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二子玉川再開発事業計画への口頭意見陳述開始=東京・世田谷


東京都世田谷区の二子玉川東第二地区再開発事業に対する口頭意見陳述が2010年4月20日から世田谷区玉川総合支所で開始された。

口頭意見陳述は都市再開発法に基づく手続である。再開発事業の利害関係者は縦覧された事業計画に意見があれば、都道府県知事に意見書を提出できる(都市再開発法第16条第2項)。この意見書の審査では行政不服審査法を準用するため、意見書提出者から申し立てがあった時は、都道府県知事は意見書提出者に口頭で意見を述べる機会(口頭意見陳述)を与えなければならない(同条第4項)。

口頭意見陳述初日の4月20日だけで50名弱の意見書提出者または代理人が東京都の職員に対し、意見を陳述した。会場には傍聴者もおり、再開発問題への関心の高さをうかがわせる。意見陳述の内容は計画案への反対意見で占められていた。

記者(林田)も最後の時間帯(19時45分開始)に陳述した。記者は自著『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社、2009年)の記述を引用し、二子玉川東地区再開発が住環境を破壊すると指摘した。その上で計画案には経済的基礎がなく、再開発を主導する東急グループには事業遂行能力に欠けると主張した。

超高層ビルを建て、オフィスや商業施設にする計画案は長期不況という経済状況や「コンクリートから人へ」の社会状況に逆行する。六本木など都心部がやり尽くした再開発を今頃になって二子玉川が真似する必要はない。大規模地権者である東急不動産の失敗事例である千葉市緑区あすみが丘のワンハンドレッドヒルズ(俗称チバリーヒルズ)と同じく、「バブルの遺物」となる可能性が高い。

また、再開発の事業遂行能力は都市再開発法の目的にある「公共の福祉に寄与」を踏まえて判断すべきである。しかし、東急グループは街づくりを担えるような体質ではなく、事業を遂行する能力に欠ける。これは東京都情報公開条例に基づいて開示された第1期の再開発事業(二子玉川東地区第一種市街地再開発事業)の審査時の資料に基づいて実証した。

第1期の「意見書及び口頭陳述要旨整理表」は全て再開発への反対意見となっているが、東急グループの企業体質への批判も多い。その一部を以下に紹介する。

「東急により、立ち退きで(店の場所を)変わることになった。そのときも、いきなり弁護士を連れてきての一方的な対応であり、馴染みのお客から離れなくてはならないので、代替地をしっかり見つけて欲しいなど要望したが、こちらの要望は全く聞き入れられなかった。東急のやることは全てこちらを不安にさせる。会報さえもらえなかった。」

「開発区域の大半が東急電鉄の私有地であり、再開発は公的資金による東急の経営支援である。」

「東急は自分のところの利益の拡大を考えている組織なので、検討しますとは言うが、そこから先は具体的に決まってからと答えが何もないのが事実である。」

「東急の施設の周辺は道路に木々や雑草を生やしっ放してあり汚い。そのため、東急は信用できない。企業の言うこととやることが違う。」

あわせて東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替え)を隠して新築マンションをだまし売りされた記者自身の体験を説明し、その不誠実な企業体質を明らかにした。

再開発地域周辺の住民による口頭意見陳述では再開発による日照侵害や水害など環境破壊に対する批判が強かった。これは第1期事業から指摘されている問題であり、工事の進展によって被害は顕在化している。

一方で記者も含め、再開発地域から離れた地域の住民から、社会状況に逆行した大規模開発への問題提起がされたことも特徴である。二子玉川東地区再開発は地域限定の問題ではなく、街づくりの根本的なあり方が問われていることを示すものである。計画案の見直しを求める多くの声に対し、東京都がどのような審査結果を出すか注目される。

初出
林田力「二子玉川再開発事業計画への口頭意見陳述開始=東京・世田谷」PJニュース2010年4月21日
http://news.livedoor.com/article/detail/4729735/
http://www.pjnews.net/news/794/20100421_2

「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催
http://www.news.janjan.jp/living/0904/0903290449/1.php
二子玉川住民が再開発を意見交換
http://www.news.janjan.jp/area/0908/0908018086/1.php


二子玉川再開発の審査で専門家による補佐人陳述決定

東京都で進められている二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業の審査で街づくりや建築、地質、大気汚染、都市工学の専門家が補佐人として陳述する。陳述する補佐人及び日時は以下の通りで、場所は全て世田谷区玉川総合支所4階会議室である。時間は陳述状況によって前後する可能性がある。

2010年5月13日
9時30分〜11時 卯月盛夫・早稲田大学教授
11時〜12時 遠藤哲人・NPO法人区画整理・再開発対策全国連絡会議事務局長
15時〜15時40分 三浦史郎・一級建築士
15時45分〜16時20分 坂巻幸雄・日本環境学会元副会長
16時25分〜17時 藤田敏夫・大気汚染測定運動東京連絡会会長

2010年5月21日
13時30分〜15時 岩見良太郎・埼玉大学教授

二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業は東京都世田谷区玉川に超高層ビルなどを建設し、オフィスやホテル、商業施設などにする計画である。この事業計画に対して近隣住民などから都市再開発法第16条に基づき199通の意見書が提出され、圧倒的多数の191通が反対意見であった(林田力「二子玉川東地区まちづくり協議会が陳情審査結果を報告」JANJAN 2010年3月15日)。意見書提出者による口頭意見陳述も4月20日から開始された(林田力「二子玉川再開発事業計画への口頭意見陳述開始=東京・世田谷」PJニュース2010年4月21日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4729735/

この口頭意見陳述者16名による参考人の申し立てが補佐人陳述の発端である。意見書の審査は行政不服審査法の規定を準用しており(都市再開発法第16条第4項)、それに基づいて意見陳述者らは参考人の意見陳述・鑑定を申し立てた。

最初に1月28日と2月4日に東京都都市整備局市街地整備部民間開発課に口頭で申し入れ、2月12日には過去の区画整理事案で実際に採用された参考人の意見陳述事例を提示した。さらに3月19日には「意見審査にあたっての申立書」と題する書面を提示して、予定する参考人の詳細と必要性を述べた。これに対して都側は「行政不服審査法第25条第2項の補佐人としてならば許可する」旨を回答した。

意見陳述者側は4月9日付で「参考人の陳述、鑑定を求める申立書」を提示し、改めて参考人の採用を求めた。意見書の審査手続きを「単なる反対者の「ガス抜き」のための形骸的な手続きであってはならず、実質的なより多くの住民に受け入れられる計画に作り替えるための都市計画法の目的「公共の福祉」実現のための、都市再開発法の根幹をなす手続である」と主張した。

しかし、都側は補佐人としての陳述を譲らなかった。但し、数十人が傍聴できる場所を会場とすることで、意見陳述者側の要望にも配慮した。

補佐人として陳述予定の卯月氏は二子玉川でワークショップを開催し、再開発に対する住民の不安や要望を具体的に聞き取り、住民提案を作成した人物である。

遠藤氏は卯月氏が作成した住民提案の採算性について裏付け研究を行った(林田力「二子玉川東地区再開発住民提案の採算性分析」PJニュース2010年4月16日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4722043/

三浦氏は超高層ビルを中心とした大型再開発事業の問題点を分析し、低層・低容積の再開発事業にコンサルタントとして携わっている。

坂巻氏は再開発地域や丸子川・多摩川を現地調査し、広大な緑地をコンクリートで覆い、約7mの人工地盤を建設することで、周辺地域に洪水被害が拡大することを科学的に論証した。

藤田氏は再開発事業による交通量の増加によって大気汚染が悪化し、国や東京都が進めている「自動車排出窒素酸化物削減計画」に水を指すことになると指摘している。

岩見教授は手続きの経過や上位計画などの精査から、二子玉川東地区再開発事業は都市計画としての公共性に欠けると指摘する。大規模地権者である東急電鉄・東急不動産ら東急グループの私的利潤追求行為に特化しており、都市計画決定段階で数多くの違法性が認められるとする。

二子玉川の再開発が公共性に欠けるとの指摘は、再開発の内容が営利施設(オフィス、ホテル、商業施設)で占められていることから非常に理解しやすい。しかも現在の経済状況では産業政策としても営利施設を建設することに合理性はない。

景気低迷でオフィス需要は乏しい。リーマンショック以前から新規オフィスビルの空室率の高さやオフィスビルの賃料のダンピング(半年タダなど)が問題になっていた。東京23区のオフィスビルの継続賃料の平均改定率(2009年)はマイナスであった(シービー・リチャードエリス総合研究所「全国オフィスビル賃料改定動向」2010年4月27日)。都心部でも賃貸料の安い築浅のオフィスビルが余っている状態である。

東京23区内で2010年以降に完成する延べ床面積1万m2以上の大規模オフィスビルの計画は126棟、総延べ床面積では約760万m2に達する(「【調査】126棟、延べ床760万m2の計画が進行、東京の大規模オフィスビル」日経不動産マーケット情報2010年5月21日)。延べ床面積10万m2超の大規模な計画が数多く進行しており、供給過剰が続く。建設ラッシュの裏側で、賃貸オフィス市況は悪化の一途をたどっている。

商業施設についても、二子玉川には既に高島屋がある。再開発第1期事業で2010年4月28日に先行オープンした「二子玉川ライズ オークモール」「二子玉川ライズ バーズモール」も大して注目されなかった。このように二子玉川東地区再開発の内容が産業政策としても不合理な内容になっている背景として、都市計画決定時点での誤りを指摘する岩見教授の主張は興味深い。誤ったINPUTから誤ったOUTPUTが作られる一例である。街づくりから環境破壊まで中身の濃い陳述になると予想される。

初出:林田力「二子玉川再開発の公共性を問う補佐人意見陳述」JanJanBlog 2010年5月16日
http://www.janjanblog.com/archives/2454

二子玉川第二地区再開発への意見書採択結果通知

東京都は2010年6月16日付で二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業(第2期事業)への意見書提出者に意見書採択結果を通知した。記者も意見書を提出しており、通知を6月19日に受け取った。
第二地区再開発は東京都世田谷区の二子玉川で商業施設・ホテル・オフィスなどが入居する超高層ビル建設を中心とした計画である。事業計画案縦覧には199通もの意見書が提出され、そのうちの191件は計画の見直しを求める反対意見であった。
さらに口頭意見陳述が2010年4月20日から5月21日までに6回も開催され、131名の住民意見陳述と9名の専門家による補佐人意見陳述が行われた。陳述された意見は、ほとんどが再開発への疑問、反対や見直しを求めるものであった。手続きの形骸化が指摘される再開発の審査としては、かつてない関心と盛り上がりを示した。
通知は石原慎太郎都知事名義の「二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業の事業計画に関する意見書について(通知)」と都市整備局市街地整備部民間開発課長名義の「二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業の事業計画に関するご意見について」の2枚からなる。
前者は「事業計画に修正を加えるまでには至らないので、不採択と決定いたしました」とあるだけの簡単な文章である。理由は記載されていない。後者に多少の説明があるが、型通りの回答であった。たとえば事業計画について、理由を明らかにすることいなく「公共性の高い事業」と断定する。記者も含む多くの意見書では商業施設やホテル、オフィスを建設する再開発計画に公共性がないと主張していたが、それには全く答えていない。
2005年3月に認可された二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(第1期事業)でも情報公開によって、形式的な審査しかしていないことが明らかになった。意見書などでは反対意見が多数を占めていたにも関わらず、それらの問題意識に答えず、都市計画への合致などから機械的に結論付けていた(林田力「二子玉川再開発への反対意見が情報公開で判明(下)」PJニュース2010年4月29日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4745569/
第2期事業でも同じ問題が繰り返されたことになる。このために意見書提出者の住民は「腹を立てている」としつつも、「想定の範囲内」とも述べた。住民団体では今後の活動について話し合うために住民集会を開催する予定である。集会は二子玉川東地区住民まちづくり協議会、にこたまの環境を守る会、二子玉川の環境と安全を取り戻す会、二子玉川公園と道路を間う会などの共催で、2010年6月27日13時〜15時に玉川町会会館(二子玉川ライズ・バーズモール2階)で開催する。
住民集会は2部構成を予定している。第1部では、都からの回答を集約、整理、分析し、第2部では、これからの住環境を守る戦いを地元各団体と交流・共有しながら、議論する。
日本では社会の利益を分捕るために、企業経営者と不動産開発業者が手に手を取って協力し合う土建屋政治が繰り返されてきた。それが時代遅れであり、民意に反していることは明白であったが、守旧派は根強く抵抗し続けた。「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズとした鳩山由紀夫首相の登場によって行政も変わると思われたが、二子玉川再開発では旧態依然のままであった。住環境を守る住民の闘いは今後も続いていく。