、フリーダイヤルの電話番号を載せていることは、それ以上のものがないとき、対人管轄を証明するには不十分である。

Cybersell, Inc. v. Cybersell, Inc. et al., 1997 US LEXIS App. 33871, 130 F.3d 414 (9th Cir. 1997).

原告(控訴人)はその名称Cybersellをサービスマークとして出願し(1994.8.8)、登録された(1995.10.30)948月から952月まで本件マークを使用してウェッブ・サイトを運営したが、その後改良作業に入った。その間の958月にC氏親子が被告(被控訴人)会社を設立した。被告がその名称を選択した当時、原告はサイトを保有していなかったし、本件マークも登録されていなかった。

被告は市場流通策の一環としてサイトを作成した。ホームページには上部に本件マークと同じロゴがあり、「Welcome to Cybersell!」という大きな文字が表示されていた。原告の代表者は被告のサイトを発見し、951127日に電子メールを送った。C氏親子は951227日に会社名を変更し、ロゴを取り換えた。しかし「Welcome to Cybersell!」はまだ存在した。原告は9619日に提訴した。被告は宣言判決を求めてFloridaの連邦地裁に提訴したが、当裁に移送され、本件と併合された。地裁は却下したので、控訴されたが高裁も地裁の判断を支持した。

被告はArizona州でインターネット上の商業的活動をしていない。誰でもどこでもホームページにアクセスし、提供されるサービスを知ることができるが、その事実だけから、Arizona住民に向けて意図的な取引行為をしたということは推定されない。インターネットを通じて、またはそうでなければArizona州において、商業的活動に従事しておらず、その他の接触をもっていないので、対人管轄権に関してArizona州との充分な最小限の接触を欠いている。

 

 中間的事案

積極的事案と受動的事案の中間に位置するケースで、そこでは原告と被告との間のネット上での情報交換の双方向性や商取引的性格の程度次第で管轄権の有無が判断されるが、判例は肯定する傾向にある。受動的事案と変わらない事案で、管轄権が肯定された例もある。

Maritz, Inc. v. CyberGold, Inc., 947 F. Supp. 1338 (ED Mo. 1996).

商標権侵害の事案である。被告のMissouri州への接触はウエッブ・サイトの公開のみだが、それはMissouri州の住民からもアクセス可能であり、実際にアクセスされたとして管轄権が肯定された。

Minnesota v. Granite Gates Resorts, Inc., 568 NW 2d 715 (Minn. Ct. App. 1997).

Minnesota州司法長官が賭博及び消費者保護法gambling and consumer protection laws違反により州外のギャンブル勧誘サイトを訴追した事案である。Minnesota州は厳格なギャンブル禁止政策を採用しており、Minnesota州司法長官は積極的に他州からのネット上のギャンブル行為を訴追している[2]

判決はMinnesota州の対人管轄権を認めた。インターネット広告は放送やDMと同じである。被告の広告はMinnesota州を含む全米を対象とする。Minnesota州に明確に向けられた訳ではないが、現実にMinnesota州の住民との間で契約がなされた。

Inset System, Inc. P. Instruction Set, Inc., 937 F.Supp. 161 (D.Conn. 1996).

商標権侵害等で、ウエッブ・サイト以外の接触がないと認定された事案である。本件では法廷地の住人が誰も被告と事業をしていなかった。しかし判決はインターネット上の広告活動とフリーダイヤルを他州に向けて発信しており、それはConnecticut州からもアクセスできるとして、管轄権を肯定した。

学説

Allan R. Stein, The Unexceptional Problem of Jurisdiction in Cyberspace, 32 INT'L. LAW. 1167 (Winter 1998).

従来のサイバー対人管轄権判例は、World-Wide Volkswagen事件判決とCalder事件判決の示した指針に従って法廷地の域外被告に対する対人管轄権の有無を判断していると分析する。

World-Wide Volkswagen事件判決が予見可能性では不十分としたのと同様、サイバー対人管轄権判例の多くも、ウエッブ・ページの公開やニュース・メッセージのポスティングが世界中からアクセス可能であるという一事のみを取り上げて、原告の居住する法廷地の対人管轄権を肯定したがらない。世界中の対人裁判管轄権に服さなければならないという余計な負担を課すことで、インターネットの活動を阻害すべきではないからである。従って、域外の被告に対人管轄権を行使するか否かを判断する際には、Calder事件判決が示したように域外の行為が法廷地へ「向けられていたtargeted」と認定できるか、あるいは意図されていない結果がたまたま法廷地に生じたのか、という区別が重要になる。

従来の判例は、商標権侵害、契約違反、その他に3分類できる。第一の商標権侵害の判例では、Bensusan Restaurant Corp. v. KingWorld-Wide Volkswagenに沿っていて、対人管轄権を否定するのに説得力のある。Panavision v. ToeppenCalderに沿っていて、対人管轄権を肯定するのに説得力のある。Inset Sys., Inc. v. Instruction Set, Inc.が対人管轄権を肯定したのは、World-Wide Volkswagenに反し疑問である。このような立場はWorld-Wide Volkswagenに反するばかりかインターネットへの萎縮効果をうむ。

2の契約違反の判例ではほとんど全ての判例の対人管轄権の行使に説得力がある。被告と原告法廷地との接触がそもそもウエッブ・サイトを公開していることだけにあるのではなく、それ以外にも契約を通じて様々な接触が存在する。従って、World-Wide Volkswagen /Calder両事件判決に基づく、被告の行為が原告法廷地へ「向けられていたか/意図されていなかったかという区別targeted/untargeted distinction」を適用すれば、被告の行為は前者に該当し、対人管轄権の行使に問題はない。

3のそれ以外で、域外の被告の行為が法廷地域内の被害を生じさせている事件の判例はまず、故意による不法な行為ではあるけれども特定の個人に向けられていない類型がある(Minnesota State v. Granite Gate Resorts, Inc.)。このようなケースはインターネット特有の問題ではなく、現実世界でも従来からアメリカは、域外の行為が域内で反競争的な経済効果を生じさせていた場合に対人管轄権を行使するか否かという問題も扱ってきたので、それら先例をサイバー対人管轄権にも適用できる。尤もGranite Gate事件のような事例では被告が被告地で合法にギャンブル勧誘を行う権利までを法廷地が禁じることは主権との関係で問題が生じるので、損害を被る法廷地としてできることは、せいぜいギャンブルに応じる者の住所を明示させて、もしMinnesota州の住民ならば参加させないよう行動させることに留まるだろう。

次にネット上の名誉毀損があるが、これは扱いが難しい。Calder判決をそのまま解釈すれば対人管轄を肯定するのが自然である。しかしそうすると一個人がたとえば外国有名人の名誉を毀損する言論をコンピュータ端末のキーでたたいてポストしても、当該外国の法廷で名誉毀損訴訟の防御を強いられることになる。その経済的負担等へのおそれから、サイバースペースでの活動を萎縮する虞がある。従ってそのような結果にならないようにするために、Calder事件判決の法理を狭く解釈して、原告の法廷地が即、対人管轄権を行使い得るという結論を回避する必要がある。

Michael F. Dunne & Anna L. Musacchio, Jurisdiction over the Internet, 54 BUS. LAW. 385 (Nov. 1998).

サイバー対人管轄権判例の傾向は以下の二つに大別される。第1Inset Systems判決に従うもの。例えばMinn. State v. Granite Gate事件判決がある。これはほとんどあらゆる場合に対人管轄権を肯定してしまう。

2Zippo Mfg. Co.判決に従うものである。例えばPanavision事件判決がある。これは対人管轄権の行使を法廷地に対する積極的な行為が有る場合に限定する。たとえば単なる受動的なウエッブ・サイトによる宣伝広告だけでは不十分であり、もっと多くの何かsomething moreを必要とする。something moreの例としては、Calder事件判決のeffects testが参考になる。判例の主流は第2と指摘する。

 

 分析

判例は管轄権を肯定するにはサイト開設以外の活動を要求する傾向にあるが、判例の立場は流動的である。Calder判決のように行為が明白に向けられていたといえないような事案でも肯定している。これは被害者(と主張する側)の利益により配慮したものである。一方、学説はウエッブ・サイトの開設だけで管轄権を肯定することに消極的である。その背後には表現の自由や電子商取引の発展を阻害すべきではないとの判断がある。

 

商標権侵害

 外国のサーバーから米国の商標を使用したサイトを開設することが、商標の米国における使用に該当するかが争われた事案がある。

Playboy Enterprises, Inc. v. Chuckleberry Publishing, Inc., 939 F. Supp. 1032 (S.D.N.Y.), motion for reconsideration denied, 939 F. Supp. 1041 (1996).[3]

原告は1953年にPlayboy創刊した。被告Tatillo Editrice社は1967年にイタリアでPlaymenの出版を始めた。タイトルは英語だが、中身はイタリア語。被告Chuckleberry社は1979年にTatillo社からイタリアの男性向け雑誌Playmenの米国における出版独占ライセンスを受け、英語版を出版する計画を発表した。これに対し、米国において原告は販売差止訴訟(商標権侵害、出所混同、商標権侵害による不正競争、NY州希釈化防止法違反)を提訴した。19816月に以下の判決が下され確定した(Playboy v. Chuckleberry, 687 F.2d 563 (2d Cir. 1982).)。米国内で出版/頒布販売される成人向け雑誌の表紙にPlaymenその他のまぎらわしい語句confusingly similarを使用すること。商品名、サービス名、ブランド名、商号その他ビジネスの出所を示すものにPlayboyPlaymenその他のまぎらわしい語句を使用すること。表紙にPlaymenその他のまぎらわしい語句を使用した成人向け雑誌の、米国内での出版印刷販売輸入及び米国外への輸出。

Playboy社は、イギリス、フランス及び西ドイツ(当時)でも同様の判決を得たが、イタリアの裁判所だけは、Playboyという語句は、語義的に弱い商標であるため保護されないと命じたため、イタリア国内では今日まで出版されていた。

Chuckleberry社及びTatillo社は米国から撤退したが、最近のインターネットブームに載ってTatillo社はイタリアでWWWサーバーを開設し、全世界に対してアダルト画像データの提供を開始した。その内容は、一時利用会員Playmen liteに対しては無料で比較的露骨でないソフトな画像を閲覧させる。Tattiloに申し込むとe-mailで一時利用用ユーザネームとパスワードをもらえる。ソフトな画像を経験させ有料会員に勧誘することが目的。有料の会員(Playmen pro)に対してはユーザー名とパスワードとを発行して更に露骨な画像を閲覧させるものであった。Tattiloの商品(CD-ROMやフォトCD)の特別割引も受けられた。

Tatilloのサーバーにあるこのホームページには、Playmen.idのロゴが表示され、Playmenの名の下にこの画像閲覧サービスが行われていた。19961月、原告はTattiloのサイトを発見した。原告はTatillo社がPlaymenの名称を用いてイタリアからインターネットサイトを操作することで、米国民に画像データを提供する行為は裁判所の差止命令に違反したと主張して裁判所侮辱の認定を要求した。

 

 被告の主張

1に被告は、米国内に代理店や事務所を持たず、Playmenを米国内では販売頒布出版広告していないので、本裁判所は本件に関し裁判管轄権を持たない。

インターネットやWWWは当時存在しておらず、明白に疑いなく差し止められていない。1981年の判決は、印刷物に関して出された差し止め命令であり、単純に考えれば、イタリアのWWWに画像を載せる行為の障害とはならない。そのような行為は、1981年に両当事者とも考慮していなかった。インターネットが両当事者によって考慮され得なかったので、差し止められてはいない。また、実際に考慮されなかったので、被告の行為の違法性につき疑義がある。

画像データはイタリアにあるサーバーに掲載されているにすぎず、米国顧客が加入申し込みをして当該画像データを閲覧できるのは、あたかも米国からイタリアに飛行機に載って雑誌を買いに来るのと同様であり、この行為はイタリア法により合法であり、米国の差止請求により排除されない、として米国内での頒布を否定した。

 

 判決

判決は訴えを認め、Tattiloに次の事項を命じた。サイトを完全にshut downするか、又は米国内に居住する顧客からの申し込みを自粛する。米国の顧客によって取得されたUSERNAMEとパスワードを無効化する。米国の顧客が支払った分のうち未使用残高を返還する。米国の顧客がplaymenproを申し込んだことによって儲けた総利益をplayboy社に返還する。米国の顧客にplaymenサービス上で宣伝した商品又はサービスによって儲けた総利益をPlayboy社に返還する。米国の顧客からの申し込みは拒絶する旨示すよう、internet siteを修正する。訴訟費用及び弁護士費用をplayboy社に支払う。2週間以内にこの命令が守られなかった場合、守られるまでの間、Tattilo1日あたり$1000Playboy社へ支払うこと。

理由は以下のように述べる。まず裁判管轄権については1981年の差し止めを執行する目的において、被告に関する裁判権を有する。

判決当時インターネット上での画像の利用が考慮され得なかったことは、差止命令をインターネットやWWWに適用することを妨げるものではない。当該差止命令の目的は、米国内で被告の商品が頒布されることを禁ずることにあり、差止命令の明らかな意図を破ることを被告に許すことは、差止命令を骨抜きにするものである。差止命令でインターネットの名称に言及しなかったことは、この新しいメディアへの適用可能性を否定するものではない。今日においても、意味を持たなければならない。

被告は最終的には本件の決定は、立法府の権限範囲に属するものとし、Wisconsin事件を引用した。現行の法律の定義を拡張してサイバースペースに適用するには、裁判官による立法行為である。しかしこの理由付けは本件では妥当性がない。上記の件は、制定法の解釈に関するものであり、裁判所は発言を避けたのである。制定法の範囲を拡張することは立法府の権限事項であるからに過ぎない。本件は裁判所の命令の解釈に関するものであり、立法府は管轄権を持たない。インターネットは当時現在のような形では存在しなかったとしても、ここで訴えられた活動を支配する。したがって、Playmenの販売又は頒布の禁止は、インターネットにも及ぶ。

被告の行為はインターネット・アクセス・プロバイダーとしての活動に留まるものではなく、Playmen Lite及びPlaym Proという独自のサービスを提供していた。それはコンテンツを供給し、かつそのコンテンツたる画像は被告の提供するサービスのsubscribersが自らの端末へダウンロードしてstoreすることができるものであるし、更に被告はそのような使用をするように積極的に奨励していたから、被告の行為は「頒布distribution」に該当する(Playboy v. Frena, 839 F.Supp. 1552 (M.D.Fla. 1993).)

そして、そのdistributionは、被告がイタリア国内のコンピューター・サーバに画像をpostしただけだと主張しても、それでも米国内におけるdistributionであると認定できる。被告は米国内のユーザーが被告のサイトを見るように積極的に活動している。被告は、ユーザーから問題のサイトを見たいという申込を受けた時にe-mailによってパスワードをユーザーに教えてアクセスできるようにしていたが、このような手続を通じて被告は問題の製品を米国内にてdistributeしていた。

とはいっても、被告がイタリアでサイトを維持することを当裁判所が禁じるわけではない。世界中のユーザーがアクセスできるインターネットにおいて、その製品の頒布等を禁じる国が一つあったからという理由だけで被告がそのサイトのoperationを禁じられるわけではないのである。さもなくば、当裁判所、あるいは世界中の他のあらゆる裁判所が、地球的なWWWにおけるすべての情報提供者に対して裁判管轄権を主張し得ることになってしまう。そのような判決はこの地球的なサービスを使用する者たちへ壊滅的な影響を与えることになってしまう。インターネットは、国籍、宗教、性別、年齢、または品位についてのコミュニティーの基準による監視にとらわれることなく公の議論が行える場所として、特別な保護を受けるに値するのである(ACLU v. Reno事件判決)

しかしながらこの特別な保護は、裁判所による命令や差止判決を無視することにまでは及ばない。差止判決とその執行力が及ばないことになれば、サイトを創ることによって知的財産権の保護が容易に回避されることになり、創作を奨励するという知的財産権の目的も達成されないことになる。

当裁判所は地球上におけるサイトの創作を禁じるための管轄権を有しないし、またそのような創作の禁止を望みもしないけれども、米国内においてサイトへのアクセスを禁じることはできる。したがって、被告はサイトを引き続きoperateすることは許されるけれども、米国内に居住する顧客からの購読申込を受諾してはならない。

被告は、インターネットを通じて製品を販売することにより、意図的に差止判決を回避しようとした。サイバースペースは被告が裁判所の差止判決を侮辱できる避難所safe havenではない。

尚、本判決はイタリアのサーバーを差し止めることまでは判断しなかったが、判決後、イタリアのプレイメンサーバは自主的に海外からのアクセスに対して閲覧ができない措置をとったという。

A.V. BY Versage, Inc. v. Gianni Versace S.p.A. , 87 F.Supp.2d 281 (S.D.N.Y. 2000).

Gianni Versaceはイタリアの有名なデザイナーでVersaceの商標及びVersaceをその一部とした商標権をアメリカで有している。被告A.V. By Versace, Inc.は、イタリア国民で米国在住のAlfred Versace氏からライセンスを受け、A.V. By VersaceAlfred Versaceという商標を付して衣類の製造をしていた。

Gianni VersaceA.V. By Versace, Inc.社、Alfred Versace及びAlfred Versaceの商標を付した商品を販売していたFoldom社を商標権侵害で訴えた。裁判所はGianniの請求により、被告らに対する商標使用禁止の仮処分を認めた。その中には以下の条項があった。「被告らは、アメリカ合衆国内で、Versaceの商標を商標として又は商標、サービスマークの一部として、登録し、登録しようとし、使用し、広告し、商品を販売してはならない」(at 284.)

しかし被告らは、裁判所による仮処分決定後も、仮処分によってその使用が禁止されているVersaceのマークを用いた多くの商品を自ら又は販売業者等を通じて幾つかのウェブサイト上に広告として掲載すると共にオンラインセールスをしていた。これらのサイトは一般に利用されている検索エンジンサイトを利用してVersaceと入力すれば、容易に検索することができた。Alfred氏は、商品の販売行為も含めてかかる行為は全てアメリカ国外で行われたものであり、仮処分の効力はアメリカ国外には及ばないと主張した(at 287-88.) そこで、このイタリアのウェブサイトにおけるVersaceマークの使用が、アメリカ国内での使用となり、その結果仮処分決定違反になるかどうかが争われた。

 

 判旨

ウェブページのサーバーはいずれもイタリアにあることを前提としながらも、これらのウェブページは、いかなるウェブブラウザによってもアメリカでアクセス可能であること、Alfreed氏が仮処分決定後、World Wide Web上で侵害商標を用いて様々な製品を販売していることを認定して以下のように述べた。

もともとは海外に端を発したものであるとしても、連邦商標法のもとでは、このタイプのオンライン侵害は、アメリカ国内で行われたものと看做すべきであり、したがって、かかる行為は仮処分命令によってカバーされているものである(at 293.)。これらのインターネットのサイトはいずれもアメリカ国境内からのアクセスが可能であるから、『アメリカ合衆国内』という仮処分命令の要件も満たしている(at 294.)

サイバースペースは、Alfredによる当裁判所の差止命令への侮辱に対するsafe heaven ではない。外国にあるサーバーの使用によりアメリカ国内での製品の販売や広告を許すことによって、Alfredが仮処分命令における裁判所の明確な意図に違反することを許すことは、仮処分を出した裁判官の命令を骨抜きにするものである(at 295.)

Jeri-Jo Knitwear, Inc. v. Club Italia Inc., 94 F.Supp.2d 457, 2000 WL 420550 (S.D.N.Y. 2000).

ENERGIEという商標に関して、被告がウェブサイト上でENERGIE商標を用いた自らの商品を掲載したことが、裁判所が出した「アメリカ合衆国内でのENERGIEの商標を付した衣料品の宣伝及び販促活動」の禁止命令に違反し、裁判所侮辱行為に該当するかが争われた。

被告は、アメリカ以外の各国でENERGIEの商標権を有しているとともに、「本ウェブサイトにてSixtyが提供致しますENEGIEブランドの洋服は、アメリカ国内では販売及び頒布ができません。また、アメリカ国内にお住まいのお客様は購入することができません。アメリカにおいてENERGIEは、原告の登録商標であり、原告は自らのブランドであるENERGIEブランドの洋服をアメリカ国内において販売しています」という表示をウェブサイト上に掲載していた(at WL420552-3.)

判決はPlayboy判決に基づき、被告の行為はアメリカ合衆国内での宣伝行為であり、当事者がなした同意判決に違反するとした。しかし被告がアメリカ以外の世界中で当該商標を用いる正当な権限を有しており、それが原告に損害が生ずることを証明するものは何もない。アメリカ国民が「.it」のトップレベルドメインを持つサイトにアクセスすることは頻繁にはないとして、「.it」のトップレベルドメインを用いた被告のイタリアのウェブサイトを検索エンジンのリストから除外することは認めなかった(at WL420552-3.)。一方、「.com」「.net」のサイトと「.it」のサイトとのリンクについては、その解除が命じられた。

 

 分析

3件とも既に商標権侵害で差止命令が出され、その差止命令に違反するかと言う形で争われた事案である。差止命令の執行という形であるため、対人管轄権は肯定される。又、被告は一度商標権侵害を行っているいわば「前科者」であったため、侵害とすることに抵抗の少ない事案だったとも言える。

とはいえ外国のサーバーでの商標の使用が米国内での使用に該当するとした意義は大きい。企業は「予定されているユーザの所在国において、商標等の権利を他社が有していないか、調査を行っておくべきであろう」[4]。そして商標権侵害となる地域のユーザーとは取引をしない措置が必要である。

Jeri-Jo Knitwear, Inc.事件ではイタリアを意味する「.it」ドメインと「.com」「.net」で結論を相違させたが、外国ドメインというだけで内国のユーザーがそのサイトに頻繁にアクセスすることは妥当ではない。実際、トンガ「.to」やツバル「.tv」ドメインを使用する企業は多い。特に日本では日本人を対象にした日本企業のサイトでも、ドメイン取得手続等の理由により米国ドメインで開設することも少なくない。例えば検索エンジン「フレッシュアイ」のURLhttp://www.fresheye.com/である。

 

 猥褻物取締法違反

United States v. Thomas, 74 F.3rd 701 (6th Cir. 1996).

California州に居住する被告夫妻は、Marquis de Sadeの再来を自称し、地元のpublic adult book storesで購入した性的にあからさまな雑誌sexually explicit magazinesの写真を、被告ら自身が運営する電子掲示板BBS, Bulletin Board Systemのコンピューター・ファイルにスキャナーで読み込ませ、非会員へはその導入部を見せ、会員になる旨の申込と会費を払い込んだ者へはパスワードを与えてコンピューター・ファイル内の画像へアクセスを許していた。さらに電子メールによる注文を受けてビデオの宅配も行っていた。

被告らはTennessee西部地区担当地方裁判所にて連邦猥褻物取締法Federal obscenity laws違反の有罪判決を受け、CaliforniaではなくTennesseeを裁判地venueとすることの不適切さや、やはりCalifornia州ではなくTennessee州のコミュニティー・スタンダードcommunity standardを猥褻性の判断基準として採用することの不適切さ等を主張して、控訴した。

猥褻なデータが接触したすべての法域において犯罪が構成され、猥褻なデータが移動してきた元の地域、途中の地域、または移動した先の地域のどこでも裁判地とすることができる(U.S. v. Peraino, 645 F.2d 548 (6th Cir. 1981).)。本件では、他の法域にいる会員がコンピューター・ファイルにアクセスしかつ注文できるように被告らはBBSを設置し、その画像は瞬時に州境を越えるものであった。被告らは、会員希望者が申込をする際の手続を通じてTennessee州に会員がいることを知っていた。したがって被告らの行為はTennessee州の法域に達しており、Tennessee州の法域が事実認定を行う地として適切であると判断される。

Tennessee州のコミュニティー・スタンダードを猥褻の判断基準として適用することについては、裁判が行われる地のコミュニティー・スタンダードを適用することができる。さらに猥褻データの州際間の移動を伴う事件については、当該データが送付された地域のコミュニティー・スタンダードを適用することが適切である(Miller v. California, 413 U.S. 15 (1973).)。本件では、コンピュータが作り出したイメージが被告らのいるCalifornia州からTennessee州へ電子的に送信されたのだから、Tennessee州のコミュニティー・スタンダードを適用することは適切である。

なお、被告と法廷の友amicus curiaeは、BBSのオペレイターが掲示板上のデータを誰がアクセス・ダウンロードするのかを選択できないと主張している。さらに彼らは、地域的なコミュニティー・スタンダードではなくサイバースペースという新たな世界に当てはまる別個のコミュニティー・スタンダードの定義が必要であると主張する。さもなくば、BBSのオペレイターはその内容データがもっとも厳しいコミュニティー・スタンダードに違反することのないように検閲しなければならなくなると主張する。しかしこの主張は本件には当てはまらない。

何故なら本件ではデータがダウンロードされ頒布される裁判管轄区域に対しての知識やコントロールを被告らが有していなかったわけではなく、むしろデータの頒布前に申込者を会員にする承認手続において被告らはスクリーニングを行っていたのである。すなわち被告らは、California州よりも猥褻であると判断される危険性の高い裁判管轄区におけるユーザーのアクセスを制限する手段を有していたし、もし被告らが猥褻についてより寛容ではない裁判管轄区域における責任に服したくなかったならば、かかる地域のユーザーへパスワードを与えなければ責任を負う危険性を排除できえたのである。

 分析

本件の画像はリベラルなCalifornia州の基準では猥褻と判断されなかったはずだが、保守的なTennessee州の基準を使われたからこそ有罪になった事案であった。

コミュニティー・スタンダード基準は販売者がどこで猥褻図画を販売するのかを知っていることが前提になっているから、頒布者側がどこに居る相手に頒布しているのかを知りえないインターネットの事案にこの基準をそのまま適用することには抵抗がある。しかし本件の被告は問題の画像をパッシヴにサイトに掲載していただけではなく、対価を得た上でTennessee州の州民へ故意に問題の画像へのアクセスを許しており、Tennesseeのコミュニティー・スタンダードを適用したことに問題はない。

 

結語

インターネットは世界中からアクセスされるため、外国のサーバーで開設されたサイトが国内に被害を与えることがある。しかしサイトが内国からアクセスできるというだけで、内国法に基づいて責任を追及するならばサイト開設者は世界中から責任を追及されることになり、インターネットの発展を阻害する。

この点、米国の判例・学説はサイト開設者の故意が内国に向けられていたり、内国住民と取引に入るなど接触がある場合は、内国の管轄権を肯定する。判例には更に進んで内国との接触が希薄な場合でも肯定する例が少なくない。又、商標権侵害においても外国サーバーでの商標の使用を国内での使用にあたると認定した。

外国のサーバーに開設されているが、日本語で書かれ、日本人を対象とするオンラインカジノや猥褻サイトは現実にたくさんある。賭博や猥褻については刑罰によって禁止することの妥当性について異論があり、積極的に取り締まることが好ましいかについて別の問題であるが、それらは単に外国のサーバーにあるというだけで日本法の適用を免れる訳ではないことが米国の議論から導き出せた。



[1] 駒田泰土「インターネット上の自律的な規制」コピライト460(1999)41

[2] 平野晋・判例・国際インターネット法:サイバースペースの法律常識(明文図書1998)58

[3] 平野晋・判例・国際インターネット法:サイバースペースの法律常識(明文図書1998)270-74に掲載されている。

[4] 古谷栄男「国境を越えてインターネットサーバにアクセスさせる行為がユーザの居住国における商標の使用にあたると認定した判決」古谷国際特許事務所NEWS LETTER 44 (1996)