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林田力『東急不動産だまし売り裁判』ドラマ

『JIN-仁-完結編』気弱そうな大沢たかおが悩める医師を熱演

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』が、4月17日から放送を開始した。初回「時空を超えた愛と命の物語」は2時間5分の拡大スペシャルで放送され、初回平均視聴率が23.7%と好発進した。村上もとかの同名の漫画が原作で、2009年にドラマ化された。その続編が『完結編』で、仁がタイムスリップしてから2年後の1864年(元治元年)が舞台である。
『JIN-仁』は大学病院の脳外科医だった南方仁(大沢たかお)が、幕末の江戸時代にタイムスリップし、治療を行いながら幕末の動乱に巻き込まれていくドラマである。南方仁は東都大学附属病院に勤める脳外科医である。ある日、彼が頭部裂傷の緊急手術を執刀した患者が、病院を脱走しようとする。患者と揉みあう内に仁はなんと幕末の1862年にタイムスリップしてしまった。電気も消毒薬も抗生物質もない世界で、医師南方仁の戦いが始まる。
初回は江戸を舞台とする橘栄(麻生祐未)の脚気の治療と、京都を舞台とする禁門の変の二つを軸に話が進む。栄は縁談を破談にして橘家に泥を塗った娘の咲(綾瀬はるか)を許さず、生きる気力を失っていた。脚気を患っていたが、仁の勧める食事療法も拒否してしまった。仁は菓子を作って、甘いものが好きな栄に食べてもらおうとする。
また、坂本龍馬(内野聖陽)からは、何者かに襲われて瀕死の重傷を負った佐久間象山(市村正親)の治療を依頼される。治療のために上洛した仁は禁門の変に巻き込まれ、戦災者を手当てし、虫垂炎を患った西郷吉之助(藤本隆宏)を手術する。
タイムトラベル物というSFの定番であるが、主人公が歴史音痴の医者という点がユニークである。主人公は歴史音痴のために未来を予言する知識は乏しい。それが逆に歴史的事件や歴史上の人物を新鮮に描くことに成功した。
また、主人公が取り組む医療は人々の生活に密着した分野である。優れた医療技術を有する点で主人公の特異性を際立たせながらも、その時代に溶け込ませることに成功した。これが半村良の小説『戦国自衛隊』や、かわぐちかいじの漫画『ジパング』のように軍隊をタイムスリップさせたならば、過去の政治に大きな影響を与えなければ物語は成り立たない。
そして人の生死に直結した医療をテーマとすることで、登場人物の人間ドラマを丁寧に描いた。ドラマ冒頭の咲は元気がなかった。死を望む母親を黙って受け入れるしかないと言う咲に、仁は「咲さんは医者でもあるのだから、黙って見ているだけというのは違うのではないでしょうか」と諭す。これは決して上から目線でも、高圧的でもない。軽く背中を押すような自然さである。
一方で仁は歴史を変えてしまうことを恐れ、佐久間象山という重要人物の治療を躊躇する。それに対し、今度は咲が仁に「黙って見ているだけというのは違う」と同じ言葉を返す。他人を励ますために発した言葉が逆に自分を励ますことになった。咲の言葉で象山の治療を決意したものの、仁の悩みは尽きない。タイムスリップした自分の存在意義について悩み、迫力ある象山に励まされた。
禁門の変では無力さを人命を救えない自らの無力に絶望する。失意の中で江戸に戻るが、丁稚小僧の喜市(伊澤柾樹)の一途な気持ちに勇気をもらう。悩める人物だからこそ、他の人々を救うこともでき、それが自分にも返ってくる。自らも悩みを抱える人物の等身大の言葉だからこそ、相手を救い、自分も救われる。一見すると、ひ弱で線が細いという印象を与える大沢たかおが、悩みながらも人を助け、それに自らも救われる仁を好演している。(林田力)

『JIN-仁-完結編』第2話、我が道を行く綾瀬はるかの切なさ

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第2話「未来との選択」が、4月24日に放送された。今回は南方仁(大沢たかお)が考案した安道名津(あんドーナツ)が評判になり、皇女和宮(黒川智花)に献上することになるが、そこでトラブルに巻き込まれてしまう。仁の身を案じる橘咲(綾瀬はるか)の切なさが印象的であった。
咲の切なさは最初から全開であった。咲は仁友堂の経営難を救うために自らの着物などを質入れする。その一方で和宮に謁見する仁のために着物を購入する。しかも、仁には「兄から借りた」と嘘をつく。
これに対し、咲の苦労を知らない仁は長屋を追い出された野風(中谷美紀)に仁友堂で働くことを勧める。仁の言動は優しさからのものであるが、仁につくす咲には酷でもある。恋愛ドラマならば嫉妬や不信が生じる展開であるが、仁の野風とミキへの思いを知る咲は快く受け入れた。
『JIN-仁-』は現代の外科医が幕末に行くタイムスリップ物である。タイムスリップ物では生まれ育った時代から別の時代に放り出された主人公が、その時代の人々には理解できない孤独な悩みを抱えて苦しむことが定番である。これは『JIN-仁-』も同じである。主人公が人の命を救う医者であるために悩みも深くなる。
一方で『JIN-仁-』は咲という理解者の存在が異色である。仁は未来の世界や、婚約者のミキ、その先祖からもしれない野風のことなどを咲に話し、それを咲も理解している。何でも話せる理解者が存在する点で仁は相対的には幸せなタイムスリッパーである。反対に咲は仁の想いを受け止めるばかりで、自分の想いを伝えることができない。
この切ない咲を綾瀬が好演している。2004年放送のテレビドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒロインが出世作となった綾瀬は薄幸の女性が似合うが、本人の性格は我が道を行く天然キャラである。最近では4月19日に行われた映画『プリンセストヨトミ』の完成披露会見で、大阪城を「お寺」と言ったエピソードが披露された。
そのような我が道を行くキャラクターが武家の娘らしい凛とした気品と芯の強さを醸し出し、それが報われなくても一途につくし続ける咲の切なさを浮き彫りにする。タイムスリップ物では主人公が元の時代に戻れるかが一番の関心事であるが、『JIN-仁-』では咲の想いが報われるかにも注目である。(林田力)

『JIN-仁-完結編』第5話、クオリティ・オブ・ライフを問う医療ドラマ

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第5話「消えた体の謎」が、5月15日に放送された。今回は現代医療の主要テーマであるクオリティ・オブ・ライフに正面から向き合った内容であった。
『仁』はタイムスリップや幕末など様々な要素が絡むドラマであるが、中心は医療である。医療技術が未発達の江戸時代、その中でも特に満足な医療が受けられなかった貧乏長屋や遊郭を舞台に一人でも多くの人命を救うためにタイムスリップした医師が悪戦苦闘する物語である。『完結編』では第1話で禁門の変に遭遇するなど歴史物としての要素が強まったが、今回の歴史的事件は坂本龍馬(内野聖陽)が襲撃された寺田屋事件が冒頭で描かれた程度で、医療と人情が中心になった。
南方仁(大沢たかお)は歌舞伎役者の澤村田之助(吉沢悠)の依頼で、兄弟子の坂東吉十郎(吹越満)を診察する。吉十郎は重度の鉛中毒を患っていたが、たとえ寿命を縮めることになっても舞台に立ちたいという。その思いは田之助の台詞「命の値打ちってのは、長さだけなのかい」に凝縮されている。これは患者の尊厳よりも延命を優先する傾向にある現代医学に対する現代人の不満に通じる。
仁や橘咲(綾瀬はるか)ら仁友堂のメンバーは吉十郎が舞台に立てるように治療に注力する。治療によって吉十郎が最後の舞台に立って名演技を披露したならば、定型的な感動話で終わったが、ドラマでは一ひねりある。患者の悲願が果たせずに終わった点は同じTBSで2006年に放送された現代ドラマ『タイヨウのうた』と共通する。これは歌手を目指す難病の少女・雨音薫(沢尻エリカ)が主人公で、命を落としても夢であったライブに出演しようとする。
共にフィクションなのだから、患者の最後の望みを叶えさせた方が後味は良い。しかし、そのような安易な結末にしなかったことでクオリティ・オブ・ライフの本質が浮き彫りにされた。患者の尊厳を軽視したことの反省から生まれたクオリティ・オブ・ライフであるが、生命・人生の質を評価することには危険性がある。生命を永らえるだけの人生には価値がないと決めつけ、尊厳死・自然死させる価値観に結びつくためである。
役者や歌手が命を削って優れたパフォーマンスを披露することは感動的である。しかし、誰もが認める特別なことをしなくても、人生の質は存在する。舞台に立たなかった吉十郎は社会的には歌舞伎役者としての人生の質を高めた訳ではない。それでも必死に生きることで、息子の与吉(大八木凱斗)に思いを伝えることができた。
次週からは再び坂本龍馬を中心とした歴史の流れに巻き込まれていく。その急展開に進む直前の回として、今回は現代に通じる重厚な医療ドラマとなっていた。

『JIN-仁-完結編』第6話、等身大の坂本龍馬に迫る内野聖陽

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第6話「坂本龍馬の闇」が、5月22日に放送された。今回はペニシリン普及のために訪問中の長崎で南方仁(大沢たかお)が坂本龍馬(内野聖陽)に再会する。グラバー商会などと取引していた頃であるが、龍馬は大きく変貌していた。悩みや迷い、弱さを抱えた等身大の人間としての龍馬が浮き彫りになった。
坂本龍馬は同時代人の価値観を超越したヒーローである。仇敵関係であった薩摩藩と長州藩の間に同盟を成立させ、自らも土佐藩下士として恨み骨髄の相手である後藤象二郎ら土佐藩首脳とも提携した。薩長が武力討幕に進む中で、内戦を避けるために大政奉還を働きかけた。
龍馬の先進性は歴史作品の中で強調・誇張され、龍馬のキャラクターとなっている。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』では刀から銃、銃から万国公法の時代になると見抜いていたというエピソードがある。今回の『JIN』でも龍馬は仁の説明する健康保険制度を即座に理解する頭の良さを示した。しかし、それ以上に今回の龍馬はカッコ悪い。
龍馬は仁に気付かれないように長州藩への武器売却をコソコソと進める。当時は幕府が長州藩への武器売却を禁止しており、秘密裏に売却する必要があった。しかし、この事情を踏まえても、そのコソコソぶりは明朗快活な龍馬らしくない。幕府に隠すためだけでなく、龍馬の内心の迷いや後ろめたさも反映している。仁に武器売却が露見した後は「戦は金のなる木」と死の商人丸出しの発言で開き直った。
第二次長州征伐では近代兵器で幕府軍を殺戮する長州軍に喜ぶ。日本人同士の殺し合いを嫌っていた龍馬はコチコチの武力討幕派になっていた。龍馬が力の信奉者に変わった契機は自分が殺されかけた寺田屋事件である。どれほどすばらしい考えを持っていても、殺されてしまったら終わりである。まず相手を力で従わせなければ考えを述べることも、世を動かすこともできないと考えるようになった。
幕府に襲われた龍馬が幕府を目の敵とすることは必ずしも否定できない人間感情である。しかし、遺恨を超えて薩長同盟を成立させた龍馬の伝統的なイメージからは外れる。
変わってしまった龍馬を責める仁に対し、龍馬は「先生は特別な人だから、きれいごとばかり言える」と反論する。これも同時代人から見れば夢物語のような理想論を唱えていた伝統的な龍馬像からは離れている。同時代人から見れば龍馬こそ、きれいごとばかり言う特別な人間であった。
歴史上の龍馬は一個の人間であり、時代性を有する存在である。しかし、同時代人の中で龍馬を描くと、言動の先進性の故に同時代人から超越したキャラクターになりがちである。これに対して『JIN』では現代人の仁を対置させることで、等身大の龍馬に迫っている。未来の知識を持つ「特別な存在」の仁によって、龍馬の時代性が際立った。
もともと内野聖陽が演じる龍馬は泥臭さが高く評価されていた。内野は2007年放送の大河ドラマ『風林火山』でも泥臭い山本勘助を熱演している。これは頭脳派でスマートな軍師像を一新するものであった。人間臭い龍馬像を切り開く内野の演技に注目である。(林田力)

『JIN-仁-完結編』第7話、廓言葉で花嫁を演じた中谷美紀

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第7話「永遠の愛と別れ」が、5月29日に放送された。過去に豪華絢爛な花魁姿を見せた野風(中谷美紀)が、今回はウェディングドレスの花嫁姿を披露する。
江戸に戻った南方仁(大沢たかお)に野風からフランス人のジャン・ルロン(ジャン・ルイ・バージュ)との結婚式の招待状が届き、仁と橘咲(綾瀬はるか)は横浜を訪れる。そこでは洋館が立ち並び、洋風の生活が営まれていた。野風はルロンからマナーを褒められるなど既に洋風生活に馴染んでいた。これは初めて飲むシャンパンに酔っ払う咲とは対照的で、野風は咲をからかう余裕まで見せていた。
花魁であった野風はドラマの中で異彩を放っている。他の登場人物が現代人に近い話し方であるのに対し、野風は「ありんす」など廓言葉を徹底している。高知の酒場で地元の人の話に耳を傾けて習得したという内野聖陽演じる坂本龍馬の土佐弁の評価が高いが、中谷の廓言葉も凛としており、苦界に落ちても誇りは捨てない遊女になりきっている。
もともと時代劇としては邪道に属するタイムスリップ時代劇の『JIN』が時代劇ファンからも支持された要因は江戸時代の生活や風俗を深く描いた点にある。これは主人公の仁が庶民相手に治療するという設定の賜物で、権力者中心の正統派時代劇が見落としがちな歴史の一面を提示した。
中でも第一部では遊郭に生きる遊女達の光と闇にスポットライトを当てている。その重要人物が野風であった。その中では花魁でなくなった後も廓言葉は続けている。廓言葉は武士語や公家言葉に比べると馴染みが薄く、廓言葉で話すこと自体が新鮮である。
その上に今回は、立ち居振る舞いが洋風なのに言葉が廓言葉になっているというギャップがある。これは不自然とも受け取られかねないものであるが、中谷は廓言葉によって野風という女性の意思や覚悟の強さを演じていた。(林田力)

『JIN-仁-完結編』第8話、患者本人と向き合う医療ドラマ

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第8話「歴史に逆う命の誕生…」が、6月5日に放送された。今回は野風(中谷美紀)の出産と大政奉還が中心になる。野風の帝王切開手術と大政奉還を目指す坂本龍馬(内野聖陽)の動きが交互に展開される。史実が分かっている大政奉還以上に野風の手術は手に汗握る展開となった。
完結編では歴史ミステリー色が強まった『JIN』であったが、今回は久しぶりに緊迫した手術シーンが登場した。タイムスリップ物の『JIN』は医療ドラマとしては異色である。南方仁(大沢たかお)は現代の外科知識を持っているが、タイムスリップした幕末には現代医療を実現する設備や技術は存在しない。その制約の中で仁は何とか工夫して手術を行う。
これは現代の医療ドラマでは珍しい。天才的な外科医が困難な手術に成功するドラマでも、最新設備の利用が前提となっている。「弘法は筆を選ばず」が通用するほど医療の世界は甘くない。最新設備を投入しても、ままならないものが生命である。だからこそ医療ドラマには感動がある。
しかし、『JIN』は設備がないことによって生と死のドラマ性を高めている。手術中に患者が心停止し、患者への呼びかけなど超自然的な要素も含む医師の必死の対応によって患者が蘇生する展開は医療ドラマの定番である。これは『JIN』も他の医療ドラマも同じであるが、『JIN』には他と異なる要素がある。現代の医療ドラマでは患者の心停止や蘇生は心電図などの各種モニター類が表現する。
これに対して『JIN』の世界ではモニターなどの電子機器は存在しない。メスなどの医療器具は製作できても、電子機器は作れないという設定の妙が手術シーンに新鮮味を与えた。脈拍など生身の患者から患者の状態を判断しなければならないためである。
これは現代医学が忘れがちなことである。なかお白亜の漫画『麻酔科医ハナ』では患者の容態が悪化してモニターの前で慌てふためく医師に、先輩医師がモニターではなく、患者本人を見るように助言するシーンがある。モニターなしで治療する『JIN』には患者本人と向き合う医療ドラマの感動がある。(林田力)

『JIN-仁-完結編』第9話、熱血教師を脱却した陰のある佐藤隆太

TBS開局60周年記念ドラマ『JIN-仁-完結編』の第9話「坂本龍馬、暗殺」が、6月12日に放送された。今回の主題は坂本龍馬(内野聖陽)の暗殺であるが、龍馬の護衛役の東修介(佐藤隆太)がキーパーソンになる。
龍馬の暗殺を食い止めようとする南方仁(大沢たかお)は、橘咲(綾瀬はるか)や佐分利(桐谷健太)と共に京へ向かう。一方、上役(中原丈雄)から坂本龍馬の暗殺を命じられた橘恭太郎(小出恵介)は悩みながらも仁らの後を付ける。京都では大政奉還を成功させた龍馬が幕府からも薩摩藩の大久保一蔵(眞島秀和)からも恨まれていた。
クライマックスに向けて登場人物達が動き出す中で、修介には依然として謎が多い。長州藩士の修介は歴史上の人物ではなく、原作漫画のオリジナルキャラクターである。しかし、ドラマのストーリーは原作から離れており、修介の役回りも異なっている。前回のラストで修介は無防備に寝ている龍馬に刀を向けて「殺されちゃいますよ」と言っている。まるで龍馬を殺したいような口ぶりであった。
今回も「身を守るためとはいえ、この手で殺めてしもうた長州藩士もおった」と述懐する龍馬に対し、修介は「志半ばに倒れた兄の代わりに果たしたいことが一つあった」と語る。龍馬が殺した長州藩士と修介の兄の関係が気になるところである。しかし、そこには深入りせず、修介は「坂本さんの大政奉還の建白を読んだ時、もうよいのではないかと思ったのです」と吹っ切れた様子であった。
仁の奔走で龍馬は暗殺現場の近江屋から逃れるが、歴史の修正力には抗い難く、襲撃は避けられなかった。必死の斬り合いの中で修介の最後の行動は予想外なものであった。
修介を演じる佐藤隆太は連続ドラマ初主演となった2008年放送のテレビドラマ『ROOKIES』での熱血教師役が当たり役となった。2010年放送の『まっすぐな男』では、まっすぐな性格の人物を主演した。さらに2011年放送の『熱中時代』でも熱血教師を演じた。複雑な思いを秘めた修介は、明るくまっすぐな好男子という佐藤のイメージを一新する。単なる護衛以上の役回りになった陰のあるキャラクターを佐藤がどのように演じ切るのかにも注目である。(林田力)

『リバウンド』第5話、スリムとデブの相武紗季の心情の違い

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』第5話「戻れない女」が、2011年5月25日に放送された。『リバウンド』はダイエットとリバウンドを繰り返す女性・大場信子(相武紗季)を主人公にした恋愛ドラマである。今回も信子はリバウンドし、それが原因で恋人のパティシエ・今井太一(速水もこみち)と喧嘩してしまう。
デブは女性にとってセンシティブな話題である。作り方によってはドラマの主要視聴者層である女性の反発を受けかねない。この点で『リバウンド』はコメディを徹底しており、安心して観られる作品になっている。今回も太一と元彼の風見研作(勝地涼)の現在の彼氏と元彼の対決など笑いどころが豊富である。
信子にとってスリム体型が望ましい姿で、デブの体型は忌むべき姿である。しかし、スリム体型の信子は無理していることが多い。太一との初デートも無理に相手に合わせようとして疲れてしまう。さらには結婚へと突っ走る太一のために夢のパリコレ取材を捨てて退職する。
ところが、仕事への思いを知った太一からパリ行きを勧められ、退職したと言い出せなくなる。パリに行くと嘘をつき、その嘘が露見しないように嘘を重ねる。真相を知れば相手が最も腹を立てるパターンである。その挙句にリバウンドしてしまう。パリに行った信子のことを想いながら真剣に新作ケーキを考案していた太一の怒りは当然である。
怒る太一に対し、信子は太一に逆ギレする。このふてぶてしさは、無理をしていたスリム体型時の痛々しさとは対照的である。信子の嘘は親友の三村瞳(栗山千明)が擁護したように相手を失望させたくない一心での嘘であるが、その優柔不断さは相武紗季の男勝りでサバサバした性格というイメージとも対照的である。かえって特殊メークで「変身」したデブ体型時の方が性格的には相武らしくなるから不思議である。
『リバウンド』はスタイルのいい相武紗季のデブ姿が見物である。スリム体型時の相武もガニ股で歩くなど元デブになりきっている。一方でスリム体型時とデブ体型時の微妙な心情の違いにも注目できる。そこから体型に拘泥されない自分らしさや幸せも見えてくるだろう。(林田力)

『リバウンド』第6話、コメディの中でシリアスさが際立つ栗山千明

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』第6話「食べられない女」が、6月1日に放送された。コメディチックな言動を繰り広げる登場人物の中で主人公・大場信子(相武紗季)の親友・三村瞳(栗山千明)のシリアスさが際立った。
リバウンドした信子は今井太一(速水もこみち)とケンカ別れしてしまう。互いに素直になれない信子と太一は低次元の言い合いで泥沼に陥る。イケメン・パティシエ役の速水も信子との口論では目を剥き出しにし、鼻を膨らますなど三枚目を演じている。
元彼の風見研作(勝地涼)は信子に積極的にアプローチするが、相変わらずのネット情報頼みと下心見え見えの言動が笑わせる。さらに信子の母親・智恵(伊藤かずえ)が意味不明な理由で家出し、父親の睦己(石塚英彦)が追いかけ、信子と瞳の目の前でグダグダな夫婦喧嘩が展開される。
このようなドタバタ劇の中で、瞳のシリアスさが突出している。これまではクールに信子を見守る一歩下がった存在であったが、今回はドラマの中に入っていった。瞳は信子と太一を仲直りさせるために太一に会うが、逆に太一を意識してしまう。信子に幼稚な反論する太一も瞳には優しい。瞳の絵を評価し、家庭環境に共感し、瞳のためにバースデーケーキを作る。信子の前では強がっている瞳も太一の前では素直である。
信子と瞳は親友という設定であるが、基本的に瞳が信子を思いやる一方で逆はない。今回は信子と瞳が同居する家で信子の両親が夫婦喧嘩するが、悲惨な家庭環境で育った瞳にとって幸せの裏返しの夫婦喧嘩を見せつけられることは残酷である。そのような瞳にとって太一は貴重な存在である。傷つかないように他人との間に壁を作っていたクールビューティーが太一の優しさに触れて恋する女性になる。
恋のライバルの登場は恋愛ドラマの定石であるが、『リバウンド』では存在感が薄かった。太一を狙う内藤有希(西山茉希)は相手にされていない。信子を狙う研作はギャグ要員である。二人ともお邪魔虫に過ぎない。これに対してシリアスな瞳は本気の恋のライバルになり得る。コメディの中でもクールを貫き、本気の恋をする栗山の演技に注目である。(林田力)

『リバウンド』第7話、イケメン役でコミカルな速水もこみち

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』第7話「信じられない女」が、6月8日に放送された。主演の相武紗季の激太りと激痩せが話題のドラマであるが、今回はダイエットもリバウンドも後景に退き、友情か恋愛かの選択というシリアス路線となった。その中で速水もこみちが笑いのツボになっていた。
イケメン俳優と位置付けられる速水は『リバウンド』でもイケメン・パティシエ役の今井太一を演じている。しかし、イケメンのキャラクターとは落差のあるコミカルな演技が笑いを提供する。今回は口とは裏腹に疑い深く「信じられない女」になっている信子に対して「面倒くさい」と嘆きながらも信子の要望に付き合っている。また、元彼の風見研作(勝地涼)が信子に電話をかけてきた時は、ものすごい形相で包丁の音を響かせていた。
イケメン俳優であることは俳優として大きなアドバンテージであるが、役の幅が狭くなるというデメリットもある。速水は2007年放送のテレビドラマ『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』で主演したが、原作のイメージと比べてカッコよすぎるとの批判もあった。この点でイケメンながらコミカルな言動の太一役は俳優としての速水の魅力を広げている。
『リバウンド』について大平太プロデューサーは「『リバウンド』というタイトルから、ダイエットを扱ったコメディを想像するかもしれませんが、これは“女性の生き方”を描いた人間ドラマです。」と述べている。女同士の友情と恋愛の選択を迫られた今回は制作側が意図した展開になった。
しかし、『リバウンド』の序盤はコメディ色が強かった。主人公があっさりと痩せたり太ったりする展開は現実味がなく、コメディとして楽しむ内容である。視聴者からもデブのキャラクターになりきっている相武の演技などコメディ要素が評価されていた。ここで女性の生き方を描く人間ドラマに路線変更するならば、それが当初の制作者の意図であったとしても、これまでの視聴者が逃げてしまう危険がある。
女性の生き方を描く人間ドラマを意図する以上、クライマックスに向けて主人公の信子がシリアス化し、精神的に成長していくことは避けられない。その中でも速水の演技はコメディを期待する視聴者を満足させるものになっている。(林田力)

『リバウンド』第8話、鬼編集長ぶりが様になる若村麻由美

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』第8話「変えられない女」が、6月15日に放送された。今回は大場信子(相武紗季)と今井太一(速水もこみち)、三村瞳(栗山千明)の三角関係が泥沼化する中で、編集長・森中蘭(若村麻由美)のエピソードが清涼感をもたらした。
蘭は信子が編集するファッション雑誌『エデン』の鬼編集長である。面白い雑誌を作って読者を幸せにすることに命を賭けているが、名前を間違えて呼ぶなどの傲慢な性格から編集部員の反感も買っていた。今回は功績のあったモデルの内藤有希(西山茉希)を降板させたために、出版社との上層部とも衝突してしまう。
ドラマの本筋は三角関係であるが、二人の異性の間を揺れ動く想いや恋のライバルの競い合いなど恋愛ドラマの要素は薄い。信子と太一は相思相愛であるが、信子は瞳の気持ちを優先させて自分が身を引こうとする。恋愛よりも友情を優先させた行動である。しかし、彼氏を譲ってもらったところで、瞳が喜ぶものでもない。みじめな気持ちや罪悪感が残るだけである。
太一から逃げ回るばかりの信子であったが、蘭を元気にさせたいという信子の気持ちがドラマを進めた。冷たい編集部員に「私一人で無駄な努力をやり続ける」と啖呵を切った信子は「アンジュ」に行き、太一にケーキが大嫌いな蘭でも食べられるケーキを依頼する。蘭のエピソードを絡ませることで、こう着した恋愛ドラマに動きを与えた。
欄のエピソードはスポンサーや会社の上層部とも妥協せず、孤立無援になっても、自分が面白いと考える雑誌編集を貫くところがポイントであるが、背景の描写は抽象的である。モデルの有希では何故ダメなのか、新人モデルのどこに魅力があるのか、説明がない。それ故に蘭の決定が雑誌を良くするものか、単なる気まぐれのワガママか視聴者は判断できない。
本来ならば具体的な理由説明なしで、真剣であるが故の雑誌への情熱であると位置づけることは乱暴な話である。むしろ、独裁者のワガママに振り回される編集部員に同情を覚えても不思議ではない。しかし、細かな説明がなくても若村麻由美の演じる蘭の存在自体が、仕事ができる女性として迫力がある。
サングラスを頭に乗せるなど蘭の独特のファッションはファッション誌の編集長として様になっている。若村は2008年放送の大河ドラマ『篤姫』での皇女和宮の生母・観行院役など時代劇で若手女優に引けを取らない美貌を披露していたが、現代ドラマでも他者を寄せ付けない美貌を示した。そして『プラダを着た悪魔』のミランダ編集長ばりの鬼編集長ぶりである。その生き方に影響を受けた主人公・信子の精神的成長に注目したい。(林田力)

『リバウンド』第9話、勝地涼がコメディから真面目キャラに豹変

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』第9話「捨てられない女」が、6月22日に放送された。今回は大場信子(相武紗季)と今井太一(速水もこみち)の主演カップルがすれ違いを続ける中で、ギャグ担当であった風見研作(勝地涼)が大化けした。
信子の元彼である研作は信子の気持ちを取り戻そうと猛烈なアタックを繰り返す。太一にとっては恋敵であり、恋愛ドラマでは定番の主人公カップルの障害となる立ち位置である。しかし、これまでの研作はギャグキャラと化しており、主人公カップルが研作によって引き離される心配はなかった。
自分の意見に自信がない研作は、何でも検索しなければ気が済まない。ケータイ世代を戯画化したキャラクターである。その研作に太一が必要以上に対抗意識を燃やしており、研作の登場は主演カップルの促進材料になるという珍しい恋敵になっている。
ドラマの序盤では「リバウンドしたら別れる」と公言する太一との比較から、「太ったままでいい」と言う研作に優しさを感じ、信子には研作がお似合いとの視聴者の意見もあった。しかし、信子は研作に恋愛感情を抱いていない。付き合っていた頃に太っていた信子と手をつなごうとしなかったという身勝手さも明らかになる。
そして今回は信子が研作に対してブチ切れる。「いろいろ優しいこと言っているけど、結局あんたは自分の言いなりになる女が欲しいだけじゃない」と研作の本音を鋭く突く。自分の生き方は自分で考えて決めなければいけないのに、「何でもかんでも検索してんじゃないわよ」と研作の検索癖まで批判する。
信子にキレられた研作は思い切った行動に出る。まるで落雷に遭ったような変わりようであった。研作の行動はリアルにされたら、ドン引きされかねないものである。しかし、2006年日本アカデミー賞新人賞を受賞した『亡国のイージス』の如月行役など真面目な印象が強い勝地涼の存在感によって、研作の改心が表現されている。
研作はネットの検索情報に頼り、自分らしい生き方ができていない。これは自分らしい人生を模索する信子の内面的な課題に重なる。『リバウンド』はダイエットを導入部としながらも、人の生き方を描く人間ドラマとして制作されている。それ故に研作の精神的成長も、ドラマのテーマに沿っている。まだ今回の研作は自分の思い込みで突っ走っている。自分勝手な研作が相手のことを考えて行動するまで成長できるか見物である。
上質な恋愛ドラマは誰と誰が結ばれるか最後まで視聴者を裏切るものである。これに対して『リバウンド』では信子と太一がベストカップルであることは明らかである。低次元の口喧嘩もするが、ケーキ作りでは息のあったところを見せている。ところが、研作の大化けによって、信子と研作、太一と瞳という結末も否定できなくなった。最終回直前で予想をつかせなくした『リバウンド』の恋の結末に注目である。(林田力)

『リバウンド』最終話、デブ役で女優の幅を広げた相武紗季

日本テレビ系ドラマ『リバウンド』最終話「あきらめない女」が、6月29日に放送された。『リバウンド』は主演の相武紗季の特殊メークで太った姿が話題になり、デブの女性になりきった相武の暑苦しい演技も評価されたドラマである。最終話は相武がリバウンド体系のままで幸せになった女性を演じきった。
大場信子(相武)は今井太一(速水もこみち)と別れ、トンカツ屋「トントン亭」を継ぐことを決意した。しかし、父親の睦己(石塚英彦)の味を求めて試行錯誤するも、うまくいかない。太一も10個目のケーキ作りに苦戦中であった。トンカツ屋を継ぐ信子とケーキ屋を継ぐ太一では相容れないと考えていた信子は、意外な解決策を思い付く。
最終話ではダイエットやリバウンドが脇に追いやられた『リバウンド』であるが、最初から一貫していたテーマはケーキである。全10話で太一は新作のケーキを毎回発表している。それらのケーキは東京都世田谷区の「コンディトライ・ニシキヤ」のパティシエ・西田喜孝氏が作る本格的なものである。
これまでのケーキは世の中に存在するもののアレンジであったが、最終回の新作ケーキは一般的なケーキの枠組みを超越していた。このドラマのために存在するユニークである。このケーキ作りが最終話のヤマ場で、信子と太一に三村瞳(栗山千明)や風見研作(勝地涼)と主要キャラが一堂に会した中で行われた。
また、ドラマ冒頭の信子の自分語りではケーキ依存症であると紹介される。依存症という言葉はアルコール依存症のようにネガティブな文脈で使われがちである。これに対し、信子のケーキ依存症は美味しいケーキを食べると幸せの鐘が鳴り、必ずしも悪く描かれていない。実際、太一は幸せの鐘が鳴っている信子の笑顔を観ることで幸福になれると言っている。
ケーキを食べる幸せを肯定するドラマが無理なダイエットを否定することは当然の帰結である。信子は激太りではないものの、太めの体型で結末を迎えた。当初の『リバウンド』では痩せていた信子がダイエットに成功した姿、太った信子がリバウンドしてしまった姿であった。
そのために痩せている信子は理想的な体型の筈であるが、太っている時とのギャップから逆にガリガリで不健康的との印象を与えた。これは太った姿を本来の姿と位置付けることでハッピーエンドとなるドラマに沿っている。スタイルの良さを魅力の一つにしていた相武紗季であるが、『リバウンド』のデブ役で女優の幅を広げることになった。(林田力)

『幸せになろうよ』第6話、モノローグで新境地を開拓する香取慎吾

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の第6話「好きって言っちゃった…動きはじめた恋」が、5月23日に放送された。『幸せになろうよ』は結婚相談所のアドバイザー・高倉純平(香取慎吾・SMAP)と結婚相談所に入会した謎の美女・柳沢春菜(黒木メイサ)の恋模様を描く。
今回は一人の男性として告白した純平と春菜の気持ちが通じ合う。二人が手をつなぐという些細な行動で、恋の成立を示す演出が巧みである。恋愛ドラマとして良い流れになったが、純平の元恋人・松下みゆき(国仲涼子)の登場や、春菜を振った矢代英彦(藤木直人)の妻・遠藤聖子(奥田恵梨華)の裏切りなど一波乱も二波乱も予想される。
『幸せになろうよ』は結婚をテーマとする点で同じSMAPの中居正広が主演した2009年放送の月9ドラマ『婚カツ!』と共通する。コメディータッチである点も類似するが、『幸せになろうよ』には結婚や幸福を真剣に追求する真面目さがある。
この真面目さは主人公の純平に負うところが大きい。純平は結婚相談所の相談員として会員が幸せな結婚できるよう非常に努力している。相談員としての仕事や自分の感情について内省を繰り返している。それがドラマでは純平のモノローグとなって現れている。
これまで香取慎吾は慎吾ママや忍者ハットリくん、両津勘吉などのキャラクター物が当たり役であった。これらの役にはアクの強さが求められるが、勢いで演じられるところもある。これらに対して純平は普通の人である。
役者が普通の人を普通の人らしく演じることは実は容易ではない。セリフ回しが巧みでなければ、普通の人が普通に話すような演技にはならない。この点で香取のモノローグは朴訥としており、真面目だが不器用な好青年の声になっている。この真面目で不器用なキャラクターは香取が主演した2008年放送の月9ドラマ『薔薇のない花屋』の汐見英治とも重なるが、汐見は台詞が少ない点で演技の質が異なる。新境地を開拓する香取の演技に注目である。(林田力)

『幸せになろうよ』第7話、優しさからのドロドロ展開が月9の新機軸か

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の第7話「恋の障害…彼女の父、そして元カノの涙」が、5月30日に放送された。小松原進(大倉孝二)などのコミカルなキャラクターが登場する明るいタッチのラブコメディーが、ドロドロした展開を見せた。
ようやく高倉純平(香取慎吾)と柳沢春菜(黒木メイサ)の恋が成就した。二人が手を握ることで互いの気持ちを確認するという爽やかな演出がなされた前回に対し、今回はドロドロした展開が目白押しである。矢代英彦(藤木直人)は妻・遠藤聖子(奥田恵梨華)の不貞を金で解消させようとするが、反対に衝撃の事実を知ってしまう。春菜の弟の優次(玉森裕太)は両親が離婚調停中で居場所のない恋人のために高校生同士で同棲しようとする。
そもそも幸せな結婚を目指す結婚相談所をテーマとしながら、不思議なことに登場する夫婦は全て破綻している。英彦と聖子、春菜の両親の匠悟(小林薫)と高原早苗(高畑淳子)、純平の元彼女の渡辺みゆき(国仲涼子)と渡辺辰則(高橋努)と結婚前、離婚後、結婚中の破綻カップルが勢揃いである。
そして純平と春菜の恋にも障害が立ち塞がる。それはサブタイトルにある通り、春菜の父親と純平の元彼女である。本来ならば父親も元彼女も障害にはならない。父親は娘の恋愛に口を出せる立場ではない。元彼女は純平を振って純平の友人と結婚した存在である。現実に純平は、みゆきから連絡を受けても心は春菜のことでいっぱいで少しも動揺しなかった。動揺しない自分に驚いているほどであった。
障害にならないものが障害になってしまう理由は純平の非常識な優しさである。純平は匠悟や春菜の弟・優次(玉森裕太)のために行動するが、全て裏目に出てしまう。また、失意のみゆきを引き留めてしまう。純平が非常識な優しさから余計なことをすることで事態を悪化させてしまう。
これは前クールの月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』の主人公・柏木修二(三浦春馬)と共通する。『大切なことはすべて君が教えてくれた』は婚約者のいる高校教師が女子高生と一夜を共にするという冒頭からドロドロした設定であった。『幸せになろうよ』は明るいタッチで前クールの印象を一新したものの、2作続けて男性の主人公の度を越した優しさによるドロドロ展開となった。これが月9ドラマの新機軸になるか注目である。(林田力)

『幸せになろうよ』第8話、仲里依紗のトゲのある演技に爽快感

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の第8話「ゆれる想い…一番たいせつな人は誰?」が、6月6日に放送された。主人公の高倉純平(香取慎吾)が優柔不断男と化す中で、桜木まりか役の仲里依紗がトゲのある演技が爽快感をもたらした。
今回は純平(香取慎吾)と柳沢春菜(黒木メイサ)の恋が、純平の元彼女・渡辺みゆき(国仲涼子)によって、かき乱される。サブタイトルは「ゆれる想い」であるが、純平の心は揺れていない。みゆきに心を動かされた訳ではなく、放っておけないだけである。しかし、その優しさが大切な人を傷つけることになる。
まりかは純平の勤める結婚相談所の後輩で、純平に片想いを寄せている。ところが、純平は春菜と両想いになり、お邪魔虫役に元彼女のみゆきが登場した。そのために恋のライバルとしての存在意義は著しく低下したものの、怒る女性として存在感を発揮した。
まりかは「自分が振った元彼の家に、こんな夜中にあがりこむなんて」と、みゆきに説教する。みゆきを自宅に引き留めた純平に対しても、「私が先輩の彼女だったら、確実にキレてますねえ」と言う。春菜との関係をはっきりさせないことについても「一番不誠実なのは誰か」と嫌味を言う。
まりかの指摘は正論である。本来ならば純平と春菜が両想いになって幸せな展開になる筈であるが、優柔不断男の余計な優しさによって物語が変な方向に進んでしまった。視聴者にはフラストレーションがたまる展開である。まりかは視聴者のイライラを代弁している。「純平が夜中に元彼女と会っていた」と春菜に告げ口する、まりかは見方によっては嫌な性格の女になる。しかし、正論の発言で視聴者のフラストレーションを代弁するキャラクターが悪印象を打ち消している。
『幸せになろうよ』は優柔不断男の非常識な優しさが事態を悪化させる点で前クールの月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』と共通する。『大切なことは』でも主人公カップルの優しさからの非常識な言動が見られたが、主人公カップルの共通の友人も同僚教師も良き理解者であったことが特徴である。彼らは視聴者が突っ込みたくなるような主人公カップルの言動さえも温かく見守る理解者であった。それが視聴者のフラストレーションを増大させた面がある。
これに対して『幸せになろうよ』は、まりかが非常識な優しさに正面から異を唱えている。今回のラストでは純平だけでなく、春菜も元恋人を放っておけない優しい人であることが判明した。行き過ぎた優しさによる混迷が深まる中で、仲里依紗のトゲトゲしさがドラマの清涼剤になっている。(林田力)

『幸せになろうよ』第9話、クールな黒木メイサが感情表現を豊かに

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の第9話「別れの雨」が、6月13日に放送された。これまで訳ありの美女であった柳沢春菜(黒木メイサ)が、今回は人間味を見せた。
家庭も仕事も失った矢代英彦(藤木直人)は失意の中で階段から転落して負傷する。柳沢春菜(黒木メイサ)は着替えを持っていくなど入院した矢代に献身的である。春菜から話を聞いた高倉純平(香取慎吾・SMAP)は、春菜に「そばにいてあげた方が良いと思います」と話す。
元恋人を放っておけない優しさが純平と春菜の恋の障害になる点は前回と同様である。しかし、元彼女・渡辺みゆき(国仲涼子)の気まぐれに振り回されただけの前回以上に今回はシリアスな展開となった。
ヒロインの春菜は理由があって結婚相談所の会員になった謎の美女という設定である。春菜の謎は初回で明らかになるが、その後も純平の目線でドラマが展開しており、春菜の感情は見えにくい。
もともと春菜を演じる黒木メイサは日本人離れした容貌にクールな雰囲気が特徴である。2008年放送のテレビドラマ『男装の麗人〜川島芳子の生涯〜』の川島芳子のような常人離れした役の演技に定評がある。一方で普通の女性の役では、黒木の存在感が強すぎて、役ではなく黒木メイサに見えてしまうこともある。
『幸せになろうよ』の春菜も自分に自信が持てない性格設定であるが、黒木のクールな雰囲気が強く、捉えどころのない存在になっていた。それが今回は人間的な感情を出している。桜木まりか(仲依里紗)と出会った春菜は強引に居酒屋に誘われる。春菜の都合を無視する、まりかに春菜は「人の話聞いてる?」と半分キレていた。
居酒屋では、まりかが得意の毒舌をぶつけてくる。これまで個性的なキャラクターという点では、クールで無機的な春菜よりも、まりかのトゲトゲしさに軍配が上がった。しかし、ここでは春菜も負けていない。ビールを一気に飲み干し、まりかの嫌味にも「私と高倉さんは大丈夫だから」と強気で返した。まりかのストレートさが春菜の感情を引き出した。
この後は春菜の感情表現が豊かになる。飛び降りようとする矢代に怒り、泣き出す矢代を包み込む。さらにラストの純平のセリフには、雨に打たれたまま固まってしまう。クールな雰囲気の仮面がとれて、感情表現が豊かになった黒木の演技に注目である。(林田力)

『幸せになろうよ』第10話、大倉孝二の女性に免疫ない変人は好人物

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の第10話「もう会わない…」が、6月20日に放送された。今回は主人公・高倉純平(香取慎吾)が担当する結婚相談所会員の小松原進(大倉孝二)を幸せにしようと努力する中で、自分の幸せにも気付かされるストーリーである。
高倉純平(香取慎吾)は柳沢春菜(黒木メイサ)と矢代英彦(藤木直人)の幸せを考えて春菜と別れる。純平は春菜からの電話に出ず、訪れてきても追い返してしまう。前回のラストは春菜と矢代の幸せを優先するアドバイザーとしてカッコ良さを見せたが、今回は自分の気持ちを我慢して無理する姿が痛々しい。
相思相愛のカップルなのだから、互いに正直な気持ちになればハッピーエンドである。ところが、変なところで遠慮して気を遣うために上手くいかない。簡単に結ばれたならばドラマが成立しないため、すれ違いは恋愛ドラマのお約束であるが、じれったくもある。この点は登場人物が周囲を気遣って本音を押し殺す日本ドラマよりも、ストレートに感情をぶつけてテンポの良い口喧嘩が楽しめる韓国ドラマの人気が高まった要因である。
『幸せになろうよ』も主人公カップルは「お互いに気を遣って、自分の気持ちを押さえつけて。何なのですか二人して」(桜木まりかの台詞)という面倒臭い存在である。それでも『幸せになろうよ』がイライラだけで終わらない点は、脇役に遠慮がないためである。桜木まりか(仲里依紗)や上野隆雄(綾部祐二)はストレートに斬り込んでくる。それは主人公カップルにもどかしさを感じる視聴者の気持ちを代弁している。
まりかは純平に片想いを寄せる同僚であり、上野は学生時代からの友人である。二人が純平にズケズケと発言することは、それほど不自然ではない。ところが、『幸せになろうよ』のユニークな点は結婚相談所会員の小松原進(大倉孝二)も純平に斬り込ませたことである。
小松原は春菜と別れた純平を励まそうとして、純平の自宅で一緒に酒を飲む。会員と担当アドバイザーという関係で、失恋したアドバイザーを励まし、一緒に酒を飲み、下の名前で呼び合うことは必ずしも自然ではない。ドラマならではの人間関係であり、現実では中々なさそうな関係がドラマを盛り上げる。
小松原は女性に免疫がなく、女性と話すことすら上手くできない。結婚相談所で売れ残る変人という色物的な存在である。当然のコミカルに演じることが求められるが、他の登場人物が普通に演じる中では、小松原の演技が浮いてしまう危険性がある。しかし、小松原演じる大倉孝二は舞台出身だけあって、笑いを取るためのオーバーな演技でも決して場から浮き上がらない。大倉の演技によって小松原は応援したくなる好人物になっている。
その小松原に今回は素敵な出会いが訪れる。次回は最終話である。主人公カップルの行方だけでなく、ドラマの舞台である結婚相談所の会員代表である小松原が幸せをつかめるかにも注目である。(林田力)

『幸せになろうよ』最終話、憎めない香取慎吾の身勝手キャラ

フジテレビの月9ドラマ『幸せになろうよ』の最終話「俺と結婚してください。」が、6月27日に放送された。これまで高倉純平(香取慎吾)の優柔不断な優しさがドラマを複雑にしていたが、最終回でも純平は暴走する。それでも俳優の香取の魅力から憎めないキャラクターに仕上がった。
自分の気持ちに素直になった純平は柳沢春菜(黒木メイサ)に告白するが、一度振った立場であり、「今頃、言わないでください」と取り合ってもらえない。一方で矢代英彦(藤木直人)も春菜からプロポーズの回答を待つ身であった。何としても春菜に会いたい純平は、矢代にプロポーズの返事を聞く場所への同席を頼み込む。それを断られても「矢代さんが振られたら教えて下さい」と頼む。恋のライバルに対して非常識極まりない頼みである。
そもそも矢代は純平から「彼女を幸せにしてやってください」と頼まれた身である。純平が今更、自分が彼女を幸せにすると言うことは身勝手である。それを指摘された純平は、あっさりと「前言撤回します」と答えた。矢代が春菜から振られたことを知ると、嬉しそうな表情をする。自分の思いだけで突っ走り、他者の反応を考えていない。
その後も純平の暴走は続く。春菜の勤務先を知る春菜の弟の優次(玉森裕太)に会いに高校へ行き、下校中の高校生の自転車を奪って勤務先に行く。文字通りの暴走である。オフィスに勝手に入り込み、春菜を探し出して同僚のいる前で告白する。これだけ純平が一生懸命になる理由は、「今、会えないと、もう二度と会えないような気がした」という思い込みからであった。
純平の告白そのものは名シーンである。このドラマは純平のモノローグが多かったため、特定の相手に向けた長台詞があること自体に新鮮なインパクトがある。その内容もタイトルの『幸せになろうよ』に込められた深い意味を明らかにするものであった。第一話で春菜が間違って持っていった純平のペンが最後に大きな意味を持ったことと共に、最初から制作者が描きたかった方向に向けて大団円となった最終回であった。
感動的な告白シーンであるが、大勢の人の温かい理解と協力がなければ成り立たない展開である。純平の身勝手な頼みに対し、矢代の対応は大人であった。矢代は序盤では春菜に酷い仕打ちをするヒールで、後半では温かい家庭を作ろうとした妻に裏切られ、やつれてしまった。イケメン俳優の藤木直人にとってプラス・イメージになる役ではないが、最終回でカッコ良さを見せた。
春菜の勤務先での告白も、警備員につまみ出されても不思議ではない。春菜の同僚が拍手して祝福することも出来過ぎである。もともと純平が自分の気持ちに正直になった契機も桜木まりか(仲里依紗)の情熱的な説得であった。まるで純平を中心に世界が回っているような展開である。
本来ならば反感を抱きたくなるものだが、SMAPの最年少メンバーとして皆から可愛がられる末っ子キャラの香取慎吾が演じると憎めない。香取の持ち味を活かしたドラマになった。(林田力)

『グッドライフ』あどけなさだけではない子役・加部亜門

テレビドラマ『グッドライフ〜ありがとう、パパ。さよなら〜』がフジテレビ系列で4月20日から放送を開始した。家庭を顧みなかった父親による白血病の息子への愛を描いた感動作であるが、第1話「パパはとっても悲しい生き物です」は息子の羽雲(わく)を演じる加部亜門が主役のような存在感を発揮していた。
『グッドライフ』は韓国で200万部のベストセラーとなった趙昌仁の小説『カシコギ』が原作である。カシコギは韓国語で魚のトミヨを指す。トミヨのオスはメスの産卵後は、自身は食べ物を摂らず、ひたすら巣を守り続ける。このトミヨのような父親の無償の愛がテーマになるが、第1話では息子の病気は分かっておらず、仕事優先で傲慢な父親の孤独と息子の悲しみを描いている。
新聞記者の澤本大地(反町隆史)はスクープを連発する敏腕記者であったが、他人の話には耳を貸さず、自分の主張だけを押し通す傲慢な人格であった。職場ではパワハラで部下が自殺未遂を起こし、家庭では妻の華織(井川遥)に離婚を求められる。そして家を出て行った香織に代わり、大地が羽雲の世話をしなければならなくなった。
前半の羽雲は忙しい大人から見れば手のかかる等身大の子どもを演じていた。親から見れば「もっとしっかりして欲しい」となるが、子どもの立場では母親が出て行ったショックから「無理もない」となる。
しかし、後半に入ると何とか両親に仲直りして欲しいという羽雲の健気なまでの思いが明らかになる。両親の仲が上手くいっていないと、子どもは親の顔色をうかがい、気を惹こうと変な嘘をつくようになる。そのような悲しい子どもを加部が好演した。
演技の世界では「子どもと動物には勝てない」と言われる。ベテラン役者の計算された演技も、感情を素直に表現する子役の魅力の前に霞んでしまう。しかし、あどけなさだけで子役に感動するほど視聴者は単純ではない。子どもなりの悩みや苦しみを表現した演技だからこそ感動する。
たとえば2009年の大河ドラマ『天地人』では樋口与六(直江兼続の子ども時代)を演じた加藤清四郎がブレイクしたが、その出発点は母親と引き裂かれた与六の「わしは、こんなとこ、来とうはなかった」という魂から絞り出すようなセリフであった。その意味で両親のすれ違いや難病を描く『グッドライフ』には子役の見せ場が揃っている。新たな子役スターが誕生するか、『グッドライフ』の今後に注目である。(林田力)

『グッドライフ』最終話、子どもを愛する父親が適役の反町隆史
フジテレビ系ドラマ『グッドライフ』の最終話「ありがとう、パパ」が、6月28日に放送された。韓国のベストセラー小説『カシコギ』を原作とした感動作が、悲しみの中にも温かみのある結末を迎えた。
原作のタイトルになっているカシコギは魚の名前である。カシコギのメスは産卵後に、どこかへ行ってしまい、子どもの世話はオスが行う。子どもが巣立つとオスは岩の間に頭を突っ込んで死んでしまう習性があると伝えられている。小説『カシコギ』は、この伝承をモチーフに難病の息子への父親の無償の愛を描いた。父親自身は全く救われない展開によって父親の愛の献身性が際立ち、多くの韓国人が涙した。
これに対して『グッドライフ』は家族の絆を強調する終わり方になった。末期ガンに侵された澤本大地(反町隆史)は羽雲(加部亜門)を拒絶し、人知れず死んでいこうとする。「羽雲にしてやれることはもうない。私の役目は終わった」と考えたためである。これは伝承のカシコギの習性に該当する。
しかし、ドラマは与えるだけでなく、受け取ることも愛であると訴える。羽雲から逃げていた大地が、羽雲の思いに応えて振り返るシーンが見どころである。家族を省みない仕事人間であった大地は妻の家出や息子の難病で大きく変わったが、最終回でも新たに変わった。前クールの『美しい隣人』と同様、複数の解釈が可能な結末となったが、家族に見守られた結末には大地にとっても救いがある。
もともと『グッドライフ』は「お涙ちょうだい」路線と位置付けられるが、不幸が続く展開を直視できない視聴者も少なくなかった。それでも大地と羽雲の父子の心温まる交流を軸とすることで、重たい話を敬遠する視聴者も惹きつけた。ヒット作『GTO』で生徒の近い教師役を演じ、実生活でも父親で「反町隆史の子育て論」という雑誌記事が出る反町は、子どもを愛する父親に適役であった。
最終回の大地は末期ガンで車椅子生活になっており、演技に動きはなかった。しかし、『GTO』の鬼塚英吉役などで培った反町の熱い男のイメージは健在で、台詞や動きも乏しい中でも大地の思いを強く伝えていた。若い頃のヤンチャとは違った渋さを発揮した最終回であった。(林田力)

『名前をなくした女神』最終話、ママ友地獄に落ちた杏の陰影

フジテレビ系ドラマ『名前をなくした女神』の最終話「5人の女、最後の答え」が、6月21日に放送された。お受験を背景にママ友の虚栄や嫉妬、嘘や裏切りなどドロドロした世界が話題のドラマである。最終話は予定調和で進行したものの、新たなママ友地獄を連想させる終わり方となった。
『名前をなくした女神』の主人公は仕事を辞めて専業主婦になった秋山侑子(杏)である。侑子のママ友の安野ちひろ(尾野真千子)、進藤真央(倉科カナ)、沢田利華子(りょう)、本宮レイナ(木村佳乃)も主役級の扱いで、彼女らを合わせた5人の物語が同時進行する。番組ポスターなどでは5人が並んだ写真が使われている。連続ドラマ初出演の杏を演技派女優陣が支える形である。
侑子は何気ない言動でママ友の神経を逆なでし、ママ友から恨まれ、陰湿な攻撃を受ける。ママ友の4人は皆、癖のあるキャラクターである。夫のセクハラ疑惑や浮気、セックスレス、経済力など抱える問題も深刻である。そのようなママ友の攻撃は迫力がある。
最終話で侑子の息子の健太(藤本哉汰)は念願の明峰学園幼稚舎に合格する。しかし、侑子の幸せを許せない利華子は明峰学園に電話して、健太の入学辞退を連絡する。それを知った侑子は利華子の元へ走り、「ねえ。私、何かした?怒らせるようなこと…」と尋ねる。これに対して利華子は侑子を呆れたように眺め、「何もしてないんじゃない」と突き放した。
実際の侑子は利華子を怒らせるようなことをしているが、侑子には理解できないという諦めにも似た溝がある。侑子はママ友から攻撃を受ける被害者であるが、完全な意味で善人ではない。明るくまっすぐな性格設定であるが、無意識的に他人を傷つけ、それに気付かない無神経さがある。また、出産後も仕事を続けるキャリアウーマンであったが、会社の都合で退職して専業主婦になったという設定である。仕事がバリバリできるキャリアウーマン・タイプでも純粋な専業主婦タイプでもない。
このような単純に割り切れないキャラクターを杏が好演した。ファッションモデル出身の杏は、ステレオタイプな明るい専業主婦像とはギャップがある。モデルとしてクールなイメージが強いため、笑顔でも心の底から笑っていないような陰影がある。それが「ママ友地獄」に落ちた主人公にマッチしていた。(林田力)

『美しい隣人』第8話、仲間由紀恵が残念な悪女に豹変

フジテレビ系ドラマ『美しい隣人』第8話「反撃の瞬間」が3月1日に放送された。仲間由紀恵の演じる悪女が話題のドラマであるが、ターニングポイントとなった今回はミステリアスな悪女が残念な悪女に豹変した。
『美しい隣人』は平凡だが幸せな主婦の絵里子(檀れい)の生活が美しい隣人の沙希(仲間由紀恵)によって破壊されていくサスペンスである。前回のラストで沙希は自分が絵里子の夫・慎二(渡部篤郎)の浮気相手であると絵里子に伝える。隠す必要がなくなった沙希は狂気の度合いを深めていく。
これまで沙希は絵里子に悟られないように立ち回ってきた。その言動は計算高く冷酷で、容易に本心を見せなかった。そこには最愛の息子を失った母親の復讐心の凄みがあり、ミステリアスな魅力を醸し出していた。このドラマの最大の被害者は絵里子である。そこを理解していても、ミステリアスな沙希と世間知らずの絵里子では沙希に感情移入する視聴者も多い。
ところが、今回の沙希は他人の幸せが羨ましくて許せない哀れな人に落ちぶれてしまった。まるで前半とは別人のような落差がある。ここでは沙希は自分が絵里子に成り替わることで、失われた幸福を取り戻そうとする。沙希の言動は明らかに常軌を逸している。
この異常性は沙希のパーソナリティだけに依存するものではない。物語全体に郊外住宅地の歪みとも言うべき気持ち悪さがある。慎二と絵里子の夫婦は互いを「パパ」「ママ」と呼び合う。幼稚園に子供を通わせる母親同士も「○○ちゃんママ」と子どものママとして呼ばれる。このコミュニティーでは個人ではなく、子どもの母親という属性でしか見られていない。この点が子どもを失った沙希が狂気に走った遠因であり、自分が絵里子に取って代わることができると妄想した背景だろう。
ミステリアスな悪女も常軌を逸した悪女も、沙希を演じる仲間の演技力の賜物である。仲間は2009年6月27日に放送されたテレビドラマ『MR.BRAIN』第6話「変人脳科学者VS悲劇の多重人格トリック!! 脳トレは嘘発見器!?」において多重人格者を演じた。そこでは表情や声の調子で3つの人格を演じ分けた。「ジキル博士とハイド氏」のように両極端な二重人格は想像しやすい。しかし3つの人格を演じ分けることは至難の業である。その演技力が幾つもの顔を持つ沙希の演技でも発揮されている。

『美しい隣人』第9話、ダメ夫の渡部篤郎と壊れる妻の檀れい

フジテレビ系ドラマ『美しい隣人』第9話「零れたミルク」が3月8日に放送された。『美しい隣人』は幸せな家庭が美しい隣人によって崩壊させられるサスペンスであるが、今回は沙希(仲間由紀恵)が駿(青山和也)を連れ去るという一線を越えた行動で幕を開けた。このまま沙希の暴走が予想されたものの、意外にもあっさりと解決した。しかし、沙希が暗躍を止めても、家族は自壊していく。「覆水盆に返らず」を連想させるタイトル通りの展開であった。
まず夫の慎二(渡部篤郎)がダメ人間である。「やり直そう、何でもするから」と言いながら、妻が受け入れなければ切れてしまう。子どもの誘拐の警察への訴えを妻に一人で行かせている。会社では海外赴任の話が白紙になる。それも慕われていた部下・真下亜美(藤井美菜)に密告されたような描写になっている。
渡部篤郎はテレビドラマ『白夜行』ではヒモ的なクズ男・松浦勇を演じていた。映画『重力ピエロ』では病的で自己中心主義的な犯罪者・葛城由紀夫を演じた。『美しい隣人』では冒頭の優しいパパのメッキがはがれたダメ夫を好演している。
息子の駿も不気味である。タイトルの「零れたミルク」は直接的には駿が何度もコップに入れられた牛乳をこぼしてしまうことを指している。沙希は連れ去った駿に「ママは本当のママじゃない」と吹き込む。普通の子どもは「嘘だ」と反論しそうであるが、駿は「そうなの」と平常心で応じている。この息子の反応が絵里子(檀れい)の崩壊のトリガーになった。
一番の注目は妻の絵里子(檀れい)の崩壊である。穏やかで幸福そうな主婦が様変わりした。沙希への恐怖と怒りに常に支配され、慎二を激しく責め立てる。夫は許せないが、沙希の思うツボになりたくないとの意地から表面的には幸せな家族を演じ続ける。そして息子の言葉に発狂した絵里子は物凄い形相で醤油瓶を投げつけ、家を飛び出す。
これまで『美しい隣人』は仲間由紀恵のミステリアスな演技に支えられてきたと言っても過言ではない。ところが、その仲間の登場シーンは今回、減少してしまった。その穴を檀れいが見事に埋めた。「自分と絵里子が同じ」という沙希の言葉を裏付けるような壊れ方である。次回は遂に最終回「勝つ女」である。どちらが勝つのか、結末に目が離せない。

『美しい隣人』最終回は謎を残す結末

フジテレビ系ドラマ『美しい隣人』最終回「勝つ女」が3月15日に放送された。東日本大震災直後で、他局が災害放送をしているという落ち着かない中での放送であったが、ドラマには現実を忘れさせるフィクションの力強さがあった。
『美しい隣人』は平凡な主婦・絵里子(壇れい)の幸福な生活が美しい隣人・沙希(仲間由紀恵)によって崩壊させられるサスペンスで、沙希の狂気が話題となっていた。しかし、3月11日の東日本大震災がもたらした未曽有の大災害の前では、一人の女性の狂気など小さな問題に見えてしまう。また、L字型画面で放送されるドラマには災害情報の字幕が入り、視聴者は容易に現実に引き戻されてしまう。
しかも、最終回前半では沙希の夫・筧雅彦(高知東生)によって沙希の異常性が説明される。この説明によって沙希はミステリアスな存在から、頭が良くて美人だがヒステリックな女性という、ありふれた存在のようになってしまった。ところが、後半に進むにつれ、物語は急展開する。
前回放送から引き続いて、絵里子は狂気を増していく。まるで沙希とポジションが入れ替わったようである。この沙希と絵里子の類似性についてはラスト近くで興味深い説明がなされた。沙希を追う絵里子の視点でドラマは進み、遂に絵里子は沙希を見つける。
ミステリアスな笑みを浮かべる沙希に視聴者は引き込まれるが、静岡県東部で発生した震度6強の地震のニュースでドラマが中断されるというアクシデントに見舞われた。ニュースの後にドラマは再開し、絵里子は沙希と対決する。「幸せな人って無神経なのかもしれないわね」「あまり不幸ぶらないで欲しいわ」と二人が本音をぶつけ合うクライマックスであるが、幕切れはあっけなかった。そして日常生活に戻る。
ここでエンディングになれば物語として区切られるが、ドラマには続きがあったために謎を残す結末となった。果たして沙希は生きているのか、誰が転居後の絵里子の家にDVDを送付したのかなどの点について説明されずに終わっている。そしてラストに登場した現実世界か夢の世界か区別できない沙希の妖艶さは視聴者の脳に焼付く。謎を残すラストに対する賛否は分かれるだろうが、謎を視聴者に考えさせることで、東日本大震災という圧倒的な現実から心を休ませるエンターテイメントとなった。

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