ブラック企業と日本型雇用批判について

林田力

「ブラック企業と日本型雇用」は、ブラック企業と日本型雇用の共通点と相違点からの論考である。ここで述べたブラック企業も日本型雇用も理念型である。現実の企業は典型的なブラック企業にも典型的な日本型雇用にも厳密には当てはまらない。ブラック企業と日本型雇用の中間型も多いだろう。それは理念型である以上、当然である。現実は理念型に合致するものがないということで、理念型の議論を切り捨てるならば、社会科学の議論にはならない。

「ブラック企業と日本型雇用」は、ブラック企業と日本型雇用の共通点と相違点から分析したものである。ブラック企業的な体質や日本型雇用の体質を誰が作ったかということを問題にしていない。それを問題意識としている人にとって論じていないことは、その人の問題意識にとって物足りないかも知れないが、それをもって表面的という批判は的外れになる。

相手の問題意識は完全に無視して自分の問題意識だけを押し付ける人に対して、その問題意識に一方的にあわせて議論することは不公正になる。一方的に相手の土俵に乗ることは不公正であるが、ブラック企業体質や日本型雇用の体質は経営層よりも労働者側が作ったものとの指摘は重要であると考える。

日本では労働者側にも能力に応じて極限まで働くことを美徳とするような風潮がある。自分に課すだけならば美徳になるかもしれないが、問題は他者に強要することである。左翼にも資本家の蓄財のために労働者が滅私奉公することは批判しても、革命社会の建設のために滅私奉公することを強要するようなダブルスタンダードがある。ブラック企業批判では、このような体質こそが批判されるべきである。

ブラック企業体質や日本型雇用の体質は経営層よりも労働者側が作ったものとの指摘は、「ブラック企業と日本型雇用」にとっても重要である。何故ならば「ブラック企業と日本型雇用」は、ブラック企業批判が「ブラック企業から日本型雇用を守ろう」だけになってしまうことへの危惧を主題としていたためである。それでは現時点で日本型雇用の恩恵を受けている人しか救われなくなる。既得権益擁護の運動と見られかねない。

現実に若年層労働者の中には「働かないおじさん」批判があり、民間労働者の中には公務員批判がある。ワーキングプア層の怒りは「貧困労働層を足蹴にしながら自身の生活を保持しているにもかかわらず、さも弱者のように権利や金銭を御上に要求する、多数の安定労働層」に向けられている(赤木智弘「けっきょく、「自己責任」ですか 続「『丸山眞男』をひっぱたきたい」「応答」を読んで」論座2007年6月号)。

それ故にブラック企業批判が中高年正社員や正規公務員を守るだけの運動になってしまったならば面白くなくなる。中高年労働者や公務員をバッシングすることが問題解決の正しい解になるかは考えなければならない問題である。しかし、目の前に世代間不公正や官民格差があることは厳然たる事実であり、そこを受け止めなければ理解も共感も得られない。

そこに上から目線で「天皇制が根本問題である」と言っても、目の前の問題の話題そらしにしか映らないだろう。天皇制をアメリカ帝国主義やロスチャイルドやフリーメーソン、イルミナリティに置き換えても同じである。「天皇制が根本問題である」の論者は、ロスチャイルドやフリーメーソン、イルミナリティの陰謀論として笑うだろうが、目の前の現実から遊離している点では五十歩百歩である。ブラック企業問題で天皇制やロスチャイルドを持ち出してもリアリティに欠ける。

世代間不公正や官民格差の批判に対しては、中高年労働者や公務員以上に企業経営層と従業員との格差の方が大きい。不公正を言うならば、この不公正を追及すべきではないかとの考えにも一理ある。これを無視して中高年労働者や公務員のバッシングに明け暮れることは視野が狭いのではないかとの考えである。しかし、現在の世論状況からは企業経営層を叩くよりも中高年労働者や公務員のバッシングに走る方が現実的に見えるということは理解する必要がある。

左翼教条主義者ならば「楽な道を選ぶな。茨の道でも正しい道を選べ」と若者を説教しそうであるが、若者らの問題を汲み取らずに自分達の問題意識を押し付けるだけの左翼教条主義者こそ自分達にとって「楽な道」を歩んでいる。自分達は労働者間の利害対立に無関心で、総労働対総資本のイデオロギーを押し付けるだけにもかかわらず、相手には労働者間の利害対立を超えたところまで要求することは不公正である。「若者には苦労してもらいたい」が本音かもしれないが、それならば右傾化して左翼を憎むことは、むしろ正しい反応となってしまう。「ブラック企業と日本型雇用」の結論「日本型雇用を守るだけでは救われない人々の思いをどれだけ汲み取れるか」が最低限求められることである。




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