映画『日本と原発 4年後』江東上映会試写会

林田力

映画『日本と原発 4年後』江東上映会試写会が2016年1月9日、亀戸文化センター(カメリアホール)で開催された。『日本と原発 4年後』は河合弘之弁護士が監督した作品である。江東区では3月11日の昼と夜に西大島の総合区民センター2階レクホールで上映会を開催する。

タイトルは『日本と原発 4年後』とあるが、福島第一原発事故直後の問題も振り返っている。原発推進派の無責任さに改めて怒りを覚えた。事故直後に放射線量が上昇し、東京電力は福島第一原発からの全面撤退を検討したが、菅直人政権が撤退を許さなかったというエピソードがある。

私は菅政権関係者から話を聞いており、東電の無責任さを批判する菅政権の論理は理解できる(「第一原発からの撤退認めていたら東北は全滅していた…菅内閣の元側近が明かす3・11直後の官邸VS東電ドキュメント」リアルライブ2011年09月05日)。しかし、映画を観ると政府の無責任さにも怒りを覚えた。

映画では現場が求めていたことは撤退条件を定めることであった。踏み留まって対応することで事故が収束できれば良いが、頑張ってもどうしようもないこともある。爆発が不可避の場合に踏み留まることは無駄死であり、現場責任者としては無責任な態度である。現場が撤退条件明示を求めることは別に変な話ではない。

ところが、映画によると、官邸は踏み留まって頑張れとしか言わなかった。これは十五年戦争で守備隊に玉砕を命じた日本軍大本営と重なる。まだ玉砕命令には米軍の侵攻を一日でも遅らせるという一応の合理性があった。しかし、原発事故対応は命を捨てて踏み留まることで何か実現できる価値があるのか不明確である。とにかく頑張れ、休むことも逃げることも許さないという特殊日本的精神論でしかない。

映画でも理由は謎とされるが、不思議なことに、その後、福島第一原発では放射線量が低下し、限定的ながら作業できるようになった。これは幸いなことであるが、何だか分からないが、必死に頑張っていたら神風が吹いたという日本的精神論に好都合な結末である。日本的精神論を強化する教訓となってしまうならば不幸である。

他に映画から感じたことを二点指摘する。第一に原発が反資本主義的であることである。原発推進派の狙いは核燃料サイクルによるエネルギーの自給自足であったと説明された。また、原発推進派は原発代替電源のための化石燃料輸入を国富の流出と批判する。しかし、今や企業においても全てを自社で賄うことをせず、積極的にアウトソースして競争力を高めている。買い手は必ずしも弱い立場ではない。調達先を多様化することで選ぶ立場に立てる。原発推進の論理は資本主義以前の重商主義的である。

第二に原子力ムラという表現である。これは普及した表現であるが、映画の説明を聞くとムラという表現はミスリーディングに感じた。原子力ムラは官僚を中心とした国家資本主義的な利権構造である。ムラという一部の人のみの小さな組織でも、原始的な組織でもない。下請け業者も含めて膨大な人間が利権にぶら下がっている。原子力ムラという表現は相手に対する正しい理解にならないのではないだろうか。

実はムラという表現には考えさせられることがある。「アベ政治に代わる政治の模索:行動しつつ考える市民の連続講座」第1回「韓国の市民運動の現状と課題」が江東区東陽の希望のまち東京in東部で開催された。そこで話題提供者の桔川純子さんはソンミサン・マウルを紹介した。マウルは村という意味であるが、日本語の村社会というネガティブなニュアンスと同じものが韓国語にもある。そのためにソンミサン・マウルのネーミングに際してもマウルという言葉は如何なものかという意見が出たという。

日本の左派左翼にも後進的な村社会への批判精神はある。その反面、より強固な支配体制である官僚支配への批判精神が弱いように感じられる。官僚支配に対抗するものは、市民主体の足元からの集団になるのではないか。その意味で村は全否定すべきではないのではないか。市民側の村を作り、広げることが官僚支配への対抗になるのではないか。


林田力

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