『オールライト』レビュー

林田力

青年劇場公演『オールライト』を紀伊國屋サザンシアターで観た。タイトルはボブ・ディラン(Bob Dylan)の「Don't Think Twice, It's All Right」に由来する。「Don't Think Twice, It's All Right」は未練たらたらの曲であるが、舞台は前向きな気持ちになれる作品である。

主人公は父親と一軒家に住む女子高生ユキ。父親の東京出張で独り暮らしになる筈が、家出した友人のエリカが転がり込む。さらに謎のおばあちゃんが居座る。このおばあちゃんは、居酒屋ブラック企業社員やDV被害者ら訳ありの人々を招き入れ、シェアハウス状態になる。

シェアハウスの可能性を感じさせてくれる作品である。空き家のシェアハウスなどへの活用を訴えている立場として素直に喜ばしい。作品の背景には格差と貧困の拡大、社会的排除、孤立がある。最後まで笑いを入れており、エンターテイメントとしても面白い作品である。

所謂「普通」ではない人々のシェアハウスであるが、「デリバリーピザは体に悪い」「栄養のある食事をする」「子どもは8時に寝なさい」など、おばあちゃんが古典的保守的な道徳観念を主張している点が面白い。このシェアハウスは既存の秩序を一切否定する左翼小児病的な「解放区」ではない。むしろ過去の知恵とつながっている地に足着いた存在である。実際のところ、シェアハウス住人の食事風景は昭和の家族団らんを連想する。それは21世紀の普通の家庭が失った感のあるものである。

エリカの父親はシェアハウスを批判する際に具体的な理由として薬物乱用の温床になると指摘した。これは「普通」の人々が誰でも危惧する理由になる。危険ドラッグは社会問題になっている。「普通」の人々が感じる胡散臭いものへの嫌悪感を具体的な危険として説得力を持たせられる。本作品のシェアハウスは逆に、そのようなものの対極的な健全性を持っている。

本作品はスマホやツイキャスのある現代の物語であるが、舞台となる一軒家は昭和の住宅である。エリカのギャル言葉も一昔前の流行である。本作品は高校生に観て欲しい作品と思われるが、当の高校生からすると一昔前のテイストになるだろう。本作品を観た高校生がどのような感想を抱くかも興味深い。


林田力


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