江東・足立・葛飾区議会でのブラック企業議論

林田力

江東・足立・葛飾区議会でのブラック企業議論を踏まえて、ブラック企業対策の政策を提起したい。区議会での議論は大きく3点ある。ブラック企業の実態把握、ブラック企業対策、行政のブラック企業化対策である。

ブラック企業の実態把握はブラック企業対策の前提となるものである。実態を把握しなければ対策は取れない。実態把握を求める区議の質問に対し、一義的には国の責任であるとして実施に消極的である。しかし、区側も相談窓口や就労支援事業で発見する可能性を認めている。地域に密着した基礎自治体だから把握できることもあり、区が実施する意義のある活動である。

ブラック企業対策は具体案としては相談窓口の設置や労働者への啓蒙活動である。相談窓口の設置は強く求められている。ブラック企業と闘うドラマ『ダンダリン 労働基準監督官』も問題の端緒は相談であった。これも区側は国で実施しているなどの理由で消極的である。しかし、国も十分な人手がないと指摘されている。現実にはダンダリンのような監督官は稀である。また、ブラック企業の被害者になる若年層にとって労働基準監督署は必ずしも身近な官公署ではなく、相談自体が氷山の一角である。基礎自治体が相談窓口を設置することは、少しでも現状の不備を埋めることになる。

労働者への啓蒙活動には労働法や労働者の権利を記した冊子の配布、講座やゼミの開催がある。江東区は消極的であるが、足立区は検討すると回答している。啓蒙活動によって相談窓口も告知することで泣き寝入りを減らすことができる。

行政のブラック企業化は区がブラック企業を作り出すという問題である。区役所自体のブラック企業化(パワハラ、サービス残業強要)、ブラック企業への発注・民間委託、ブラック企業による就労支援事業の悪用である。区役所のブラック企業化は区役所職員へのサービス残業強要やパワハラの問題である。サービス残業強要について江東区議会で取り上げたが、区側は答弁で否定した。

これも正確な実態の把握が求められる。その対策は相談窓口設置や啓蒙活動になる。公務員は労働基準法が全面適用されないが、労働者の立場で一元的にブラック企業対策に取り組むことは法制度の縦割りを打破という意義もある。このようなアプローチならば公務員労働運動への市民の理解も得られやすくなる。

ブラック企業への発注・民間委託の問題は区議会で数多く質問されている。これはブラック企業以前に官製ワーキングプアの問題として認識されている。その対策公契約条例などによるブラック企業の排除である。

ブラック企業への発注や民間委託は区がブラック企業を経済的に支援することになる。ブラック企業は労働基準法を遵守するホワイト企業と比べ、労働者を搾取する分だけ低コストになり、入札でも低価格を提示する余力がある。これは競争上不公正である。健全な競争市場の維持という立場からもブラック企業の排除は正当化できる。

区の就労支援事業がブラック企業に悪用される問題も指摘されている。江東区議会では中小企業若者就労マッチング事業に対して、その危険が質問された。区側はブラック企業側が悪用する誘因があることを認めており、そのようなことがないように指導していると答弁した。有効に指導するためにも実態把握や相談窓口の設置が求められる。



●ブラック企業の実態把握

【足立区議会・平成25年第3回定例会(2013年9月18日)】

ぬかが和子区議「『ハローワークで紹介する職の中にもブラック企業がある』との指摘もありますが、足立区内のブラック企業の実態はどうか。ブラック企業根絶のため、区内の企業の実態をつかみ、入札や契約時に考慮するなど、自治体として取り組むべきと思うがどうか。また、ブラック企業の特徴である入社後3年以内の離職率の高い企業の公表などをハローワークに要請するべきと思うがどうか」

橋本弘産業経済部長「足立区内のいわゆるブラック企業の実態ですが、ハローワーク足立、足立労働基準監督署ともデータとして把握していないとのことです。いわゆるブラック企業の実態把握は、一義的には東京労働局の責任で行われることと考えますが、雇用・生活総合相談窓口など区の就労支援事業の中で疑われる事案が発見された場合は、関係機関への情報提供を行ってまいります」



●ブラック企業相談窓口

【江東区議会・平成25年第3回定例会(2013年9月27日)】

斉藤信行区議「政府も世論に押され、ブラック企業対策として4,000社を対象に調査を開始し、電話相談なども行い、1日で1,042件の相談が寄せられています。ブラック企業の根絶は、若者や日本社会の今日と未来にかかわる重要問題であり、国民的・社会的に取り組む必要があります。

本区でも相談窓口を設置し、労働基準監督署や東京都など、関係機関と連携して取り組むべきです」

山崎孝明区長「区は、相談窓口の設置など、労働基準監督署等と連携して対策に取り組むべきとのお尋ねですが、国においては無料電話相談など、具体的な取り組みを全国的に開始しており、区として直ちに相談窓口等を設置する考えはありません」

【足立区議会・平成25年決算特別委員会(2013年10月15日)】

はたの昭彦区議「最近では、このブラック企業と、ブラックという定義も大分変わってきているのではないかなと思います。何と言っても法令を守らず働かせる企業をブラック企業というようなことでの表現に変わってきているのかなと思います。要は人間らしく働ける会社かどうかということが判断の一つの基準なのかなというふうに思っています。それと、やはり人間らしい働き方をいかにこの足立区の中でもつくっていくかということも、やはり一定、区の役割の一つだと思いますが、いかがでしょうか」

就労支援課長「現在、厚生労働省は全国4,000の企業を中心に調査を始めております。特に47都道府県の労働局、主に労働基準監督署がその査察をされていると思われますが、私ども、労働とか雇用行政は、どうしても国や都道府県と連携して仕事をしていかなければならない面があります。ただ個別に、そういうご相談があった場合は、労働基準監督署やハローワークとともに事態の収拾を図りたいと考えております」

【葛飾区議会・平成26年第1回定例会(2014年2月25日)】

中村しんご議員「厚生労働省が開始したブラック企業の告発を、最も身近な自治体として相談・援助が可能な相談窓口をつくり、根絶する努力をすべきと思うがどうか、答弁を求めます」

坂田祐次産業経済担当部長「ブラック企業に関する労働相談・あっせん窓口につきましては、東京都が亀戸などに設置しております労働相談情報センターで、窓口や電話による相談を行っているほか、既に本区の区民相談室におきましても、毎月1回、社会保険労務士による労働相談を実施しているところでございます。したがいまして、改めて相談窓口を設置する考えはございませんが、引き続き適切な窓口を紹介してまいります」

【葛飾区議会・平成25年第4回定例会(2013年12月5日)】

天野ゆうや議員「ブラック企業から区民を守るために、現状の月1回の相談窓口では不十分であり、常設のブラック企業相談窓口を設置すべきだと思います」

坂田祐次産業経済担当部長「ブラック企業に関する労働相談・あっせん窓口につきましては、東京都が亀戸などに設置しております労働相談情報センターで、窓口や電話による相談を行っているほか、既に本区の区民相談室において、毎月1回、社会保険労務士による労働相談を実施しているところでございます。したがいまして、改めて常設の窓口を設置する考えはございませんが、引き続き適切な相談窓口を紹介してまいります。」

葛飾区議会には「ブラック企業への厳正な対処を求める意見書」も提出され、そこでも相談窓口の設置を求めているが、採択されなかった。

【平成25年総務委員会(2013年9月13日)】

丸山銀一委員「ブラック企業ということが最近マスコミでも取り上げられて話題になっていますけれども、東京、この亀戸とか池袋とか飯田橋ではやっているのですけれども、葛飾区においても月1回はきちっと労働相談を行っているということを聞いておりますので、こういった点をもう少し拡充していただいてそれで行っていくというふうなことであれば、こういうことについてきちっとやっているという成果があるので、私はこの請願に沿うということではなくて、葛飾区の支援体制をしっかりと、私自身も、我が党もやはり支援していきたい」

清水忠副委員長「ブラック企業の相談窓口については、私も何件かこういう相談を受けましたが、亀戸の事務所のほう、あそこへ行って全て解決しております。ですから、それを葛飾区内にまた改めて、たまに来るようなサテライトでやっているようなこともありますけれども、そういったところをきちっとご案内、また指導していけば十分解決できるものだと思いますので、不採択を主張します」



●啓蒙活動

【江東区議会・平成25年第3回定例会(2013年9月27日)】

斉藤信行区議「ある若者は、『労働法の知識がなく、不満のまま働き会社に対抗できなかった。そういう人が多いと思う』と話しています。働く者の権利や労働基準法等を身につけ、不利益な扱いを許さないためにも、区がポケット労働法を区内各施設に置き、講座やゼミの開催などを行うべきです」

山崎孝明区長「ポケット労働法の配布と講座等の開催についてですが、ポケット労働法はホームページからダウンロードできるため、区施設での配布は考えておりません。また、講座等は、国や都が企業や労働者向けに広域的に開催しており、現時点で区独自で実施する考えはありません」

【足立区議会・平成25年決算特別委員会(2013年10月15日)】

はたの昭彦区議「以前は区でポケット労働法、東京都が出している冊子を改めて刷り直して配っていましたが、今こういうブラック企業ということが言われている中で、より若者が自らを守る知識を身に付けることが非常に大事だと思います。今も東京都が、このポケット労働法をつくっていますので、区としても、これらの活用を図っていくべきだと思います」

就労支援課長「都産業労働局と連携しながら検討してまいります」



●区役所のブラック企業化

【江東区議会・平成25年決算審査特別委員会(2013年10月2日)】

斉藤信行区議「江東区の職場では、1,308人中802人、61%がサービス残業有りと回答しているのです。これは違法行為で、まさにブラック企業と同じです。」

職員課長「私ども、今、勤退システムを導入いたしまして、職員の出退管理については、職員一人一人の入った時間、退出時間を全て管理してございます。出退時間の中には、正規の勤務時間と時間外勤務時間、身支度の時間等がありますけれども、この範囲の中で法に基づいて、きちんとした形で時間外勤務の命令をしているということでございます。勤退システムの中に、サービス残業という項目はございません」



●ブラック企業への民間委託

【江東区議会・平成25年第3回定例会(2013年9月27日)】

斉藤信行区議「ブラック企業に対して、入札や契約、物品発注などを行わないようにすべきです」

山崎孝明区長「そうした企業に対する区の入札、契約、物品発注につきましては、事件、事故等の違法性が立証された場合には、本区指名停止基準に基づき適正に対応してまいります」

【足立区議会・平成25年12月13日建設委員会】

伊藤和彦区議「指定管理者というのは区に代わってその施設を運営するものであって、一般の契約とは違うと。やはり規範意識が必要だということを言っていました。実態の把握とともに、選定も必要だし、いやしくも区がそうした働く人の雇用、ブラック企業と言っていいかどうかわかりませんが、そういうものを生み出すようなことにならないように、公契約という条例がきちんとできたわけですから、それに反映できるようなことをしっかり取り組んでいただきたいと思いますが、どうですか。」

区長「これは今回の指定管理ばかりでなく、区全体の指定管理の考え方の中に、今おっしゃった公契約、つまり管理監督者としての企業の責任といったものをこの項目の中に入れ込んでいこうと、こういうことを検討しております」

【足立区議会・平成25年11月8日区民委員会】

さとう純子区議「公契約条例が制定されて、賃金の保障、まして足立区が委託しているということですから、公が、区自らが、ブラック企業的というか、そういう働き方をさせられているのを見過ごしてしまうような評価では、私はいけないと思うのですね」

中央図書館長「協定書の中で、館長は必ず有資格者を置くということと、常時その有資格者が図書館の中にいるということは、協定の中で規定しております。

ただ、雇用につきまして非正規か正規かという部分につきましては、図書館長については特に規定はございません。ただ、統括責任者というのは地域学習センターでございますので、そちらのほうが必ず正規雇用ということになっております。

では、どれだけ有資格者がいるかというところについてでございますけれども、正規の職員につきましては、ほぼ皆さん有資格者でございます。そういうふうに業者のほうで募集をかけているところでございます。

ただ、臨時職員の部分につきましては、有資格者でない方もいらっしゃると。概ね5割は、資格を持っていると認識しております」

【足立区議会・平成25年決算特別委員会(2013年10月15日)】

はたの昭彦区議「株式会社の保育の現場では非常に離職率が高いと言われている中で、区がブラック企業を生んでいると言われるような事態があってはいけないと思います。こういった保育等の事業選定に当たっても、著しく離職率が高いというようなことも事業者選定の一つの部分として配慮する必要があると思うのですけれども、いかがでしょうか」

総務部長「いやしくも区がブラック企業を生み出しているということのないように、また公契約条例でも反映させていますけれども、区の契約というのは民間の契約の手本にもならなければいけないと考えておりますので、そういう点も注視して今後の契約に努めてまいりたい」

【葛飾区議会・平成26年第1回定例会(2014年2月26日)】

水摩雪絵区議も2月26日に公契約条例の質問でブラック企業に言及した。「労働規制の緩和の流れと企業の過当競争で、労働者の働く環境は、長時間労働・低賃金・不安定雇用が拡大し、それらが引き起こす残業代未払いや、過労死・過労自殺、貧困の拡大、ブラック企業という言葉も、もう聞きなれない言葉ではありません」



●就労支援事業への悪用

【江東区議会・平成25年予算審査特別委員会(2013年3月1日)】

見山伸路区議「(中小企業若者就労マッチング事業について)企業側の情報開示というのは万全なのでしょうか。言いづらいのですけれども、いわゆるブラック企業と呼ばれる会社が混在している可能性はないのでしょうか」

経済課長「就労をしている中でも、こちらで給与を全部払っていますので、そういう意味では、やはり企業さんとしては、すごく変な言い方をすれば、うまく使おうと思って、それで、さよならということもできるようなこともあるわけです。そういうことがないような形で指導しているというような状況でございます」



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