ワーキングプア勉強会感想

林田力

希望のまち東京in東部は2016年4月23日(土)、勉強会「どうする?どうなる?ワーキングプア」を江東区東陽の希望のまち東京in東部事務所で開催した。一回の勉強会では話が尽きず、第2回勉強会を2016年5月7日2時から5時まで希望のまち東京in東部事務所で開催する。

勉強会で印象的な話は、Twitterなどでは若者の貧困問題の呟きは安保法制反対よりも大きな反響だったということである。特にバイトを休む時に代わりの人を探す義務は労働者になく、使用者にあるとのツイートが多くリツイートされたところにブラックバイト問題の深刻さがある。ブラック企業やブラックバイトでは当然の権利が守られていない。だから何より大切なことは個人の権利意識の確立である。

ところが、ここには運動を広げる上で難しい問題がある。伝統的な左派左翼が体制に対抗する上で掲げる価値は共同や共生、支えあいとなりがちである。他人を踏みつけ、搾取することを自由と勘違いする悪徳不動産業者や貧困ビジネス、ブラック企業・ブラック士業が存在する。それらを批判する価値として唱えることは理解できる。

しかし、これはブラック企業やブラックバイトに苦しむ若者をますます苦しめることになりかねない。何故ならば休む際に労働者が代わりの人を見つけなければならない理由は、そうしなければ皆が困るからである。共同の論理では救われない。

むしろ共同の論理はブラック企業の側から唱えられているという現実がある。ワタミ過労自殺に対し、渡辺美樹は「彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました」と言い放った。経営者への責任追及を従業員皆で取り組む問題に転嫁している。

故に伝統的な左派左翼が共同の論理に依拠するだけでは、現在の経済体制に不満を抱く人々の選択肢にはなりにくい。反対に左派左翼が体制側(体制内批判派)に見えてしまいかねない。解決の方向は個人の権利意識の徹底にある。

また、勉強会では庶民がアベノミクスに期待してしまう多くの国民のメンタリティも言及された。そこには大企業が儲かり、国民各層に波及効果が生じるという高度経済成長期の成功体験幻想があるという。これはロスジェネ以降の世代には全く実感を持たない文字通り幻想に過ぎない。

勉強会で指摘されたように日本型雇用は格差によって成立しており、日本型雇用と非正規雇用はセットになっている。故に「昔は良かった。新自由主義が入って日本はダメになった」と言われてもピントが外れる。地に足ついた対案を考えなければならない。

江東区東陽でワーキングプア問題勉強会

林田力

希望のまち東京in東部は2016年4月23日午後1時から4時まで江東区東陽の希望のまち東京in東部事務所でワーキングプア問題の勉強会「どうする、どうなるワーキングプア」を開催する。後藤道夫・都留文科大学名誉教授を招いてワーキングプアの実態と解決策を議論する。参加費は300円。

私が興味深いと思った点は、後藤さんが解決策として企業横断的労働市場の整備を提言していることである。どちらかと言えば流動性向上など労働の市場化は資本側が求め、伝統的な労働側は抵抗するという構図があった。この点でワーキングプア問題解決の側から企業横断型労働市場のような提言がなされることは新鮮である。

多様な働き方、雇用の流動性はブラック資本主義が労働者搾取の方便として掲げている面もあるが、現代の労働者が求める一面があることも否定できない。古典的な労働運動は合理化反対、リストラ反対、首切り反対に偏重していたが、ブラック企業では逆に辞めさせてくれないという問題もある。

私の身の回りでも辞めさせられた労働者よりも自発的に退職した労働者の方が圧倒的に多い。日本航空などのように今日でも合理化・リストラ型の古典的な労働問題が依然として重要であることは言うまでもない。しかし、それのみでは多様化する労働問題のニーズに対応できない。この点が現状の経済体制に不満を抱いても左翼革新が現役世代の選択肢になりにくい要因である。

卑近な例であるが、ある市民運動のメーリングリストで「飲み会で重要なことを決める文化をなくそう」と提起された。これは市民運動独自の問題ではなく、古い日本の組織に共通する悪癖である。しかし、ここ十数年ほどの間に民間企業では、この種の文化は急速になくなっている。

それは働きやすさを追求した現役世代の努力の賜物である。この努力は日本的経営の破壊という新自由主義的改革を追い風にした面がある。逆に新自由主義的改革の抵抗勢力であった左翼的な市民運動に、この種の悪癖が目立ってしまう。

だから「昔は良かった。新自由主義が入って滅茶苦茶になった」というような考え方はベクトルが逆である。昔に戻すことを目的とするならば、現役世代にとって耐え難い悪癖も復活することになり、受け入れられない。企業横断型労働市場の整備など古い日本的経営では考えられない提言こそ期待が持てる。

林田力

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