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林田力 『東急不動産だまし売り裁判』二子玉川ライズ反対運動

 

クリエイティブ・シティは二子玉川ライズの尻拭いか=東京・世田谷... 1

二子玉川再開発訴訟原告の集い開催... 2

ブラタモリで見た失われるニコタマの魅力... 3

二子玉川ライズ差し止め訴訟は上告へ... 5

二子玉川ライズ原告団・弁護団集会で方向性確認... 8

街との調和を欠く二子玉川ライズの矛盾... 10

100人以上の市民が二子玉川ライズ行政訴訟提訴... 12

住民反対運動を招く東急電鉄の不誠実... 14

渋谷区桜丘町の地上げの現場を見た... 16

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会住民大集会... 17

 

 

クリエイティブ・シティは二子玉川ライズの尻拭いか=東京・世田谷

三菱総合研究所らは2010年8月4日、クリエイティブ産業集積に必要な都市環境要件を検討する「クリエイティブ・シティ・コンソーシアム」を設立した。これは二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)の尻拭いの一環と考えられる。

同コンソーシアムでは東京都世田谷区の二子玉川地区を社会実験のモデル地区として、クリエイティブな人材、産業が集積し、創造性を刺激し、自発的に成長を促進する都市環境を整えたビジネス地域の創出を目指すとする。また、会員企業やクリエイティブ産業従事者、行政関係者、投資関係者らの交流拠点として二子玉川地区に「カタリストフロア(仮称)」を開設予定とする。

同コンソーシアムが二子玉川ライズを前提としていると判断する根拠は以下2点である。

第一に同コンソーシアムのニュースリリースで再開発を強調している。「都内最大級の再開発の進む」「現在は二子玉川東地区第一種市街地再開発事業も進捗し、今後も発展可能性のある地区」と述べている。

第二に会員企業に二子玉川ライズを主導した東急グループが名を連ねている。東京急行電鉄が幹事会員、東急不動産、東急エージェンシー、東急レクリエーション、イッツ・コミュニケーションズが法人会員である。二子玉川ライズのコンサルティングを担当したアール・アイ・エーも法人会員である。

一方で二子玉川をクリエイティブ・シティのモデル地区として選択した積極的理由は不明確である。ニュースリリースは以下のように述べる。「二子玉川地区は、世界都市・東京にありながら、緑地や河川などの豊かな自然を残し、渋谷や都心へのアクセスにも高い利便性を有しているハイブリッドな環境であるとともに、創造的文化基盤も有しております。」

しかし、「創造的文化基盤」について具体的な説明はなされていない。「緑地や河川などの豊かな自然」は再開発や暫定堤防建設によって急速に失われている。かつて緑地であった二子玉川駅東口の広大な再開発地域はコンクリートで覆われる。さらに「渋谷や都心へのアクセスにも高い利便性」とあるが、これでは渋谷や都心そのものには劣っている。また、アクセスの良さならば二子玉川よりも利便性の高い地域は存在する。

既に世田谷区も二子玉川をデジタル映像コンテンツ関連産業の集積地として打ち出しているが、同じく二子玉川である積極的な理由は不明である。オフィス過剰の状況下で、ビジネス街としては優位性に欠ける「二子玉川ライズ オフィス」などの再開発オフィスビルを埋めるための救済策と考える所以である(林田力「デジタル映像産業誘致は二子玉川再開発の尻拭いか=東京・世田谷」PJニュース2010430)。

世田谷区のデジタル映像コンテンツ産業誘致集積支援事業の推進事業体には特定非営利活動法人ディジタル・コンテンツ・インスティテュートが選定された。その理事長の金子満・東京工科大学大学院メディア専攻教授は同コンソーシアムの学術会員となっている。住民の知らないところで、二子玉川の産業構造を改変する動きが起きている。

一般に指摘される再開発の問題は再開発地域が既存のコミュニティーと摩擦を起こすことである。同コンソーシアムのニュースリリース文からも地域の生活者の存在が見えてこない。地域住民の排除と犠牲の上で成立する再開発は決して成功と評価されることはない。

 

二子玉川再開発訴訟原告の集い開催

東京都世田谷区の住民団体「にこたまの環境を守る会」が2010年10月30日、上野毛地区会館大会議室で原告団集会を開催した。原告団を組織化し、住民運動を進めていくことを確認した。

世田谷区の二子玉川では二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(街の名称:二子玉川ライズ)が進行中であるが、高層ビル乱立による住環境悪化などにより、反対運動が継続している。住民反対運動と並行して法廷訴訟も起きている。

住民らによる二子玉川東地区第一種市街地再開発組合を被告とする再開発差し止め訴訟と、世田谷区長を被告とする公金支出差し止め住民訴訟が東京高裁に係属中である。このうち、再開発差し止め訴訟は11月11日13時10分から東京高裁822号法廷で言い渡される。また、住民訴訟は12月2日11時から東京高裁808号法廷にて第一回口頭弁論が開催される。

これまで上記訴訟で住民側は二子玉川再開発の不当性・違法性を告発してきた。具体的には東急電鉄・東急不動産ら東急グループの利潤追求事業に巨額の税金を投入し、環境と住民生活を破壊し、福祉施策を圧迫するという問題である。しかし、上記両訴訟とも東京地裁では住民側が敗訴した。

また、住民運動は成熟社会・縮み社会と言われる日本の時代状況に相応しい街づくりと、行政・議会の在り方を提起してきた。しかし、住民側が代替案まで提示した二子玉川東第二地区市街地再開発では、住民の抗議を無視して再開発組合の設立認可が強行された(林田力「二子玉川東第二地区再開発組合設立認可に抗議(下)」PJニュース2010年7月8日)。

このような状況下で今後住民側が、どのように裁判などを戦っていくかを決め、具体的な行動計画と体制を決める場が今回の集会であった。集会には住民側代理人の淵脇みどり弁護士、原希世巳弁護士も参加した。

淵脇弁護士は裁判の意義として、洪水被害などを科学的に立証したことを挙げた。これによって再開発の被害が住民個人の主観的な不快感ではないことを明らかにした。

原弁護士は裁判の難しい点を原告が地域で孤立することと指摘する。それを狙って、被告側は「原告が特殊なイデオロギーで行動している」などと攻撃する傾向がある。この点で二子玉川住民の結束力を評価した。

住民の討論では様々な意見が出された。そこでは再開発の被害が改めて浮き彫りになった。高層ビルのビル風でメガネが飛ばされた。ビルの照り返しで太陽が西から出るように見える。異常高温被害も多発した。昔のよい環境があっという間になくなった。夜間工事が続き、寝不足である。再開発がなければ続けられた店は沢山あった。今も事業者の悲鳴が聞こえる。

このような生々しい被害に基づき、反対運動に取り組む意識も切実である。東急グループが自分達の儲けのために住民の生活を踏みにじることは許せない。やむにやまれぬという気持ちから裁判に参加している。子孫に何故反対しなかったのかと笑われないように反対運動に取り組む。

世田谷区とのやり取りを披露した住民もいた。世田谷区に待機児の問題について電話したところ、「予算がないので保育所を建てられない」と言われた。「予算がないのに二子玉川ライズには補助金を出すのはおかしいのではないか」と言い返したところ、「そうですね」との回答だった。このエピソードを踏まえ、反対運動も再開発に投下する税金を必要な分野に配分するなどの区民要求と結びつけるべきと主張した。

この集会での大きな変化は原告団の結成である。これまでも原告団という呼称を用いていたものの、100人以上存在する原告の集合という以上の意味を有していなかった。組織的な作業は「にこたまの環境を守る会」で行っていた。今回の決定で原告団内に役職を定め、組織化することで、効果的な戦いを進める方針である。情報発信なども積極的に行う予定とする。

 

ブラタモリで見た失われるニコタマの魅力

NHK総合のテレビ番組「ブラタモリ」は2009年10月15日に「二子玉川をブラタモリ」を放送した。2010年11月4日にもアンコール放送と銘打って再放送された。

二子玉川は東京都世田谷区にある東急田園都市線・大井町線二子玉川駅周辺の地域で、ニコタマの愛称で知られている。この放送によって二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)で失われるニコタマの魅力を再確認した。

「ブラタモリ」はタモリと久保田祐佳アナウンサーが原宿、早稲田、上野などの町を散策しながら、過去の風景に思いを馳せる番組である。名物料理を食べるだけの紀行番組とは一味も二味も違う薀蓄の豊富なカルチャー番組になっている。番組コンセプトは「タモリ倶楽部」に類似する。これは雑学知識豊富な中洲産業大学・タモリ教授のキャラクターに負うところが大きい。

二子玉川駅前に立ったタモリの第一声は「工事ばかり」であった。実際、二子玉川は街中が工事現場になった感があり、それが街の魅力を削いでいる。収録当時と比べると、現在では超高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」が竣工するなど第一期工事は収束しつつあるが、同じく超高層ビル中心の第二期事業が開始される計画である(林田力『二子玉川ライズ反対運動』マイブックル、108頁)。新築マンションに入居した住民も、計画通りならば数年間は工事と付き合わなければならない。

番組の一行は工事現場ばかりの東口・再開発地域ではなく、西口の玉川高島屋ショッピングセンターへと向かった。1969年に開店した玉川高島屋は日本初の本格的ショッピングセンターとされる。

当時の開発責任者・松沢邦光氏が顧客集めの工夫を説明した。競走馬の即売会やボーリング場開設などを行ったという。ここには略奪的・ハイエナ的な金儲けではなく、顧客に喜ばれたいという健全なビジネス精神が存在する。地域住民を押しのけるようにして工事を進める二子玉川ライズとの対照性が感じられた。

NHKらしい点は高島屋ショッピングセンターの店内に入り、当時の開発責任者にインタビューをしたにもかかわらず、店名を表示しないところである。高島屋が表示されたシーンは開店を報道する当時の新聞記事を写したところのみであった。企業宣伝をしないNHKのポリシーである。

しかし、店名を表示しないというポリシーを機械的に適用することは安直でもある。開発責任者をデベロッパーの従業員と紹介したが、東急沿線の二子玉川を開発したデベロッパーとなると東急電鉄や東急不動産と誤解される恐れがある。

実際のところ、高島屋の出店は沿線に安住する東急グループを出し抜いた成功例である。その点も踏まえて番組で紹介された集客の苦労話を聞くと味わいが一層深まる。この点でも東急グループが営利追求のみで好き放題している感のある二子玉川ライズとは対照的である。

次に一行が訪れた場所は多摩川河川敷である。ここでは川岸に土手があるのではなく、川岸に住宅などの家があり、その後ろに土手がある。これは大正時代に堤防を建築した際、川沿いの料亭を中心として、川べりの景観の破壊に反対する声があがったためである。そのために川岸から離れた場所に堤防が築かれた。

二子玉川ライズでも景観破壊は重要な論点であり、先人に学ぶことも多い。しかし、現時点では虚しさが漂う。二子玉川南地区では住民の反対を押し切って暫定堤防建設が強行され、川べりの貴重な自然や景観の多くが破壊されてしまった。

その後で一行は玉川電車(玉電)の廃線跡を探訪する。鉄道柵が駐車場敷地の境界に使われているなど、意外なところに面影を残していた。また、地元の小学生が生まれる前に廃止されていた玉電の駅を知っているなど、生活の中に歴史が溶け込んでいた。この点でも過去の痕跡を壊して街の形を変えてしまう二子玉川ライズは残念である。

 

二子玉川ライズ差し止め訴訟は上告へ

東京都世田谷区の住民が二子玉川東地区第一種市街地再開発(二子玉川ライズ)の差し止めを求めて再開発組合を提訴した訴訟の控訴審判決が2010年11月11日に東京高等裁判所で言い渡された。判決で住民側の控訴は棄却された。住民側は不当判決と抗議し、最高裁判所への上告の意向を示した。

第1回口頭弁論で結審してしまう控訴審も少なくない中で、再開発差し止め訴訟の控訴審は証人尋問を行うなど住民側の問題意識に応えて丁寧に審理していた(林田力「二子玉川再開発差し止め訴訟控訴審証人尋問(上)」PJニュース2010年4月14日)。

それ故に住民側には判決への期待もあったが、それは完全に裏切られた。大多数の住民にとって判決は理解不可能であった。住環境悪化を認めながらも、対処されない。東急電鉄や東急不動産は大手を振って再開発を進め、二子玉川の街と住民に「あかんべえ」ができるのだから。

住民側は人格権、環境権、住民のまちづくり参画権に基づき、再開発の差し止めを求めた。住民側は憲法第13条、第25条などに基づく人権として十分に成熟した重要な権利と主張する。これに対して判決は以下のように述べて、住民側の主張を退けた。

「控訴人らが侵害されたと主張している個別の権利ないし法的利益を包摂する権利としては、人格権ないし人格的利益をもって足り、これとは別に環境権や住民の『まちづくり参画権』を認めるべき憲法上の根拠は見出せないし、これらが憲法上の権利として成熟しているということもできない。」(判決書24頁)

その上で判決は人格権侵害の有無について判断する。控訴審で住民側は洪水被害について主張立証に力を入れた。二子玉川ライズの人工地盤が雨水を堰き止め、周辺地域の洪水被害を激化させるという問題である。この点について判決には注目すべき内容があった。

「都市再開発事業は、規模が大きく周囲への影響が大きいことや、公的支援を受けて行われる事業であるから、公共的な観点に立つ配慮をなすべきであることなどから、その配慮に著しく欠け、周辺住民の洪水被害を拡大する認められるときは、不法行為を構成することがあると解される。」(判決書26頁)

これは一般論として周囲への影響が大きく、公的支援を受ける都市再開発事業に対し、周辺住民の洪水被害を拡大させないようにすることを要求したものである。これは洪水等の災害を未然に防ぐ責務は第一次的に国にあり、再開発組合は関係ないという再開発組合の主張を理論としては排斥したものである。

しかも、判決では上記の前段で個人レベルの対策が不法行為を構成することはないとする。たとえば個人が自己の敷地をコンクリートに舗装することも、周囲に雨水の流出を増大させることになる。また、盛り土をすれば洪水流の侵入を阻止することになる。これらは個人レベルでは問題ないが、影響力が大きく、公的支援を受けた都市再開発事業で行った結果、周辺住民の洪水被害を増大させれば不法行為となる。

判決は個人と都市再開発事業で異なる扱いをつけた。これは平等を形式的に捉えた場合、不平等な扱いになる。一方、個人と都市再開発事業では影響力の点で全く異なる。公正とは「等しきものには等しく、等しからざるものには等しからざるものを」ということである。形式的平等に囚われると社会的弱者の権利を守ることはできない。実質的平等を追求した判決の論理構成は評価に値する。

その上で判決は「人工地盤には洪水流の侵入を防ぐ効果があり、その分だけ周囲の水深を高める結果を生ずる」と述べ、これによって高まる周囲の浸水深を最大1.5メートルとした。しかし、ここまで認めながらも、結論は以下のように住民の主張を否定した。

「人工地盤を設置することにより、控訴人らの一部に対する関係で、洪水被害が生じた場合に浸水深が大きく高まり、あるいは洪水被害を受けるはずがないのにこれを受けることになるとは認められない。」(判決書29頁)

判決の価値判断では浸水深1.5米は「浸水深が大きく高まり」には該当しないことになるが、疑問である。一般的に浸水深が0.5米以上になると、床上浸水の危険がある。つまり、0.5米の浸水深があれば周辺住民は洪水によって財産的被害を受ける。これは文字通り「洪水被害を受けるはずがないのにこれを受けることになる」である。

そして浸水深が1.5米もあれば、子どもや背の低い大人は頭を水面から出すことができない。実際、女性アイドルグループ「ミニモニ。」が身長150センチメートル以下のメンバーから構成されている。プールでも水深1.5米は深い方である。プールでも事故は起きる。浸水深1.5米の洪水ならば住民にとって生命の危険がある。判決の事実認定に基づいて判決の結論が導き出されることは理解に苦しむ。

また、裁判所が立証責任によって住民に不利な結論を下したことも判決の特徴である。たとえば、住民側は二子玉川ライズでは地下に駐車場などの広大な構造物が建設され、これが地下水位の上昇を引き起こすと主張した。これに対し、判決は「本件再開発地域内の広大な構造物により、地下水の水位が上昇することを認めるに足りる証拠はない」とした(判決書29頁)。

住民は二子玉川ライズによって交通量が増加し、二酸化窒素濃度が上昇し、大気汚染による健康被害も生じると主張した。これに対し、判決は「受忍限度を超える二酸化窒素による被害が発生することについては、控訴人らに立証責任があるところ、控訴人らの健康に被害を及ぼす蓋然性のある二酸化窒素による大気汚染が発生することを認めるに足りる証拠がない」とした(判決書30頁)。

伝統的な裁判の考え方では、黒か白か五分五分の時に裁判官が判断に迷うことはない。立証責任のある当事者の主張を退けるだけである。原則として立証責任は主張する側にある。「金を貸した」と主張するならば、主張する側は貸したことを立証しなければならない。もし、貸したか貸さなかったか判断に迷う状態ならば判決では「金を貸していない」と認定することになる。

この伝統的な発想に従えば「二子玉川ライズで住環境が悪化する」と主張する住民側に立証責任がある。しかし、立証のための証拠(二子玉川ライズのデータ)は再開発組合に集中しており、住民側に情報開示されていない。この状況で住民側に立証させることはハードルが高く、公正でもない。現実に公害訴訟などでは立証責任を事業者側に転換した事例もある。しかし、判決は伝統的な立証責任論で思考を停止している。

判決では眺望利益の侵害による差し止めも否定した。その理由付けに気になる点がある。判決は以下のように述べ、マンションの居住する住民側も周囲の眺望を妨げていると述べた。

「控訴人らの一部が居住する11階建てのマンションについてみると、その上層階に居住するものが眺望利益を享受している反面、マンションの背後に位置する低層住宅からの観望は同マンションによって一部が妨げられ、その住民は同様の眺望利益を享受することはできない」(判決書32頁)

これはマンション建設反対運動においてデベロッパーや近隣対策業者が使う論理である。しかし、周辺住民も多少は眺望を妨げているから、自分達の金儲けのためにメチャクチャにしていいということにはならない。

周辺の住宅による眺望破壊と二子玉川ライズの眺望破壊は次元が異なる。洪水被害の箇所では判決は住民の行動は問題なくても、都市再開発事業が行えば不法行為になるという実質的平等の観点で判断した。それにもかかわらず、眺望利益の箇所では形式的平等に逆戻りしてしまったことは残念である。

景観利益についても以下のように住民の主張を退けた。

「低層住宅にとどめることこそこの地域の良好な景観の保全に資するという考えも成り立ち得る一方で、高層住宅の建設を含む事業も新たな良好な景観の形成に資するという考え方も成り立ち得るのであって、前者が良好で、後者は劣悪であるという前提で、控訴人らのいう景観利益を認めることは、できないと言わざるを得ない。」(判決書35頁)

この相対立する考え方を並べることで一見すると中立そうな印象を与える言い回しは、住民らが世田谷区長に二子玉川ライズへの公金支出差し止めを求めた訴訟の東京地裁判決にも見られる(林田力「二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴(中)」PJニュース2010年6月9日)。

このような姿勢は実は中立ではなく、偏ったものである。何故ならば再開発地域が風致地区として厳しい建築規制が存在し、その大部分は都市計画公園予定地となっていた経緯を無視するものだからである。そのような土地に対して、「高層住宅の建設を含む事業も新たな良好な景観の形成に資するという考え方」を登場させること自体が開発優先の価値観に染まっている。

 

二子玉川ライズ原告団・弁護団集会で方向性確認

二子玉川東地区第一種市街地再開発(二子玉川ライズ)の違法性を主張する2件の訴訟の原告団・弁護団集会が2010年11月14日、東京都世田谷区用賀の用賀地区会館で開催された。上告する差し止め訴訟と12月2日に第1回口頭弁論が開催される住民訴訟・控訴審の方向性を確認した。

二子玉川ライズは東急田園都市線・大井町線の二子玉川駅前で進められている再開発であるが、住環境を破壊するとして周辺住民から反対運動が起きている。二子玉川東地区第一種市街地再開発組合を被告とする再開発事業差し止め訴訟と、世田谷区長を被告とする公金支出差し止め住民訴訟も起こされた。

両訴訟の住民側代理人の淵脇みどり弁護士は控訴審判決を「読めば読むほど酷くて、腹が立つ判決」と評した。「一審判決よりも踏み込んでいる面がある」としつつ、「その分、腹が立つ」と述べる。

控訴審判決が具体的に踏み込んだ箇所として、一審判決の「本件再開発事業は、昭和53年ころから存在した二子玉川地区のまちづくり構想の一環として行われるものであって、公共性が認められる」を訂正した点である。住民側は控訴理由書で以下のように批判した。

「本件再開発事業は、昭和53年当時のまちづくり構想とはおよそ異質な、超高層ビル群を中核とした特定資本への利益供与に奉仕するものに過ぎず、およそ公共的な性格のものとはいえない。」

この住民の主張を判決は以下のように認めた。

「確かに、本件再開発事業は昭和53年当時の世田谷区のまちづくり構想とはかなり違うところも存在するので、原審が眺望利益に関する判断において、上記の判示をしたことには、必ずしも当を得ないところもある」(判決書36頁)

その上で「本件再開発事業が、東京都の都市計画決定に基づき、東京都知事による認可を受けて行われているものである」と改めた。しかし、住民が問題にする公共性については「本件再開発事業の公共性について詳しく検討するまでもなく」と切り捨てた。

淵脇弁護士は判決の趣旨を「公共事業だから、少々の権利侵害は止むを得ない」と解説した。しかし、住民側は公共事業の中身を問題にしている。二子玉川ライズは公共事業と正当化できるほど公共性が備わっているのか。

実態は高層マンションや商業ビルを建設する東急グループの営利事業であって、公共性の欠片もない。二子玉川ライズに公共性があるのかないのかの判断を求めているのに、「公共事業だから問題ない」では回答にならない。住民の問題意識は判決では無視された。

住民からも判決への疑問の声が相次いだ。判決は自動車交通量の増加による大気汚染を否定した箇所でディーゼル車規制に言及して以下のように言い切った。

「ディーゼル車の排気ガス規制が、今後、更に強化されることは公知の事実であるから、本件再開発事業の完成により、ディーゼル車の交通量が増えたとしても、直ちに、微小粒子物質の濃度が上昇するとは認められない。」(判決書30頁以下)

住民にとっては自動車の排気ガスの問題がディーゼル車の問題に矮小化されてしまったことが不満である。日本では欧米と比べて過度にディーゼル車が悪玉死される傾向がある。そこには石原慎太郎・東京都知事などの政治的キャンペーンが影響している。判決は彼らが喜びそうな内容である。三権分立の国家で、行政のキャンペーンに無批判に乗っかっている判決には気持ち悪さがある。

続いて淵脇弁護士は住民訴訟の控訴理由書の内容を説明した。控訴理由書は11月11日付けで提出した。控訴理由書では冒頭で開発と住民の利益は対立するから、そこを見て欲しいと主張したという。

企業にとって再開発は利潤追求である。企業の好き勝手にさせるならば地域の自然環境は破壊され、交通量や居住人口・集客人口の増加で住環境も破壊される。これを規制することが都市計画法や都市再開発法の務めである。「再開発によって街が発展すれば周辺住民が潤う」的な幼稚なWin-Win論は虚偽である。開発事業者の利益と周辺住民の利益が対立するという本質を見失ってはならないと主張する。

その上で控訴理由書では行政と企業の関係に迫った。東急電鉄・東急不動産らの東急グループは二子玉川ライズによって通常の民間事業以上の利益を得ることが可能になった。容積規制が約2.2倍に緩和されたことで、通常は建築できない超高層ビルが可能になった。また、再開発事業には公金(補助金)が投入される。岩見良太郎教授の意見書によると、それら東急の利益は910億円になる。

一方、住民訴訟の一審判決では以下のように東急の負担に言及して住民に不利な判断を下した。

「東急電鉄等は、本件覚書等により、二子玉川公園となるべき土地の約半分を世田谷区に無償で譲渡することを約している」(林田力「二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴()PJニュース2010年6月7日

それでは東急が世田谷区に無償譲渡する土地にどれくらいの価値があるのか。控訴理由書では世田谷区作成の資料に基づき、146億円と計算する。つまり、東急は僅か146億円の負担で建築規制を変更させ、6倍以上の910億円の利益を得られるようになった。

加えて再開発という手法を取ることで、東急は駅前の弱小地権者の権利を駅から離れた土地の建物内に権利変換した。これを控訴理由書は「合法的に追い出し、地上げをし」と表現する。それによって駅前の土地を東急グループの独占的な商業ビル(二子玉川ライズ・ショッピングセンターなど)とすることを可能にした。この点などを踏まえれば東急グループの利益は910億円をはるかに越えると主張した。

その上で控訴理由書は問題の本質を、特定の企業が一部の土地資産の提供によって、都市計画の規制を自社に有利になるように変更し、提供資産の数倍もの利益を獲得することにあるとする。「お金を出せば容積率を買える」ということはあってはならない。そこには都市計画制度を行政の腐敗の温床とする危険性があると警告した。

淵脇弁護士の説明に対し、住民から「二子玉川ライズは腐敗の典型」と同調する意見が出された。また、「世田谷区の職員が再開発組合に天下りしている」という具体例も指摘された。

 

街との調和を欠く二子玉川ライズの矛盾

東京急行電鉄の野本弘文専務のインタビュー記事が2010年12月17日に日経BP社のウェブサイト「ケンプラッツ」に掲載された(樋口智幸「街との調和を欠く店は続かない、野本弘文・東急電鉄専務」)。この記事は二子玉川ライズの矛盾を浮き彫りにする。

問題の記事は東急電鉄が駅施設と街の関係をどのように捉えているかを野本専務に尋ねたものである。野本専務は東急電鉄で開発事業本部長、都市生活創造本部長などを務めた。

東急電鉄では2010年10月に東急田園都市線たまプラーザ駅に隣接する商業施設「たまブラーザ テラス」の3期工区部分を開業したばかりである。この「たまプラーザ テラス」と通常の駅ビルの相違について、野本専務は以下のように回答する。

「許容容積率を使い切らず、建物の高さを抑えた構成にしています。街にとって何が必要か、生活している人にとって何が必要か、という視点で総合的に計画しました。都心ではないので、コンクリートの塊では受け入れられない。プラーザ、すなわち広場という思想を大切にしながら、改札階から3層に抑えました。」

これは同じ東急電鉄が中心になって東京都世田谷区玉川で進める二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)とは正反対である。二子玉川ライズでは厳しい建築規制のあった風致地区・都市計画公園予定地を計画変更して、容積率を割り増しした。そこには東急電鉄と世田谷区長の密約(協定)があった(林田力「二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴(上)」PJニュース2010年6月7日)。

その割り増された容積率を目一杯使うことで、新築マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」などの超高層ビル乱立が可能になった。

多くの住民は「二子玉川は六本木のような都心ではなく、国分寺崖線と多摩川に囲まれた緑豊な地域であり、コンクリートの塊は受け入れられない」と主張している。実際、産業能率大のアンケート調査によると、二子玉川のイメージは「緑が豊かな街」である(林田力「産能大街のイメージ調査と二子玉川再開発のギャップ」PJニュース2010年5月12日)。

東急電鉄は二子玉川では「街にとって何が必要か、生活している人にとって何が必要か」を考えていない。

「たまプラーザ テラス」の事業性についての回答も二子玉川ライズとは正反対である。野本専務は以下のように回答する。

「施設単体で回収するだけではなく、長期にわたり街と共存することを意識しています。自社の建物だけの収益性を追求すると、街全体の調和を損ねます。単体の施設で集客できるのは最初だけで、街自体に魅力がなければ、長期の成長は望めません。」

これに対し、二子玉川ライズでは地元経済界とともに歩むという意識に欠ける。東急の商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」と地元地権者の商業施設「二子玉川ライズ バーズモール・オークモール」は分けられている。バーズモール・オークモールは「仮設店舗ではないの」と勘違いする人もいるほど貧相である。「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」開業後は人の流れが変わり、立ち行かなくなるとの声もある。

東急不動産と東急コミュニティーが特定建築者となった戸塚駅西口再開発ビル「トツカーナ」でも、東急の商業施設「戸塚東急プラザ」と地元地権者中心の施設「トツカーナモール」を分けている。このトツカーナは地元地権者から「地元の生活再建よりも再開発ビル床の売却による事業費の回収を優先している」と批判されている(林田力「住民発意で区画整理・再開発の法改正を考えるシンポ(中)」PJニュース2010年8月26日)。

問題の記事では渋谷の街づくりにも言及する。野本専務は以下のように駅から離れた場所に集客施設を作る街づくりの工夫を述べる。

「渋谷は元々が通過駅でした。駅利用者が新宿・池袋では15分、銀座は45分も滞在するのに、渋谷は5分しか滞在しないというのが、五島慶太が会長だった時代の問題意識でした。そのため駅から少し離れた場所に、東急百貨店本店や東急文化村を建設していったのです。」

これも二子玉川ライズでは正反対である。二子玉川では再開発前は駅前にバスターミナルがあった。ところが、再開発によって、バスターミナルは商業ビルの奥に移動された。このため、駅からバス停に行く場合もバス停から駅に行く場合も商業ビルを通らなければならなくなる。それで買い物客を増やそうという姑息な計画である。

渋谷では駅と離れた場所に魅力的な集客施設を建設して街の魅力を高めたが、二子玉川ライズでは住民を不便にすることで無理やり買い物客を増やそうとする。住民の時間と利便性を犠牲にした再開発である。

東急電鉄には既に住民ニーズを無視した開発失敗事例がある。この記事でも言及された東急田園都市線あざみ野駅の「あざみ野三規庭」である。高級路線が沿線住民のニーズに反していたためである。「あざみ野三規庭」の失敗は同じ日経BP社の雑誌『日経ビジネス』2010年1月18日号でも取り上げられた。この記事でも野本専務が登場するが、日経ビジネス記事には第三者への取材や記者の考察も加味されており、東急電鉄に厳しい内容になっている。

「あざみ野三規庭」は「2004年の開業当時の姿は見る影もなく、2階には空き店舗が目立っている。」とする。さらに東急沿線自体を「20〜30代に魅力なし」と評価し、東急電鉄の「改革のスピードは遅いと言わざるを得ない」と結論付ける(「成長路線図引き直し」47頁)。

まさに二子玉川ライズは改革がなされないまま進められた計画に見える。二子玉川ライズでも「街との調和」を考え直す必要がある。

 

100人以上の市民が二子玉川ライズ行政訴訟提訴

世田谷区民を中心とした125名の市民が2010年12月28日、東京都の二子玉川東第二地区市街地再開発組合設立認可申請の取り消しを求めて、東京地裁に提訴した。原告の人数は年明けにも追加される予定である。

住民側は二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)に対し、都市計画制度を濫用して強行された憲法第13条(生命、自由及び幸福追求権)及び第25条(生存権)、住民自治の本質に違反する重大な乱開発であると主張する。

超高層ビルを乱立させる二子玉川ライズの正当化根拠として、世田谷区は「世田谷区都市整備方針」で以下のように述べる。

「二子玉川駅周辺地区は、世田谷区の全体としても、三軒茶屋駅周辺地区および下北沢駅周辺地区と並び広域生活拠点として位置づけられる」

しかし、1982年に東急グループが中心となり、「二子玉川の再開発を考える会」が発足し、1983年に再開発準備組合が設立した当時、世田谷区の基本計画に「二子玉川は広域生活拠点」という位置づけは存在しなかった。逆に再開発地域の主要部分は都市計画公園となる予定であった。

その言葉は1985年の都市整備方針で初めて登場し、1987年に世田谷区の基本計画で「広域生活拠点」が定められた。それと並行した1986年から1988年にかけて世田谷区の職員や区長と東急電鉄の担当者や社長との間で密約(協定)が作成された。そこでは東急グループが二子玉川公園敷地の一部を世田谷区への無償譲渡する代わりに、公園予定地を駅から離れた場所に移動し、超高層ビル建設を可能にする都市計画の変更が約された。

広域生活拠点を名目にした再開発の必要性は、企業と行政の癒着を隠蔽する後付け説明に過ぎない。多摩川園跡地再開発を目論む東急グループのために、世田谷区が「広域生活拠点」なる行政上の必要性を創出して辻褄を合わせた。これが歴史的真実で、この偽装工作こそが二子玉川ライズの違法性の本質であると主張する。

東急グループが恣意的な都市計画の濫用を可能にした代償である「公園敷地の一部の世田谷区への無償譲渡約束」には一片の公共性もない。東急グループが世田谷区に無償譲渡した土地の価格が149億円であるのに対し、二子玉川ライズで得た利益は910億円以上になる(林田力「二子玉川ライズ原告団・弁護団集会で方向性確認(下)」PJニュース2010年11月22日)。

経済力のある大企業が一部の土地の拠出によって、その数倍の容積率緩和利益と公金利益を得た上で、この地域の開発利益を独占する。その結果、風致地区という開発抑制地域が都内最大の民間再開発に変貌する。これは正に都市計画制度の濫用であると弾劾した。

二子玉川ライズに対しては既に2件の訴訟が提起されている。二子玉川東地区第一種市街地再開発組合(川邉義高・理事長)に再開発事業の差し止めを求めた民事訴訟は上告審に係属中である。熊本哲之・世田谷区長に再開発事業への補助金支出差し止めを求めた住民訴訟は控訴審に係属中である。

これらの訴訟と比較した今回の訴訟の特徴を2点指摘する。

第一に今回の訴訟が第二期事業(二子玉川東第二地区再開発)を対象としている点である。「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」「二子玉川ライズ オフィス」など第一期事業の高層建築は、ほぼできあがってしまった。新築マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は未だ販売中であるが、建物は竣工している。

高層ビル乱立による住環境破壊は既に現実化しており、現地に行けば問題は一目瞭然である。工事被害、景観、眺望、圧迫感、風害、照り返し、プライバシー侵害などである。洪水や大気汚染、交通問題などの懸念も具体化しつつある。何れも複合的被害であり、住民等の苦痛は甚大である。この上に残された第二地区にも超高層のコンクリートの塊が建てられれば、二子玉川らしさは完全に喪失する。第1期事業に対する提訴に比べれば、第1期事業という失敗作が眼前に存在する分、問題意識の共感が得られやすい。

このため、原告団は質的に拡大した。憲法・まちづくり・自治体運動などの各分野で経験豊かな活動家・専門家が原告に加わっている。地域的にも文京区や千代田区、港区などの住民が原告になった。東京都の行政処分の違法性を争うことは、都民にとって関心事である。この訴訟は「原告適格」や「訴えの利益」の点からも注目される。

第二期事業に対する裁判は二子玉川ライズの欺瞞を訴えることになる。住民側は二子玉川東地区再開発組合への差し止め訴訟の控訴審において第二期事業についても見直しを呼びかけた。これに対して、再開発組合は「準備書面(4)」11頁以下で、当事者が異なると切り捨てた。

「控訴人らはII-A街区の見直し等を主張するが、被控訴人は、2期計画の主体(当事者)ではなく、2期計画について何らの権限も責任もない。被控訴人に対してII-A街区に見直し等を主張されても論評のしようがない。」

住民側は第1期事業と第2期事業の事業主体は別組織であることは百も承知である。共に東急電鉄や東急不動産が圧倒的な大規模地権者であり、どちらも東急グループの意向で動いている。そのような実質的な観点から住民側は見直しを呼びかけたが、再開発組合は形式論理で切り捨てた。そこには住民の声には何一つ耳を傾けるつもりはないという東急グループの住民無視の姿勢が裏付けられる。

その後、第2期事業の事業主体として二子玉川東第二地区市街地再開発組合が成立したが、それは住民の怒りに油を注ぐものであった。まず東第二地区再開発組合の理事長が東地区再開発組合の理事長と同一人物である。しかも、東地区再開発組合と東第二地区再開発組合のウェブサイトも同一である(「二子玉川東地区・二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業オフィシャルサイト」)。東地区再開発組合のサイトを両組合共通のサイトにした形である。

第二に組合設立認可という行政処分の取り消しを求める行政訴訟である点である。二子玉川東第二地区再開発事業に対しては、199通の意見書が東京都に提出され、そのうちの191通は反対意見であった。さらに131名の口頭意見陳述と9名の専門家による補佐人意見陳述が行われ、それらの圧倒的多数も反対意見であった(林田力「二子玉川再開発の審査で専門家による補佐人陳述決定」PJニュース2010年5月8日)。

それにもかかわらず、東京都は参考人の意見陳述や現地検証の申し立てを認めないまま、反対意見を不採択とした。住民側は、一貫して都市計画制度の根幹である住民参加の実質を奪い、住民意見を徹底して排除・無視して強行したと反発する。これだけの多数の意見陳述者から、切実な権利被害の訴えの意見陳述がなされたのであるから、東京都知事は二子玉川ライズによって住民らの権利が侵害されないように、事業計画の修正命令(都市再開発法第16条第3項)を出すべきであったと主張する。

訴訟では超高層ビル乱立による住環境破壊など再開発の内容が大きな問題であるが、東京都による意見書や口頭意見陳述の審査が適法であったかという点もポイントになる。原告は世田谷区外にも広がっているが、自己の提出した意見書や陳述した意見が適法に審査されなかったという点で設立認可処分と関係する。

これまでのところ、先行する訴訟では住民側の請求は棄却されている。これは住民運動にとって大きな痛手であったが、誰もが常に背筋を伸ばして勝ち続けていたわけではない。征夷大将軍となった源頼朝も徳川家康も石橋山や三方ヶ原で惨敗した。中国では韓信が股くぐりを余儀なくされ、劉邦は項羽に負け続けた。第1期事業による住環境破壊や圧倒的多数の反対意見が寄せられたという具体的事実に基づいて、住民側は意気盛んである。

 

住民反対運動を招く東急電鉄の不誠実

住民反対運動 東急電鉄 東京急行電鉄 週刊東洋経済

週刊東洋経済が東急沿線の住民反対運動を特集

ビジネス誌・週刊東洋経済2008年6月14日号は「「ブランド私鉄」東急沿線で住民反対運動が噴出するワケ」と題する記事で、東急沿線で続出する住民反対運動を取り上げた。企業の訴訟リスクに注目した「超・訴訟社会」と題する特集の一環である。

この特集では元役員に583億円の賠償が命じられた蛇の目ミシン株主代表訴訟や度重なる不祥事(賞味期限切れ、産地偽装など)から廃業に追い込まれた船場吉兆の問題も取り上げている。それらの記事と並び、地域住民からの訴訟リスクという観点から、東京急行電鉄(東急電鉄)の姿勢を批判的に論じた。

記事では計画撤回に追い込まれた、すずかけ台駅変電所建設計画を中心に東急沿線で頻発する紛争を紹介する。他には、たまプラーザ駅高圧鉄塔移設計画、鷺沼4丁目高層マンション建設計画、二子玉川東地区再開発事業、等々力駅地下化工事計画、荏原町駅社員寮建設計画、中延駅葬祭場建設計画、戸越公園駅前マンション建設計画と合計8つの紛争を挙げる。

記事は東急電鉄の秘密主義や住民への不誠実な対応が紛争を拡大させていると指摘した。その上で、企業改革がなければ東急のブランド価値は低下すると結ぶ。

実はビジネス誌で東急がネガティブに取り上げられたことは今回が初めてではない。週刊ダイヤモンド2007年11月17日号では記事「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」において、インターネット上で東急リバブル・東急不動産の批判が溢れ、炎上状態になっていると伝えた。

週刊ダイヤモンドの記事によると、マンション購入者が売主の東急不動産を提訴した2005年2月以降、「自分もこのような目に遭った」と上記訴訟の枠を越えた批判が続出したという。

この訴訟は林田力が原告になった東急不動産だまし売り裁判である。東急不動産(販売代理:東急リバブル)が隣地建て替えなどの不利益事実を説明せずにマンションを販売したため、消費者契約法に基づき、売買契約が取り消された事件である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。

地縁や地域コミュニティーに根ざした住民反対運動と、顔も名前も知らない匿名のネチズンによるインターネット上の炎上では性格は全く異なる。にもかかわらず、批判の矛先がともに東急である点は興味深い。リアルスペースでも電子空間でも東急は激しく批判されていることになる。

共通点は個人の信頼を平然と裏切る東急の不誠実な体質である。週刊東洋経済の記事では「東急グループが大切に紡いできた、美しい田園都市」などの謳い文句で、東急沿線の環境の良さをアピールしておきながら、自社が変電所のような嫌悪施設を建設する時は「建築協定など知らない」「守る必要もない」と主張する。

週刊ダイヤモンドの記事で言及された東急不動産だまし売り裁判でもマンション販売時には「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「風通しや陽射しに配慮した2面採光で、心地よい空間を演出します」をセールスポイントとしておきながら、実態は異なっていたことが問題であった。

インターネットの問題をネットの特殊性から説明する傾向があるが、リアルもネットも動かしているのは個々の人間である。不誠実な対応をされれば憤るのは当然であり、そこにリアルとネットの区別はない。個人は地域住民だったり、消費者だったり、ネチズンだったりと様々な顔を持つ。東急が個人を軽視し続けるならば、今後も様々な形で批判が噴出するだろう。

 

週刊東洋経済2008614日号

http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2008/0614/

週刊ダイヤモンド20071117日号

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=20243111707

 

渋谷区桜丘町の地上げの現場を見た

地上げ 渋谷 再開発

生活や街を破壊する地上げの怖さ

地上げの舞台となった渋谷区桜丘町の雑居ビルを見たので報告する。このビルをめぐっては、テナントの日焼けサロン経営者に立ち退きを迫り脅したとして、暴力団員や不動産会社役員が暴力行為法違反の疑いで逮捕された。

調べによると、暴力団員らは200712月から翌年3月にかけ、放火を仄めかして脅迫した上、出入り口をふさいだり、共用部分の電気を切断したりするなど物理的な妨害を繰り返した。

このビルには他のテナントも存在したが、残ったのは日焼けサロンのみである。日焼けサロンを地上げで追い出せないまま、2008325日に所有権が東急不動産株式会社に移転した。

現地はJR渋谷駅から徒歩すぐの場所に位置する。ターミナル駅至近の立地ながら、中小規模の敷地に古い建物が並ぶ地域である。渋谷から想起される一般的なイメージとは、かなり異なる町である。

大勢の人と無機質な高層ビルに息苦しさを感じる生活者にとっては身の丈にあった快適な街である。しかし、ここも渋谷駅桜丘口地区市街地再開発事業が検討されるなど、再開発の波が押し寄せている。これが本件のような強引な地上げが行われた背景となっている。

地上げ現場の雑居ビルは人気がなかった。シャッターが降りており、入口の扉には鍵がかかっていた。シャッターにはペンキで落書きがしてあるが、周囲の建物にも同様な落書きがあり、地上げの嫌がらせとは直接関係ないようである。

ビルの入口には日焼けサロンの看板が置かれており、3階の窓には広告が貼られていたが、営業状況は確認できなかった。表札にはテープが貼られ、店名が確認できないようになっていた。生活や街を破壊する地上げの怖さを実感できた。

 

200807221315001.jpg 建物外観。3階の窓には日焼けサロンの広告が出ている。

200807221232000.jpg シャッターと入口の扉、日焼けサロンの看板

200807221317000.jpg ビルの表札。写真下部の赤い板は日焼けサロンの看板

林田力 2008722日撮影

 

コメントありがとう御座います

先ず営業できないとありますが、地上げ屋の妨害が影響している可能性があり、営業できないことをもってテナントに不利な判断をすべきではないと考えます。

ある報道ではテナント側は地上げ屋の立ち退き交渉の誠意のなさを問題にしているため、意地という面が多少はあると思いますが、不誠実な行為があるならば自己決定権として尊重されるべきです。所有者は東急不動産に変わりましたが、私自身も東急不動産の不誠実な対応には憤った経験がありますので、テナントの気持ちには大いに共感できます。

 

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会住民大集会

電磁波 反対運動 電波

電磁波問題への関心の高さ

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会が主催する住民大集会が200832日、江東区教育センターで開催された。約160人(主催者発表)という大勢の参加者が詰め掛け、電磁波問題に対する関心の高さを示した。

同会は東陽町の住民を中心に結成され、株式会社スカイ・パーフェクト・コミュニケーションズ(以下、スカパー)によるパラボラアンテナ設置に反対する団体である。スカパーは東京メトロ東陽町駅から徒歩5分の場所にスカパー東京メディアセンターの建設を進めている。そこでは屋上に直径約7m8mの巨大なパラボラアンテナを12基、直径約4mのパラボラアンテナを6基設置する計画である。

建設地の真向かい30メートルの至近距離にはマンションがあり、周辺には集合住宅やオフィスビルが林立する。そのような人口密集地でのパラボラアンテナ設置により、近隣住民は電磁波を24時間浴びる環境になり、人体のみならず精神に悪影響を与えるため、アンテナの設置を中止すべきと、同会は主張する。

同会では提訴や区議会への陳情、署名活動などを展開しているが、一方でスカパー側は工事を進め、既成事実を作ろうとしている。しかし同会が集会で160人もの参加者を集めたという事実は反対運動の広がりを物語っている。

集会の内容は以下の通りである。

・住民の会代表挨拶

・弁護団による解説

・江東区議会議員紹介・挨拶

・荻野博士による講演

・集会決意

最初の代表挨拶では門川淑子代表が状況を報告した。近隣住民らは2007119日、スカパーに対し、アンテナ設備建設の差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴し、係属中である。2008年1月28日で7回目の口頭弁論が行われた。また、東陽二丁目町会会長が江東区議会や東京都議会に陳情を提出した。

続いて、原告弁護団による解説である。弁護団は榎本武光、鳴尾節夫、中村欧介、高木一昌、中村悦子の5人の弁護士からなる。高木弁護士が代表して「スカパー裁判のこれまでと今後」と題し、これまでどのように戦い続け、これからどのような戦いをすべきかと語った。

高木弁護士は最初に裁判の根拠を説明する。スカパーによるパラボラアンテナ設置で周辺に生活している人は不利益を被る。電磁波は人体に悪影響を及ぼすため、健康・安全に毎日を暮らしていく権利が侵害される。スカパーの経済的利益のために人として生きていく権利が脅かされる。これが差し止めを求める根拠である、と。他にも被侵害利益として精神的苦痛、日照・景観の阻害、嫌悪施設ができることによる資産価値低下を挙げる。

スカパーの問題は住民の権利を侵害する実体面だけでなく、住民に対する姿勢という手続き的な面にもあるとする。住民とスカパーの間に話し合いと呼べるものはなかった。理解を求める努力をせずに事業を進めようしている。話し合いのコミュニケーションがないまま、工事だけが進んでいる。

そして不誠実な姿勢は裁判手続きにおいても現れている。裁判において原告弁護団は被告側に求釈明(説明を求めること)を行ったが、スカパー側の回答は具体的内容ではなく、人を食った回答ばかりであった。

例えば「東陽町以外の場所にメディアセンターを建設することは検討しなかったのか」という問いには、検討場所として複数の地名を挙げるのみで、検討場所の具体的な地番や検討内容、選ばれなかった理由を開示しない。原告弁護団としては不十分な回答に対しては再度、求釈明を行うが、「裁判の中でもスカパーの対応には問題があることを心にとどめて欲しい」と強調した。

続いて裁判の争点について説明した。裁判の争点は、パラボラアンテナから発する電磁波は人体に悪影響を及ぼすか、である。この点について国内はもとより世界各国の研究結果を入手して立証を続ける方針とする。

スカパー側は「電波防護指針」を下回っているから問題ないと主張するが、日本の電波防護指針は先進諸国の基準に比べて緩やかである。しかも電波防護指針は熱効果を念頭に置き、生理的効果や免疫系やガンなどの非熱効果による健康影響の予防を考慮していないと主張する。

弁護団による解説後は休憩を挟み、出席した江東区議会議員が紹介された。斉藤信行、前田かおる、薗部典子、中村まさ子の各議員が紹介され、代表して斉藤議員が挨拶した。斉藤議員は区議会建設委員会の委員長で、建設委員会ではスカパー問題の陳情を審議中である。

斉藤議員は自らをスカパーとメディアセンターを施工する竹中工務店に憤りを感じている一人とする。建設委員会で建設現場を視察したが、両者は係争中であると主張して議員を現場に入れさせず、説明もしなかった。仕方がないため、隣のマンションから視察したという。

また、両者に電話で連絡したが、「責任者は留守」「社長は不在」の一点張りで、伝言を依頼しても連絡は皆無であった。200821日には委員長名で両者の社長宛に文書で申し入れをしたが、本日に至るまで何の音沙汰もない。区民の代表である区議会さえ、ないがしろにする対応である。一方で住民の戦いが両者を追い詰め、殻に閉じこもらざるを得なくなっているとも言える。「皆さんの戦いは地域住民の健康を守るだけでなく、電波行政にも影響を与え、各地の戦いの励みにもなる。共に頑張りましょう」と結んだ。

続いて荻野晃也・電磁波環境研究所所長(理学博士)による「電磁波による健康への影響について」と題した講演である。最初にメディアセンターの建設現場を見たと語る。「このようなところに、何でパラボラアンテナを作るのか」と悲しい気持ちになったとする。

荻野博士は「健康とは何かということを理解して欲しい」と語る。世界保健機関は健康を以下のように定義する。「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)」

健康には精神的・社会的に良好な状態も含まれ、現実にパラボラアンテナが稼動して電磁波が発信され、ガンや小児白血病にならなくても、現在の状態でもスカパーは周辺住民を不健康にしていると主張する。

本論の電磁波の健康被害については世界中の研究成果を基に様々な問題を指摘した。

・電磁波の人体の影響には熱効果と非熱効果がある。規制は熱作用のみを対象とされがちだが、近年の研究では熱作用を起こすレベルよりも低い電磁波レベルで様々な生体への影響が出ることが明らかになっている。

・電磁波は大人よりも子どもに悪影響を及ぼす。携帯電話の電磁波が大人の頭よりも子どもの頭の方が遥かに深く貫いていることを示した研究がある。

・世界各地の疫学研究では放送や携帯電話のタワー周辺で白血病やガンが増加する。例えば韓国での研究では放送タワーの2km以内の小児白血病の増加率は2.29%である。

・スペイン北部のバラドリッドの調査では携帯電話のタワー周辺のコウノトリの巣ではヒナがいない巣が急増する。

・電磁派に過敏な人が増加している。電磁波で免疫機能が低下し、心臓圧迫、ストレス、精神不安、頭痛、睡眠不足などを引き起こす。

・日本で死産した胎児の性比を研究した結果、女子死産100人に対する男子死産の割合が1970年ごろから急激に増えていて、最近では220人を超えた。妊娠初期の1215週の死産に限定すると、男子は女子の10倍にも達していた。

参加者からの質疑応答ではパラボラアンテナ設置による悪影響について指摘された。

・パラボラアンテナが地震や災害で倒壊する危険性。アンテナは軌道上の人工衛星と通信するが、アンテナが倒壊すれば住民に向かって強力な電磁波が放射されることになる。

・電磁波が天空に向かって放射されるということは、付近のマンションは建て替えにより、高層化することが難しくなる。建て替えで容積率を活かせないマンションとなり、資産価値を低下させる。

最後に原告団長から集会決意が読み上げられた。スカパーは自社の経済的利益のために住宅密集地にパラボラアンテナを建設しようとする。原告団は勝利するまで戦うことの責務を感じている。戦いは容易ではないが、多くの力を結集すれば勝利は可能である、と。

 

●参考URL

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会 公式ホームページ

http://www.ab.auone-net.jp/~fmt/skphp2.htm

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会

http://www.geocities.jp/kotofamily2006/

マンションの隣りに巨大アンテナ一二基!?

http://www.jlaf.jp/tsushin/2007/1227.html

東京都議会都市整備委員会速記録第八号(東陽2丁目町会会長による陳情)

http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/tosei/d3040064.htm

 

パラボラ建設反対運動について

パラボラアンテナ建設は景観問題でもあります。この意味で口径の大きいパラボラアンテナならば周辺環境への影響は少ないというような主張は住民感情から言えば噴飯物です。加えて近接のマンション分譲主の一社である竹中工務店が、マンション分譲後に隣接地(自社所有地)にスカパーを誘致し、嫌悪施設の施工を行うことは信義則上問題ないかという論点もあります。

 

記事本文とコメントについて

私は「記事には責任があるが、コメントには責任がない」という主張はしておりません。その点についての主張は既に行いました。前提条件が誤っており、これ以上論じる意味はありませんが、記事本文とコメントの関係については興味深い話題ですので、ここで私の考えを述べたいと思います。これは反論(反論は実施済み)ではなく、むしろ独り言のようなものです。

私は記事とコメントは別物と考えます。コメントの内容を直接の理由として記事に対する評価を上下させるべきではないと考えます。勿論、コメントに問題があるため、記事そのものの信憑性が疑わしくなることはあります。しかし、それは記事とコメントが一体だからではなく、コメントを記事評価の間接証拠としたからです。記事を評価するに際し、記事外の間接証拠を評価対象とするか否かは一つの論点です。

間接証拠が許されるならば、記事のコメントだけでなく、他の間接証拠も評価対象とすることが許されるべきです。当該記者の過去の記事や、他人に記事に寄せたコメント、他の媒体に掲載した記事、面識がある場合の人柄などです。当該記事のコメント欄のコメントのみを他の間接証拠よりも優遇させる理由はありません。現実問題としても、同じ記者が過去に同一テーマで書いた記事の方がコメント以上に証拠価値があると思います。

コメントによって記事の評価が上がる場合もあります。記事本文だけでは、よく分からないがコメントによって疑問が解消したというような場合です。これはコメント欄を設けたことのメリットです。しかし、記事そのもの評価という点ではコメントがなければ理解できないような記事は、記事本文の表現が足りなかったということになり、その分、評価は低くなります。

 

本記事の位置づけについて

本記事の位置づけについて説明したいと思います。

本記事は「スカパー巨大アンテナに反対する住民の会」が主催した住民大集会をテーマとした記事です。パラボラアンテナ建設反対運動を述べた記事でも、建設そのものを論じた記事でもありません。このため、記事の内容は基本的に集会で出た話題に限定されます。

一方で記事を読まれた多くの方が結局、スカパーの電磁波で周辺住民に健康被害が生じるのか、という点が気になったという事実は受け止めております。但し誤った前提に基づいて、論理的に誤った非難を行われる方とは妥協するつもりはありません。

あくまで集会での話に限定する限り、健康被害については弁護団から裁判において、主張立証しており、今後とも証拠を提出し続けるとの報告がなされました。荻野博士の講演は電磁波の健康被害についての研究の紹介で、スカパーのパラボラアンテナに特化したものではありませんでした。スカパーそのものについては「スカパーの出す値を、そのまま信用していいか」と助言されました。

以上より、今回のテーマで書いた本記事は読者諸賢の問題意識を必ずしも満たせるものではなかったことは認めます。しかし、これは反対運動が健康被害についての具体的な根拠を有していないことを意味するわけではありません。住民大集会は反対運動の活動の一環であって、反対運動の全てではありません。弁護団も漠然と健康被害があると主張するわけで差し止めが認められるものではないと説明しており、そのために主張立証を続けています。

しかし反対運動や訴訟の全てについて書くのが本記事のテーマではありません。この点が本記事の限界であると認識しております。上記の問題意識に基づき、テーマ選定への批判や提言が出されることはもっともなことと思います。しかし、それは別テーマとなりますので、本記事の訂正や撤回、コメント欄での補足ではなく、別記事で実現すべきことと考えています。

尚、電磁波の健康被害のような問題を議論する場合については「科学的な議論」というような言葉が出てくることがあります。私は、この「科学的」という言葉が曲者と考えています。本件からは離れますが、この点については別の記事で論じたいと考えています。