保育とPDCAサイクル

林田力

江東区は子育て支援計画でPDCAサイクルを導入している。PDCAサイクルは計画Plan、実行Do、評価Check、改善Actionを繰り返すことで、次の計画や事業に活かすことである。「江東こども未来プラン(次世代育成支援行動計画後期計画)」(2010年)は「本計画は、@計画立案、A実行、B評価、C修正・改善の、4つの工程を循環するPDCAサイクルを確立することで、推進していきます」としている(18頁)。

このPDCAサイクルは保育の現場でも広がっている。保育所保育指針は以下のように定め、PDCAサイクルと親和性のある自己評価を求めている。「保育士等は、保育の計画や保育の記録を通して、自らの保育実践を振り返り、自己評価することを通して、その専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない」(第4章「保育の計画及び評価」2.保育の自己評価(1)保育士等の自己評価)。

これを受けた厚生労働省「保育所における自己評価ガイドライン」(2009年)は自己評価の理念モデルとして「保育の計画(P)−実践(D)−評価(C)−改善(A)からなる循環的なシステム」を提示する(4頁)。これはPDCAサイクルそのものである。現実に社会福祉法人明秀福祉会「さつき保育園」(宜野湾市)はPDCAサイクルで運営している(下地由美子他「子どもの成長の場としての地域の保育ニーズに根ざした保育実践 : 地域における保育の実践と取り組みについて」日本教育情報学会年会論文集第29号、2013年)。

これに対して、PDCAサイクルは保育に馴染まないとの考えも成り立つ。第一に「民間企業で採用されているもので、公共性ある事業には馴染まない」とする考えである。しかし、これは理由にならない。PDCAサイクルは計画を立てて終わりではなく、実施し、評価し、見直す活動である。売上などの明確な目標のない公共部門こそ有意義な活動である。元々PDCAサイクルは民間企業でも生産管理など「儲からない」部門で採用されたものである。むしろ公共部門になじむものである。

第二に計画の問題である。PDCAサイクルは保育者の計画立案を出発点としたものである。それは個人差の大きい幼児個々人と向き合う保育に馴染むものかという問題意識である。保育が保育者のための活動になってしまうとの懸念である。このためにPDCAサイクルではなく、「幼児理解を起点に、保育を計画(デザイン)し、実践し、省察することで、新たな幼児理解を再構成する」ことを提唱する見解もある(小田豊・中坪史典編『幼児理解からはじまる保育・幼児教育方法』建帛社、2009年)。

第三に評価の問題である。幼児の活動を「できた」「できない」で評価し、個々の幼児の内面の思いや要求が軽視される懸念である(鈴木佐喜子 「保育「評価」をもとめて−保育所保育指針とニュージーランドのアセスメント「学びの物語」」季刊保育問題研究238号、2009年)。この点は保育所保育指針も考慮しており、自己評価に際しては「子どもの活動内容やその結果だけでなく、子どもの心の育ちや意欲、取り組む過程などに十分配慮すること」を求めている。

PDCAサイクルが馴染むかという議論の難しいところは、PDCAサイクルの成否も運用に依存するためである。日本企業もPDCAサイクルを上手に回しているとは言い難いが、それは管理部門が現場の実情を無視して一方的に計画を押し付け、リソースの手当てもせずに実行を迫る傾向があるためである。このようなPDCAサイクルは現場にとって負担にしかならない。「現場に出ないクセに偉そうに指導する恥知らず」などと陰口をたたかれることになる。

実はPDCAサイクルはブラック企業と相性が良かったりする。渡邉美樹参議院議員は「私が政治の世界に入って感じた事のひとつに「PDCAサイクル」がないという事がありました」と言っている(渡邉美樹「PDCAの要諦」夢に日付を!2014年9月26日)。

悪い運用のPDCAを保育に適用しても事態を悪化させるだけである。それは明々白々であるが、それをもって保育がPDCAサイクルに馴染まないとは結論付けられない。計画と評価の問題で指摘された内容は留意すべきであるが、保育に適した計画立案や評価で対応できるのか、本質的に保育に馴染まないのか、難しい問題である。

現時点での断定は留保するが、少なくともブラック企業で好まれそうなPDCA信仰は持つべきではない。「公務労働は民間とは異なる。特別だ」という聖域論は大多数の民間労働者に支持されるものではなく、公務員バッシングに力を与えてしまう。しかし、民間で採用されている管理手法と有り難かる姿勢も民間の実態を知らないもので、どちらも民間への無理解がある。PDCAを利用する場合も道具として常に限界を考えながら利用すべきであろう。



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