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『モンスタークレーマー対策の実務と法』クレームには誠意を

本書(升田純、関根眞一『モンスタークレーマー対策の実務と法 第2版』民事法研究会、2009年10月16日発行)は弁護士(升田氏)と苦情・クレーム対応アドバイザー(関根氏)がクレームの背景を分析し、解決の方向を紹介した書籍である。第2版では業種別クレーム事例を倍増して、より実践的な内容にした。
副題に「法律と接客のプロによる徹底対談」とあるとおり、異なる分野の専門家2人の対談形式で進行する。版元は法律書専門の出版社であるが、本書の内容は法律論よりも苦情処理が中心である。これは升田氏が聞き手で関根氏が語り手という形で進行する流れになっているためである。法律論では合法か違法かで一刀両断することになるが、苦情対応の現場では違法性がないから突っぱねるというものでもない。その意味で法律論を抑えたことは、この分野の書籍として成功である。
かねてより私はクレーマーという言葉の使われ方に疑問を抱いている。クレームは「要求する、主張する」という意味である。権利の上に眠るものは保護されない社会において、権利を主張することは正しいことである。商業メディアがクレーマーにネガティブなイメージを植えつけただけであって、消費者はクレーマーと呼ばれることを誇りにするくらいでいいと考えている。
残念ながら本書でもクレーマーはネガティブなイメージで使われている。しかし、関根氏は「最初から悪意を持ってクレームをつける人は、普通はいません。ところが、クレームの前に、問い合わせをしたときに受け付けてもらえず対応がいい加減だったというようなことがあると、自分の主張を通すために勉強をしてくる」と述べる(17ページ)。
クレームには基本的に誠意をもって謝れば解決できるというスタンスで、クレームを受ける側が顧客の不満を言葉の中から探し出し、相手の立場に立つことが解決の近道と主張する。本書のタイトルにはモンスタークレーマーとあるものの、本書は常識の欠けた理不尽な要求をする人に特化したものではなく、通常の苦情対応の対策書である。
通常の苦情でも対応を誤ればモンスタークレーマーとなってしまう。むしろ、消費者をモンスタークレーマーとラベリングすることで、企業側は自己満足する。その背景を関根氏は以下のように分析する。
「仮に100%こちらに落ち度があったとしても、売り手側、商業側、企業側としては、そうは言いましてもという気持ちがあり、何も抵抗する必要がないのに必要以上に時間をかけてしまう。やがてそれで収まりがつかないと、正しいクレームを言った人に対して、変人扱いをする」(50ページ)。
関根氏がクレームに正面から向き合うことを力説する背景は相手を顧客と位置付けるためである。クレーム対応がまずければ顧客を失うことになるという緊張感を持っている。この発想は人口が減少しリピーターの価値が高まる日本社会では一層重要になるだろう。
また、私は新築マンションの購入トラブル経験があるが、その際の売主側の対応が酷かった理由も理解できた(林田力「マンション販売トラブルで「お詫び」 東急リバブル・東急不動産」JANJAN 2007年10月4日)。
不動産購入は一般人にとって一生に一度あるかないかの買い物であるため、良心のない不動産業者にとっては一度売った客の相手をしない方が合理的になる。業者の思考回路を理解できるという点で消費者にとっても有益な一冊である。


『女子弁護士 葵の事件ファイル』面白くて、ためになるリーガル小説

本書(岩崎健一『女子弁護士 葵の事件ファイル』双葉社、2008年6月20日発行)は弁護士である著者が「面白くて、ためになる」というコンセプトで著したリーガル小説である。「まえがき」によると、小説としての面白さを追求しつつ、法律知識を身につけられるような内容を目指したという。

新米の女性弁護士・日向葵を主人公にし、彼女を通して法律事件を描く。物語は事件毎に一話完結型で展開する。扱われる事件は痴漢冤罪事件、リストラ、架空請求、子の認知、過払い金返還、相続と日常的なものながらも多岐に渡る。

本書では会話文が多用され、法律の説明も依頼者と弁護士、主人公と先輩弁護士の会話を通して行われる。そのため、実用書的な長々とした説明は少ない。

また、主人公は、かんざしがトレードマークで、ケーキに目がなく、演劇スクールに通っているという個性的なキャラクターである。そのため、法律論ばかりの堅苦しいものにならず、気軽に読み進めることができる。

リーガル小説としての本書の特徴は法廷シーンが存在しないことである。法律相談関係の本を書くことが出発点であったこともあるが、法的紛争の大半は裁判に行く前に解決するという実態を反映している。

支払督促を悪用した架空請求に対しては、督促異議申し立て及び強制執行停止申し立てで対抗したが、本書では裁判所に申し立てたところで終わっている。本来ならば申し立ては手続きの出発点であり、その後どうなるかが気になるところである。しかし、本書では申し立てにより一先ず安心という形になっている。

ここには早めに弁護士に相談することが成否を分けるという著者の思想がうかがえる。後になって弁護士に相談しても手遅れになってしまうトラブルも存在するためである。反対に適切なタイミングで相談を受ければ、後は単純な手続きで済む。そのような事件が現実の弁護士業務の大半なのだろう。

記者(=林田)は東急不動産(販売代理:東急リバブル)とのマンション紛争で東京高裁まで争った経験がある。東京高裁における訴訟上の和解成立後も和解条項の履行をめぐって紛争が再燃した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。

同じ法律紛争でも記者の裁判と本書で扱われた事件では、かなり様相が異なる。記者の裁判では原告(記者)と東急不動産は全面的に対立しており、熾烈な争いになった。また、消費者契約法による不動産売買契約の取消しが認められるかという先例のない分野の裁判であった。弁護士にとっても負担が大きい事件であった。

本書は重たい事件や突っ込んだ法廷闘争を期待する向きには不満が残るかもしれないが、裁判を回避できるならば、それに越したことはない。記者の裁判が泥沼化したのも東急不動産の非妥協性、頑迷さが原因であり、他の会社が相手ならば長引かなかった筈である。日常的な法律紛争を大事に至る前に解決の具体的な方策を提示しており、「面白くて、ためになる」というリーガル小説の新分野を狙った著者の試みは成功している。

『遺言執行』本格的リーガル・サスペンス

本書(シェルビー・ヤストロウ著、森詠訳『遺言執行』集英社、1995年)は800万ドルに及ぶ莫大な財産を残した身寄りのない老人の遺言執行をめぐるリーガル・サスペンスである。著者は米国大手企業の法務担当役員で、本作品がデビュー作になる。

リーガル・サスペンスと称される作品は数多くあるが、単に弁護士を主人公とすることや、法廷で殺人事件の謎解きが行われるために分類される作品も少なくない。これに対して本書は遺言が有効か無効か、遺産の正当な帰属者は誰かという法的な争点を正面から扱う本格的なリーガル・サスペンスである。

このような本格的リーガル・サスペンスを書くことは想像以上に大変である。まず著者に法律知識がなければならない。より重要なことにストーリーに関係する法律の規定や訴訟手続きについて分かりやすく説明しなければならない。読者は小説を読みたいのであって、法学の教科書を読みたいわけではない。そのため、ストーリーの邪魔にならない形で簡潔に説明する必要がある。

記者も裁判トラブルのノンフィクションを出版した経験がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。この時も前提となる法律知識をどれくらい、どのような形(地の文か欄外コラムか)で表現するかについて編集者と議論した。この点、本書では地の文で分かりやすく表現しており、その書き方は非常に参考になる。

本書からはアメリカの司法制度が真実を追求し、権利を救済する本来のあるべき姿で運営されていることを痛感した。身寄りのない老人が遺言書を残して死亡したが、遺言書に従って粛々と遺言執行を行うことにはならない。

まだ現れていない相続人の利益を守るために弁護士が任命され、遺言が有効であるかについて真剣に議論される。これは遺言書があることを錦の御旗のように扱う日本の一部の風潮とは対照的である。日本社会の法意識の低さも実感させられた一冊である。


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林田力 東急ホテルズ食材偽装

林田力『東急ホテルズ食材偽装』(Food Scandal of Tokyu Hotels)は東急ホテルズの食材偽装(メニュー誤表示)問題を取り上げた書籍である。高級ホテルや百貨店で次々と明らかになった食材偽装であるが、東急ホテルズは質量ともに悪質である。食材虚偽表示は100種類以上のメニューで行われ、料理約50万食分にも上る。東急ホテルズは新聞社の取材や自治体の調査に「偽装はない」と虚偽回答までしている。
食材を虚偽表示したホテルはザ・キャピトルホテル東急、名古屋東急ホテル、京都東急ホテル、宮古島東急リゾート、伊豆今井浜東急リゾート、札幌エクセルホテル東急、羽田エクセルホテル東急、富山エクセルホテル東急、金沢エクセルホテル東急、新橋愛宕山東急イン、吉祥寺東急イン、新潟東急イン、松本東急イン、高松東急イン、松江東急イン、徳島東急イン、松山東急イン、下関東急イン、鹿児島東急イン、帯広東急インである。
松江東急インではシャンパンと称してスパークリングワインを提供した。Some who ordered Champagne got Sparkling wine. 宮古島東急リゾートは近隣の契約農家から取り寄せた野菜と称して遠隔地から入手した野菜を提供した。Vegetables from small specialty farms were actually shipped in from remote land.東急ホテルズは数多くの食材でも同じような詐欺をしている。
表紙の写真は宮古島東急リゾートが掲示する食材マップである。ここでは野菜や魚などの地産地消をセールスポイントとしていたが、実際は他の産地から調達したものが提供された。単にメニューが間違っていたという以上の悪質さが東急ホテルズには存在する。
東急ホテルズ食材偽装は東急グループの消費者無視の体質を改めて浮き彫りにする。コストカットと詐欺は異なる。コストカットが目的という言い訳は筋違いである。消費者に嘘をついて利益を出す東急の倫理観が問われる。
東急リバブル東急不動産は隣地建て替えなどを隠して新築分譲マンションをだまし売りし、消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき、売買契約を取り消された(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。東急百貨店は認知症女性に次々販売した(林田力『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』Amazon Kindle)。
東急ホテルズ食材偽装は東急グループの市民常識から乖離したブラック企業体質も再確認させる。東急ハンズは長時間労働やサービス残業強要、パワハラで心斎橋店員が過労死した。東急不動産は係長がトラブルになった顧客女性に脅迫電話を繰り返して逮捕された(林田力『東急不動産係長脅迫電話逮捕事件』Amazon Kindle)。ブラック企業には根拠のない特殊日本的精神論(根性論)がのさばっている。疑問を持たせず、「そういうものだ」という主張が怖い。「昔はこうだった」は今や通用しない。

東急ホテルズで食材虚偽表示
東急ホテルズ誤表示の虚偽
東急ホテルズ食材虚偽表示一覧
東急ホテルズの食材偽装増加
宮古島東急リゾートが食品偽装隠し
東急ホテルズが徳島県に食材偽装隠し
東急ホテルズが故意の食材偽装を認める
松江東急インがシャンパン偽装
ザ・キャピトルホテル東急が食材偽装
おもてなしに欠ける東急ホテルズ
東急不動産だまし売りと東急ホテルズ偽装
東急ホテルズ食材偽装への反応
東急ホテルズ不利用不買運動
ホテル不正改造
耐震強度偽装ホテル