開発問題からの2014年東京都知事選総括

林田力

開発問題から2014年東京都知事選挙を総括する。開発問題についての宇都宮健児候補の主張は基本的に前回と同じスタンスである。大型開発優先予算を改め、福祉などに振り向ける。これは福祉重視=バラマキ=財政破綻という革新都政のマイナスイメージに対抗できる論理である。確認団体ビラではグラフを出して大型開発偏重予算の実態を示している。前回以上に丁寧に説明できたと評価できる。

しかし、残念なことに、この大型開発偏重予算の転換政策が浸透したとは言い難い。その理由として二つの仮説が考えられる。

第一に税金の無駄遣いを阻止したい人々に訴求しなかったとの仮説である。福祉予算に振り向ける財源があるという立場から、大型開発予算削減を主張することは、税金の使い途が変わるだけでスリムな政府につながらないと受け止められた可能性がある。

「Yahoo!ニュース 意識調査」の「新しい都知事に力を入れてもらいたい政策は?」では「無駄な支出の削減」が15.3%で首位である。大型開発の中止は彼らを満足する。しかし、大型開発を中止しても、別の分野で税金の無駄遣いが行われていたら無意味である。政治家へのマージンや官僚の天下りに嫌悪感を抱く人々は、大型開発が福祉に変わることに魅力を感じない。

大型開発中止を手段ではなく、税金の無駄遣い阻止、真の意味の行政改革という点を目的としてパッションを持って訴える必要があるのではないか。あまり広まらなかったが、希望の政策には以下の公約もある。行政改革を唱える資格は十分にある。

「都財政のムダを省き、利権や疑惑のない運営で都民生活改善に直結させます」

「北海道ニセコ町などに学んで、都予算の財源・積算、また入札・コンペの評価などを市民分かりやすい形で公開します」

「監査委員(知事指名2)の人選を公開で拡げ、計数だけでなく仕事内容にもメスを入れます」

第二に大型開発から福祉へという政策自体が日本共産党臭いと印象を与えたかもしれない。しかし、これは良い政策を共産党が主張したということに過ぎない。この発想では脱原発も秘密保護法反対も世間的には共産党臭い政策である。市民の側の奮起が必要である。

2014年東京都知事選挙の住民運動家動向

開発問題に意識のある市民層は2014年東京都知事選挙で宇都宮健児氏と細川護煕氏に割れた。これは驚くことではない。2012年東京都知事選挙では宇都宮氏が唯一の市民派候補と言えたが、全ての住民運動家が結集した訳ではなかった。

その理由は左翼イデオロギー色が強すぎたことである。住民運動家は地域の住環境の問題に取り組んでいる。そのために日の丸・君が代強制反対などの政治主張とはギャップがある。これに対する私の回答は日の丸・君が代に強固に反対するような政治勢力でなければ開発反対も期待できないというものである。

しかし、それが開発反対の住民運動のコンセンサスにはなっていない。もともと宇都宮氏にギャップを持つ住民運動家も多い。それ故に開発問題では細川氏が出馬しようとしまいと分裂は生じた。そして投票行動で分裂しようと選挙後の開発反対運動で協力することも明白である。もともと政治的にギャップがある中でも一緒に開発反対運動に取り組んでいた。投票行動で分裂することは当たり前である。これに比べると脱原発派が脱原発候補の分裂を深刻に捉えることは甘ったれに見える。

分裂は覚悟すべきであるが、予想した以上に細川氏は不人気であった。これは細川陣営の戦術である脱原発至上主義が影響している。「脱原発以外の政策は関係ない」ならば開発問題の住民運動家が細川氏を支持する理由はない。他のことには目をつぶれという主張は乱暴である。

住民運動家から見て、過激な脱原発運動家が細川氏を熱烈に支持したことも細川氏に距離を置く理由になった。宇都宮氏にイデオロギー的なギャップを感じていた人々は細川氏のようなマイルドなポジションは積極的に歓迎する。ところが、脱原発至上主義によって宇都宮氏以上に、ある面では極端なポジションになってしまった。

細川陣営は終盤で脱原発至上主義を改め、生活密着課題を公約に追加し、立て直しを図った。そこでは細川氏に資本主義から環境優先社会への転換という深い思想を読み取って支持した人々もいる。その思想が本当に具体的な中身のあるものかは吟味する必要があるが、思想自体は素晴らしいものである。一緒に議論し、学べるところは学びたい。

一方で開発問題に取り組む上で自然保護・自然と共生のような理念だけでなく、生活や住み続けるという地に足ついた要素が必要と考える。これは私が第2回「都民参加への模索」研究会で発表した主張でもある。その意味では「住まいは人権」から反貧困運動に取り組む宇都宮氏を強く支持できるものである。

住まいは人権を開発問題に

東京都知事選挙で開発問題の立場から宇都宮健児候補を応援することは意味があることと考える。宇都宮氏の実績は「住まいは人権」という立場から住まいを守る活動をしてきたことである。具体的にはゼロゼロ物件・追い出し屋などの貧困ビジネスと闘ってきた。この住まいは人権というスタンスが開発問題でも求められる。

開発問題に携わる人々の問題意識の主流は計画である。都市計画が無計画であるから、乱開発が行われる。故に、きちんとした都市計画を策定しようとなる。「スプロール現象」は社会科の教科書にも登場する。無計画が乱開発の元凶であると教育課程から、すり込まれている。

しかし、住環境破壊の乱開発は無計画だけが原因ではない。行政が立案した計画自体が住環境や自然環境を破壊することもある。この場合に「計画による乱開発阻止」ドグマは非力である。この矛盾は東京都知事選挙で露になる。

猪瀬直樹前都知事も桝添要一都知事も都市計画について一定の見識を有している。猪瀬氏は道路建設という無駄な公共事業批判で名を馳せた。東急田園都市のような都心部に通勤通学するだけの都市を本来の田園都市と異なるものと批判する。

「ハワードの構想は自己完結できる機能を持った街ではなかったのだろうか。しかし、渋沢秀雄がつくった田園調布は郊外からの通勤スタイルに変わってしまう。詳細は省くが、田園都市株式会社が東急電鉄の創業者五島慶太に乗っ取られてしまったからだ。」(猪瀬直樹「田園都市づくりの理想、散る〜第一生命、大井事業所の本社機構を東京へ移転」日経BPネット2008/06/11)

また、桝添氏は「日本橋の上に首都高があるというのは、1964年の東京五輪の負の遺産」と指摘する(「「3環状が有効」、舛添都知事が道路整備に意欲」ケンプラッツ2014年2月20日)。しかし、彼らも外環道に対しては通過交通削減のために必要の一本槍である。桝添氏は「最大の問題は、都心に入る必要のない車が入ってきていること。それを避けるために、環状道路は非常に意味がある」と指摘する。

これは街づくりを計画という観点で論じる限り、避けられない。もし白紙の上に新しい街を想像するならば、市街地の外側に外環道のような道路を作ることが合理的である。都市設計者の視点で、街づくりを考える限り、外環道のような計画は正当化されてしまう。

問題は現実の街づくりが白紙の上の都市計画ではないということである。既に住まいがあり、地域社会がある。上から目線の合理的計画による勝手な線引きを押し付けるから悲劇が生まれる。開発問題は計画重視から生活重視にパラダイムを転換することが望まれる。反貧困運動の中で住まいは人権を掲げてきた宇都宮氏の開発問題の公約は、この流れの中で支持できる。


     
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